第57話 ~白の国 王城へ~
すみません。
キリがつけられず、いつもより長めです。
僕には何も残っていなかったので、小さな口笛しか吹けませんでしたが、、兄龍たちはすぐに駆けつけてくれました。
「一緒に逃げよう。」
そう言って、御者も連れ出しました。
これからどうなるかもわからない。彼にとっては特に王都は危険に思われました。
御者は手配されるだろうし、王城は僕たちが戦場にするかもしれない。彼にとってはどう転んでも危険なのです。
とりあえず、彼も連れて違う山脈へ向かいました。
巣は特定されているので、戻れません。
母龍と魔族の先生と合流し、夜明けまで話をしました。
やはり、攻撃を行うとなれば、魔王軍にお伺いを立てねばならないだろう。と。
だが、幼子の体力からすると、あまり時間がない。
そこで、御者が、一度”宣戦布告”を行ってはどうだろうと。
御者の言い分としてはこうでした。
「魔王様ってのが、えらく紳士で驚いたな。でも絶対にダメとは言っていないよな。それは、不当な事が起きれば、対処をするってことだ。こちらが”宣戦布告”をして、期限までに子供を返してくれるのであれば、それで良し。ダメなら攻撃。きちんと説明して、期限も打つ。それならば、魔王の教えにも反していない。」
「う~ん。」
魔族の先生が考え込みます。
「ならばこうしてはどうだ?宣戦布告も行うが、万が一のことも考えて、魔王軍とやらにも報告を入れておいては。どうなるかは分からないが、ダメってこともないだろう。」
「分かりました。私がお伺いを立てて参ります。」
先生が請け負いました。
そして僕たちは日の出とともに王城裏手へ向かいました。
城下の人間達が僕たちを見て、パニックを起こさないように細心の注意を払って。
「明日までに龍の子を返して欲しい。それが成されないのであれば、僕たちは力尽くで連れて帰る。その時はこの国にどれ程の被害が出るかは分からない。この国の者達が賢明な判断を下すことを望む。」
そう告げて、一旦帰りました。
魔族の先生は、魔王軍へ報告に行っていたはずですが、もう帰っていました。
「特に問題はないようです。ただ、戦闘になった際は、被害は最小限に留めるようにと。」
「良かったな。」
御者は嬉しそうに笑ってくれました。
一日経ちましたが、幼子は帰ってきません。魔族の先生が放った偵察からも、王城に動きはなかったそうです。
そして、もう一度、人間達へ通告します。
「刻限は過ぎた。明日、攻撃を開始する。」と。
一日猶予を与えました。それでも動きはありませんでした。
僕たちの怒りは抑えられることができない所まできていました。
御者を巻き込む訳にはいかないので、好きな所まで送っていくと伝えた所、人間よりも、魔族の方が余程イイヤツだと。魔界に住む事にした。と意気投合したらしい先生と魔界へ行きました。
そして、今日を迎えます。
僕たちはまず王城へ向かいました。もしかしたら、幼子がいるかもと。
そこで待っていたのは、迎撃態勢を整えた軍の姿でした。
魔法陣がそこかしこに浮かび、結界が張られていました。
兄龍が炎を吐いた所、結界にはじき返され、城下町に落ちました。
それを見ていた王城の軍人達は嫌らしい笑みを浮かべ、奥から、何かを運んできたんです。
それは、両目をくり抜かれた幼子でした。ぐったりとして、今にも息絶えそうな。。。
そして、あざ笑うかのように槍を突き刺したんです。
怒りに我を忘れた兄龍3人が、炎を繰り出しますが、ことごとくはじき返され、城下へ落ちました。
そして魔法陣が動き出すのを見て、母龍がその場を離れることを指示します。
その魔法陣が何の力を秘めているのか、分からなかったので。
僕たちは城下町へ移動し、先ほどの無差別攻撃となってしまったのです。---
話を聞き終え、皆一様に首を振る。なんて愚かな人間か。
「う~ん。そんなことがあったのか。」
僕は考え込む。
なにせ、人間が悪い。双方の意見を聞くべきだろうが、100歩下がって見たとしても、人間が無罪にはならない問題だな。
「シエイラ。そんな報告あったの?」
「それくらいの事ならダルガまでは上がってこないでしょうね。でも、ダルガが聞いていたとしても火炎龍の言い分を聞くでしょうね。」
「でも、その魔族は誰かしら?人間界に偵察を放って、短期間で王城内の詳細まで掴める者はあまりいないわ。」
「すみません。僕も先生の名前を聞いたことがなかったので。」
ウォールが頭を下げる。
「とにかく、その子を助けに行こう。時間がないからね。ここは正攻法で行くのがいいだろう。火炎龍達が向かっては、それこそ戦争だ。僕が行ってくるよ。」
ジョージが立ち上がる。
「どうやって?」
僕にはジョージの作戦が見えない。
「はっはっはっは。アル。権力というのは、こういう時の為にあるんだよ?王子としての力を全開で出してこよう。こんな時の為に・・・」
そう言うと、ウエストポーチから、小さな包みを出す。
魔法で圧縮された正装一式が出てきた。
素早く着替えると、見違えるような高貴な王子様が出来上がる。
「では。行って参ります。」
付き従うリリィもいつの間にか、正装に身を包んでいた。
なにを想定して、持ってきてたんだろう?役に立ったからいいけど。。。
「僕も行くよ。。。みんなちょっと待ってて。」
慌てて付いていく。
「あら。私ももちろん付いていくわ。ジルも行くでしょ?」
シエイラが、ジルを囲むように、ドレスの裾を翻すと、衣装チェンジが済まされる。
人間界で正装とされるデザインのドレス。それも魔界仕様だ。高級感が格段に違う。
ジルも、シエイラと対になったデザインの洋服に身を包んでいた。
「残ったんは、役立たずだけやな~。気になるわ~。飛んで行こかな~。」
ホセが、燭台を背もたれにして、足を組んで投げ出し、手を頭の後ろに組む。
「いや。付いていっても、ホントに役立たずですよ。自分は、言いつけ通り、とりあえず待ちます。」
ゲイルは諦めてお茶を啜っている。
「はぁ。僕たちの事なのに。。。魔お・・いやアルさんにまで迷惑を掛けてしまって。。。」
ウォールが項垂れる。
「なぁ。その”魔王”っての。隠してるみたいやけど、ホンマに?」
ホセが食いつく。
「いや。僕は。。。初めてお会いしますし。。。口止めされてるので。。。」
ウォールがしどろもどろになる。
「ふ~ん。口止めするって事はあながち間違いやあらへんな。ゲイル君。君はアルと一緒に来たよね?知ってることがあれば、白状しいや。」
ホセが揺さぶりを掛けるが、ゲイルは動じない。
「僕もアルさんに助けていただいてますので、許可が出るまでは。。。いくらご友人の頼みとはいえ、お話できません。」
ゲイルは口を真一文字にして、これ以上話さないとがんばる。
「なんや~。ジョージよりも先に情報仕入れたろうと思ったんやけどな~。そう、うまくはいかへんな。。。なら、寝るわ。みんなが帰ってきたら、起こしてや~。」
ホセはあっさり諦め、テーブルの上で眠ってしまった。
「はぁ。アルさんの周りの人は、なんというか。。。自由な方が多いですね。」
ゲイルがため息をついた。
「自分は、城下町へ行ってきます。」
ゲイルが立ち上がると、
「どうして?」
ウォールには意味が分からない。
「防空壕の人間には大丈夫と伝えに。瓦礫の下にはまだ助かる命があるかもしれない。できることはやっておかないと。」
「じゃあ。僕も行ってもいいですか?」
ゲイルとウォールは城下町へと走っていった。
その頃、僕たちは王城へと着いていた。
「僕は、緑の国の第一王子、ジョージと申します。突然の訪問で申し訳ありませんが、城下で火炎龍との戦闘に巻き込まれました。一応、火炎龍達は退けましたが、城下町の被害は甚大だ。軍なり出動しても良い頃だろうが、それもない。どういう状況なのか、話を聞かせていただきたく伺いました。」
強く高圧的にジョージが言い放つ。
門番は思いもよらない訪問者にたじたじとなる。
「今、確認して参ります。しょ、少々お待ち下さい。」
そういうと、慌てて駆けてゆく。
「ちょっとキツかったかな?」
「門番に対してはもう少し弱めでも。ま、問題はないでしょう。」
リリィは駆けてゆく門番を冷たい目で追いながら答える。その声も冷たい。
そして、何事もないように、城門を勝手に通る。
「え?ジョージ。正攻法って言ってなかった?」
「ん?誰もいないからね。通っても構わないってことじゃない?」
それは言葉のマジックだよ。屁理屈って言うんだよ。。。
4人はまるでピクニックに来たかのように、楽しそうに会話しながら入っていく。
まだ、入り口なのに、頭が痛い。。。
「龍の子供ならこっちだよ。」
ジルが言うと、皆それに続く。
庭に出ると、軍人が集まり、そこかしこに魔法陣が浮かぶ。大砲も数え切れない台数が設置されていた。
その真ん中に小さな龍が置かれている。目をくり抜かれ、槍が突き刺さったままだ。
ウォールの話と同じだな。。。
「誰だ!お前達は!!!」
兵士が僕たちを囲む。
「先ほど、門番に伝えたが、連絡がいっていないのか?この国はどうなっているんだ?」
いきなりジョージが憤慨する。
「なんだ貴様!!」
兵士が剣を抜く。同時にリリィの細剣が兵士の喉元に突きつけられる。
「失礼はどちらでしょう?私は緑の国の外交官リリィです。こちらの方は、緑の国の第一王子、ジョージ様です!」
リリィが強く厳しくそしてよく通る声で話す。
その言葉に、兵士達が一歩下がる。
どう対処したらいいか迷っているようだ。
「そんなこと、本当かどうかも分からんな。」
一人の兵士が斬りかかってきた。
ジョージは慌てることもなく、その剣を避け、勢い余った兵士を蹴り倒した。
「この国では、他国の王族を斬り殺そうとするのが、挨拶なのだろうか?」
低く響く声でジョージが怒りをあらわにする。
「ちょ、ちょっとお待ち下さ~~~い。」
なんか奥から小デブのおっさんが走ってきた。見事に腹の肉が揺れている。
「これはこれはジョージ王子。兵士が失礼を。申し訳ありません。」
死にそうに息を切らしておっさんが謝る。
「外務大臣殿。ここはどうなっているんだ?ここにはこんなに兵士がいるというのに、城下町では甚大な被害が出ても、誰一人来なかったぞ!」
「そんなわけはございませんよぉ。ジョージ様がお見かけにならなかっただけでございます。我が兵士により、城下の火炎龍も撤退しております。」
門番からの連絡は入っていないようだ。明らかな嘘を吐いてくる。
「ならば、あの龍と魔法陣・結界の意味を聞いてもいいだろうか?」
「えぇえぇ。我が国には、何年か前より、火炎龍が住み着いておりまして。数々の悪さを。。どれだけ対処しても被害が減らず、龍どもの数も増え、被害は増える一方。困り果てていたところ、子供まで増える始末。仕方なく、討伐しようとしたところ、火炎龍が無差別攻撃をしてきたのです。この子供龍は巣から落ちたようで、ここで保護していたのですがね。」
子供でも分かる嘘を連ねる。
ジルがトコトコと大臣の所へ歩み寄り、その手を握る。
大臣は意味が分からずキョトンとしている。
「おじさん。嘘付くならもっとマシな作り話をするべきだね。」
ジルが冷たく言い放つ。
その言葉に顔色が変わった大臣は手を振りほどく。
「子供は黙っていろ!!」
口調が荒くなる。
「連れが失礼した。話を戻せば、火炎龍は撃退したのだし、その子龍に危害を加えるつもりはないんだな?」
「もちろんでございますよ。」
「であるならば、その龍を今すぐ解放してはくれないか?できないのであれば、我が国から貴国への援助は停止させていただく。」
ジョージの言葉に大臣は黙っている。
「僕たちが闘い、避難路を造り人々を誘導し、数多の命が目の前で消えていくその光景は、幻だったのだろうか?その子龍に刺さった槍の意味も分からないが。。。」
大臣は俯き何か考えているようだ。
「ちょっと。ジョージ。正攻法で攻めるんでしょ?なに挑発してるんだよ?」
僕はジョージの肩に乗り、耳元で囁く。
「ふふっ。剣も抜かない僕にあちらから向かって来るならば、もうこちらは何をしても大丈夫だろう?欲しい物は、貰う。闘って勝つ。そして正当な権利を主張する。問題ないよね?」
下手したら戦争になりかねない発言だ。。。なのに楽しげなジョージがコワイよ。。。
「かかれ~~~~!!!!」
大臣がいきなり発する。
兵士達が剣を構え向かってくる。
ジョージの剣はオリハルコンだ。そこら辺の兵士の剣は交えた瞬間に折れている。
「皆さんこちらへ。」
リリィが壁の様な結界を張る。
「アル。。。このままでも良いんだけどさ。。。僕、ちょっと我慢の限界かな。少し力を解放させてくれないかな?このままだと力が小爆発するかも。。。」
ジルが僕に触れながら告げる。その言葉と共に、大臣の意識が流れ込む。
話の流れはウォールと合致していた。呪術者の言葉を信じ、王女を助けるため。。。
だが、龍の瞳を与えても王女が回復しない。そこから、欲にまみれた者達が変貌していく。。。
年老いた王と死にかけの王女。国の世継ぎ争いからクーデターまで。ありとあらゆる策謀を張り巡らせてゆく。ドス黒い感情が溢れ出している。
瞳を取ったにも関わらず、役に立たなかった龍は余すことなく使おうとする。
龍鱗も角も爪も牙も肉も。。。全て伝説のアイテムとして高値で売れる。
嬉々として鱗を剥がす姿が狂気をじみていた。。。
あの子龍は横に寝かせられているが、床に付くその半身は鱗がなく、生肉が見えているはずだ。
そこへやってきたジョージに計画を頓挫されそうになり、はらわたが煮えくり返るような感情を持ち、王族もろとも、ジョージ一行も消し、全てを火炎龍の仕業とする。
その火炎龍も殺してしまえば、国民の信頼は勝ち得ると。
様々な感情。。。それも黒い感情が流れ込み、僕の怒りは抑えきれなくなった。。。
うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!
僕は感情が爆発し、天に向かって咆哮する。
オーラが溢れ出し、僕の体色と同じ朱い光が天を貫く。。。
「ジルゥー!!!力を解放しろ!!!!!」
僕は力の限り叫んだ。




