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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新魔王誕生編=
55/322

第55話  ~火炎龍との闘い~


 白の国、王都上空に突如として現れたドラゴン達が暴れ回る。。。



火炎龍ファイアードラゴンだね。」

 ジルは席を動くことなく呟く。

「えぇ?マズイじゃん!」

 僕は慌てて外に出る。



 ジョージとリリィは魔法防御しながら、住民の避難路を作り、ゲイルが誘導をしている。

 しかし、3匹が攻撃をしてくるために、ジョージとリリィでは防御として足りていない。。。


 2匹が上空からこちらの様子を窺うように、動かないのがせめてもの救いだ。

 だが、いつ攻撃を仕掛けてくるかも分からない。。。

 特に1匹は飛びぬけて大きい。その体躯も魔力も。。。



「ん?んんんん?」

 よく見ると、その大きな1個体に人影が見える。。。


「ふ~ん。誰かが統率しているね。」

 いつの間にかジルが横にいる。

「あらあら?せっかくの綺麗な街並みが溶けてしまうわね。。。」

 シエイラも動じない。


 

 どうしたらいいんだろう。。。魔王になったものの、その権力のみしか継承していないようで、力などもらっていない。。。

「あんなのに向かってったら、確実に死ぬよな。。。」

「ん?アルは、人間に味方するの?」

 ジルが不思議そうに聞く。


「当り前だろ?」

「どうして?今の攻撃は確かにドラゴン達から始まったように見えるけれど、実際にはその前段階で、人間たちがドラゴンを怒らせるようなことをしたのかもしれないよ?魔王になったからには、大局を見る目を養うべきだね。」

 ジルに諭され、ようやく気付く。。。


 しかし、目の前で人が死んでゆくのを、ただ見ているのは。。。やっぱりできない。


「そうだよね。。。ジルの言う通りだよ。。。でも、まずは話し合ってもいいと思う。」

 そう言って僕はジョージ達に向かって駆け出した。


「アル。止めるだけなら、僕が出ようか?」

「いや。ここに古代竜まで出てきたら、ややこしくなるよ。あ~あ。僕が”魔王覇気”とか持ってたらな~。」

 走りながら僕は愚痴っていた。


「あははは。”魔王覇気”なら、もう持ってるよ。弱いし使いこなせていないだけで。要練習だね。明日から頑張って。」

 ジルが笑っている。


 そうか。。。持ってたのか。。。

 てか、”魔王の力”継承っつても説明もないし。。。何ができるんだろう。。。

 せめて、取説&マニュアルもらえないかな~。


「あははは。アル。君はホントに面白いね。一緒にいて飽きないよ。確かに説明書があったら便利だね。。あはははは。」

 ジルに心を読まれていたようだ。。。


 もう少しでジョージ達と合流できる所まで来た時、

「じゃ、僕はちょっと話を聞いてくるよ。」

 ジルは一番大きなドラゴンへと向かった。



「アルちゃん?」

 シエイラが隣に並ぶ。

「私はね。ジルの言うことに、賛成でもあるし、反対でもあるわ。双方の意見を聞いてから味方すべき相手を見定めないと。でもね。無差別攻撃はいただけないわね。だから、避難場所くらいなら、作ってあげるわよ?」


「ホントですか?ぜひお願いします!!!」


 僕がお願いをするとシエイラが手を組む。祈るような仕草をすると、数カ所から光る魔法陣が現れた。

 下から何かがせり上がってくる。。。


 土の”かまくら”ができた。だが、その下に空洞が続き、防空壕になっていた。これでかなりの人数が助かるだろう。


「炎と氷では相性が悪いものね。。私は土の魔法なら少しだけできるから。。。」

「少しってレベルじゃないですよ!ほんと助かりました。」


 シエイラの魔法に気付いたゲイルが、人々を防空壕へ誘導し始める。


 それを受けて、ジョージとリリィの動きも変わる。

 リリィは細剣レイピアでは分が悪いので、翠宝王玉グリーンオーブを使った魔法で。

 ジョージは剣を抜く。防戦一方の魔法だけではなく、剣技も加えたことで、攻撃も織り交ぜる事ができるようになった。


 しかし、ジョージの剣が火炎龍ファイヤードラゴンに触れると”キィィ~~~ン”と金属同士が触れ合ったような音がする。それだけ、火炎龍ファイヤードラゴンの鱗が硬いということなのだろう。


 ジョージは剣に炎を纏わせる。せめて、相性の悪さだけは回避しようとしているようだ。

 だが、押し負けるのは時間の問題。。。


 しかし、炎を打ち消そうと、水や氷の魔法を使用すれば、水蒸気爆発の可能性があるためだろう。使うことができないでいる。


 

「アルさ~ん!!。サラに、妹に『ドラゴンキラー』を預けてあるんです!!」

 ゲイルが叫ぶ。


(ドラゴンキラーって。。。)


「お兄ちゃん!!!。これ!!」

 サラが車いすで走ってくる。膝には布に包まれた荷物を抱えている。

 慌てて恋人が店から出てきたが、距離がある。



 クエェェェェー!!!!

 ゲイルの背後上空に黒い影が。。。サラの方向へ飛び出す。


 見上げたゲイルが走り出す。

 だが、距離があった。


 ガキィイーーーン!!!衝突音とともに吹き飛ぶ人影。ジョージだ。

 火炎龍ファイヤードラゴンに攻撃を仕掛けたが、剣が折れ、吹き飛んだのだ。


「きゃぁぁ!!」

 火炎龍ファイヤードラゴンがサラを鼻先で突き飛ばす。

 数メートル先の瓦礫の上に落ちたサラがぐったりとして、動かない。

 僕はサラの元へ向かう。



 自分の足下に落ちた白い包みに、火炎龍ファイヤードラゴンは焔を放つ。


 白い包みが燃え、中から緑色の剱が姿を現す。

 その剱は分厚く、鎧の小手と剱が一体化した形を成していた。


 火炎龍ファイヤードラゴンは、なおも焔を吐く。。。

 するとどうだろう。伝説の武器とまで言われた、ドラゴンキラーが溶け始めた。。。


「くっ。偽物か。。。」

 ジョージが苦しそうに立ち上がり呟く。

「なんてことだ。あれは、王から直々に賜った褒美なんだ。偽物とは。。。」

 ゲイルは地面に膝をつき、「クソーっ!!」と叫びながら、割れんばかりに両の拳を地面に叩きつける。


「大丈夫。サラはまだ、息があるよ。こっちは任せて。」


 そうは言ったものの、サラの状況は最悪だった。息はあるものの微かだ。

 火炎龍ファイヤードラゴンに突かれた右胸は目に見えて凹んでいる。サラの口から血が出ているのは、肺が潰れた為だろう。

 全身には挫傷・裂傷が酷い箇所も多くある。

 そして、瓦礫から飛び出た鉄筋が、腹部を貫いている。溢れる血は止まらない。


「マズイんちゃうか?」

 ホセが隣にいた。

「うん。大丈夫。何とかするよ。」


 だが、僕たちの事など、火炎龍ファイヤードラゴンには関係ない。

 別の個体が、リリィを狙う。

「チッ。」

 ジョージが武器も無く走り出す。


「ダメだ。ジョージ。」

 僕は絶望を感じる。だが、そこで思い出す。

「ホセ、これをジョージに。」

 蒼の懐中時計をホセに託す。

「よっしゃ~~~!」


 ホセは懐中時計を咥え、ツバメのように鋭く飛ぶ。


「ジョージー!!。剣だよ!!受け取ってーーーー。」

 力の限り叫ぶ。

 緊迫した状況に僕の身体からオーラが光り出す。


 ホセがジョージまであと少しと近づいた時、

「出でよ!!!アルム!!!!」


 僕が叫ぶと、懐中時計はホセの口を離れ、光に包まれる。

 懐中時計はホセの飛行スピードを保ちながら飛び、変形を続ける。


 ジョージの手元に付くのと、オリハルコンの剣になったのが同時だった。


 ガキィン!!

 ジョージの頭上で、火炎龍ファイヤードラゴンの鋭い牙が止まる。

 その足下にはリリィがいた。


 パキン!

 軽い音とともに、火炎龍ファイヤードラゴンの牙が折れた。


「この剣は。。。一体。。。」

 ジョージが訝しむ。


「ジョージーーー!!オリハルコンの剣だよ。それなら折れないからーーーー!!!」

「オリハルコンとは。。。」

 ジョージは逡巡することなく、剣を構える。

 その身体と剣からオーラが出始めた。


 そしてジョージは火炎龍ファイヤードラゴンとの攻防に戻っていく。



 僕は、ゲイルの妹サラの治療を考える。

 《世界樹の葉》を使えば良いのだろうが、腹部を貫く鉄筋はどうなるのだろう。

 それを飲み込んだまま傷が治れば、また、それを抜かねばいけない。

 抜いてから治療をするのがいいだろうが。。。僕では彼女を持ち上げられない。

 そして、持ち上げたとしても、その瞬間大出血が起きる。

 《世界樹の葉》と絶命。どちらが先になるのだろう。その時間は一瞬だ。


 サラの状況は秒単位で悪くなる。もう考える時間すらない。


 まずは《世界樹の雫》を気休めだろうが、出血箇所に振りかける。

 小さな傷はみるみる治る。腹部の出血も多少軽減したかに見えた。


「サラーーーー!」

 離れた場所にいたゲイルが到着した。

「良かった。ゲイルさん!!!」

 僕は治療法に糸口が見えてホッとした。


「良くないだろ!!!大丈夫って言ったよな?これは。どう見ても。。。」

 ゲイルの声が続かない。目からは大粒の涙が落ちる。


「サラ????」

 恋人が到着し、動かないサラを見下ろす。

「サラーーーーー!!!!!!」

 一瞬でパニックに陥る。目を見開きサラを揺り動かそうとする。


「ゲイル!!止めろ!!!!」

 僕は怒鳴るようにゲイルに命令する。

 ゲイルは突然の僕の怒号に思考が働くことなく身体だけが動く。パニックの彼氏を羽交い締めにしていた。


「落ち着けよ!時間が無いんだ!助けられなくなるだろ!!」

「うわわわぁぁっぁっぁ。」

 僕が怒鳴っても、彼氏のパニックは続く。邪魔だ。消えるか黙るかしてほしい。

 流石に、僕も我慢ができなくなってきた。


「黙れ!!!!」

 一喝する。


 ようやく静かになる。ゲイルも一緒に固まってしまった。


「時間がないから、良く聞けよ。サラを助けるには、一か八かの掛けに出なくてはいけない。」

 僕の口調がキツくなる。二人は無言で頷く。


「まずサラの鉄筋を抜く。それと同時に僕が治癒をする。お前とゲイルはサラの両側に。タイミングを合わせてサラを持ち上げろ。3人の息が合わなければ、サラは死ぬ。分かったな!!」

 二人の顔色が青ざめていく。失敗は許されないのだ。

 ガチガチに固まっている二人に不安を感じる。


「そんなに緊張してたら、成功するものも、しなくなるだろうが!!二人はとにかくサラを持ち上げる。その事だけを考えてろ!あとは僕がやるんだから!!!」

 喝を入れる。多少は顔つきがまともになった。


「じゃあ、いくぞ。せーの。」

 僕のかけ声で、二人がサラを持ち上げる。瞬間、血が吹き出る。

 サラのお腹の上に乗っていた僕は、間髪入れずに《世界樹の葉》を使う。サラの身体が光に包まれた。

 ボタボタと落ちていた出血は止まり、右胸が元通りにふくらみを取り戻す。

 

 《世界樹の葉》は正常に機能したようだ。一安心だな。


「もう良いよ。そっとサラを降ろして。」

 不思議な光景に目を丸くする二人は、言われるがままの行動を取る。

 サラを瓦礫の無いところまで運び、そっと降ろす。


 サラの顔は土気色から、ピンク色へと戻り、小さな唇は呼吸をするたびに動いた。

 しかし、目を覚まさない。

 だが、いつものように、目を覚まさない事に不安は無く、大丈夫であるという絶対的な自信すらあった。


「もう。大丈夫だから。。。」

 僕はサラの上から降りながら、二人に伝える。

『あ、ありがとうございますぅ。』

 二人が泣きながらひれ伏してくる。

 大切な人間が助かったのだ。気持ちは分かるが、ひれ伏すまではしなくてもいいのだが。。。



 そういえば。。。

 周囲が静かだ。闘いはどうなった。。。


 そう思い、状況を確認する。

 周りを窺うと、戦闘は中断されたようだ。


 ジョージやリリィ、ホセ。5匹の火炎龍ファイヤードラゴン達までがその場で動きを止めている。


 そして、視線は僕に集中しているようだ。。。


 なんでだ?《世界樹の葉》ならジョージ達も知っている。そこまで驚くことではないだろうに。。。


 その答えは意外にもジルからもたらされる。

(あはははは。アル?そりゃみんなも驚くよ。”魔王覇気”上手に使えてたからね。)

(え?いつ?)

(さっき、ちょっとイラついてたよね?パニックの彼氏を止める時に、怒りに任せて出してたよ?)

(マジで?)

(うん。まぁ普通の人間が大丈夫な位の”覇気”だったけど、流石に、君の友達も能力が高いから気付いたみたいだよ?火炎龍ファイヤードラゴンは当たり前だけど、気付くしね。)


 空から降りながら、僕と脳内での会話をしていたジルが、僕の前に降り立つ。

 その横には、大型種とそれに乗る人間が一緒だった。


 そして、驚愕の事実を聞かされることとなる。


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