第53話 ~対面~
僕たちが到着したのは。。。。
ジョージの部屋のバルコニーだった。
「あれ?ジル?どうしてここが。。。」
ピンポイントで到着したことに、僕は驚きを隠せなかった。
「ん?魔王ダルガの記憶の残渣から読み取ったのが、ここだったから。他の場所の方が良かったかな?」
悪い訳がない。王都城下町に着いたら、住民カードが無いし、どうやって王城まで行こうか考えを巡らせていた。
「凄いね。。。ここに来たかったんだ。助かったよ。」
というか、記憶を読み取るって。。。すごいな。
「こっ。ここ。どこですか?」
戦士ゲイルは目を見開き、キョロキョロと建物を確認し、現実が受け入れないようだ。
僕たちが初めてジョージに連れられてきた日を見ているみたいで面白い。
「ジョージの部屋だよ。中に入ろうよ。」
驚きに身を固めてしまっているゲイルを無視して、僕はいつも通りに部屋に入る。
誰もいない。ジョージは出かけているようだ。
「おっ?アルか。おかえり~。ジョージが探しとったで~。」
ホセが、ソファーの上で足を組みおやつを食べて寛いでいる。
相変わらずオウムっぽくない。
「お帰りなさいませ。アルさん。」
奥からハクゼンさんが出てきて、いつも通り丁寧にお辞儀してくれる。
「ただいま。ホセ。ハクゼンさん。」
僕も気心知れた雰囲気に、安らぐ気分だ。
「なんや。お客様も一緒か。早よ言うてくれ。」
ホセが急に姿勢を正す。
「アルの友人のホセと申します。見ての通りのオウムやらしてもらってます。今後ともよろしゅうに。」
何に”よろしく”かは知らないが、ホセが挨拶を済ます。
「オウムが喋った。。。」ゲイルが驚く。
「キャー。なんてかわいい子なの?」シエイラがホセに抱きつく。
「へぇ。モンスターでもないのに、面白いね。」ジルがホセを観察する。
三者三様の行動を、僕はやっと帰ってきたんだと実感が沸き、嬉しさと安心感がこみ上げる。
「さあ。皆様。お茶が入りましたよ。」
ハクゼンさんが、お茶とお菓子をテーブルに並べてくれた。
テーブルには美しい花が飾られて華やかだ。僕たちは着席する。
僕とホセはいつも通り、テーブルの上に。
ジルは普通に。
シエイラは優雅に。
ゲイルは。。。挙動不審だ。
「ゲイル。作法とかないから。誰も気にしないからさ。普通でいいよ?そんなに緊張しないで。」
僕はフォローを入れる。
僕たちがお茶を飲もうとしたその時だった。。。
バッターン!!!勢いよく扉が開けられる。
「アルーーーーーー!!!!!」
ジョージが走り込んできて、僕を抱きしめる。
「良かったー。家出しちゃったかと思ったよ。帰ってきてくれてありがとう。」
頬を摺り寄せてくる。
「置手紙したじゃん。帰ってくるよ。。。てか、ジョージ。お客様だよ?」
僕の冷たい言葉に、怪訝な表情でみんなを見る。
いやいやいや。。。いくら王子様でもさ。ダメだよ。そんな顔しちゃ。。。
と思ったが、そこはジョージ。振り返る一瞬でイケメンスキルを発動する。
「これは、これは。失礼を。私は緑の国の第一王子、ジョージと申します。」
優雅な身のこなしで爽やかに挨拶をする。
「まぁ素敵な方ね。私は、シエイラと申します。」
気付けば、シエイラは額の角を隠し、人に化けている。元人間だ。普通の人間にしか見えない。
「僕はジルだよ?よろしくね。お兄ちゃん。」
あ。正体は隠すんだ。しかも人間の子供という設定らしい。
「自分はゲイルと申します。白の国で戦士をしていました。お目にかかれて光栄です。」
深々と頭を下げる。
放っておけば、ジョージからの質問攻めが来そうなので、こちらから話を切り出す。
「急に知り合いの人と出かけることになって。僕は字が書けないからさ、置手紙してもらったんだけど。。。」
「あぁ。机の上にあったよ。急なことで驚いたよ。」
「ごめんね。それで、出かけた先で、ここにいる皆に助けてもらってさ。ジルは魔法が使えるから、送ってもらったんだ。シエイラさんはマロウさんと知り合いなんだって。ゲイルさんは、国に連絡したいらしくて。。。」
「そうか。。。僕の大切な友人のアルを助けていただき、心より感謝いたします。」
ジョージは丁寧にお辞儀をすると、
「アル。君の恩人に感謝の気持ちを込めて夕食会を開きたいんだが、時間はどうだろうか。。。」
マズイ。今日中に魔界へ帰らないと。。。着任早々、すっぽかしとかシャレにならない。
「あ。ジョージ。。。あのね。。」
僕が慌てていると。
「お兄ちゃん。あのね。アルに僕の村のお手伝いを頼んだんだ。明日の朝早くから、始めてもらうように、村のみんなと約束しちゃったからさ。今日中に帰りたいんだけど。。。」
「そうだったのか。。。無理を言ってごめんね。では日を改めての食事会はどうだい?」
「いいの?何日かしたら、終わるから、そしたらまた遊びに来るね。」
「あぁ。ご馳走を用意しておこう。」
ジョージはジルの頭を撫でた。正体を知らないのは幸せだな。
ジルもかなり演技派だ。昨日の小芝居も中々だった。竜なのに。。。
「でも、君は小さいのに凄いね。移動系の魔法は大人でもできる人間は少ない。。。」
しまった!そうじゃん!流石というのか。。ジョージは鋭い。。この場合は鈍い方が良かったのだが。。。
「うん。僕の家系は魔法が得意だから。一杯練習したよ。」
ジルは無邪気な子供をさらに演じる。
「偉いね。じゃあ、お昼だけでも。その後は、ゲイルさんと、シエイラさんの用事を済ませればいいのかな?」
ジョージの提案にシエイラが困り顔をする。
「私は。。。いいわ。マロウさんと話し込んだら、今日中には帰れないと思いますもの。また、アルちゃんと遊びに来たときにするわ。」
「そうですね。改めて時間を作っていただけるのでしたら、それに越したことはありませんね。その時は、ゆっくり滞在してください。この城内でも、城下町でも、お好きな所に宿を手配いたしますので。」
ジョージは爽やかな笑顔を振りまくと、シエイラの前に屈み、手の甲にキスをしている。
シエイラもまんざらではなさそう。。。
流石、魔王妃と、緑の国の王子だ。遣り取りが自然で、様になりすぎている。
コンコン。
「失礼します。」
リリィが入室する。いつもの凛とした剣士の姿で現れる。
「あぁ。リリィ待ってたよ。」
「あら?アルさん。お帰りなさい。あなたが無事で良かったわ。ジョージの慌てっぷりったら酷くて。。。手に負えなかったの。」
どんな慌て方だったのだろう。。。気になるが、話が長くなりそうだから、スルーしよう。
「リリィ。君を呼んだのはね。。。白の国へ連絡を取りたいんだが、どの方法が良いだろうか君の意見を聞きたくてね。」
「・・・・・???白の国ですか?そうですね。。。連絡がいいのでしょうか?白の国の王都の座標点なら持ってますから、そのまま行けますが。。。連絡となると。。。」
「え?行けるの?なら直接行った方が早くない?」
僕はゲイルを見る。
「え?そんな事ができるんですか?座標点移動魔法なんて、余程の魔法使いか賢者しか・・・。」
今日何度目かな。ゲイルの驚き顔を見るの。。。
「その余程の賢者さんだよ?こう見えて、ものすっごい賢者なんだから。」
僕はリリィを褒め称える。
「リリィ。行くのは問題ないのかい?」
ジョージが確認を取る。
「えぇ。私がここを留守にすることが問題ないのでしたら。」
「ということなんですが、ゲイルさんは、直接行くのと、連絡を入れるのと、どちらを希望されますか?」
ジョージは事も無げに言ってのける。
「祖国には二度と戻れないと覚悟を決めたばかりなんですが。。。行けるのであれば嬉しいです。」
「君は変わっているね。そんな覚悟なんて、しなくても良いだろうに。」
ジョージはサラッと、アドバイスをする。。。魔界での事の成り行きを知らないので仕方ないだろう。
「ねぇ。ジョージ。白の国に行くんなら、僕も行きたいけど。。。ダメかな?」
僕はお願いをしてみる。
「アルも行きたいのかい?それなら、僕も行くしかないな。。。」
ジョージが行く気になっている。
「もちろん僕も行くよ。」
ジルは当たり前のように言う。
「ふふっ。私の部屋からの景色と、白の国の景色。。。比べるのが楽しみね。」
シエイラも来るようだ。
「俺もな~。行きたいんやけどな~。寒いの苦手やし。アルはジョージのポケットがあってええな~。」
ホセはリリィをロックオンしている。
「はぁ~。いつも通り、移動中は私の上着の中でもいいですよ。ただし、前みたいに、ヨダレは垂らさないで!」
リリィがホセを睨み付けながらOKを出す。
「おおきに~。」
「ハクゼン。夜までには戻るから、留守の間、『サクラ』を頼むよ。」
「はい。かしこまりました。」
「全員で出掛けるのであれば、向こうでお昼を食べてもいいね。」
ジョージがふと呟く。
「うんうん。僕行きたい。」
手を挙げたいところだが、あいにく無いので、ジャンプして答えた。
「ゲイルさん。良いお店ご存じないですか?味重視で。。。周辺の治安やらお金やらは何とでもしますから。とにかく美味しいお店をお願いしたいんですが。」
ジョージはとんでもなくワガママを言い出していた。
「あ。そうですね。。。あっそこはダメだな。。あいつらと行ってたからな。。。う~ん。となると。。。」
ゲイルが腕を組み、目を瞑り、首を傾げながら、ブツブツと独り言を呟いている。
まぁ。いきなりの見ず知らずの国の王子からの無茶ぶり。。。
そして、独り言の内容から察するに、仲間と行ってた所は敬遠したいのだろう。
皆もういないのだから。。。
「あの~。ホントに、本当に庶民な店でもいいんですかね?自分は高級店とは馴染みがないですし。下町のさらに下町っていうレベルの店になってしまうんですが。。。」
ゲイルは申し訳なさそうに答えを捻り出していた。
「あぁ。そういう店がいいね!!あっと、でもシエイラさんとジル君はどうかな?苦手ならば、他を探すんですが。。。」
ジョージはお忍びが基本なので、楽しそうだ。一応二人の希望も汲むようだ。
「ふふっ。私も良いわよ?生まれ育ったのは小さな小さな村だったもの。昔を思い出せて楽しそうだわ。」
「僕も良いよ?好き嫌いは無いから。楽しみだな。」
シエイラも、ジルも。特に問題はなさそうだ。むしろ楽しそうだ。
「では、僕は一旦、軍へ午後休みの報告に行ってくるよ。大して時間はかからないから、少し待ってて。」
ジョージがいつものように僕の頭を撫でて、小走りに部屋を出て行った。
僕たちはしばし、お茶の続きをすることとなった。
ハクゼンさんが新しいお茶を準備している。
「ちょっと。アル。『サクラ』の様子を見に来てほしいんや。」
ホセに呼ばれて、僕はベッドへ向かう。
「おい。アル。これはどういう事や。」
なぜか、ホセがボソボソと小さな声で話し始める。
心当たりがない。
「うん?何が?」
「何が?やあらへんやろ。あのジルって子供。何者や。とんでもない何かを醸し出してるやないか。。。鳥の第六感やけども。。。」
(鋭いな!しかもカンかよ。)
「その件に関しては、私も混ぜて頂きたいわ。あの子、本当に子供なの?感じたこともないオーラなんだけど。。。」
流石、賢者のリリィ。
(マズイな。。。どうやって切り抜けようか。。。)
「ごめんね。お姉ちゃん。アルがスライムだから大丈夫だと思って付いて来ちゃったんだけど。。。」
リリィの服の裾をひっぱりながら、ジルが泣きそうに言う。
完全に気配を殺してきた。ある意味コワイ。。。
「あのね。僕ね。魔物の血が混ざってるの。。。だから、僕は純粋な人間より、少し寿命が長いみたいで。。。普通の子より、成長が遅いんだ。。。魔法が得意な理由もそれだよ。生まれつき魔力が強いんだ。。。このことはね、絶対に人に言っちゃいけないって言われてるから。。。秘密にして欲しいんだ。。。」
ずっとリリィを見つめ訴えかけ、最後には泣きそうに顔を俯け、消え入るように話を終える。
なんちゅうコワザを使うんだ。竜だろ!人気子役バリの演技力だよ!!
「そうなの。。。そうとも知らずにごめんなさい。私しか気付いていないみたいだから。。。もう言わないわ。ホセもいいわよね?」
「もちろんや。誰しも言えない事の一つや二つあるもんや。悪かったな。」
「ありがとう。。。」
ジルが天使のようなキラッキラの笑顔を出す。
(子役なら完璧だな。てか、どんだけキャラ設定作り込んでるんだろう?)
(あははは。褒めてもらえて光栄だな。)
脳内にジルが入り込む。
(もうびっくりしたよ。一万年以上封印されてた竜のくせに、人間に詳しすぎだよ。)
僕は素直な感想を言う。
(あぁ。こないだの自称勇者ご一行。。。ちょっと食べちゃっててさ。その時にちょっぴり記憶もね。いただいてたってワケ。いや~役に立って良かったよ。あはははは。)
人間からしてみたら、かなり重い衝撃告白をチョー軽くあっさり言ってのける。。。そこは竜なんだろうな。。。
そうして、僕たちはジョージの戻りを待っていた。。。




