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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=魔王城編=
48/322

第48話  ~闘いの行方~


「魔法だけでは勝てぬな。」

 そして、魔王は懐から、銀の懐中時計を出した。

 美しいレリーフ。周囲には5つのダイヤモンド。中央には深い碧の宝石が輝く。


 どこかで見たような。。。



 その懐中時計に向かって、

「出でよ。アルム!!」


 魔王が叫ぶと、懐中時計が碧い光とともに、大きな剣へと変貌する。


(なにー?懐中時計が?)


 そしてハタと思い出す。『サクラ』を見つけた日の事を。。。

 拾ったよ。似てるやつ。だが、宝石の色が違うな。。。



「本来は余の武器ではないがな。オリハルコンは勇者が持つべきものじゃ。」

「えぇ?それオリハルコンっすか?じゃ。やっぱこれは違うな。」

 僕は頬袋から口半分まで取り出しかけていた懐中時計をしまいかける。

 

 魔王の目の色が変わる。

「ちょっと待て。アルよ。それは懐中時計か?中央の石は深い紅色をしてはいないか?」

 ほとんど口の中に入った懐中時計は、魔王からは全体像が見えなくなっていた。


「そうなんですよ。魔王さまのみたいに碧くなくて。似てるなーと思ったんですけど。拾ったヤツだし。コピー品ですかね。」

 そう言って、僕はしまいかけた懐中時計をペッと吐き出す。


「これは。。。アルよ、暫し借りても良いか?」

「え?えぇ。どうぞ。」


(偽物なんか、どうするんだろう?)


 不思議に思って見ていると、

「本物であってほしいな。。。出でよ。プロテクシオン!!!」


 懐中時計から紅い光が放たれる。

 見る間に魔王が鎧を纏っていく。。。


「こんなことがあるのか。。。」

 魔王自身が驚いている。


 いや。。。僕も驚いてるよ。拾った懐中時計がオリハルコンの防具って。ありえない。。。

 『サクラ』の断片的な記憶の中には懐中時計についてはなかった。

 となると、ホントに落とし物?誰が?興味は尽きないが、今は古代竜に集中しなくては。。。



「アル。そなたは何者なのだ?まるで神の使いであるな。魔王に堕ちたこの身にすら、恩寵を与える。。。心優しきスライムに誓おう。余は、この闘いに身命を賭すと。」



 カシャン。

 魔王は大剣を八双に構え、古代竜に向かって大地を蹴った。


 古代竜の右肩へ向かった刃はその鱗に当たると金属同士が擦れ合うような音がする。

「そこら辺のドラゴンとは比べものにならない堅さであるな。」

 魔王は不適な笑みを浮かべる。

「それでこそ古代竜よの。」


 古代竜は攻撃により、魔王に気付く。


 グハァァァーーー。

 巨大な焔を魔王に向かって吐き出す。


 脇構えをとった魔王は炎を避けるでなく、その場で剣を切り上げる。炎はその剣圧により、真っ二つに裂けた。

 二つに分かれた炎は遙か後方に落ち地響きをたてる。

 

 フゥゥゥーーーー。

 今度は凍える息を吐く。


 上段に構えられた刃は、縦に振り下ろすとそのまま流れるように下から切り上げ、続けざまに凍てつくクウを薙ぐ。縦横無尽に吹雪の中に走る剣はまるで生きているかのようだ。



 魔王の闘志に呼応しているのだろうか。鎧が僅かばかり光を帯びてきた。



 ガァァァァァッァ。

 空を見上げ咆哮すると雷鳴が轟く。

 魔王は片手で剣を天に突き上げた。天を割るかの様な電光が魔王へと向かう。

 その稲妻は銀の刃へと吸い込まれるように落ちた。


 鎧の左肩のあたりに潜んでいた僕はギュッと目を瞑り、死を覚悟する。

 金属の塊に雷だ。ただでは済まない。。。

 だが、衝撃はこなかった。目を開けると、剣が雷の光を蓄えている。


 その雷を蓄えたまま、魔王は古代竜の攻撃をかい潜り、背中に乗ると、その剣を突き刺した。


 グギャァッァアァァ!!!


 魔王は一つ深呼吸して息を整える。

「これは効くらしいな。」

 ボソッと呟く。


 ここまでの攻撃をしていながら、魔王の息は乱れていない。どれだけの体力・魔力・集中力を持っているのだろう。火傷は未だに癒えていないのに。



 魔王は剣を突き刺したまま、その柄尻に手を翳すと魔法陣が光る。


炎撃爆発フラムエクスプローション!!」


 その言葉とともに、魔法陣はオリハルコンの大剣に吸い込まれ、刹那、古代竜の内部から爆発が起こり、剣傷跡から炎が吹き上がる。



 だが、有効打とはいえ、古代竜に与えるダメージはその巨体ゆえ小さい。


 古代竜は背中の異物を振り落とそうと身体を激しく揺らす。


 ウオォォォォォ!!!

 突き刺した大剣をさらに奥深くねじ込み、魔王は柄にしがみつく。

氷結華ライムコンジェラシオン!!」

 

 剣が凍てつき、竜の内部から凍っていく。。。

 剣傷穴から氷の結晶が溢れ出し、古代竜の背中に流れ出す。

 結晶は成長し、竜肌の紫色を透かして、まるで薄紅色の花畑のように広がっていく。


溶岩嵐ラーヴテンペスト!!!」

 魔王は間髪入れずに唱える。


 渦巻くマグマが古代竜を襲う。

 氷との温度差、渦の動きにより、竜の背中には大きな穴が開いた。


 穴からはマグマが流れ出し、氷の結晶を割り進む。

 急速に冷え、溶岩が固まる。古代竜が身をよじると、冷え固まった溶岩とともに、頑強な鱗が剥がれ落ちていく。


「まだだっ!!!凍稲妻ライトニンググラセ!!!」


 魔王はもう一度、逆属性を使う。

 氷によって凍てついた身体をマグマによって焼き、さらに凍てつかせる。

 その氷中には稲妻が走り、爆発的な電撃が古代竜を襲う。

 鱗が剥がれた皮膚は凍り、さらに稲妻の爆発により、破壊されていった。



 グッ。グルゥゥゥゥゥ。

 古代竜が大人しくなる。


「よし。五芒星で封印がなるか分からぬが、やるだけやってみるか。」

 魔王が手を握り、再び開くと、小さな5色の宝王玉オーブが現れる。


「魔王さま?五芒星じゃダメなの?それなら六芒星を使えばいいじゃん。」

 素直に疑問を投げかける。確か魔王が使っていた攻撃魔法の魔法陣は六芒星だった。。。

 僕に違いなど分からない。



「アルよ。《封印には宝王玉オーブ》と先の戦士は言っておったな。それは正しい。だが、その先がある。五芒星はエネルギーの安定を。六芒星はエネルギーの強化を。それぞれもたらすのじゃ。」

「うん。」


「これほどの力を持った古代竜には、六芒星で封印を行ったであろうな。もしくは多重封印か。それをあのものどもは五芒星で解除しようとした。だから、中途半端な解除となったと思われる。」

「うん。うん。」


「余も六芒星で行いたい。が、それは無理である。封印魔法陣には、星のそれぞれの頂点に、宝王玉オーブをはめ込まなくてはならない。同じ色では成功しない。手元には五色しか無いのだ。仕方あるまい。」

 魔王が肩を落とす。。。


 宝王玉オーブにそんな使い道もあったのか。。。

 世界を救う為だ。迷う所じゃない。


「魔王さま。あと1つは、黄宝王玉イエローオーブって事ですよね?」

「あぁ。だが、あれは地上にある。取りに行く時間はない。」


「魔王さま。案外後ろ向きっすね。運が逃げますよ!封印を成功させなきゃ。前向きにいきましょうよ!!!」

 暗い雰囲気と色んな事を有耶無耶にするため、テンション高くその場の雰囲気にそぐわない軽い感じで言ってみる。。。

 

「ジャーン!!!」

 黄宝王玉イエローオーブを取り出した。


「はぁぁーーーー。」

 魔王が大きなため息をつく。


(え?なんで?ここは喜ぶべきところじゃないの?やっぱり黄宝王玉イエローオーブを隠してたのを怒ってる?)

 僕は戸惑ってしまう。


「アルよ。そなたは本当に何者なのであろうな?世界樹に愛され、世に二つとないアイテムを事も無げにいくつも手に入れる。その恩恵を躊躇うことなく他者の為と、惜しみなく差し出す。神使なのであろうか?」


「そっそんな大それた。。。ただの運が良いスライムですって。。。」



「ふふっ。そうだな。何者であろうと、アルはアルだな。。。では始めるとしよう。」



 魔王は古代竜の背中から飛び降り、地面に跪き手を置く。彼の身体からオーラが漂い始めた。


 詠唱を始めると、古代竜の下に魔法陣が描かれ始める。


 ボトッボトッ。

「魔王さま。傷口が。。。」

 火傷の傷が開き、流血を始める。


「構うな。全魔力を使い切る予定なのじゃ。多少の事は目を瞑れ。もしもの時はそなたがいてくれるのであろう?」

 迷い無いその目に、僕は何も言えなくなった。

 これでは、魔力も体力も使い切ってしまう。。。死を覚悟しているのだろう。。。

 ただ頷く。。。僕にはそれが精一杯だった。


 魔王はその魔法陣の星の頂点へ宝王玉オーブを填めていく。


 一つ埋める毎に魔法陣の光が強くなる。

 赤を埋めれば、赤い光が。。。翠を填めれば、翠の光が。


 魔王は巨大な魔法陣を詠唱しながら駆け、一つずつ丁寧に術を施す。


 一周して最後の頂点となった。


「はぁっはぁっ。」

 魔王が肩で息をしている。汗が止めどもなく流れ落ちる。

 後ろを振り返れば、魔王が駆けてきた魔法陣に沿うように、血痕が落ちている。

 まるで魔法陣の外周を二重書きしたようだ。


「魔王さまっ。」

「どうした?まだ術は始まってもおらぬ。まぁ見ておれ。」


「本当に良いのだな?」

「うん。」

 魔王は黄宝王玉イエローオーブを手に取り、確認をする。

 最後の宝王玉オーブを填め込んだ。


 変化は劇的であった。


 宝王玉オーブを頂点として六色の花びらが形成され、立ち上がっていく。

 それをきっかけに次々を下から花びらが生まれていく。

 中心部の大きな花托は檻となり、古代竜を飲み込む。


 蓮の花が出来上がっていくのだ。。。


 立ち上がった宝王玉オーブの花びらは六芒星を保ったまま、蕾へと戻っていく。。。



 古代竜は封印に抗うように暴れ狂っている。



 詠唱を続ける魔王からの出血と汗は夥しい量となっていた。息づかいも荒い。


「魔王さま。。。これ以上は。。。」

 僕は心配になったが、言葉を続けられない。


 これ以上封印の術を続ければ、魔王の命が危ない。

 ここで封印の術を止めれば、世界が危ない。

 感情を無視するならば、後者を選ぶべきなのだ。だが。。。

 

 

「何を心配しておる?迷うことは何もないであろう?」


 魔王は僕の心を読み取っていた。。。


「知っておる。余に知られぬように、《世界樹の葉》の欠片を試していたな。効かなかったのであろう?それだけ古代竜の力は凌駕しているということだ。余は命に代えてでも、封印の術を施す。」


 ウォォォォォォォ!!!!

 魔王の咆哮とともに封印は佳境へと入る。

 

 蓮の花とともに、古代竜が地面に飲み込まれていくのだ。


 グギャァァァァッァ!!!!

 古代竜が最後の力とばかりにオーラを放出し、暴れる。


「マズイッ。」

 古代竜を飲み込んでいる蓮の花びらから、古代竜のオーラが溢れ出してくる。


 魔王が魔法陣に駆け寄っていく。


 術を力尽くで形成している魔王の傷口からは血が吹き出る。

「何とか持ち堪えてくれ。。。」

 振り絞るような声だった。


 グガガガガァァァ!!!!

 蓮の花びら越しに古代竜の目が光った。次の瞬間。。。


 バクンっ。

 古代竜が魔王の腕を肩口から噛み千切った。


「くそっ。ここまでか。。。」


 魔王がその場に崩れ落ちた。。。


「まおうさまぁっぁぁぁ!!!」


 僕は噛み千切られた腕とともに古代竜に飲み込まれていった。


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