表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=魔王城編=
47/322

第47話  ~魔王VS古代竜~

微グロ表現ありです。

苦手な方は次話までお待ちください。

 炎の渦を突き抜け、雷雨を潜り抜け、古代竜の姿がようやく見えて来た。


 魔王はスピードを落とす。

 下を見れば、壊滅的な村があった。生き残りがいるとは思えない惨状だ。


「なんとも惨い。一人でも生きていてくれると良いのだが。。。」

 魔王の悲痛な叫びが聞こえてきた。


 僕たちにできることは、古代竜を鎮めることだけだ。

 魔王は一瞬の逡巡の後、古代竜を目指す。



 眼下で何かが光った。。。動いている。

「魔王さま、あそこ、なにかいるみたいですよ。」


 近づくと、鎧を着た、戦士だった。

「大丈夫ですか?」

 僕が駆け寄ると、意識朦朧としている戦士がこちらを向く。

 魔王が回復魔法を試みるも、効果がほとんどない。

「やはり、古代竜による傷だな。余の魔力では古代竜の力を超えることが出来ぬ。ということだろう。」


「聞こえますか?何があったんですか?」

 僕は相手の意識が遠くならないよう、大声で話しかける。


「俺たちは、あんな化け物を呼び起こすつもりはなかったんだ。。。」



 その戦士の話を聞くことにした。


 戦士は他4名でパーティーを組んでいたそうだ。


 永久凍土・吹雪吹きすさぶ『白の国』で、彼らはモンスター討伐などで名を馳せ、勇者一行と呼ばれるまでに成長した。

 そこで、国で一番の長老と話をする機会があった。

 長老は人間でありながら、150歳をゆうに超えていた。


 長老は、魔界に行ったことがあるという。

 そこで過ごした数年で、ある噂を耳にしたそうだ。


『魔界の辺境にオリハルコンの武具が封印されている』と。


 オリハルコンと言えば伝説の金属。

 それで作られた武具は勇者の為のみに存在し、その力を増幅させるという。


 (自称)勇者一行は、こう考えた。


 最後に伝記に残る勇者は2000年前のアルフォン。

 それを境に魔王の隆盛も聞かない。


 力を失った魔王。しばらくは人間たちも安心だろう。

 だがしかし、魔王が再び力を盛り返す時。

 それは、次に真の勇者が現れる時。オリハルコンの武具によって絶対的な力を得るはずだ。

 オリハルコンの武具は諸刃の剣。世間に流出すれば、それを巡る戦いが起きることを危惧して、持ち主を選別するために、封印したのではないか。と。


 真実とは全く異なる答えを導き出す。


 自分たちこそが、真の勇者であると錯覚し、魔界に足を踏み入れる。長老から大まかな位置を聞いており、さして迷うことなく封印の地まで赴くことができた。


 『白の国』でまことしやかに囁かれていた≪封印には宝王玉オーブを使用する≫の言葉を信じ、5色の宝王玉オーブを持っていく。


 伝説では7色あると言われているが、6色目も7色目も発見されていない。

 5色でも、ある程度の封印が解除されれば、あとは何とかなるだろう。

 安直に考えた。

 


 封印の地に着くと、石碑がある。消えかけた魔族の文字が彫り込まれており、意味は理解できない。

 しかしその風化が封印の年月を物語っているようだった。


 彼らは自分たちの思い込みが間違っているとは思わずに宝王玉オーブを使用する。

 

 彼らを中心に、大地に見たこともないほどの大きな魔法陣が浮かび上がった。

 魔法使いと賢者がその危険性にいち早く気付き、後ろに飛び退く。

 勇者と盗賊シーフは魔法陣から浮かび上がった影に飲み込まれた。

 戦士は見張りの為、後方にいて助かった。


 封印されていた者が姿を現すと、その場は一瞬で阿鼻叫喚と化す。


 目覚めたのは武具などではなく、馬鹿でかい龍。。。

 その口には、先程まで、一緒にいた勇者と盗賊シーフが引っかかっている。

 

 勇者は下半身を食いちぎられており、見開いたその眼に生気はない。

 盗賊シーフは頭から食われたのだろうか、足だけが見えている。


 賢者と魔法使いは泣き叫びながら何かをしようとしているが、最早パニックに陥っているのは明らかだ。

 助かる見込みなどない。


 少し離れた戦士だけが、冷静に判断をする。逃げなければ。。。


 仲間の断末魔の叫びを後ろに聞きながら、戦士はひたすら走った。


 龍が一声咆哮すれば嵐が起こり、唸りを上げれば大地が割れマグマが流れ出す。

 息を吹けば吹雪となり、上を見上げれば雷が轟く。


 天変地異がとめどもなく押し寄せる。


 戦士は振り返ることなく走り続けた。。。

 背中が焼けたと思えば、次の瞬間には背中が凍る。顔には激しく雨が打ち付け、体力を奪う。

 耳をつんざくほどの雷鳴で、周囲の音が聞こえない。


 朦朧とする意識の中で、突然静けさが訪れた。

 フラフラとしながら、後ろを振り返ると、龍が魔法陣から抜け出そうともがいている。


 龍は半身だけしか封印解除されていないようだ。やはり5色では足りなかった。

 しかし、事は幸いする。龍が抜け出せないのであれば、逃げる事ができるかもしれない。

 血だらけの身体を引き摺りながら、あと一歩と足を運ぶ。


 薄れゆく意識の中で最後に見た光景は。。。

 怒り狂った龍が、巨大な火球を吐く姿だった。確かあの方向には小さな村があったはすだ。

 だが最早、死にかけた戦士に、その村を心配する余裕も、懺悔の念も沸いてはこなかった。



「なんと愚かな。。。」

 話を聞き終え、魔王が目を閉じる。


「しかし、完全なる封印解除でないのであれば、余が再び封印することもできるやもしれぬな。。。可能性は低いが。。。」

 魔王は大きく息を吸い込む。そして。。。


「よし、行くぞ!これ以上、誰も死なせはせぬ!」

 その目は覚悟を決め、魔王の確固たる信念を感じさせた。


(まるで、この人が勇者のようだ。)


 僕は魔王の肩に乗る。

「サポートは任せてください!」


 スライムの身体でどこまでやれるのかは分からない。だが、何もしないで後悔するより、何かして後悔したい。願わくば、全てが上手く行くことだが。。。


 魔王と僕は目を合わせ、無言で頷き合う。これが出発の合図となった。



 魔王は古代竜の背後から近づく。


 古代竜は禍々しい紫色の身体をしていた。

 そしてその巨体。。。スライムの僕から見たら、象とアリ。いや。それ以上の差があるかも。。。


 銀狼シルバーウルフの時とは比較にならない恐怖心。。。

 あの時も死地へ赴く戦士の気分だった。


 だが、今回は重圧ものしかかる。

 僕たちが失敗すれば、魔界が壊滅する。もしかすると、そのまま人間界まで滅ぼされる可能性があるのだ。何としてでも食い止めなくてはならない。。。


 その思いが聞こえてしまったのだろうか。。。

 魔王が気を練りながら、

「アルよ。余が倒され、魔界が破壊されるような事態に陥った場合には、人間界へ戻り、魔界ごと封印をするのじゃ。」

「え?そんな事できませんよ。」


「人間界にも被害が出るやもしれぬ。それが一番確実じゃ。なに心配することはない。魔界の種族が絶滅しても、人間界にもモンスターたちがおる。いずれ魔界を再興するであろう。魔族はしぶといからの。」

 力ない笑顔を作り、魔王は僕を見た。


「それでも、魔界ごと封印なんて。そんな力もありません。」

 現実的に無理だろう。


「アルよ。あの国には世界樹もある。そして、迷宮管理人もいる。もしもの時は、その男を探し出せ。」

「マロウさんのこと?」


「知っておるのか?ならば話は早い。あの男の元に、6つ目の宝王玉オーブがある。黄色い玉じゃ。そなたであれば、黄宝王玉イエローオーブも主と認めよう。」


 それ、持ってるな。。。しかも今ここに。。。

 出すべきか出さざるべきか。。。


 悩んでいる間に魔王が攻撃を開始した。



 天に向かって手を広げると、空を覆いつくさんとばかりに巨大な魔法陣が出現する。

 そして、魔王が指を合わせ菱形を作ると、その魔法陣が檻へと変貌する。


 魔王は大きく息を吸い込むと、体中の力を使って、檻を投げ落とした。


 我を忘れている古代竜は、魔王に気付くことなく、檻に捕らえられた。


 グギャギャギャギャーーーーー!!!!!


 古代竜がもがくと檻は締め上げるように小さくなる。


 魔王は構わず、次の技に移っている。

 出現させた魔法陣を今度は引き延ばすと、それは巨大な弓矢となった。


 放たれた矢は、古代竜に突き刺さる。

 鏃から、爆発が起こり、連鎖するように矢の全体から焔が上がる。


 グルギャ-----!!!!!

 内部から焼かれた古代竜はさらに暴れ、檻を食いちぎろうとしている。


「まずいな。」

 魔王は呟く。

 今度は小さな魔法陣が無数に空に浮かび上がる。

 一つ一つがダガーへと姿を変え、魔王が空に向けた両手で弧を描くとダガーがトルネードとなる。


 そのまま振り下ろされた腕の動きそのままに、トルネードダガーの雨が古代竜を襲う。


 無数のダガーが突き刺さった古代竜が静かになる。


 やったか。と思った次の瞬間、古代竜の身体が光を帯びる。

 異常に気付いた魔王が僕を抱きかかえ、前屈み半身に身構えた時だった。


 古代竜を中心として大爆発が起き、僕たちは爆風に吹き飛ばされた。


 

「う。うぅ。」

 僕は魔王の腕の中から這い出る。


「魔王さま。魔王さま。」

 ぐったりと横たわる魔王に声をかけるが、返事がない。

 小さな体で腕もなく、魔王の身体を揺さぶることもできない自分がもどかしく感じた。


 何度か呼び掛ける。 

「んん。アルか。」

 魔王が薄く目を開けた。

(良かった。)と僕が口を開く前に、

「無事であったか?怪我はないか?」

 と矢継ぎ早に質問される。


「大丈夫です。」

 その答えに安心したかのように頷き、魔王が立ち上がる。


「っっっ!!!魔王さまっ!!!」


 立ち上がった魔王の半身が焼け爛れていた。古代竜側の半身だ。

 あの爆風をまともに受けたのだ。

 火傷であるにもかかわらず、出血もかなりしている。


 僕は慌てて≪世界樹の葉≫を取り出そうとした。

「アル。まだ使う時ではない。これくらいの傷、魔族であれば大したことはない。」


 魔王はそう言っているが、魔族特有の超回復が起きる様子がない。

 確か、戦士の傷を治したときに言っていた。古代竜の力を超えないと魔法が効かないと。


「≪世界樹の葉≫がダメなら、これを。」

 僕は、魔王の返事も聞かずに、≪世界樹の雫≫ぶっかける。


「うっ。何をする。」

 顔に水がまともにかかり、魔王が顔をしかめて僕を見る。


「魔王さまの返事を待ってたら、僕の出番がないんで!」

「ふふっ。そなたらしいな。」


「ホントは≪世界樹の雫≫ぶっかけるのは、勿体ないんですよ。無駄がでますから。次回からはおとなしく言うこときいてくださいね。」

「そうであるな。」

 ふふっ。と魔王が笑った。


 ただれた皮膚からの出血は止まったようだ。傷口は生々しいが、魔王はそれを気にする様子はない。



 古代竜へ目を向けると、檻は無くなっていた。

 未だ半身は封印されているものの、先ほどまでのダメージが無いかのように暴れていた。



「振り出しに戻ったな。」

 魔王が呟く。。。その声は心なしか力なく聞こえた。


 なまじ攻撃をしてしまった為に、古代竜の怒りに火を注ぐ形となり、こちらは魔王が負傷してしまった。

 魔王とて、無尽蔵に魔力が続くかも分からない。

 ”振り出し”どころではない。状況は悪化していた。



 

 僅かな勝機さえも闇に飲まれていく。。。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございました。 小説家になろう 勝手にランキング ↑参加してみました。 クリックで応援していただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ