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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=魔王城編=
46/322

第46話  ~古代竜の目覚め~

思いの外、遅くなってしまいました。

いつもの時間にinしていただいた皆様すみませんでした。


 長い髪。柔らかい肌の感触。心地いいベッド。。。

 僕はいつものように、『サクラ』にすり寄る。


「ふふっ。可愛らしいのね。」

 柔らかく、滑らかな指が僕を撫でる。


(ん?誰の声だ?)


「アルよ。いくらスライムだからといっても、それは羨ま・・・オホン。。ダメであるぞ。」


 その声で、一気に目が覚める。

「っっっ!!!!!」

 僕は壁際まで飛び退く。


「もう。あなたが怖がらせるから。。。驚いてるじゃない。」

 美しい女性が魔王を叱る。

 この状況。この場合。この人は。。。お妃さまだよな。。。。


「ホントすいません。マジで。あの。寝ぼけてました。ごめんなさい。えっーと。。。」

 とりあえず謝る。これ以上壁にくっつけない程、退きながら、とにかく謝る。


「あら?いいのよ?悪いのはあの人なんだから。さぁ怖くないわ。こっちへ来てちょうだい。」

 優しい声で僕に手を差し伸べる。


「さぁ大丈夫よ?」

 その手はもう僕に触るほど迫っている。

 お妃さまの手に乗るべきか、乗らざるべきか。。。魔王をチラっと見る。


 目ぇ逸らした~。なんで?なんでだよ?ダメなのか?乗っちゃダメなのか?

 もうこうなったら直接聞くしかない。


(魔王さま。魔王さま。聞こえますか?どうしたらいいですかね~。。。)

(良い。妃の望みじゃ。許す。)


 え?なんで?ちょっとふて腐れてるんですけどぉ。

 まぁ、いいか。許しも得たので。。。


 そっとお妃さまの手へ移る。


「まぁ。なんて愛らしいのかしら。かわいいわ~~~。」

 お妃さまが僕を抱きしめる。

 

 ”抱きしめる”と必然的に行きつく場所は。。。そう、胸元だ。

 お妃さまの胸に挟まるような位置に僕がいる。。。


 これはマズイ。。。。絶対にダメなやつ。。。

 恐る恐る魔王を見ると。。


 ジト目でこっちを見ている。


(魔王さま?誤解しないでくださいよ?僕の意思じゃないんで。たまたまなんで。)

 違うから、と首を振ったのがいけなかった。。。


「ふふっ。くすぐったいわ。」


 あ~!!しまった~~~!!!!つい人間の頃の癖で、首を振ったら、まるで僕が胸に身体を擦り付けるようになってしまってる。

 決して違う。ワザとじゃない。顔は魔王様の方を向いてるから。。。。 

 

 そんな僕の心の叫びは魔王には聞こえるはずもなく。。。

 ムッとした顔の魔王につままれる結果となった。


「アルよ。いかにそなたでも、許せぬぞ。」

「ダルガ?ヤキモチを焼いてくれるのは嬉しいけれど、こんな小さな子に嫉妬するなんてみっともないわよ?」


「いや。しかしだな。シエイラ。。。」

 魔王が口ごもる。

「いやもしかしもないのよ?ねぇ?」


 ねぇ?って。僕に同意を求めないで欲しい。。。

 これ以上、魔王に目の敵にされたくないんですけど。


 そうだ!ここはひとつ、ホセやジョージを見習って。。。

「魔王さま。お妃さまってすっごく綺麗な方ですね~。」


「ふむ。」

 まんざらでもなさそうな反応だ。


「眠っている姿もお綺麗でしたけど。。。目覚めたお妃さまの、吸い込まれるような碧い瞳。絹のように蕩ける髪。楽器を奏でているかのような美しい声。まるで透き通るような肌。。。正直、僕、こんな綺麗な女の人、初めて見ましたよ~~~。」


「そ。そうであるか?アルにも分かるか。。。余も常にそう思っている。自慢の妻なのだ。」

 ハッキリと自慢してきた。そして機嫌が直ってる。良かった。

 その横で、「まぁ嬉しいわ。」と頬を両手で抑え、顔を真っ赤にしたお妃さまがいた。


 とりあえず、危機は脱したな。

 ジョージやホセの、チャラい適当な言動が役立つ日がくるとは。。。



 僕たちは朝食を摂ることにする。身支度を整えたお妃さまがきた。


 「うわ~。素敵ですね~。」

 感嘆の声が出る。


 深紅のドレスを纏った姿が、とても艶やかだ。

 額から覗く薄紅色の小さな角と、鮮やかな赤い爪によく似合っている。

 ワンショルダーのシンプルなデザインながら、肩には大きな赤い薔薇の花があしらわれていた。

 透き通るような白い肌と、波打つ金の髪が深紅のドレスに映え、匂いたつような美しさであった。。。



 朝食を摂りながら、自己紹介をする。

「ご挨拶が遅くなりましたが、僕はブルートスライムのアルといいます。」

 ペコリと頭を下げる。


「私はダルガの妻のシエイラよ。よろしね。アルちゃん。」


(う~ん。どちらかと言うと、”ちゃん”じゃなくて”君”なんだけどなぁ。訂正するべきかなぁ。)

(アルよ。そこは触れなくて良い。指摘をしたところで、シエイラは変わらぬ。自分の気に入ったものは”ちゃん”付けで呼ぶのじゃ。)


 魔王が妃に聞こえないよう、心に語りかけてくる。


「ねぇ。アルちゃんは、おうちはどこなの?」

「僕ですか?えーと。家ですよね?今は友人の家にいますが。。。」


「そうなの?それなら、ここをあなたのおうちにしてはどうかしら?私、あなたをとっても気に入ってしまったの。」

 お妃様は、良い考えが浮かんだ。といった表情で提案してくる。


「シエイラよ。アルにもいろいろある。急に誘っても困るであろう?」

 魔王が慌てて止めに入った。


「この前のユニコーンはどうしたのじゃ?桃色が良いといって、色まで変えたではないか?」

「ちゃんと、お庭にいるわ。でもね。この子は特別なのよ。初めて会ったはずなのに、触れただけで癒されるというか。安心できるというか。懐かしいような。。。ずっと一緒にいたいの。」


「お妃さま。それは、僕にかかってる”聖なる加護”の力らしいんで。それが無くなったら、ただのスライムなんで。」

 諦めてほしい。魔王ひとりでも困惑しているというのに。さらにお妃様まで。。。無理だよ。

 でも、僕もお妃様と初対面のような気がしないな。。。


「でもおかしいわ。”聖なる加護”であれば、魔族の私が癒されるはずないですもの。」

「それもそうであるな。出会ったときから余も同じような感覚を持っていたのだが。。。」


「ちょっと詳しくは僕も分からないんですが、聖と魔の力の件でしたら、魔王様から預かった魔宝玉が、どうやら僕と融合してしまったようで。たぶんそれで、癒されてるのかもしれないです。」



 ガタンッ。

 魔王が立ち上がり、「ん?マズイな。。。」と小さく呟く。


「席を外す。シエイラよ。余が戻るまで、藍玉の間にて過ごせ。」

 その眼は魔界を統べる王の目であった。


「藍玉の間。ですか。。。」

 妃の声が曇る。

「そこがどうかしたんですか?」

「万が一の時の部屋よ。安全を守るための。。。何が起きたのかしら。。。」 




 バターン。勢いよく扉が開く。

「申し上げます。古代竜の封印が解けた模様。近くの村に被害が出ています!!」

 ガーゴイルが息を切らしながら、飛び込んできた。

「状況を報告せよ。」


 その逼迫した状況にその場で報告がなされる。



 --古代竜とは、現在の龍族の始祖である。今では、龍の属性は一匹一属性がほとんどで、火属性であれば、火炎龍ファイアードラゴン。地属性であれば土壁龍ウォールドラゴン。雷属性であれば雷龍サンダードラゴンといった具合だ。


 古代竜はその全ての属性を持っていたと伝承されている。

 大地に豊穣な恵みを与え、怒りに触れれば、全てを破壊する。

 その強大な力ゆえ、天地を司る神であったのではないか。と。

 神龍とも邪龍ともいわれるその姿は、天を覆いつくすほどの躯体。

 神龍は神々しく、邪龍は禍々しく伝えられている。--



「何故、古代竜の封印が解けるのだ。」

「はい。辺境の地での事ゆえ、詳しくは分かりません。現地は混乱を極め、通信もままなりません。」


「ですが、現在判明していることは、勇者と名乗る人間が封印の地へ向かっていたということ。何が起きたかは分かりませんが、封印の一部が解かれ、村に被害が出ているということ。封印の解除が何処まで終わったかは、村の長では分からないようです。」


「うむ。全ての封印が解かれれば、余でも手に負えん。魔界全土に避難命令を出せ。種族に隔てなくすべての民を避難させよ。魔王軍はその持てる全てで尽力せよ。余は現地へ向かう。余に何かあった場合には、混乱を最小限にとどめるよう努めよ。」

「はっ。」

 跪いていたガーゴイルは命令を受け、伝達に走る。


「では、行って参る。」

 魔王は妃の額に唇を当てる。

「ご武運を。。。」

 妃の目には涙が浮かぶ。


 勝てるかどうかも分からない。魔王ですら古代竜に相対した事はないのだから。。。

 最後の別れを惜しむ時間の余裕さえ無かった。


 魔王ダルガは衣を翻し、魔力を高めながら窓に足を掛けた。

 このまま、窓から飛翔するつもりだ。


 僕は、咄嗟に魔王の衣にしがみついた。

 それは、魔王が飛び立つ瞬間であった。


 妃はそれを止めることもできず、その場に崩れ落ちた。



 魔王の飛翔魔法は途轍もなく速い。軽く音速を超えた。

 飛び立って数秒でソニックブームが起きた。今は、その時よりも数段速い。

 だが、魔法により補正され、僕たちの周りには微風すら発生しない。


 僕は、魔王の衣をよじ登り、声をかける。


「魔王さま。」

「っっ!!アルではないか。。。何故。余とて守り切れぬかもしれぬぞ。」


「僕には想像もできないような危険な事態になっていることは分かってます。その上で付いてきたんです。僕は闘いには何の役にも立ちませんが、実は≪世界樹の葉≫がまだあるんです。役に立つかもしれません。」


「魔王に対してなんと傲岸不遜であることか。一番の大物はそなたじゃな。。。だが、気に入った。流石は余の見込んだ者である。頼りにしておるぞ。」

「いつもすみません。できる限りの事をします。」

「うむ。これで命の危険を顧みず、闘いに専念できる。」

 そして魔王はスピードをさらに上げた。



「近いぞ。」

 魔王の言葉にその先を注視する。


 遙か先の空が暗い。厚い雲に覆われ、下からは炎が立ち上がり、その周辺を赤く染める。空には稲光。

 

 近づくにつれ、その異様さがさらに露呈する。

 雷鳴・吹雪・嵐・竜巻。。。そこかしこで異常気象が起こっている。マグマが流れる上空に雪が降り、竜巻とともに大地が隆起する。厚い雲の中では雷鳴が轟き、大雨が降る下には川ができる。川は生きてるかのようにうねり、大地を飲み込む。


「えっと。覚悟はしてきたんですけど。。。あそこ。ですよね?」

「そうじゃな。正直、余でも行きたくはないな。。。」

 魔王が吐露する。


「どのみち、異常気象である。迂回をしたところで、いつ変化するとも分からぬ天候じゃ。古代竜のいる場所まで、最短で突っ切るぞ。」

「ですね。」


 僕たちは、炎の渦へと突っ込んでいった。


次回 --魔王VS古代竜--



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