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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=魔王城編=
45/322

第45話  ~魔王のお礼~

 

 僕は”絶対悪い方向にはいかない。”と願いを込めて、魔王に話をする。


「魔王様。今後も人間界には興味は出ないですか?」

「ん?そうであるな。それは、攻め込むか?という意味であろう。。。余程の事が起きない限り、こちらから手を出すことはないであろう。」


 僕は目を閉じてゆっくり頷く。

(その答えで良かった。)と胸を撫で下ろす。


「魔王様。僕は謝らなくてはいけないんです。。。」

「何か悪さでもしたか?」


「いえ、僕は。。。」

 そして、《世界樹の葉》を取り出す。


「これは。。。《世界樹の葉》であるな。」


「はい。魔王様に最初に会ったときにには、もう持ってました。でも、『魔王』という者は恐ろしいと聞いていましたし、本当に『魔王』であるかも分かりませんでした。使用用途も同情を誘って奪い取る作り話かもしれないと、全て疑心暗鬼にとらわれ、嘘をつきました。」


「そうか。それでもそなたは《世界樹の葉》の欠片を渡そうとしてくれたな。心優しき者じゃ。」

 魔王の表情は変わらない。


「僕は、打算的な考えだったんです。魔王様は、僕が持っていたイメージの人とは違っていました。普通であれば、僕のような者がここに立ち入ることすらないでしょう。それでも、僕に包み隠さず見せていただきました。これほどお妃様の状態が悪いとは知らずに。。本当にすみませんでした。」

 

「ふむ。して、そなたの『魔王像』なるものは多少は良くなったかの?」


「はい。まだ、魔王様と2回しか会っていませんが、悪い人ではなさそう。というのは分かりました。」

「余の演技かもしれぬぞ。」


「それでも構いません。もしそうなのであれば、次回から会わなければ済む話ですから。」

「本当に、そなたは正直者じゃな。」


「なので今更ですが、この《世界樹の葉》を。。。使ってください。」

「そうか。。。ではこれを受け取ったら、余も暫くはおとなしくせねばなるまいな。」

 ふふっと笑った魔王の笑顔は安堵の表情であった。



「では、ありがたく使わせてもらうとしよう。」


 魔王は立ち上がり、ベッドへ向かう。


 手のひらを上に向けると、手のひらサイズの真っ赤な魔法陣が浮かぶ。その上に世界樹の葉を乗せた。

 魔王は葉巻を巻くように、魔法陣と世界樹の葉を一緒にくるくると巻く。


(魔法陣ごと?世界樹の葉を?どうなってるんだ。。。不思議な光景だ。。。)


 その筒に魔王がフッと息を吹きかける。。。すると、魔法陣の模様が浮かぶ短剣になった。

 魔王はそれを持つと、妃の胸に突き刺した。


「っっっ!!!!」

「心配ない。見ておれ。」


 突き刺さった短剣は、魔王の手を離れて、そのまま妃の胸にゆっくりと吸い込まれてゆく。


 短剣全てが、妃の胸に吸い込まれると、妃の身体が淡い光に包まれ始めた。いや。内部から光が出ているような印象だ。

 《世界樹の葉》でジョージを救った時の現象に似ている。あの時ほど強い光ではないが。。。


 暫くすると、光は収まり、妃の頬や唇が色づいたのが分かった。


(良かった。魔族でも血色は同じなんだな。)


「ふむ。礼を言うぞ。ブルートスライムのアルよ。」

「いえ。そんな。あれは《世界樹の葉》の力ですから。。。あれ?お妃様、目を覚ましませんね。」


 僕は心配になった。普通であれば目を覚ますはずだから。

 まさか遅すぎて、『サクラ』のような状態になってしまったとかじゃないよな。。。


「心配は要らぬ。余の魔法と《世界樹の葉》の力を融合させている故、目覚めまで暫しの時間を要する。」

「そうでしたか。。それなら良かったです。」


「そなたと一緒にいた、あの娘のように、目が覚めぬと心配になったか?」

「そんなところです。」

「あの娘は魂が抜け落ちたようになっておったな。普通であれば死しているところだろうが。。。魂が無いわけでもなさそうであった。あのような者を余も初めて見たな。だが、娘には時の魔法がかけてあったぞ。聖なる加護もかかっておったし、目覚めぬでも死の危険はあるまい。」


「そこまで、分かりますか。。。」

「余は魔王であるからな。魔力は本来、魔界の民が使うもの。余は魔法も長けておるぞ。あの娘に何が起きたかは分からぬが、魂が再び繋がるまでの一時凌ぎに”時の魔法”と”聖なる加護”をかけたのであろうな。もう少し違うやり方もあったであろうに。。。」


「じゃあ、魔王様なら、あの子、助けれます?」

「ふむ。絶対とは言えぬな。まず、あの娘があの状態に陥るときに立ち会えておれば、助けることができたであろう。そして、加護を受ける前であれば、可能性もあったやもしれぬ。しかし、”聖なる加護”を受けた今では、無理であろうな。余の力は”魔”。正反対じゃ。仮に余の魔法を使って魂を戻したところで、あの娘の肉体が、聖と魔の力に耐えきれず崩壊するであろう。」


「そうですか。。。すみません。変なことを聞いてしまって。」

 僕はしょんぼりと俯いた。

「力になってやりたかったが。すまぬな。」


「いえ。魔王様が謝ることではないので。。。」



「では、アルよ。気分を変えて食事でもどうじゃ?」

 魔王に気遣われた。。。



 パチンと魔王が指を鳴らす。

「お呼びでしょうか?」


 メイド服を着た魔族の女の子が入ってくる。


 ほんの少しの間、何も言わずに立っていたが、

「かしこまりました。」

 と頭を下げて退出する。


 ん?とは思ったものの、いつものように心で直接やり取りをしたのだろうと思い至る。

 しかし、この乙女チックな魔王のプライベートルームを見ても何も動じないとは。教育が行き届いている。


 

 僕は魔王に連れられ、魔王城の案内を受ける。

 窓から見える建物についての説明や、大まかな部屋の紹介、地下牢まで見せてもらった。

 パレスからは出ず、ざっくりと案内してもらっても、まだまだ広い。


「そろそろ出来た頃であろう。」

 

 そうして僕たちは大きなテーブルへと着席する。

 当然、僕はテーブルの上に鎮座する。


 何故か、僕の席にあたる椅子にメイドさんが座っている。

「ご不便がございましたら、おっしゃって下さいね。お口まで運ばせていただきますので。」


(ここはメイドカフェかよ!)一人心でツッコミを入れる。


 魔王が手で合図をすると、食事が運ばれてくる。


「うわ~。天ぷらじゃん!お蕎麦もあるし!すごいなぁぁぁぁ。」

 僕の出身地、東にある『はじまりの国』のいろいろな料理が並ぶ。

 懐かしい料理の数々にテンションが上がってしまう。


「気に入ってもらえただろうか?」

「もちろんです!僕が今、スライムじゃなかったら、うれし涙を流してるはずですよぉ。」


「ん?そういえば、なんで魔王様この料理なんですか?」

 出身地を言った覚えはない。


「そなたが心配しておったあの娘は、『はじまりの国』の者だと思ったのでな。ここには、『はじまりの国』出身の料理人がいる。ちょうど良いかとな。」

 そして手招きをする。


「リュウセイでございます。」

 名前も顔立ちも。。。『はじまりの国』の者だ。懐かしい。


「人間、なんだよね?」

「もちろんです。料理人として、食材を求め、腕を磨くために世界を旅しておりました。身の程も知らず、魔界にまで入りましたが、やはり未熟者。モンスターに殺されかけた所を、魔王ダルガ様に助けていただきました。」


「へぇ。それじゃ、間違いなく『はじまりの国』の味だね。じゃ早速。いただきま~す。」


 僕は天ぷらに齧り付く。

「えびがぷりっぷりだね~。抹茶塩とか、紅葉おろしとか魔界でも作れるんだね~。すごいな。」


 次はお蕎麦を。

 メイドさんに、山葵と薬味を忘れずに。と指示を出す。

 こういう、細かな作業はメイドさんがいてくれて助かった。手がないのは不便だ。


 ずるずるずるっ。蕎麦を啜る。


 リュウセイが目を丸くする。

「スライム殿は。。。『はじまりの国』の出身なのか?まるで地元の人間が食べているようだ。。。スライムが、薬味とか。。。不思議だな。」


 しまった。興奮しすぎで、思いっきり素が出た。

 いや仕方ない。美味しく食べたい。最高の状態を楽しむべきだ。

 そう、自分に言い訳する。

 出身地が今更バレても問題ないだろう。。。というか、どこを出身地とすべきなのだろうか。。。本体のサクラの出身地?それとも僕が生まれたあの森?もう、どこでもいいか。


「僕の出身地は。良く分かんないですけど、知り合いが『はじまりの国』だったもので。食べ歩きとか大好きな子でして、いろいろ食べましたよ。」



「そうかそうか。まだ、デザートの時間ではないが、甘味には、あんこも使ったんだが、知ってるか?」

 リュウセイが、盆にのせた、”ねりきり”に”まんじゅう”、”だんご”に”最中”、”羊羹”に”どら焼き”いろいろな種類のお菓子を持ってきた。


「あ~。これ”あんまき”ですか?」

 僕はどら焼きの中にコッソリ混ぜられた懐かしい食べ物を見つける。


「ほぉ。これを”あんまき”と知っているとは。。。お主、なかなかやるな。」

「えへへ。伊達に食い意地はってませんよ。美味しいものを食べるためだけに、現地に赴くくらいの労力はね。」

 

 「おぬしやるな。」「そなたもな。」そんな悪代官と商人のようなやり取りをしてしまった。


 少しの間2人で、故郷の料理やお菓子の話題で盛り上がる。



「微笑ましいな。」

 魔王が穏やかな笑みでこちらを見ている。


「あっ。すいません。なんか、テンション上がっちゃって。」


「良い良い。アルは、余の恩人であり、友である。今日の礼なのだ。喜んでもらえるのあれば、それで良い。」

 魔王は銀杯を傾けながら、優しく見守るような笑みを向ける。


「スライム殿。また近いうちにいろいろと話ができるといいな。」

 リュウセイは僕に小さな声で耳打ちした。

「うん。僕もだよ。」



「では、私は一旦厨房へ戻ります。」

 魔王に深々と頭を下げ、リュウセイが下がる。



 その後、僕は思う存分、故郷の味を堪能した。

 リュウセイの腕は一流だった。



 夜も更け、僕は魔王城にお泊まりとなってしまった。


(用事は済んだんだよな?ま、明日返してもらえばいいっか。)

 暢気に考え、眠りにつこうとしていた。


 なぜか、魔王のベッドに一緒に眠ることになった。

 それだけは、どうしても腑に落ちなかったが、魔王にどうしてもとせがまれ、あまりにもしつこいので、僕が折れた。。。


(まぁ寝心地は最高だから、良しとするか。。。)


 今日もいろいろありすぎた一日だった。疲れとともに眠りに落ちる。


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