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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新たな出会い編=
39/322

第39話  ~龍(ドラゴン)の民~


「マロウさん。『ドラゴンの民』とは一体。。。教えていただけないでしょうか。」

 ジョージの声は重苦しい空気の中、ひと際低く響いた。


「そうですな。私の知りうる事はお話しましょう。ですが、それはほんの一部。その理由は私の生きた歳月の短さなのでしょうな。。。その辺りも含めてお話してまいりましょう・・・」


 世界樹の始まりがいつからなのかは分かりません。遙か遠い昔より連綿と続いております。


 私の事は、そこのカルアから多少聞いておるでしょう。


 私はカルアの6代前に”世界樹の精”を務めました。たった数千年前の事でございます。

 当時の世界は4つの大陸と4つの海。

 モンスターも獣も人間も。自然の中で共存しておりました。


 ”世界樹の精”となる為には世界を渡った者という条件がございました。

 今ほど自然は過酷ではありませんでしたが、造船技術は当然、今とは比べ物になりませんので、世界のすべてを巡った者はほとんどいなかったでしょう。


 私は世界樹と出会い、そしてその運命を受け入れました。

 ”世界樹の精”を受け継ぐ際には、その歴代の者たちの記憶やその知識が流れ込んできます。

 無知であっても、それを補うだけのものはその時に、渡されるのです。


 カルアは知識が乏しいでしょう?それには理由がございまして。。。


 私の2代後、”世界樹の精”を継承したのは、魔族でございました。

 

 ”世界樹の精”となる為の条件としては、魔族でも問題はございません。しかし、その体に”聖”と”魔”、相反する力を宿さなくてはなりません。通常ではそれに耐えうる者はいないでしょうな。


 その魔族は強大な力を宿していたようです。その能力故、力を押隠し、”世界樹の精”となるべく狙いを定めてやってきたようにございます。


 ”世界樹の精”といえども、なにぶん、元は人の子。まんまと魔族に騙され、”世界樹の精”を受け継がせてしまいました。

 

 しかし、いかに強大な力を持つ魔族といえども、”世界樹の精”となってしまえば、1000年は動けぬ身、世界樹としての役目は全うしたようにございます。


 そして1000年後、新たな者へ継承する際に、”世界樹の精”の能力の一部を奪い取ることに成功したそうです。

 その為、その後の”世界樹の精”は一部の能力が欠落したままの状態が続いております。


 その魔族ですが、聖魔の能力を手に入れ、魔王となりました。それが最終の目的だったようです。

 されど、その栄華も長くは続かず、英雄アルフォンに封印されることとなりました。



 さて、ここまでが、世界樹のお話でございますね。

 では、ここからは、私がこの迷宮の管理人となるお話をいたしましょう。



 私が”世界樹の精”を交代し、その器としたのは、若い賢者でございました。

 彼の身体に刻まれた魔法との契約は無効となることはなく、私にも使うことができました。もちろん、私の魂と器である身体が定着するまでは、使いこなせませんでしたが。。。


 彼の肉体は20代半ば辺りで若いと思っておりましたが、それは、不老の研究をしていた成果のようでした。

 完全なる不老ではありませんでしたが、年老いる速度は遅く、50年が過ぎても、10歳程度しか年老いてはおりませんでした。

 

 私は、思いがけず長い年月を生きることとなり、1000年分の時を取り戻すように、世界を旅しました。


 1000年という時は、世界樹として過ごせば、それなりに過ごしていけるものです。

 しかし、人間の生活での1000年は途轍もない長さです。見るもの全てが、別世界を旅しているようで、慣れるまで、感動ばかりしておりました。

 不思議なもので、過去を振り返ることはありませんでした。1000年という時の長さ故でございましょう。思い出に縋らずに新しい人生を歩めたことは、良い事でございました。


 

 世界樹を引退して100年程経ったある日、私は勇者と呼ばれる者たちと旅をすることになりました。

 その頃には私も器の身体をそれなりに使いこなし、賢者として生活をしておりましたので、少しばかりの助けとなれば、と誘いのままに同行することとしました。


 彼は、今の私から見ても、優秀な勇者でございました。

 文字通りの武芸百般であり、魔法にも長け、知識も豊富でありました。


 ある時、彼と二人きりになった際、彼がこう言ったのです。

「君は世界樹の力を使ったことがあるのかい?」と。


 私は彼の意図が分からず、答えることが出来ませんでした。

 すると彼は、上着を脱ぎ、背中を出しました。

 その背中には絵画のように美しい昇龍がいました。そして、


「僕は『ドラゴンの民』なのだ。」と。


 私は初めて聞く言葉にただ黙って龍を見つめるしかできませんでした。

 そんな私を不思議そうに見ながら、彼は続けました。


「君は”世界樹の精”ではなかったのかな?そんな力を感じたものだから。」

 私は驚きに目を見開くばかりでございます。

「世界樹の事は秘密なのかな?でも、僕には特に秘密にしなくても大丈夫だよ。」


 そして、彼は『ドラゴンの民』について知っていることを話してくれました。


 『ドラゴンの民』とは、そういった民族がいるわけではなく、突然変異のようなものなのだと。

 世界中の歴史上で何人の『ドラゴンの民』がいたのかは不明であり、彼も出会ったことはないそうです。

 

 身体のどこかにドラゴンが現れるのが特徴で、生まれながらに痣として持っている者もいれば、突然浮き出る者もいる。傷跡が変化する者もいれば、能力を継承する者もいるそうです。


 『ドラゴンの民』となると、何かしらの能力を得るのだそうで、それは人によって様々なようです。


 ドラゴンの形や大きさなどによっても得られる能力に差があり、彼のように、背中一杯に絵画のような美しいドラゴンが出ることは稀で、彼の能力もそのドラゴンに比例しているようでした。


 「世界樹と『ドラゴンの民』は何か関係があるようで、僕には世界樹の存在が分かるんだ。何度か世界樹にも行ったけど、普通の人には、その存在すら感知できないようだね。」

「君からは、その世界樹の波動が僅かばかり感じられたから、声をかけたんだよ?」


 

 彼は生まれながらに小さな痣があり、元々はそれほどの能力は持っていなかったそうです。ですが、年齢を重ね、強さや知識が増えるとともに龍も大きくなり、背中一杯に美しく成長した龍を持つ頃に、世界樹の波動を感じ取れるようになったと言っておりました。




 世界樹として1000年もの年月を生きた私でしたが、『ドラゴンの民』がやってきたこともなく、ただただ、驚くばかりでございました。



 そして、ここからが、坊ちゃんとアルさんに関係することでしょう。


 世界樹と『ドラゴンの民』それに『黄宝王玉イエローオーブ』が何らかの関係をもっているそうなのでございます。

 お互いに存在を感じ、惹かれ合い導き合うのだと。

 それが揃い何が起きるのかは分かりませんが、それを確かめる為に彼は勇者となり、黄宝王玉イエローオーブを探す旅をしていたそうです。


 私が彼と過ごした15年の間には黄宝王玉イエローオーブを見つけることはできませんでした。

 英雄アルフォンの日誌によれば、黒龍ブラックドラゴンが宿していたようなので、易々と見つけることなどできなかったでしょう。

 彼の龍は、彼の身体の衰えと共に小さくなり、そしてその能力も陰りを見せた事で、彼は旅を続けることを諦め、私も彼の元を去りました。


 それから、私は旅の中で出会った樹木精霊ドライアドと友になり、精霊の死を看取り、その能力を継承しました。それがこの下に続く迷宮です。

 その樹木精霊ドライアドは『迷宮王』と自分の事を呼んでおりました。


 余程の事が無い限り、樹木精霊ドライアドはその地に根を生やします。

 暇つぶしに作った迷宮があり得ない程に広大になり、さらには、迷宮自体が能力を持って、成長してしまったと。笑って話しておりました。

 

 私も賢者の時に、何度も攻略に挑戦してみましたが、途中までしか進んではおりません。

 能力を継承した今も、成長を続け、今ではどこまで広がっているのか見当もつかないのです。


 『迷宮王』の名は伊達ではございませんでした。


 中で得られる力は、宝王玉オーブの能力と関係するようですので、もし、力を望み攻略をなさるようでしたら、お望みの力の宝王玉オーブをお持ちください。



 私が迷宮管理人となり、様々な者たちがやってまいりました。人間もいれば、魔族もいます。

 しかし、最下層まで到達した者はございません。


 私が迷宮管理人となってから、3名の『ドラゴンの民』がやってまいりましたが、旅を共にした勇者程の力を持ったものは一人もおりませんでした。


 英雄アルフォンの78階層突破が一番深かったでしょう。ですが、彼は『ドラゴンの民』ではありませんでした。


 3名の『ドラゴンの民』の龍も見ましたが、それは手のひらサイズが最高で、形や見た目も、龍であることが分かる程度。

 それ故、力も知識も乏しく、『ドラゴンの民』についての新しい情報は得られませんでした。


 私は迷宮の一部を図書館とすることで、『ドラゴンの民』の情報を収集しようとしましたが、文献はおろか、伝承すらままならないのです。


 記録を取ろうとしても、紙に書くことができないのです。伝承しようとしても、『ドラゴンの民』に接する者がほとんどいない。世界樹に出会う者より少ないのです。

 絵本にすらできない。昔ばなし程度に語り継がれても、年月とともに風化する。


 私のように数千年を過ごす者は、魔族くらいでしょう。

 もしも、『ドラゴンの民』の事を私より詳しく知っている者を見つけようとするならば、魔族をお探しになると良いかと思います。



「私が知り得たことは、この程度でございます。」

 マロウさんは静かに話を終えた。


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