第38話 ~手がかりを求めて~
僕たちは図書館へ向かうことにした。
が、今は昼食を取るため、街へと繰り出している。
あの裏通りにある店が目的地だ。
ジョージの肩には、ホセと僕。リリィの肩に龍が乗っている。
表通りの雑貨店ででリリィと龍が立ち止まり、女子トークが繰り広げられている。
「ねぇ。これ良いんじゃない?」
「でも仕事中はつけられないし。でもこちらのもかわいいですね。」
「これ、サクラちゃんに似合いそうだね。」
「こちらのも素敵ですよ?」
「あー。私もこんなの付けてみたかったかも~。」
鏡の前で、アクセサリーをあててみたりして、二人は盛り上がっている。
「お兄さん。これ、いくら?」
ジョージが店員を呼ぶ。
「これでしたら。。。。」
リリィとカルアが選んでいたアクセサリーを買った。
「ジョージ様。いけません。」
「そうだよ。女子は甘やかすと付け上がるよ?」
「ふふっ。そう怒らないで。女性が美しくなることに、問題などないだろう?」
爽やかな笑顔だ。
ジョージはリリィが見ていたネックレスとイヤリングを早速リリィの後ろに回り、付け始めた。
そういえば、今日のリリィはアクセサリーを付けていなかった。
「ほら?さらに可愛らしくなっただろう?」
リリィは顔を真っ赤にしているが、鏡を覗いてチェックするのは忘れていない。
「ありがとうございます。」
はにかんだ笑顔が可愛い。。。
「カルアとサクラの分もあるからね。」
「でも。私は付けられないし。。。」
龍が寂しそうに俯く。
「カルア?君は人間に戻りたいのだろう?サクラとの事がどうなるかは分からないが、無事に戻れた時に、付けるといいよ。」
ジョージは龍を指で撫でながら優しい声をかけた。
「うん。ありがとう。」
龍にまで、イケメンスキルを使うか。。。見境がないな。
そうツッコミを入れながら、心のどこかがチクっとした。
裏路地へ入ると早速絡まれる。
「よぉ。お姉ちゃん。かわいいねぇ。俺らと遊びに行こうぜ。」
ヤンキーがリリィの肩を抱こうとする。
きた~!裏路地ど定番のヤンキーが。。。あまりにもテッパンすぎて笑いがこみ上げてくる。
(そして、すでにフラグがたったよ。)
リリィはヤンキーの手を華麗にすり抜け、
「先を急いでおりますので。」
と一蹴。
「そんなこと言わないでさ~。そっちの優男なんかより、俺らが楽しいこと教えてやるからさ~。」
そう言うと、周りにヤンキーが集まる。こいつの連れだろう。
ジョージとリリィは冷たく鋭い目で周囲を確認する。
(あ~あ。こいつらもうダメだな。)
軽い乱闘を想像した。
バサッバサッバサッッッッッ。
「痛っ。痛てっ。!!」
「なにすんだよ!このバカ鳥!!」
「あっちいけよ!!」
ホセは一通りヤンキーの頭を突き終えると、ジョージの肩へ戻る。そして、
「お前達、頭が高~~~~い!控えおろ~~う!」
あっ。なんか始まった。。。。
「こちらにおわすお方をどなたと心得るぅ。かの伝説の大魔導師ウォルナットのご息女ヘーゼル姫にあらせられるぞ。」
どこの誰だよ?知らねーよ。
ヤンキーたちが訳分からずにキョト~ンとしちゃってるじゃん。
(ねぇ。アル?これ何が始まったの?)
カルアも意味が分からない。
(え?よく分かんないけど、面白そうだからいいんじゃね?カルアも適当に合わせとけよ。)
(オッケー!)
反応の薄いヤンキーにホセが続ける。
「まさか、お前たち、世界を救った伝説の英雄ウォルナット大魔導師を知らぬわけではあるまいな。」
「なぁ、知ってる?」「俺知らないわ。」「でも世界救ったとか。」「勇者のパーティとかなんじゃねーの?」「でもマジ有名人だったらヤバくね?」
などとコソコソ話し始めた。
「ん?どうかしたか?」
ホセが偉そうにふんぞり返りながら睨みつける。
「あっ。もちろん知ってますよ。伝説の英雄?ですから。」
ヤンキーが無難そうな答えを繰り出してきた。
「そうであろうな。姫は天賦の才により、炎の魔法を得意とし、指先から放たれる焔は全てを焼き尽くすまで消えぬ。」
ホセの話でリリィがすかさず人差し指に小さな炎を出す。
「そして、本来の姿は天を覆いつくす荘厳で偉大なる龍。神のいかづちをも操るという、世界最強の龍種、『雷龍』を従えているのがなによりの証拠。」
その言葉にカルアが龍の身体に目に見えるようにオーラを出して光始める。
「ヘーゼル姫、この者たちに戦いの意思はないようです。何卒、炎をお納めください。そして雷龍をお鎮め下さい。」
ジョージがリリィに跪き伺いを立てる。
「そうであるか。雷龍よ、怒りを鎮めるがよい。」
リリィが炎を。カルアがオーラを消す。
「お前たち、姫の寛大な御心に感謝するがよい。」
ホセが大仰に締めくくる。
「あ。ありがとうございまーす。」
ヤンキーどもがダッシュで逃げていった。
なんだ。この茶番。。。てか、僕だけ出番がなかったな。。。
僕たちは何事も無かったように、いつもの定食屋へ行った。
「こんにちは~。大将、いつもの席、空いてるー?」
「おう、ジョウさん。今日は賑やかなメンツだな。席は空いてるぜ。」
僕たちがいつもの席に着くと大将がお冷を持ってきてくれた。
「おう、ジョウさん、今日はまた一段と可愛らしいお嬢さんを連れて来たな。」
「え?大将、この子、この前連れて来た同僚の子だよ?」
「あの凛とした雰囲気のお嬢さんかい?へぇ~。服が違うだけで、こんなにも見違えるもんかね~。どこかの”お姫さん”かと思ったぜ。」
ぷっ。くくくっ。みんなの肩が震え始める。
「大将、いつも通り、適当に持ってきて。」
「あいよ。」
「はっーはっはっは。ヘーゼル姫。今日も一段と可愛らしいお姿ですね。」
「もう。ジョージ様、からかわないでください。」
「今の僕、『ジョウ』だからね。せっかくだから、街でのリリィは『ヘーゼル』にしようか?」
「ぎゃはははは。ええんちゃうか~。」
「もう、ホセさんまで。だいたい、何なんですかあれ?」
「良かったやろ?俺が機転効かせたお陰で、喧嘩にならずに済んだやん。」
「いや。むしろ、小芝居が過ぎて、笑い堪えるのに必死だったよ。なんだよ、ウォルナットにヘーゼルって。木の実じゃん。そんな名前の英雄いるかよ。」
僕も笑いが止まらない。
「せやかて、小腹減ってて、食べ物の名前しか浮かばんかったんや。けど、あのヤンキー達は知ってるらしいで。」
「あの状況で、知りませんとか言えないだろうな。でも、よくリリィもカルアもホセに合わせたよね?」
ジョージも肩の震えが止まらない。
「だってぇ。アルが合わせろって言うから。リリィにも伝えたんだよ?そんなこと言うなら、ジョージなんて跪いて『ヘーゼル姫・・』って。打ち合わせしてないのに一番ノリノリだったじゃん!」
カルアはお腹を抱えている。
「一度やってみたかったんだよね。姫に仕える家来。すごく楽しめたよ。今日は一日、姫にお仕えすることにしよう!」
『りょーか~い。』
リリィ以外が賛同する。
「もう。やめてくださいってば。」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしたリリィが今日の服装も相まって、一段と可愛らしく映った。
僕たちは楽しい昼食を終え、王立中央図書館へ向かう。
そこでハタと気付く。このメンツで、図書館って入れるのだろうか?
前回はジョージ一人だったし、僕は隠れていた。
今回はジョージ・リリィ。ここは人間だから問題ない。だが、スライムの僕に、オウムのホセ、さらにはちっさい龍のカルアまでいる。どうやって橋越えの許可を取るつもりだろう。
「ねぇ。ジョージ。今日はどうするの?僕やカルアは何とか隠れるにしても、ホセはリリィのバックにも入らないよ?」
「あぁ。心配いらないよ?今日は堂々と入るからね。さ、リリィ。」
「はい。少々お待ちを。」
そう言って、門番の所へ歩いていく。
徐にバッグから翠宝王玉のついた細剣を出した。
「王室付賢者のリリィだ。本日はジョージ司令官の命により、中央図書館へ参った。軍の機密任務ゆえ、一般の者に知られぬよう、私服にての行動をとる。これが司令官よりの許可証だ。内容を検めよ。」
リリィは身分証代わりの翠宝王玉と許可証を門番に見せる。
「はい。確かに。。許可証に記載がありますので、一般の方と同じように接しさせていただきます失礼をお許しください。お連れの方々もお通しいたしますが、皆さまお揃いでございますか?」
「あぁ。全員揃っている。」
「では、お通り下さい。」
僕たちは無事に門を通り抜けることができた。
「リリィ。カッコ良かったね~。」
「くくっ。『ジョージ司令官』やて。わざわざ、許可証なんて作らんでも、本人おるやないか。」
「ホセ。笑っちゃダメだよ。こないだなんてさ、一般人の身分証使ってたもん。」
「あからさまな偽造やな。ええんか?王子様。」
「大丈夫。問題ない。あの門番も僕の管轄だから。そのトップの僕が良いって言ってるんだから、良いんだよ。」
ジョージが屁理屈をこねている。
「いや。しかしやな。司令官の顔も知らんのは、マズイんとちゃうか?」
「ホセ君。もし君が門番だったとして、王宮から直接入れる場所に、司令官をしている王子が、一般庶民の住所の偽造カードを持って、わざわざ王宮と反対側から、自分の関所に来ると思うかい?」
「そんな面倒なことはせんな。。。俺が門番やったら、そっくりさんが来たと思うやろな。」
「ふっふっふ。それが答えだよ。バレたら、面倒なんだよ。下町に遊びに行くと帰りが面倒でね。ここさえ通れば、あとは適当に帰れるからさ。」
まさかの理由自体が適当だった。。。ジョージらしいといえば、ジョージらしい。のかな。。。
図書館に着くと、先程と同じように、リリィが対応する。
そして中に入る。目的地は一カ所。マロウさんの所だ。
「マロウさん?」
ジョージが声を掛けると、おじいさんが顔を上げる。
「これはこれは。坊ちゃん。今日はどういった本をお探しですか?」
「今日はマロウさんに用事があってきたんだよ。話すことはできる?」
「・・・・・・。」
「ここに結界を張ろうか?」
カルアが提案する。
「なんと。。。カルアか?久しいな。。。こんなところで何を?」
「久しぶり。マロウさん。今日は『龍の民』について聞きに来たの。知ってるでしょ?」
「そうか。。。うん。。。では、やはり、扉の向こうで話をしましょうか?」
その言葉と同時に手のひらの魔法陣が光り出す。
ジョージが短剣を使った。
現れた魔法扉を通り、地下へと進む。
中央に置かれた机にマロウさんが腰掛けている。いや正確には、マロウさんの幻像だ。透けている。
「良く来たの。それで『龍の民』の事とは、突然にどうしたのじゃ?」
僕とジョージは顔を見合わせ。。。二人で頷く。
「これを見て欲しいんだ。」
ジョージは袖を捲り、包帯を取る。
その中に現れた腕に、皆の視線が集中する。
「これは。。。。」
マロウさんが絶句する。
「坊ちゃんが、『龍の民』とは。。。」
マロウさんの一言に、一同は驚倒した。




