第33話 ~選ばれし者~
世界樹についてしっくりくるニュアンスの言葉がどうしても見つからず。。
自分の語彙の少なさに頭を抱えています。。。
世界樹の偉大・壮大さを表せる言葉を見つけることができたら、更新します。
僕はカルアに言われた意味が分からないでいた。。。
世界樹になるとは。。。どういうことなんだ?
僕が何も答えないでいると。
(突然で驚くよね?私の時も、すっごく困ってしまったもの。。。)
(でもね。本当に時間がないの。次の人が現れるまで、世界樹はもたない。。。この世から世界樹は永遠に失われてしまうことになるの。。。)
(ねぇ。カルア。少し移動してもいい?顔を見て話がしたいよ。)
(そうだよね。。。)
目を開けるとカルアの姿はない。僕は、世界樹のてっぺんを目指して木を登った。
頂上に着くと、景色を見渡せる枝に、淡い光を纏った薄く透ける身体の女の子が座っている。
両手は枝に添え、足をプランプランと動かすその後ろ姿は子供のようだった。
初めて見る女の子だけど、僕は迷いなくその子の隣へ行く。
「ここ、いいかな?」
「うん。」
寂しそうなカルアの声だった。。
「どの姿で話をしたらいいのか迷ったんだけど。。私なりに考えて。やっぱり自分自身の姿がいいのかなって。人間の時の姿だけどね。。。この体も、今はもうないから。。。アイテムもないから、こんな幽霊みたいにうっすらとしか再現できなくて、ごめんね。でも、これが精一杯だから、許して欲しいの。」
その顔は、悲しげな笑顔だった。
「いいよ。顔を見せてくれてありがとう。それが本当のカルアなんだね。」
「うん。」
隣に腰掛ける少女は、肩までの黒髪で、ターコイズの頭飾りが、可愛らしい。
熱い国に住んでいただけあって、健康的な褐色の肌を惜しげもなく披露する衣装を身に纏う。
オレンジ色の布が、褐色の肌によく似合っている。
頭飾りと揃いの首飾りに、いくつもの腕輪が、踊り子らしい、快活さを出していた。
「カルア。僕が世界樹になるとか、時間がないとか。僕にはどうしても理解ができないんだ。だから、話してくれる?何が起きているのか。。。」
「うん。」
---世界樹はね。その力を衰えさせないように、1000年に一度、生まれ変わるの。
その時に、”世界樹の精”と呼ばれる、精神生命体が必要になるの。世界樹の神秘の力を守るために。
世代交代をするには、特に条件はないのよ?ただね、前任の”世界樹の精”が認める事だけね。悪魔だろうが、モンスターだろうが、人間だろうが、認められれば大丈夫。
けれど、1000年という長い年月に耐えられるか。世界を破滅に導かないだろうか。それくらいは歴代の”世界樹の精”が絶対的に外さない条件だと思うわ。
それで、心身共に強いだろうと、いつの間にか『世界のすべてを見てきた者』という暗黙のルールができたわ。
世界の全てを渡りきる、体力、智力、精神力。そして何にも代え難い経験を持ってるはずだから。
それから、とても言いにくいんだけど、次の人は”精神生命体”にならなくてはいけないでしょ?そうすると、必然的に、肉体を捨てることになる。前任者は解放されるけど、”精神生命体”だから、世界樹の力を失って、そのままでは、生きていけない。
それで、後任者の身体を前任者が引き継いで器にするの。
だから、私と交代すると、サクラちゃんの身体をもらうことになる。この肉体を渡すのを拒んで、世界樹になったとしたら、魂を失った身体は崩壊を始めるし、私の”精神生命体”は世界樹の加護がなくなるから、霧散するんでしょうね。。。
さて、ここまでが、通常の”世界樹”の話よ。
私の場合はイレギュラーが起きてしまった。
私が1000年を迎えるころ、旅人がやってきたの。とても条件としては良かった。
7つの海と7つの大陸を渡り、6つの宝王玉を持つものが。
心身ともに強く、真の勇者でもあった。これ以上の条件を満たす者なんて、歴代の”世界樹の精”でもいなかったわ。
ただ、彼の心の奥底に影があったことが不安だったけれど、これ以上の相応しい人が、交代のタイムリミットまでにあらわるかわからないし。
私は交渉をしたわ。6つの宝王玉の力も使って。何としてでも彼を手に入れたかった。。。
けれど、失敗してしまったの。彼の心の影は強く寂しく海よりも深かった。決して信念を曲げることのない彼に突き放されて。。。
私は宝王玉の力を結集させて、”世界樹の精”の記憶を消したの。
これは、”世界樹の精”としての決まりだっただから。
彼の後に相応しい者は現れなかった。私は必然的にあと1000年を過ごすことになったわ。
1000年のうち、交代ができる時期が2年ほどしかないから。これを逃すと、また1000年。
彼との交渉に失敗して1000年が経って、今度こそ。って思ったんだけど、現れなかったの。
どうやら、彼は1つしかない黄宝王玉をどこかに封印してしまったみたいで。
黄宝王玉があれば、世界のどこかで手に入れた人が、最低限の世界樹の審査をクリアできた人なの。そして所持していれば、世界樹に引き寄せてくれるのに。。。
だから、2回目の交代時期も逃して。。。。現在に至る。って感じかな。
あなたが黄宝王玉を持って来た時には、感激したわ。
あなたたちが牙熊に襲われた時、あの時も直感で、”世界樹の精”としての候補として、助けたの。本来は私の力で助けるつもりだったのが、あなたが”世界樹の実”を口にしたことで、私が力を使う事はなかった。
”世界樹の実”は世界樹が寿命を迎える前に、生るもの。
今までは、そうならないように1000年毎に交代がされてきたから、世界樹が実をつけることもなかった。
黄宝王玉は”世界樹の精”の候補を見つける道具。
でもね、”世界樹の実”は、”世界樹の精”として、選ばれた者だけが触れることが出来るの。
あなたは、触れるどころか、食べて、そして融合した。
黄宝王玉も、すんなりと手に入れた。
もう。あなたしかいないわ。もしかすると、もう”世界樹の精”としての力が始まってるかもしれない。。。
それから、時間が無いということの説明だけどね。
世界樹は交代すると、次の人が、自分の好きなところに世界樹を作るの。世界中どこでもいいのよ?1000年過ごすんですもの。気に入った場所がいいわよね?
世界樹として定着すると、その葉はその時にできた数だけ。新たに芽吹くことはないわ。全ての葉が落ちると世界樹は失われる。これがタイムリミットなの。
”世界樹の実”が落ちて、あなたが食べてから、”世界樹の葉”の落葉スピードが一気に加速したわ。
今までは早くても数カ月に1枚落ちるかどうかだったから。
このスピードでいけば、1~2年ほどで、全ての葉が落ち、世界樹が寿命を迎える。
あなたが心を決めるまでのタイムリミットと考えてもらっていいわ。
もしも、ギリギリで交代すると、あまり遠くの大陸で世界樹として生まれ変わることはできなくなるから、少し余裕をもって、考えた方がいいと思うわよ?---
カルアは一気に話しをした。3000年分の気持ちが一気に噴出したのだろう。
「ところで、カルア。その1回目で断った人ってさ。。。」
「英雄とか言われてる『アルフォン』よ。」
「だよね。その人しかいないよね~。」
「僕はさ、アルフォンの日記を読んだんだ。”世界樹の精”のことは何も書いてなかった。それに、そのノートの中から、黄宝王玉が出てきたんだよ?」
「そんな所に封印してたのね。それは見つけることは難しいわ。でも、2000年も前のノートが良く現存してたわね。どこにあったの?」
「この国の王都にある図書館だよ?とっても不思議なおじいさんがいてね。保管庫の番人って言ってたかな。。。そのおじいさんが魔法扉を開いてくれて、中に進むんだよ?凄いでしょ?それで、世界樹の事なら、この本だよって貸してくれたのが、アルフォンの日記だったんだ。厳重なところだから、2000年前の本も大丈夫だったんだと思うよ。」
「ちょっと聞いていいかな?そのおじいさんが開けてくれた保管庫って、地下になかった?」
「え?そうだよ?良く分かったね。」
「それで、そのおじいさんの名前って聞いた?」
「うん。あ。なんて言ってたっけ?えーと。」
『マロウさん』
声が重なる。
「カルア知ってるの?」
「うん。まぁ。私も行ったことあるし。てか、今は図書館になってるんだぁ。私が行ったときは洞窟の中だったけど。あの人なら、世界樹のことも、本のことも分かるわね。」
「どんな人なの?なんで知ってるの?」
「あの人はね、随分前の”世界樹の精”をしてた人なの。世界樹の精をして、未だに生きてる人はあの人だけだと思う。あの人の姿は見た?腰から下は”樹”だったはずよ?あの人、樹木精霊になってるから。保管庫の番人は表向き。その下には『真理の迷宮』が広がっているの。それの番人。が正しいわ。」
「えぇーーー!!」
「あなたをみて、マロウさんはアルフォンの本を渡し、黄宝王玉を見つけさせたのね。たぶん、”世界樹の実”とか加護なんかが見えたんでしょう。というか、これで、あなたが、二人の”世界樹の精”から、認められた事になるの。もう完全に、次の”世界樹の精”でしょ?」
「・・・・・・・。」
「ね、そういうことだし、お願い。世界樹になって。」
手を合わせて懇願してくる。
「無理だって~。1000年も、でしょ?そんな覚悟もないし、僕、そんな立派な人間じゃないんだよ~~。」
「大丈夫よ。私だってやってこれたんだし、私なんか3000年よ?それに、今すぐって訳じゃないし。2年。いや1年半後までは自由だから。それまでに好きな事して、戻ってきてくれればいいの。1000年経てば、また、自由なのよ?」
畳みかけようとしてくる。後がない分、必死だな。
でも、僕だって、やりたくない。簡単に返事できるような内容ではない。
「少し、考える時間をくれないかな?」
「もちろんよ。話を聞いてくれてありがとう。アル。」
そう言うとカルアの身体が樹の中へ吸い込まれて消えていった。
---僕は、出るはずもない答えを探す事になった。---




