表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新たな出会い編=
30/322

第30話  ~世界樹の精~

 世界樹の元へと戻ると、ジョージは


「さて、本題に移ろう。リリィ。いいかい?」

「はい。どんなことが起きようとも、覚悟は出来ております。」


 そして、細剣レイピアの柄から、翠宝王玉グリーンオーブを外した。

 ジョージはポケットから、そっとアルを出す。


 世界樹。翠宝王玉グリーンオーブ。そして黄宝王玉イエローオーブを持っているアルが並ぶ。


 すると、アルの身体が光を放ち始めた。


 光は徐々に強くなり。。。

 アルの身体がゆっくりと宙に浮きはじめる。。。


 しばらくすると、光はさらに強くなり。。。

 身体の中から、黄宝王玉イエローオーブが出てきた。


『我こそは《世界の樹》の精である。そなた達の願いを叶えようぞ。』

 美しい女性の声が黄宝王玉イエローオーブから聞こえたかと思うと、周りは強烈な光に包まれた。


 突然の強い光に、視界を失う。暫くして目が慣れてきた頃、

「ん。うぅ~ん。」


 聞き慣れた声がする。ジョージは薄ぼんやりとする視界のため、眉に皺を寄せて目を凝らす。


 視線の先には。。。赤くて、角が2本あって、鳥の羽の尻尾のある、見慣れたスライムが「むにゃむにゃ」と言いながら、ごろんと寝返りを打つところだった。


「アルーーーーー!!!」

 ジョージは駆け寄り、アルを抱きしめる。


「んっっ?ジョージ?」

 寝ぼけ眼のアルが目を開ける。


「良かった。ほんとに良かった。。。」

 アルを抱きしめジョージはその場に蹲った。



 抱きしめられた僕の身体に水が落ちてくる。

 上を見上げると、くしゃくしゃの顔をしたジョージがいる。目からは涙が頬を伝り、僕に落ちてきた。


「ジョージ。。。心配かけたみたいで。ごめん。。。連れてきてくれてありがとう。。。ほんとごめんね。」

 僕は心からジョージへ感謝の言葉と謝罪をした。


 そう。今から起こる事への謝罪を前もってしたんだけどね。

 感動なんてものが無くてごめん。

 では。とジョージの腕から飛び降り、大きく息を吸い込む。。。


「ちょっと、待てよ。せかいじゅー!!何かっこつけてんだよ!!出てこいよ!!」

 僕は世界樹に向かって叫ぶ。


「・・・・・。」

 世界樹がキラッと光ったような気がした。

「何が『我こそは・・』だ。結構、あったま悪そうなガキだってバレてんだよ!!」


「アル?なに?急にどうしたの?」

 3人は何が起きているのかも分からず、慌てている。



 時間は遡ること数分前。


---世界樹の元にアルの身体がそっと置かれた。


 僕は動かない身体で目を覚ます。身体が熱い。

 宙に浮き上がるような感覚とともに。。。


『我こそは《世界の樹》の精である。』

 心に直接語りかけられる声。


『我には時間がない。そなたの身体を我に差し出せ。』

 

 え?意味が分からないんですけど。。。夢か?


『・・そなたの身体は我がもらい受ける。』


 いや。だから、唐突になに言ってんの?まぁ夢だろうな。


『・・・そなたの人間の身体が欲しい。』


 いやいやいや。もうおかしいでしょ?脈絡なさすぎてびっくりするわぁ。仕方がないな夢なんだから。


『お前は頭が悪いのか?言葉が分からないのか?』


 どちらかというと、そちらがバカなのでしょうか?


『バカって言う方がバカなんじゃん?』


 やっぱりね。バカでした。世界樹がバカなわけないので、僕はまだ夢の中だな。

 せっかくだから、もう一眠りしよう。


『もう、話になんない。二度寝なんてさせてやらないんだから!!』


 そうして周りは強い光に包まれ。。。。


 

 僕は現実世界に戻り、ジョージに抱きしめられていたのだった。


 そりゃもう。ジョージにとっては感動の再会ですよ。

 でも僕はね~。アホなちびっ子を相手にしていて、それどころじゃなくて。


---我慢できずに叫び出したのでした。---



 さてと。理解不能な世界樹の精とやらに話を付けないことには、身体を乗っ取られる可能性があるからな。

 どうしたものか。。。


「おい。バカがバレるのが怖くて、出てこれないのか?」

 挑発してみる。


 リリィの翠宝王玉グリーンオーブが光ったと思うと、中のシルエットが浮かび上がる。

 そして、妖精フェアリーのシルエットが宝王玉オーブから飛び出す。


 パタパタと美しい妖精フェアリーが飛んでいる。体長は7,8センチといったところか。


「バカって言う方がバカなのよ?だから、あんたの方がバカなのよ!」

 美しい外見とは裏腹な言葉が語られる。


 あぁ。やっぱりね。1回の挑発に乗るとは沸点が低い。お子さまなんだな。

 さっきの不思議な光景を見た3人はポカンとしている。

 そりゃそうだな。あんな、威厳ありそうな感じで出てきた世界樹がまさかの低レベルだとは。ね。


 さて、こうなれば、交渉はもとより、情報も引き出しやすそうだな。


「で?なんで、サクラの身体を欲しがるんだよ?世界樹の精なんだろ?」

「・・・・・・。」

「どういう事だ?なんでサクラの話になるんだ?サクラはダメだ。」

 『サクラ』というワードに反応して、突然ジョージが乱入する。


「私にぴったりだからに決まってるでしょ?年頃も近いし。見た目も悪くないし。私の器にぴったりよ。」


(は?世界樹って伝説になるような樹だろ?そんな若いわけないだろ。)


 僕の中で世界樹の精とやらは、近所の子供くらいの扱いになっていた。


「お前な。冗談もほどほどにしとけよ。サクラはまだ17なんだ。こんな古い樹と同じ年頃なわけがないだろ。」

「失礼ね。私だって17よ!世界樹になった時から、年を取らないから、永遠の17歳なの!!!分かった?」


 分かるわけないだろ。何が『永遠の17歳』だ。どこのアイドルだよ。

 大体、英雄アルフォンの時代には世界樹が確認されているんだから、2000年は確実に年齢を重ねている。


「話に割って入って申し訳ないんだが。。。僕たちに分かるように、順を追って話してはもらえないだろうか?美しい妖精のお嬢さん。」

 ジョージがキラッキラの笑顔でお願いをする。イケメンスキルを発動だ。


「え?美しい?それはそうだけどぉ。仕方ないわね~。」

 世界樹の精がモジモジと身体をくねらせ、照れている。

 ジョージのイケメンスキルは、妖精にも効くらしい。


「えっーと。順番に。でしょ?どこから話をしたらいいのかな?子供の頃に可愛すぎて近所で有名だった話?それとも、私が踊り子でナンバーワンだった辺りから?それとも~。」


 (は?また訳の分からない事を言い出したよ。お前の自慢話など聞いていない。)


「ちょっと待ってくれ。話が見えてこないな。。君は”世界樹の精”なんだよね?どうして”踊り子”の話がでてくるんだい?」

 流石はジョージ。意味不明なおこちゃまにも優しく丁寧に対応する。


「え?だって、踊り子だったから?」

「いや。だからぁ。”世界樹の精”が”踊り子”やれるのかって話だよ。その姿でできるのか?」

 思わず突っ込んでしまう。


「あんた、バカじゃないの?”世界樹の精”が”踊り子”をやれるわけないでしょ?世界樹になる前の話に決まってんじゃない!」


 それって。つまり。。。


「まさかとは思うんだけど。君は。世界樹になる前は?」

「人間に決まってるでしょ?」


『えっっっ~~~~~!!!!』

 僕たちの叫びがコダマする。


「何よ。急に大声出して。びっくりするじゃない。」

「いやぁ。こっちがびっくりや。お嬢ちゃん。」

「うわ。オウムが喋った!」


「ねぇ。ちょっと落ち着きませんか?お茶でもしながら。」

 静かな物腰でリリィが提案する。


「そうだね。驚くことが多すぎて、少し疲れたね。君はどうだい?お茶は飲めるのかな?」

 ジョージは優しく”世界樹の精”に尋ねる。


「え?私?どうなのかな。。。世界樹になってから、そんなこと考えたこともなかったから。」


 そんな遣り取りを構うことなく、リリィはウエストバッグから様々な物を取り出し、程なくして準備が整う。


 テーブルにはクロスがかけられ、バスケットの中にはクッキーとパウンドケーキ・スコーンにチョコレートが入っている。携行用カップにはミントティーが注がれる。


「申し訳ありません。非常時でしたので、簡素な物しか持ってきておりませんが。。。」 


「十分過ぎるやろ。ほな遠慮なく。。。いただきまーす。」

 ホセはそれこそ遠慮なく、パウンドケーキにかぶりついた。

「ふふっ。さ、僕たちもいただこうか。」

「うん!」


 澄み渡る青空、心地よく吹く風。世界樹の木漏れ日の下で、アフタヌーンティーが始まる。


「私も飲んでみようかな。。。」

 世界樹の精はそう言って、小さな小瓶の蓋に注がれたミントティーに口をつける。


「あ。。飲める。妖精フェアリーの姿でも、飲めるよぉ!3000年ぶりのお茶って、すっごくおいし~。」

 お茶に大感激をしている世界樹の精だが、聞き捨てならない事を言った。


「あのさ。3000年ぶりって。。ホントに3000年なの?」

「当り前じゃない。だから誰かに代わってほしいってわけ。」

 クッキーを頬張りながら、世界樹の精が答える。


「じゃ、ゆっくりと話を聞いてもいいかな?君のこと。世界樹のこと。」

「なぁ。その前に名前聞いてもええか?人間なら、名前あるやろ?不便でしゃあないわ。」


 ホセ。ナイスアシスト!確かにその通りだった。


「え?私の名前?えーと。えーっとっ。」

「もしかして思い出せないの?」


「ちょっ~と待って。ど忘れしただけ。3000年も使ってなかったから。もうここまで出てる。。。」

 喉に手を当てばたばたしている。音声が無かったら、毒でも飲んで藻掻き苦しむ姿に見えただろう。


「あー!!!思い出した。良かった~。」

「で、なんて名前なんや?」


「『カルア』っていうの。」

 髪を掻き上げながら、ポーズする。。。

 残念だったな。ど忘れという失態がなければ、格好良く決まっていただろうに。。。醜態のあとのポーズは滑稽なだけだぞ。


「それでね・・・・」と”世界樹の精=カルア”の話が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございました。 小説家になろう 勝手にランキング ↑参加してみました。 クリックで応援していただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ