第30話 ~世界樹の精~
世界樹の元へと戻ると、ジョージは
「さて、本題に移ろう。リリィ。いいかい?」
「はい。どんなことが起きようとも、覚悟は出来ております。」
そして、細剣の柄から、翠宝王玉を外した。
ジョージはポケットから、そっとアルを出す。
世界樹。翠宝王玉。そして黄宝王玉を持っているアルが並ぶ。
すると、アルの身体が光を放ち始めた。
光は徐々に強くなり。。。
アルの身体がゆっくりと宙に浮きはじめる。。。
しばらくすると、光はさらに強くなり。。。
身体の中から、黄宝王玉が出てきた。
『我こそは《世界の樹》の精である。そなた達の願いを叶えようぞ。』
美しい女性の声が黄宝王玉から聞こえたかと思うと、周りは強烈な光に包まれた。
突然の強い光に、視界を失う。暫くして目が慣れてきた頃、
「ん。うぅ~ん。」
聞き慣れた声がする。ジョージは薄ぼんやりとする視界のため、眉に皺を寄せて目を凝らす。
視線の先には。。。赤くて、角が2本あって、鳥の羽の尻尾のある、見慣れたスライムが「むにゃむにゃ」と言いながら、ごろんと寝返りを打つところだった。
「アルーーーーー!!!」
ジョージは駆け寄り、アルを抱きしめる。
「んっっ?ジョージ?」
寝ぼけ眼のアルが目を開ける。
「良かった。ほんとに良かった。。。」
アルを抱きしめジョージはその場に蹲った。
抱きしめられた僕の身体に水が落ちてくる。
上を見上げると、くしゃくしゃの顔をしたジョージがいる。目からは涙が頬を伝り、僕に落ちてきた。
「ジョージ。。。心配かけたみたいで。ごめん。。。連れてきてくれてありがとう。。。ほんとごめんね。」
僕は心からジョージへ感謝の言葉と謝罪をした。
そう。今から起こる事への謝罪を前もってしたんだけどね。
感動なんてものが無くてごめん。
では。とジョージの腕から飛び降り、大きく息を吸い込む。。。
「ちょっと、待てよ。せかいじゅー!!何かっこつけてんだよ!!出てこいよ!!」
僕は世界樹に向かって叫ぶ。
「・・・・・。」
世界樹がキラッと光ったような気がした。
「何が『我こそは・・』だ。結構、あったま悪そうなガキだってバレてんだよ!!」
「アル?なに?急にどうしたの?」
3人は何が起きているのかも分からず、慌てている。
時間は遡ること数分前。
---世界樹の元にアルの身体がそっと置かれた。
僕は動かない身体で目を覚ます。身体が熱い。
宙に浮き上がるような感覚とともに。。。
『我こそは《世界の樹》の精である。』
心に直接語りかけられる声。
『我には時間がない。そなたの身体を我に差し出せ。』
え?意味が分からないんですけど。。。夢か?
『・・そなたの身体は我がもらい受ける。』
いや。だから、唐突になに言ってんの?まぁ夢だろうな。
『・・・そなたの人間の身体が欲しい。』
いやいやいや。もうおかしいでしょ?脈絡なさすぎてびっくりするわぁ。仕方がないな夢なんだから。
『お前は頭が悪いのか?言葉が分からないのか?』
どちらかというと、そちらがバカなのでしょうか?
『バカって言う方がバカなんじゃん?』
やっぱりね。バカでした。世界樹がバカなわけないので、僕はまだ夢の中だな。
せっかくだから、もう一眠りしよう。
『もう、話になんない。二度寝なんてさせてやらないんだから!!』
そうして周りは強い光に包まれ。。。。
僕は現実世界に戻り、ジョージに抱きしめられていたのだった。
そりゃもう。ジョージにとっては感動の再会ですよ。
でも僕はね~。アホなちびっ子を相手にしていて、それどころじゃなくて。
---我慢できずに叫び出したのでした。---
さてと。理解不能な世界樹の精とやらに話を付けないことには、身体を乗っ取られる可能性があるからな。
どうしたものか。。。
「おい。バカがバレるのが怖くて、出てこれないのか?」
挑発してみる。
リリィの翠宝王玉が光ったと思うと、中のシルエットが浮かび上がる。
そして、妖精のシルエットが宝王玉から飛び出す。
パタパタと美しい妖精が飛んでいる。体長は7,8センチといったところか。
「バカって言う方がバカなのよ?だから、あんたの方がバカなのよ!」
美しい外見とは裏腹な言葉が語られる。
あぁ。やっぱりね。1回の挑発に乗るとは沸点が低い。お子さまなんだな。
さっきの不思議な光景を見た3人はポカンとしている。
そりゃそうだな。あんな、威厳ありそうな感じで出てきた世界樹がまさかの低レベルだとは。ね。
さて、こうなれば、交渉はもとより、情報も引き出しやすそうだな。
「で?なんで、サクラの身体を欲しがるんだよ?世界樹の精なんだろ?」
「・・・・・・。」
「どういう事だ?なんでサクラの話になるんだ?サクラはダメだ。」
『サクラ』というワードに反応して、突然ジョージが乱入する。
「私にぴったりだからに決まってるでしょ?年頃も近いし。見た目も悪くないし。私の器にぴったりよ。」
(は?世界樹って伝説になるような樹だろ?そんな若いわけないだろ。)
僕の中で世界樹の精とやらは、近所の子供くらいの扱いになっていた。
「お前な。冗談もほどほどにしとけよ。サクラはまだ17なんだ。こんな古い樹と同じ年頃なわけがないだろ。」
「失礼ね。私だって17よ!世界樹になった時から、年を取らないから、永遠の17歳なの!!!分かった?」
分かるわけないだろ。何が『永遠の17歳』だ。どこのアイドルだよ。
大体、英雄アルフォンの時代には世界樹が確認されているんだから、2000年は確実に年齢を重ねている。
「話に割って入って申し訳ないんだが。。。僕たちに分かるように、順を追って話してはもらえないだろうか?美しい妖精のお嬢さん。」
ジョージがキラッキラの笑顔でお願いをする。イケメンスキルを発動だ。
「え?美しい?それはそうだけどぉ。仕方ないわね~。」
世界樹の精がモジモジと身体をくねらせ、照れている。
ジョージのイケメンスキルは、妖精にも効くらしい。
「えっーと。順番に。でしょ?どこから話をしたらいいのかな?子供の頃に可愛すぎて近所で有名だった話?それとも、私が踊り子でナンバーワンだった辺りから?それとも~。」
(は?また訳の分からない事を言い出したよ。お前の自慢話など聞いていない。)
「ちょっと待ってくれ。話が見えてこないな。。君は”世界樹の精”なんだよね?どうして”踊り子”の話がでてくるんだい?」
流石はジョージ。意味不明なおこちゃまにも優しく丁寧に対応する。
「え?だって、踊り子だったから?」
「いや。だからぁ。”世界樹の精”が”踊り子”やれるのかって話だよ。その姿でできるのか?」
思わず突っ込んでしまう。
「あんた、バカじゃないの?”世界樹の精”が”踊り子”をやれるわけないでしょ?世界樹になる前の話に決まってんじゃない!」
それって。つまり。。。
「まさかとは思うんだけど。君は。世界樹になる前は?」
「人間に決まってるでしょ?」
『えっっっ~~~~~!!!!』
僕たちの叫びがコダマする。
「何よ。急に大声出して。びっくりするじゃない。」
「いやぁ。こっちがびっくりや。お嬢ちゃん。」
「うわ。オウムが喋った!」
「ねぇ。ちょっと落ち着きませんか?お茶でもしながら。」
静かな物腰でリリィが提案する。
「そうだね。驚くことが多すぎて、少し疲れたね。君はどうだい?お茶は飲めるのかな?」
ジョージは優しく”世界樹の精”に尋ねる。
「え?私?どうなのかな。。。世界樹になってから、そんなこと考えたこともなかったから。」
そんな遣り取りを構うことなく、リリィはウエストバッグから様々な物を取り出し、程なくして準備が整う。
テーブルにはクロスがかけられ、バスケットの中にはクッキーとパウンドケーキ・スコーンにチョコレートが入っている。携行用カップにはミントティーが注がれる。
「申し訳ありません。非常時でしたので、簡素な物しか持ってきておりませんが。。。」
「十分過ぎるやろ。ほな遠慮なく。。。いただきまーす。」
ホセはそれこそ遠慮なく、パウンドケーキにかぶりついた。
「ふふっ。さ、僕たちもいただこうか。」
「うん!」
澄み渡る青空、心地よく吹く風。世界樹の木漏れ日の下で、アフタヌーンティーが始まる。
「私も飲んでみようかな。。。」
世界樹の精はそう言って、小さな小瓶の蓋に注がれたミントティーに口をつける。
「あ。。飲める。妖精の姿でも、飲めるよぉ!3000年ぶりのお茶って、すっごくおいし~。」
お茶に大感激をしている世界樹の精だが、聞き捨てならない事を言った。
「あのさ。3000年ぶりって。。ホントに3000年なの?」
「当り前じゃない。だから誰かに代わってほしいってわけ。」
クッキーを頬張りながら、世界樹の精が答える。
「じゃ、ゆっくりと話を聞いてもいいかな?君のこと。世界樹のこと。」
「なぁ。その前に名前聞いてもええか?人間なら、名前あるやろ?不便でしゃあないわ。」
ホセ。ナイスアシスト!確かにその通りだった。
「え?私の名前?えーと。えーっとっ。」
「もしかして思い出せないの?」
「ちょっ~と待って。ど忘れしただけ。3000年も使ってなかったから。もうここまで出てる。。。」
喉に手を当てばたばたしている。音声が無かったら、毒でも飲んで藻掻き苦しむ姿に見えただろう。
「あー!!!思い出した。良かった~。」
「で、なんて名前なんや?」
「『カルア』っていうの。」
髪を掻き上げながら、ポーズする。。。
残念だったな。ど忘れという失態がなければ、格好良く決まっていただろうに。。。醜態のあとのポーズは滑稽なだけだぞ。
「それでね・・・・」と”世界樹の精=カルア”の話が始まった。




