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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新たな出会い編=
29/322

第29話  ~世界樹を見る条件~

 あれから2日が経った午後、ジョージ達が集まっていた。


「日没まであと、4時間あります。どうしますか?」

「4時間もあれば十分とちがうか?」

「いや。ホセ、テント基地跡から世界樹まで、歩いて30分かかる。往復の1時間を抜くと、実際の滞在時間は3時間だ。」


「ジョージ様、質問なのですが、世界樹の付近の座標は登録していないのですか?」

「あぁ。あの付近は登録ができないようなんだ。テント基地跡が一番近い。」


「では、今回は魔法扉マギーゲートを開きます。馬を連れて行きたいですから。私に何かあった場合、日没に向けた時間帯に、30分の道のりを帰ってくるのは危険があります。」


「今日は、リリィの指示に従うよ。」

「それから、私が意識を失うようなことになった場合ですが。。。」


「万が一は、本国のヴォルガさんが来てくれることになっている。」

「父ですか?王の側を離れる許可は?」


「大量の毒妖花についてのことだからね。緊急事態事項として認めてくれるらしいよ。あくまでも万が一が起きたら。だけどね。」



 ヴォルガは、リリィの父であり、賢者としての地位も高い。


 現在、『緑の国』の王室付賢者は3名いる。

 大賢者ウォルゼス・・・リリィの祖父・・・実務は引退している。相談役といったところ。

 大賢者ヴォルガ・・・リリィの父・・・王の側近。常に王の側を離れることは無い。

 賢者リリィ・・・王室付となっているが、ほとんどジョージ達と行動をともにしている。

 この3名だ。

 国の賢者の中でも突出した実力者3名だけが王室付となっている。

 リリィの実力は折り紙付きなのであった。


 その実務上トップの大賢者ヴォルガが、万が一の際は駆けつけるというのだ。

 破格の条件をジョージは取り付けたのだ。

 それだけ、この件がジョージにとって重要事項である。ということの裏付けでもあった。



「ハクゼン。明朝まで帰らない時は、打ち合わせ通りにね。では、行ってくる。」

「お気をつけて。」



 ジョージとリリィは馬に跨り、ホセはジョージの肩に乗る。ジョージのポケットにはアルが眠っていた。


 リリィが小さく呪文を唱えると地面に魔法陣が浮かび上がる。。。リリィはレイピアを抜き、天高く翳すと翠宝王玉グリーンオーブが淡い光を放つ。リリィが魔法陣にレイピアを突き刺すと。。。


 そこはもう、テント基地跡だった。


「あれ?もう着いたんか?ゲートって言うわりに、扉はないんやな。。。」

「ホセ、気付かなかった?リリィの魔法扉マギーゲートはさ・・・」


 リリィが魔法陣を浮かび上がらせた時には頭上には同時にゲートが出現していた。

 彼女の動作に合わせ、レイピアが振り下ろされるのと同じにゲートも降り、レイピアが魔法陣に刺さると、ゲートと魔法陣が重なるように地表に消えた。


魔法扉マギーゲートは開き続けている間は、魔力が消費され続けるんだ。彼女はそれを極力少なくするために、ゲートを一瞬で動かすんだよ?彼女の得意技さ。滅多に見られないけど。」


「たびたび見る様な状況があっては困ります。」

 リリィは静かに答える。


「彼女は天才なんだよ。動く魔法扉マギーゲートなんて、ヴォルガさんでもできないんじゃないの?」

「父は、真面目ですから。ゲートごと動かしてしまうなんて突拍子も無いことを考えないでしょう。こんな事してるなんて知れたら叱られそうですので、黙っていてくださいね。」

「ヴォルガさん、怒ると怖いもんねー。」

 

 中々に凄い話を和やかに話しながら、馬を進める。

 程なくすると世界樹が近づき。。。


「あぁー。久しぶりやな~。ついこの間の事が懐かしく感じるわ~。じゃ、お先~。」

 ホセはジョージの肩を飛び立ち、世界樹の結界へとまっすぐ飛んでゆく。


 すぐそこの空中でホセが藻掻いている。

「おりゃ~。」というかけ声とともにホセの姿が見えなくなった。


「え?なに?ホセさんは?」

 リリィが驚きの表情を見せる。

「僕たちも行こうか。」

 そう言って、ジョージはリリィに手を伸ばす。彼女は促されるままジョージの手を繋ぎ。。


 結界を通り抜けるとホセが待っていた。


「なんや~。おふたりさん。仲ええな~。」

 ニヤニヤとしてホセがからかっている。

 リリィが慌てて手を振りほどく。その顔は赤面している。


「ホセぇ。からかうなよ。結界通り抜けるためって、分かってるだろ?」

 めんどくさそうにジョージが答える。


 二人は馬を降り、世界樹の元へと歩き出す。

 リリィは初めて見る世界樹に圧倒されているようで言葉も無くただその姿を見つめている。


「馬はええんか?」

 ホセは放置された馬を心配していたが、馬たちはおとなしく草をはむ。


「あの子達は、訓練されているからね。僕たちの姿が見えない所には行かないよ。」

 そういえば。。とジョージは続ける。

「ホセは世界樹の場所は見えていたのかい?」


「・・・??当たり前やろ。」

 ホセはジョージの質問の意味が分からずキョトンとしていた。


「・・・どういうことなんだ?君は《世界樹の葉》を持っているのか?」

「持ってるわけないやろ。どうもこうも。そっちこそ、なんなんや?」


「僕は、この前アルと二人で来たときに。。。世界樹が見えなかったんだ。目の前まで近づいていたのに、感じる事さえできなかった。。。」

「でも、今日は迷うことなく来てたやん。」


「そう。アルから《世界樹の葉》の欠片を預かっているから。。僕はてっきり《世界樹の葉》がキーだと思ったんだが。。。違うのか。。。」


「俺は始めっから、葉も雫も持ってへん。。。でも。初めて世界樹のテリトリー出た時も、うっすら見えてたで。」

「リリィはどうだった?」

「私には、ここに入るまで何も。。。なんと言えばいいのでしょう。。ジョージ様に手を引かれなければ、そちらの方向に進む。という考えすら浮かばなかった。。そういう感覚でしょうか?」


「それだ。僕も前回がそうだったんだ。アルから見たら、ワザと世界樹を避けていたようだったと。」


「うーん。世界樹を見つけるキーワードか。確かにな。それが分からんと、次回はない話やな。」

「あぁ。知らずにキーワードを失えば、これから、ここに来ることさえできなくなる。謎を解くなど夢のまた夢だ。」


「俺と、アルと、ジョージ。世界樹のテリトリーに入った者の中での共通点と違いを見つけるんやな。簡単そうやけど。。。分からんな。。。」


「順番に行こう。僕は瀕死の重傷を負って、ここに辿り着いた。ここはみんな共通だよな?」

「そやな。俺は銃で撃たれてここに来た。そのあと、数日眠ってたらしいな。その間はアルが看病してくれてたらしいで。」


「アルはどうだったんだろう?牙熊ファングベアに襲われたというのは聞いたが。」

「あぁ、詳しくは聞いてないが、気がついたらここにいたらしいで。」


「それから、どう過ごした?食事とか。」

「そやなぁ。食べ物なんてここに何も無いしな。。朝露を集めて飲んだ程度やな。アルも同じらしいで?ジョージは何食べてたんや?」


「僕も同じだよ。特に空腹や喉の渇きも感じなかった。。食べ物になりそうなものは、そこに生えている草だけど、何せ空腹感がなかったからね。食べずに済んだよ。」


「そうかぁ。ジョージはさっすが王子様やな。非常事態でも草、食べへんのやな。。俺なら腹減ってなくても、そこら辺のもの囓るわぁ。」

「それは育ちの問題なのか?」


「俺もアルも食いしん坊なんやなぁ。《世界樹の葉》も囓ってもうたわぁ。」

 いやぁ。育ちが悪くてすいませんねー。と頭を掻いている。


「《世界樹の葉》を本当に食べたの?」

「食えたもんじゃなかったわ。流石の俺でも、ひと囓りしかしてへんで。」

「・・・・。」


「リリィ。」

 突然、ジョージがリリィの手を引き、世界樹の安全圏テリトリーの外に向けて走り始めた。

 慌ててホセが追う。

「なんや。《世界樹の葉》食べたんが気にいらんかったのか?そりゃ、貴重なもんかもしれへんけど、その時はそんなレアアイテムだったなんて、知らんかったし。仕方ないやろー。」


「ホセ。君は中で見ていてくれ。僕たちが帰れなかった時には、連れ戻して欲しいんだ!」

 そう言って、安全圏テリトリーを飛び出した。


 ホセは何が何だが分からない。が、結界の中で見守ることにした。


 結界の外に出ると、ジョージ達は後ろを振り返る。

「リリィ。今は何が見えてる?」

「これは不思議な。。。靄がかかったようですが。。。世界樹が見えます。とても薄いですが。。。」



「いいかい?手を離すよ?」

「はい。」

 ジョージがリリィの手をそっと離す。


「今はどうかな?」

「え?えっと。。」

 リリィがきょろきょろと周りを探し始めた。


「やはり、《世界樹の葉》を持っていることもキーワードの一つだね。」


 ジョージは徐に《世界樹の葉》の欠片を破り始めた。3つに分けると

「ホセ、受け取って。」

 結界の中にいるホセに欠片の1つを渡す。

 もう一つをリリィに。


 残る一つを。。。目を瞑り、ジョージは食べた。

 小さな欠片を噛みしめるように食べ終えると、ゆっくりと目を開ける。


「うん。見えるよ。」

 ジョージの口元には小さく笑みがこぼれていた。


 ジョージは結界に手を触れる。押し返すような重圧を感じ、リリィの手を取る。

 リリィの手にある《世界樹の葉》を当て、結界を通り抜けた。


「ただいま。ホセ。」

「なんや。そのやり遂げた感いっぱいの顔は。」


「《世界樹の葉》を食べたんだ。君たちに習って。『食べた者』も世界樹を見るキーワードの一つだったんだ。」

「ホンマか?そんな事で?結構簡単なキーワードやな。」


「そうでもない。怪我の程度によっては、《世界樹の葉》が手元に残るかどうかも分からない。そしてそれを囓るかどうかも。人間であれば、世界樹の伝説はたいていの人は知っている。自分の置かれた状況を判断して、手元に残った物が《世界樹の葉》の欠片であるかもしれない、と思いつくのは難しくないだろう。それを食べてみようとは。。なかなかならないんじゃないだろうか。」


「そうなれば、《世界樹の葉》を使い切った時点で、2度と来ることはできない。アルのように運良く、欠片と完全体を手に入れるものなど。そうはいない。。。2000年前の、英雄アルフォンくらいだろう。」


 そうして3人は、再び世界樹の下まで戻ってきたのだった。


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