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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新たな出会い編=
26/322

第26話  ~魔王降臨~

 僕に忘れ去られた黄宝王玉イエローオーブをジョージが拾い上げる。


 「大切にしないとね。」

 「・・・・・。」


 軽くパニックで。。存在ごと忘れてましたとは言えません。。。


 「これは、持ち主のアルが持つ物だと思うよ?」

 そう言って僕に渡してくれる。


 僕が持ち、太陽に翳す。中に龍のシルエットが浮かぶ。幻想的だ。なんだか吸い込まれてしまうような。。。

 どうすればいいのか。分からない。。。祈るような気持ちで黄宝王玉イエローオーブを見つめる。


 するとどうだろう。その気持ちに反応したかのように、黄宝王玉イエローオーブが仄かな光を放ち始めた。

 それに呼応するように、世界樹が光を帯び始める。。。


 だが、アルフォンの手帳にあったような、強い光は出ない。暫く待ってみたが、変化はない。


 「これが、あの現象だね。確かに不思議ではあるが、強烈な光、と言うほどでもないし。何か起きた気配もないね。」

 「うん。」

 何か肩すかしをくらった気分だ。

 とりあえず、放置もできないので僕の頬袋にこっそりとしまった。


 「1個だけじゃダメなのかもしれないね。泥手マドハンドと毒妖花の調査が終わったら、リリィとマリィも連れてこようか?」

 「なんで?」


 「二人も宝王玉オーブを持ってるから。。。」


 そう言えば、リリィの細剣レイピアの柄に翠宝王玉グリーンオーブがあった。

 ということは、マリィは魔法使いだから、朱宝王玉レッドオーブか?

 

 (あのゴスロリのちびっ子が大魔導師レベルの実力者なのか。。。人は見た目じゃないんだな。)


 魅力的な申し出だが、思うところがある。


 「だけど、二人を連れてくるなら、世界樹のこと、話さなくちゃいけないんじゃない?僕は反対だよ。」

 「そうか。。。宝王玉オーブだけ貸してくれないかな。。。」

 ジョージが顎をさすりながら思案している。


 「とりあえず、一度戻って、合流しないか?判断はいつでも出来るし。そろそろ彼らも目的地付近に陣取った頃だから。」

 ジョージから促される。


 けれど僕の目的はまだ終わっていない。それになんだか一人になりたい気分だった。


 「僕、もう少しここにいたいな。久しぶりだから。のんびりしたい。」

 「そうか。。。。じゃあこうしないか?僕は一旦リリィ達と合流する。それで、夕方、もう一度アルを迎えに来る。どうかな?」


 「え?そうしてくれるなら、僕はすごく嬉しいんだけど。」

 「その代わり、約束をしてくれないか?この安全圏からはどんな事があっても絶対に出ないこと。」


 「それはもちろんだよ。ホセもいないのに怖くて出られないよ。」

 「よし。それなら、一旦、お別れだ。」

 僕の頭をひとしきり撫でたあと、名残惜しそうにジョージはテント基地へ向かった。

 


 そして僕は、もう一つの目的、《世界樹の雫》作成に挑む。

 雨でも、一度《世界樹の葉》を滑り落ちたものは、《世界樹の雫》になっていた。

 ならば、人工的に垂らしてもいけるんじゃないか。それが第2の仮説だ。

 頬袋から、小さな瓶に入れた水を取り出した。


 だが、所詮ただの思いつきだった。上手く行くはずがない。


 だって僕、今ひとりだもん。

 雨がわりの水を葉っぱに垂らす・・・そして垂れ落ちる雫を下でキャッチ。


 簡単そうに思えた。うん。思えたんだよ。考えついた時にはね。


 重力の力って凄いよね。。。

 がんばって、自分で垂らした水を、したたり落ちる前に下でキャッチ。。。

 できるわけねーよ。バカか。浅はかすぎるだろ。誰だよ考えたヤツ。。。僕だな。。。


 あぁ。ホセ連れてくれば良かった。これくらいなら、仮説立証したからといって、秘密にしておくこともない。

 後悔先に立たず。だな。

 

 まだ諦めるのは早いな。こんなこともあろうかと。とは思ってなかったが、第2案も用意してある。

 今度はてっぺんの幹に垂らす。そして、根元で掬い取る。それも少量なら、一気に下まで伝っていかない。これならいけるだろ。


 と考えながら、第一目標地点である世界樹のてっぺんを見上げる。


 そして気がつく。

 (なんだあれ?)


 いつからいたのか。。。そこには人間が立っている。いや正確には浮かんでいる。

 下から見上げるかたちなので、逆光でシルエットしか見えないが、確かに人間で、空中に浮かんでいる。


 (なんかこっち見てない?怖いんですけど。)


 そして人影はゆっくり降下を始めた。

 結界に触れたのだろうか。。一瞬、紫電が走ったように見えた。


 構わず、降下してくる。やはり、僕を認識しているようだ。まっすぐここに向かっている。


 近づくにつれ、姿が見えてきた。

 とても質の良い紫色の生地でできた、ローブのようなものを着ている。ローブにはフードがついており、すっぽりと被って、顔がよく見えない。


 人影が僕の目の前に降り立つ。

 僕はその威圧感に動くことができなかった。。。


 絶対王者のオーラだ。そんな人に出会ったことはないけど。。。そんな感じを受ける。


 「して、そなたは誰だ?」

 

 (え?いきなりですか?第一声がそれ?)

 とは思ったが、どんな人か分からない。とりあえずは答えておこう。

 だが、ここに先にいたのは僕だ。あまり舐められないように気をつけて。。


 「えーと。僕ですか?ブルートスライムの『アル』っていいます。」

 差し障りのない答えにしておいた。


 「アルか。では問おう。ここで何をしておる?」


 (また質問か?てかお前は名乗らないのかよ。)


 「そうであったな。そなたに聞いておいて、名乗らぬのは失礼よの。」

 

 (心の声が読み取られた!!!)


 「驚くようなことではない。余はダルガという。魔王として、モンスターどもを統べておる。」


 「え。えぇぇっぇぇっぇぇーーーーー!!!」


 (やばい。やばすぎる。魔王って。。。つか、心の声、だだ漏れだよ。どうすんだよ。対処法が分かんないよ。)

 そう思ってチラッと見上げると、フードの中の顔が見えた。

 (結構おじいちゃんじゃん。)


 「ふぁっーはっはっは。おじいちゃんか。その通りよの。余も年老いた。2000年に渡り魔王をしておるでな。」


 (聞かれてた。。。終わった。。。完全に詰んだよ。。。短い人生だった。。。)

 諦めの境地だ。


 「そなたは、面白いの。余を目の前に、心の声は飾らず自然で素直だ。余の前に出る者は皆一様に、心が汚い。モンスターであれどもだ。気にすることはない。その心のままに言葉にせよ。特別に許す。」

 大仰に言い放つ。


 もう破れかぶれだ。どうせ死ぬなら、好き勝手やってからにしよ。そう思って口を開く。

 「魔王さま。って結構コワイ人かと思ってましたが、心が広い方なんですね。」


 「ふぁっーはっはっは。本当に面白いスライムよの。余が許しを与えたところで、本当にそうする者は少ない。」

 (え?ダメだったのか?どっちが正解なんだ?)

 

 「気に入った。そなたに大役を任せようではないか。我が魔王軍の一員となれ。余の直属として仕えよ。」


 「え?えぇ?いや、それは困ります。僕、まだやらなきゃいけないことありますし。確かに今、無職ですけども、それ以上に忙しいといいますか。。」

 言葉を濁す。

 そもそも魔王軍が分からない。勝手に就職できないし。僕、モンスターじゃないし。今だけだから。サクラに戻るつもりなんだから。


 「ほう?断る輩も珍しい。ますます欲しくなるではないか。」

 そして暫し考え、

 「ふむ。では、こうしよう。そなたに大役を任せるが、毎日必要ではないのだ。数ヶ月に一度程度の仕事だ。それ以外は何をしておっても良い。軍にも所属させぬ。余の必要あるときのみ相手をせよ。」


 「・・・・・。」

 強引すぎて言葉に詰まる。

 (だいたい、大役ってなんだろうな。。。やるつもりないけど、気になる。。。)


 「そうであるな。説明が必要であろうな。」


 「アルよ。そなたはどうしてここにおる?そしてこの樹がどのような物かを知っておるか?」

 直球できた。


 「僕は、熊に襲われまして、瀕死になってここに辿り着きました。それで、ここで生活したりしてたんですけど。。」


 「そうか。では完全なる認められし者なのだな。ますます良い。」

 一人で納得している。


 「この樹は『世界樹』という。余は、この樹の『葉』が欲しいのだ。手では千切れぬ故、自然に落葉するのを待つのみなのじゃ。その落葉した『葉』を拾い、余に渡す。それが仕事だ。」


 「で、今日はなぜ、こちらに?」

 気になることを連発してくるので、こちらからも質問をしよう。


 「そろそろ落葉のある時期じゃ。様子を見に来たが、落葉はしておらぬ。そなたは拾ってはおるまいか?」

 高速で首を横に振る。


 「そうであるか。仕方ない。落葉のペースは掴めぬ故にな。」

 

 「しかし。困ったものよ。。。」

 魔王が目を閉じ考えている。


 「どうしたんですか?」

 「そろそろ《世界樹の葉》が必要でな。。。次の落葉が間に合うかどうか。。。」


 「え?何に使うんですか?」

 僕が質問をすると徐に魔王が動く。僕の額に指をあてた。

 目を瞑りそしてゆっくりと頷く。


 「ふむ。余には最愛の妻がおる。しかし身体に問題があってな。葉の力で長らえておるのじゃ。」 

 そういってかぶりを振り深くため息をつく。

 そして魔王の指から映像が頭の中に流れてくる。

 

 ベッドに寝かせられた女性。眠っているようだが、その姿を一見するだけで、相当な美人であることが理解できる。金髪の柔らかくウエーブした髪。その額には小さな角が見えている。胸の上で組んだ手の指は赤く長い爪が伸びている。魔族なのだろうか。。。


 (それにしてもお人形さんみたいに綺麗な人だな~。若そうだし、おじいちゃんのお嫁さんにはもったいなくないか?それとも権力でも使ったのか?)

 しまった!また心でとんでもない事を。心を読まれたら。。。恐る恐る魔王を見ると。。。


 「よ、余は、権力を使ったわけではないぞ?確かに余の一目惚れではあったが、きちんと交際期間を経ての恋愛結婚である。相思相愛のはずじゃ。。。」

 

 え?この人魔王ですよね?なんか顔を赤らめながら、慌てふためいてモジモジしながら弁明してくる。

 魔王なのに、悪い人に見えなくなってきた。

 今なら、怒らなさそうだし、ちょっと面白いからもう少し被せてみるか。


 「でもさ。魔王さま。恋愛結婚なら告白とかプロポーズとかしたんでしょ?どっちからしたの?」

 「それはもちろん余からである。男からするのが当然であろう?女性にそんな恥ずかしい思いをさせることはあってはならぬ。」


 「ということはですよ?魔王さまから告白されて、怖くて断り切れず、お付き合いをしていたら、さらにプロポーズをされてしまい、後に引けなくなった。ってこともあると思うんですよ。もしくは金と権力が大好きだったとか。」


 「妻を侮辱することは許さぬ。彼女は余が望んでも華美にしようとはせぬ。その分は、他の者たちに分け与えるべきだと。そして余の名を使って私利私欲を満たすこともせぬ。」

 「それに。。。」

 もごもごと小さい声で

 「愛してるとも言ってくれるぞ。」


 魔王が愛まで語り始めたんですけど。。。

 でも、いろいろ聞いてしまったし奥さん大好きそうだし。ちょっと可哀想だな。僕のせいで奥さんが死んだら後味悪いしな。。。

 魔王軍が何か悪さしてる話もあんまり聞いたことないし。。。


 「あのさ。これ。。。」

 そう言って≪世界樹の葉≫の欠片の一番小さいヤツを差し出す。


 「これは?」

 「足りないと思うんですけど。。。僕、ここに来たのつい最近なんですよね。だから、≪世界樹の葉≫が無いのって、もしかして僕が原因なんじゃないかぁ~と。でその時の余りの欠片を持ってたんで。。。」


 「なんという心遣い。。。スライムであるのに知性があるとは思っていたが、これほどまでとは。。。だが、これは受け取れぬ。これがあれば、妻の時間に余裕ができるのは確かじゃ。しかし、そなたは知らぬだろうが、それを失えば、そなたはここに自由に出入りすることができなくなるのだ。」


 「それにのう。それがあれば、万一そなたが大怪我を負ったとしても、治すこともできるのだ。そなたの物を余が奪う訳にはゆかぬ。その心遣いだけ有難く受け取っておこう。」

 

 なんか魔王なのに正論を語るし。。優しいし。。下手な人間よりまともじゃん。


 「そういうことであるから、そなたにはこれを。通信用の魔宝玉じゃ。≪世界樹の葉≫を見つけたら、連絡を入れよ。」

 「魔宝玉には、余の加護をかけておる。弱モンスター程度であれば、寄り付きもせぬであろう。」


 「≪世界樹の葉≫がないのであれば、長居は無用であるな。余は帰る。」

 「では、良い知らせを待っておるぞ。ブルートスライムのアルよ。」


 そう一方的にマシンガントークを終えて、さっさと帰っていった。


 (あ。仲間にはするんだね。そして勝手に終了するんだね。。なんという自由人。。。)


 後には、茫然自失となった僕が一人、取り残されていた。


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