第24話 ~およめさん~
夕食は僕とホセだけだった。
リリィとジョージは緊急会議とやらで、留守にしている。
「で、どうやった?図書館?」
「あぁ。王都なだけあって、すっごくたくさんの本があったよ。。ところでジョセフィーヌちゃんは?」
「疲れが出たんやろうな。。熱出してしまって、今は眠ってる。」
「そっか。短い間にいろいろありすぎたもんなぁ。早く元気になるといいね。」
(図書館でのことは、まだ、詳しくは言えないな。。。)
「あぁ。そうそう。そう言えば、僕の名前『アル』になったから。どっかの国の言葉でね”赤い”って意味らしいよ?なかなか良いだろ?」
「え?」とホセ
「え?」と僕
「えぇぇ----?ホンマかいな。不味いんと違うか?今朝、食堂で話してたアレやろ?みんなで決めよう的な話になってたやん。怖面のおっちゃんが言うてたやん。流石の俺でも、「あ。あれ決まりましたわ。」なんてよう言わんわぁ。」
「やっぱ、マズイかなぁ。僕もそう思ったんだけど、気付いたのが名前付けちゃった後でさ。。それはそれで、ジョージが付けてくれたのに、「やっぱそれ待った。」って言えないじゃん?」
「まぁ。あの怖面のおっちゃん?シェフのガルンさんだっけ?あぁ見えて、人は良さそうだし、隊員のみんなだって、ダメってことはないやろうけど、あの感じじゃ、名前の候補、考えまくってる可能性はあるわな。みんな今日一日、休みだったらしいから。」
(これは。。マズイかな?傷が浅いうちに話をしてこようかな。。。でも一人じゃ。。)
チラッとホセを見る。
「俺を巻き込まんといてや~。ジョージから発表してもらったらええんとちゃうか?」
(くっ。人ごとだと思って、涼しい顔しやがって。。。)
なんだかんだ考えてみた結果、どうせ場は荒れる。酒が絡むとめんどくさい。みんながシラフの時を狙おう。
ということで、明日の朝食時、みんなが集まった席で、サラッと言ってみよう!となった。
深く考えたところで、状況は変わらない。なので、まっいっか。と考えるのを放棄する二人なのであった。
今朝は肌寒く、僕はサクラの首元にすり寄り、長い黒髪に埋もれるように眠っていた。
(あったかくて、きもちいい。。。良い匂いがするぅ。。。)
微睡みの中でちいさく微笑む。。。
突然、後ろから押される感覚が。。。サクラの首に身体が押しつけられる。
「んー。ふがっ。う゛ぅ。」
挟まれて声が出ない。そして、いろんな意味で嫌な予感しかしない。
「ぷはっ。」
身体を変形させ、やっとの事で這い出る。
(よし、冷静に。。状況を確認しよう。)
期待を裏切らず、犯人はジョージ。っと。
現在ジョージはサクラの首元に顔を埋めて寝ている。そして抱きつくようにサクラの向こう側の肩に手を添えている。
(フッ。毎度毎度、えぇ度胸しとるやんけ。)
怒りで、あやしい訛りが出てしまった。落ち着こう。ちょっと深呼吸だ。
「フーーーーー。」
息を吐いて。。。吸いこ。。。。
「どりゃぁぁぁぁ!!!」
ジョージの鳩尾めがけて頭突きをかます。
息を吸うまで我慢できなかったな。まぁいい。
「うっ。」
ジョージがおなかを押さえて、サクラから離れた。よし。すかさずサクラの上に陣取る。
「はっーはっはっは。痛いかね?ジョージ君。僕がいつまでもポヨポヨしたスライムだと思うなよ。」
大仰に宣言する。
そう、僕は暇な時間には”スライム研究”をしているのだ。
そして最近取得したのだ。『ちょっと堅くなる』を。
バカにしてはいけない。”ちょっと”でも、こうして役に立つ時があるのだ。修行の成果だ。
「アル。今朝はずいぶん力強い目覚ましだね?」
「ちがーう!!ジョージがサクラに抱きついて眠ってたから、天誅だっ!!」
「ふふっ。今日もアルはかわいいね。きっとサクラちゃんに意識があったら、そんな感じで怒られるんだろうね~。早く目を覚ましてくれないかな~。」
その通りだよ。サクラでも怒るよ!いやそれ僕だから!今リアルタイムに怒ってるから!
てか、頭突き喰らってなんで嬉しそうなんだよ!
そしてジョージを見れば。。。サクラの髪を掬い上げ、匂いを嗅いでいる。。。
「何してるんだよ?」
「え?さっき良い匂いがするなー。と思ったから、サクラちゃんからかなぁって思って。確認してたんだ。」
「は?」
「やっぱりさくらちゃんからだね~。きっと昨日は”花風呂”に入ったんだね~。」
「・・・・・・・。」
呆れて言葉が出ない。
そして、
「ねぇ。アル?ちょっといいかな。君の意見を聞きたいんだけど。」
真面目な顔で僕を見る。
(急になんだ?世界樹のことか?宝王玉のことか?)
どんな難しいことでも。。。と身構える。
「眠ってる女の子をお嫁さんにって。できるのかな?」
「・・・・・・・・・は?」
「だからさぁ。サクラちゃん。僕のお嫁さんにできないかなーって。」
「いやいやいやいや。それ犯罪でしょ?てか、サクラの気持ちは?目が覚めたら、知らない人のお嫁さんになってたとか。ないでしょ!」
「ダメかなぁ?自分でいうのもアレなんだけど、結婚相手としてみるなら、僕は結構優良物件だと思うんだよね?嫌われないと思うな。。。いや、むしろ大好きになってもらう自信があるよ!」
(どっから湧き出るんだよ?その自信・・・)
「どうかな?僕、結構お給料いいしさ、モテるけど浮気しないし、王様にはならないから、お嫁さんたくさんもらう心配もないよ?容姿も悪くないと思うんだ。なんなら、サクラちゃんの国に移住しても構わないしさ。」
(なんか、すごいアピールしてくるんですけど。。そして所々に自慢を混ぜ込んでくるんですけど。。何なの?この人。。。僕は面接官じゃないっつーの。)
「けどさ。ジョージ。。毎朝思うんだけど、なんでそんなにサクラが好きなんだよ。怪我をして眠ってる所を拾っただけだし。会話もしたことないしさ。見た目だけで決める事じゃないでしょ?サクラの性格が極悪かもしれないじゃん。」
「それなんだよね。僕も不思議でさ~。容姿はもちろんドストライクだよ?小柄で華奢で。抱きしめたら壊れてしまいそうで、守ってあげたくなるよね。肌は白くてきめ細かくて。唇は名前通り桜の花びらのように可憐だ。まつ毛も長くて、目はきっと開けたらくるっと大きめな感じだよね?とろけるような質感のこの黒髪も美しいよね。」
聞いてるこっちが恥ずかしい。。。
「それに、話したことも無いのに、なんだかとても近く感じるんだ。心が繋がっていくような。不思議な感じ。それが、日々強くなっていくんだ。もうこれは運命だよね?」
(いや。中身はここにいるんでね。近くも感じるよね?つーかこれ、僕が告られてんの?)
「とりあえず、今は無理だよね?サクラが目を覚ましたら、直接告白すれば?」
「そっか。やっぱりダメかぁ。保護者の君を落とせば、いけるかなーって思ったんだけど。。。」
サクラの髪をクルクルと指に巻き付けながらジョージが拗ねていた。
もうついていけない。イミガワカラナイ。。。僕の思考回路はショート寸前だよ。。。
朝食は打ち合わせがてら、隊員宿舎の食堂で取ることになっているらしく、ジョージと向かう。
「ところでアル。今日の予定は?」
「僕は、今日も図書館に行きたいんだけど。世界樹の方はあれ以上の情報はないだろうから、今度はサクラの状態を調べたいと思ってるよ。」
「そうか。それはいいね。マロウさんに聞けば、上層階も下層階も全部知ってるからね。あとで、僕の魔法鍵を渡すよ。」
「え?ジョージは行けないの?」
「僕はこれから2.3日出張だね。覚えてるかな?遠征帰りに後発隊が遭遇した、泥手と毒妖花の群生地。あの場所の調査と、被害が出ないよう、ある程度の対策をとってこようと思ってるんだ。」
「え?もう行くの?一昨日の話だよね?」
「もちろんだよ。昨日の軍の連絡会議で、許可も取ったし、昨日の夜は幹部で緊急会議も開いたしね。危険なことはすぐに対処しないと。その為の最終打ち合わせを今からするんだよ。」
(迅速すぎる。ジョージ仕事はできるんだよな。。。)
それもそのはずだった。灰狼討伐隊の正式名称は、『第一方面遊撃隊』という。
ジョージが指揮するのは『第一方面隊』であるが、その中で、ジョージ直轄の特別部隊なのだ。
直轄特別部隊というと、聞こえがいいが、軍隊として行動するには”個”はいらない。だが、馴染めないものがいるのも確かだ。
そんな”特別”個性豊かで軍に馴染めない人を集めた”部隊”。。。略して”特別部隊”だ。
喧嘩っ早い者。スタンドプレー好きな者。無口すぎて報告すら出来ない者。才能ありすぎて上司に睨まれた者。自分時間で動く者。言われたことはやらないが、好きなことなら想像以上の成果を出す者。などなど。
ある意味、優秀だが、ある意味、使い物にならない。そんな者達が集まっている。
少しずつジョージが声をかけたり、引き抜いたり、徐々に人数は増え、現在47名が所属している。
その中でもトップ10に入るのが、銀狼討伐部隊の7名と、リリィである。
そして意外にもシェフのガルンもこの中に入る。料理好きが高じて、獲物を自分で調達するようになり、食材としてモンスターに手を出しているらしい。食べてみたくなれば、強モンスターにも向かっていくそうだ。必然的にモンスター討伐能力も上がった。
『第一方面遊撃隊』は籍は軍にあるが、ジョージ子飼いの部隊として、指示命令や活動は完全に独立している。
常にジョージの命令に迅速に動けるように。と、王城敷地内に特別に宿舎もあるのだった。
「ねぇねぇ。ジョージ。泥手の所から、世界樹は遠いかな?」
「ん?世界樹?ちょっとあるね。行きたかったかい?」
「うん。近いなら、僕も一緒に行って、世界樹を直接見てこようかな。と。黄宝王玉も試してみたくて。」
「ほう。ほう。」とジョージが頷いている。
「そうだね。図書館の本より、実物を観察する方が良いよ。」
「でも遠いんだよね。今回は諦めるよ。」
「いや。そんなことは無いよ。テントを貼った場所の座標は登録してあるし。僕は飛翔移動魔法も使えるし。テントからなら、世界樹まではそんなに遠くなかったよね。。」
「連れてってくれるの?」
「当たり前だよ。ここで恩を売って、サクラちゃんとの事、認めてもらおうかな。と」
僕が睨み付けるとジョージは「冗談だよ。。」と言いながら、笑顔で目線を逸らした。
そうこうしているうちに、食堂についた。




