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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=緑の国 王都編=
24/322

第24話  ~およめさん~

 夕食は僕とホセだけだった。

 リリィとジョージは緊急会議とやらで、留守にしている。


 「で、どうやった?図書館?」

 「あぁ。王都なだけあって、すっごくたくさんの本があったよ。。ところでジョセフィーヌちゃんは?」

 「疲れが出たんやろうな。。熱出してしまって、今は眠ってる。」

 「そっか。短い間にいろいろありすぎたもんなぁ。早く元気になるといいね。」


 (図書館でのことは、まだ、詳しくは言えないな。。。)


 「あぁ。そうそう。そう言えば、僕の名前『アル』になったから。どっかの国の言葉でね”赤い”って意味らしいよ?なかなか良いだろ?」


 「え?」とホセ

 「え?」と僕


 「えぇぇ----?ホンマかいな。不味いんと違うか?今朝、食堂で話してたアレやろ?みんなで決めよう的な話になってたやん。怖面のおっちゃんが言うてたやん。流石の俺でも、「あ。あれ決まりましたわ。」なんてよう言わんわぁ。」


 「やっぱ、マズイかなぁ。僕もそう思ったんだけど、気付いたのが名前付けちゃった後でさ。。それはそれで、ジョージが付けてくれたのに、「やっぱそれ待った。」って言えないじゃん?」


 「まぁ。あの怖面のおっちゃん?シェフのガルンさんだっけ?あぁ見えて、人は良さそうだし、隊員のみんなだって、ダメってことはないやろうけど、あの感じじゃ、名前の候補、考えまくってる可能性はあるわな。みんな今日一日、休みだったらしいから。」


 (これは。。マズイかな?傷が浅いうちに話をしてこようかな。。。でも一人じゃ。。)

 チラッとホセを見る。

 「俺を巻き込まんといてや~。ジョージから発表してもらったらええんとちゃうか?」

 

 (くっ。人ごとだと思って、涼しい顔しやがって。。。)

 

 なんだかんだ考えてみた結果、どうせ場は荒れる。酒が絡むとめんどくさい。みんながシラフの時を狙おう。

 ということで、明日の朝食時、みんなが集まった席で、サラッと言ってみよう!となった。


 深く考えたところで、状況は変わらない。なので、まっいっか。と考えるのを放棄する二人なのであった。



 

 今朝は肌寒く、僕はサクラの首元にすり寄り、長い黒髪に埋もれるように眠っていた。

 (あったかくて、きもちいい。。。良い匂いがするぅ。。。)

 微睡みの中でちいさく微笑む。。。


 突然、後ろから押される感覚が。。。サクラの首に身体が押しつけられる。

 「んー。ふがっ。う゛ぅ。」

 挟まれて声が出ない。そして、いろんな意味で嫌な予感しかしない。


 「ぷはっ。」

 身体を変形させ、やっとの事で這い出る。


 (よし、冷静に。。状況を確認しよう。)


 期待を裏切らず、犯人はジョージ。っと。

 現在ジョージはサクラの首元に顔を埋めて寝ている。そして抱きつくようにサクラの向こう側の肩に手を添えている。


 (フッ。毎度毎度、えぇ度胸しとるやんけ。)

 怒りで、あやしい訛りが出てしまった。落ち着こう。ちょっと深呼吸だ。


 「フーーーーー。」

 息を吐いて。。。吸いこ。。。。

 「どりゃぁぁぁぁ!!!」

 

 ジョージの鳩尾めがけて頭突きをかます。

 息を吸うまで我慢できなかったな。まぁいい。


 「うっ。」

 ジョージがおなかを押さえて、サクラから離れた。よし。すかさずサクラの上に陣取る。


 「はっーはっはっは。痛いかね?ジョージ君。僕がいつまでもポヨポヨしたスライムだと思うなよ。」

 大仰に宣言する。


 そう、僕は暇な時間には”スライム研究”をしているのだ。

 そして最近取得したのだ。『ちょっと堅くなる』を。

 バカにしてはいけない。”ちょっと”でも、こうして役に立つ時があるのだ。修行の成果だ。 

 

 「アル。今朝はずいぶん力強い目覚ましだね?」

 「ちがーう!!ジョージがサクラに抱きついて眠ってたから、天誅だっ!!」


 「ふふっ。今日もアルはかわいいね。きっとサクラちゃんに意識があったら、そんな感じで怒られるんだろうね~。早く目を覚ましてくれないかな~。」

 

 その通りだよ。サクラでも怒るよ!いやそれ僕だから!今リアルタイムに怒ってるから!

 てか、頭突き喰らってなんで嬉しそうなんだよ!


 そしてジョージを見れば。。。サクラの髪を掬い上げ、匂いを嗅いでいる。。。


 「何してるんだよ?」

 「え?さっき良い匂いがするなー。と思ったから、サクラちゃんからかなぁって思って。確認してたんだ。」

 「は?」

 「やっぱりさくらちゃんからだね~。きっと昨日は”花風呂”に入ったんだね~。」

 「・・・・・・・。」

 呆れて言葉が出ない。


 そして、

 「ねぇ。アル?ちょっといいかな。君の意見を聞きたいんだけど。」

 真面目な顔で僕を見る。


 (急になんだ?世界樹のことか?宝王玉オーブのことか?)

 どんな難しいことでも。。。と身構える。


 「眠ってる女の子をお嫁さんにって。できるのかな?」

 「・・・・・・・・・は?」


 「だからさぁ。サクラちゃん。僕のお嫁さんにできないかなーって。」

 「いやいやいやいや。それ犯罪でしょ?てか、サクラの気持ちは?目が覚めたら、知らない人のお嫁さんになってたとか。ないでしょ!」


 「ダメかなぁ?自分でいうのもアレなんだけど、結婚相手としてみるなら、僕は結構優良物件だと思うんだよね?嫌われないと思うな。。。いや、むしろ大好きになってもらう自信があるよ!」


 (どっから湧き出るんだよ?その自信・・・)


 「どうかな?僕、結構お給料いいしさ、モテるけど浮気しないし、王様にはならないから、お嫁さんたくさんもらう心配もないよ?容姿も悪くないと思うんだ。なんなら、サクラちゃんの国に移住しても構わないしさ。」


 (なんか、すごいアピールしてくるんですけど。。そして所々に自慢を混ぜ込んでくるんですけど。。何なの?この人。。。僕は面接官じゃないっつーの。)


 「けどさ。ジョージ。。毎朝思うんだけど、なんでそんなにサクラが好きなんだよ。怪我をして眠ってる所を拾っただけだし。会話もしたことないしさ。見た目だけで決める事じゃないでしょ?サクラの性格が極悪かもしれないじゃん。」


 「それなんだよね。僕も不思議でさ~。容姿はもちろんドストライクだよ?小柄で華奢で。抱きしめたら壊れてしまいそうで、守ってあげたくなるよね。肌は白くてきめ細かくて。唇は名前通り桜の花びらのように可憐だ。まつ毛も長くて、目はきっと開けたらくるっと大きめな感じだよね?とろけるような質感のこの黒髪も美しいよね。」


 聞いてるこっちが恥ずかしい。。。


 「それに、話したことも無いのに、なんだかとても近く感じるんだ。心が繋がっていくような。不思議な感じ。それが、日々強くなっていくんだ。もうこれは運命だよね?」


 (いや。中身はここにいるんでね。近くも感じるよね?つーかこれ、僕が告られてんの?)


 「とりあえず、今は無理だよね?サクラが目を覚ましたら、直接告白すれば?」

 「そっか。やっぱりダメかぁ。保護者の君を落とせば、いけるかなーって思ったんだけど。。。」

 サクラの髪をクルクルと指に巻き付けながらジョージが拗ねていた。

 

 もうついていけない。イミガワカラナイ。。。僕の思考回路はショート寸前だよ。。。




 朝食は打ち合わせがてら、隊員宿舎の食堂で取ることになっているらしく、ジョージと向かう。

 

 「ところでアル。今日の予定は?」

 「僕は、今日も図書館に行きたいんだけど。世界樹の方はあれ以上の情報はないだろうから、今度はサクラの状態を調べたいと思ってるよ。」


 「そうか。それはいいね。マロウさんに聞けば、上層階も下層階も全部知ってるからね。あとで、僕の魔法鍵スペルキーを渡すよ。」

 「え?ジョージは行けないの?」


 「僕はこれから2.3日出張だね。覚えてるかな?遠征帰りに後発隊が遭遇した、泥手マドハンドと毒妖花の群生地。あの場所の調査と、被害が出ないよう、ある程度の対策をとってこようと思ってるんだ。」

 「え?もう行くの?一昨日の話だよね?」


 「もちろんだよ。昨日の軍の連絡会議で、許可も取ったし、昨日の夜は幹部で緊急会議も開いたしね。危険なことはすぐに対処しないと。その為の最終打ち合わせを今からするんだよ。」


 (迅速すぎる。ジョージ仕事はできるんだよな。。。)

 

 それもそのはずだった。灰狼アッシュウルフ討伐隊の正式名称は、『第一方面遊撃隊』という。

 ジョージが指揮するのは『第一方面隊』であるが、その中で、ジョージ直轄の特別部隊なのだ。

 

 直轄特別部隊というと、聞こえがいいが、軍隊として行動するには”個”はいらない。だが、馴染めないものがいるのも確かだ。

 そんな”特別”個性豊かで軍に馴染めない人を集めた”部隊”。。。略して”特別部隊”だ。

 

 喧嘩っ早い者。スタンドプレー好きな者。無口すぎて報告すら出来ない者。才能ありすぎて上司に睨まれた者。自分時間で動く者。言われたことはやらないが、好きなことなら想像以上の成果を出す者。などなど。


 ある意味、優秀だが、ある意味、使い物にならない。そんな者達が集まっている。


 少しずつジョージが声をかけたり、引き抜いたり、徐々に人数は増え、現在47名が所属している。


 その中でもトップ10に入るのが、銀狼シルバーウルフ討伐部隊の7名と、リリィである。


 そして意外にもシェフのガルンもこの中に入る。料理好きが高じて、獲物を自分で調達するようになり、食材としてモンスターに手を出しているらしい。食べてみたくなれば、強モンスターにも向かっていくそうだ。必然的にモンスター討伐能力も上がった。


 『第一方面遊撃隊』は籍は軍にあるが、ジョージ子飼いの部隊として、指示命令や活動は完全に独立している。

 常にジョージの命令に迅速に動けるように。と、王城敷地内に特別に宿舎もあるのだった。




 「ねぇねぇ。ジョージ。泥手マドハンドの所から、世界樹は遠いかな?」

 「ん?世界樹?ちょっとあるね。行きたかったかい?」


 「うん。近いなら、僕も一緒に行って、世界樹を直接見てこようかな。と。黄宝王玉イエローオーブも試してみたくて。」


 「ほう。ほう。」とジョージが頷いている。


 「そうだね。図書館の本より、実物を観察する方が良いよ。」

 「でも遠いんだよね。今回は諦めるよ。」


 「いや。そんなことは無いよ。テントを貼った場所の座標は登録してあるし。僕は飛翔移動魔法も使えるし。テントからなら、世界樹まではそんなに遠くなかったよね。。」

  

 「連れてってくれるの?」

 「当たり前だよ。ここで恩を売って、サクラちゃんとの事、認めてもらおうかな。と」

 僕が睨み付けるとジョージは「冗談だよ。。」と言いながら、笑顔で目線を逸らした。

  

 そうこうしているうちに、食堂についた。

  

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