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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=緑の国 王都編=
18/322

第18話  ~ジョージとは~

 林を抜けた先には。。。

 

 整えられた美しい庭園。そしてその先には。。白く聳え立つ建物が。。。

 王城だ。

 まさか。。。


 「では、我々はここで。」

 鞭使いのロイが左へ曲がる。その先には宿舎のような建物があった。


 (焦った~。そっちか~。そうだよね。さすがにお城はね。。。正面にあるから宿舎が目に入らなかった。。。)

 ホッと胸を撫で下ろす。家がお城ってね。そりゃつまり。アレだものね。

 (あ~。早とちりした。恥ずかしい。。。)

 心の中で苦笑いする。


 「僕たちの部屋はもう少し先だから。。。」

 そう言って、サクラを抱えたジョージが歩みを進める。

 ハクゼン、リリィ、ホセとジョセフィーヌちゃんとともに、ジョージに続く。



 いくつかの宿舎を通り過ぎる。まだ先に進む。これ以上行くと完全にお城に着いちゃうんですけど。。。

 いや、司令官ならね。いつでも守れるようにとかで中に部屋があったりね。。

 リリィさんも賢者だし。。。だが、執事のようなハクゼンさんの存在で、不安が拭い去れない。。。



 そして、ぐるぐると考える僕には関係なく、到着してしまう。王城に。。。

 だが、通用口らしき扉から入り、質素な廊下を見て、ひとまず安心。。。したのは束の間、ジョージはどんどんと奥に進む。


 奥に進むにつれ、雰囲気が変わっていく。。。廊下には美しいレリーフが施され、その上から天井に続き絵が描かれている。。扉はより重厚になっていき。。

 ジョージとすれ違う人々は、足を止め、道をあけ、お辞儀をする。

 それに対し、ジョージは気にするようでもなく、軽く会釈で返し、廊下の真ん中を進んで行く。。。


 僕の不安は確信に変わりつつある。。。次が決まるまで、暫く友達の家で居候しまーす。。。って感じじゃないよね???

 もう泣きたくなってきた。。。

 

 「さぁ。僕の部屋に着いたよ。」

 ジョージが一際大きな扉の前で止まる。扉には、ジョージのテントで見た同じレリーフがあしらわれている。


 そしてその両サイドには使用人らしき者が立ち、重厚な扉を開けてくれる。

 中に入ると、ちょっとしたパーティーが出来そうな広さがあった。


 

 左奥には執務室にあるかのような、玉案と揃いの書架がある。

 正面奥には革張りのゆったりとしたカウチソファーが置かれている。テーブルランナーの上には花が飾られ、テーブルを彩っている。


 右側には天蓋付ベッド。。。その大きさが普通ではない。。。テントで見たベッドも大きかったが、その3倍はある。大きさも装飾も。。。


 窓はアーチ型の窓枠で、真ん中の扉を開けるとバルコニーに続いている。。。


 

 言葉を失う僕をよそに、ハクゼンとリリィはお茶の準備し、ジョージはサクラをベッドに寝かせている。


 ホセはジョセフィーヌとバルコニーに出て、中庭を眺めている。


 ジョージは僕を抱え上げ、ベッドへ連れて行く。

 「ほら、僕の言った通りだろう?このベッドなら、みんなで一緒に寝たって、ゆったり眠れるだろう?」

 得意げにベッドに腰掛ける。



 「そっ。そんなことより。。。ジョージって何者なの?」

 「俺も気になってたわ~。もうコレは、軍の司令官だの、貴族だのってレベルやないで。」

 バルコニーからホセが飛んできた。


 「あれっ?僕言ってなかった?」

 いたずらっぽい笑顔でジョージが言う。


 「僕、仕事は軍の司令官もやってるよ。まぁ人間の敵はほとんど攻めてこないからね。普段は、自由気ままに、獣やモンスターの討伐とか、そのついでに地方の視察と施策をおこなっているかな。」


 「そっちやない、聞きたいのは仕事の内容やなくて、身分の方や。」

 急かすホセに、ジョージはくすくす笑いながら、


 「あぁ。そっち?僕は生まれも育ちもこの宮殿で。。。」

 ワザとゆっくり話して、「で?」と苛立つホセを見て楽しんでいる。


 「王様が、父親だから、僕は王子様ってことになるのかな?」

 いじわるなドヤ顔で、ホセを見ている。


 (あぁ。マジか。。。)

 あまりにも現実離れしすぎた身分のジョージが遠いよ。聞いてしまったからには、『ジョージ』って呼び捨てにもしづらくなった。


 驚愕を受けて、ちょっと引いている僕たちに、


 「僕はハッキリ言ったよ。『眠れる森の美少女には王子様のキスだよ。』って。だから分かってるかと思ってたんだけど。。。気付いてなかったみたいだね。」


 「えーーーー!!そういうのは、比喩表現かと思うじゃん!!!!」

 (あっ。つい突っ込んでしまった。。。)

 「ごめん。ジョ、ジョージさ、ま。。。」

 思わず、いつもの調子で、失敗した。と思って、謝ろうとしたら、ぎこちなくしどろもどろになってしまった。


 「はっーはっは。今まで通りでいいんだよ?僕は何も変わってないし、これからも変わらない。それに、僕は王位継承権を持ってないから、王族ではあるけど、最低ランクさ。だから、きままな生活を送れるんだけどね。」

 ジョージがおなかを抱えて笑っている。やっぱり、ワザと僕たちの反応を試し見て、面白がってたんだ。。。

 だが、その様子は、これ以上深く追求することを拒んでいるかにも思えた。


 

 僕たちはリリィとハクゼンが用意してくれたお茶を飲みながら、話題を変え、ゆっくりと寛いだ。

 

 ハクゼンはジョージが生まれた時に、専属の執事となったそうだ。ジョージが幼いうちは、教育係も担っていた。

 

 リリィはジョージの幼なじみだった。代々、国に仕える賢者の家系で、その中でも特に、祖父・父・リリィは優秀で王家専属となり、特別に、宮殿内に部屋を与えられていた。

 そのため、幼少期より一緒にいることも多く、ジョージの遠征先にリリィが同行することも多かったそうだ。


 そんな話を暫くしていると、日はすっかり暮れていた。 

 


 「さぁ、お昼の戦闘糧食レーションだけでは、おなかすいただろう?夕食に行こう。」


 てっきり、食事は王宮内でするのかと思っていたが、僕たちが行ったのはロイ達の宿舎だった。

 

 食堂に着くと、みんなラフな格好で、めいめいに腰掛け、テントでの対応とは違い、誰もジョージに敬礼などしなかった。

 ジョージ達も、部屋でラフな格好に着替えてから、ここに来ていた。


 (まさか、ラフな格好だからって、ジョージって気付いてない訳じゃないんだよね?)


 僕が不思議に思っていることが顔に出ていたんだろうか?


 「この宿舎はね。僕の直属の仲間達の場所なんだよ。そしてこの宿舎の決まりはひとつ。プライベートな時間は生まれも階級もなんにも関係なし。無礼講だ。」

 ジョージは続ける。

 「もし、それを破った時には、ペナルティがあるから、気をつけて。」

 ジョージがいたずらっぽく微笑む。


 席は自由で、僕たちは入り口近くに空いていた席に座る。


 「それでは、始めようか?」

 「まずは、灰狼アッシュウルフ銀狼シルバーウルフに勇敢に立ち向かい、優しい心と、強い信念で、仲間達を文字通りの命をかけて救った、パトロール隊のジョーゼフに。。。黙祷。。。」


 全員が黙祷を捧げる。


 「気を落としていても彼は戻って来ない。。。彼の意志を継ぎ、繋げていこう。。。」

 『はいっ!!』全員がジョージの気持ちに呼応する。


 「では、今回の討伐戦から、無事に帰ってくることができた事に。乾杯!」

 『かんぱーい』


 全員の鋳物のジョッキが打ち付け合い音が鳴りビールの雫が宙に舞い、豪快に杯が空けられていく。


 2杯目の酒が注がれようとしていると、


 バッターン!!!!!

 扉が勢いよく開く。そこに立っていたのは。。。。

 全身泥だらけで、よく見えない。。。


 「ダイキか?どうした?」

 ロイが駆け寄る。

 「モンスターに。。。やられた。。。」

 そう言って蹲る。


 「お。おいっ。大丈夫か?他のみんなは?無事なのか?」

 矢継ぎ早にロイが問う。


 僕も気になって身を乗り出して様子を見ようとした。が、いつも一番に動くジョージが動いていない。

 「???」

 と思っていると。。。


 『じゃじゃーーん!!!』


 扉の前に、他のメンバーが顔を出す。しかも。皆ダイキと同じように泥だらけだ。


 「えー???どういうことだよ???」

 ロイが叫ぶ。

 「まだまだ。だね。ダイキはいたずらするとき、小鼻が膨らむんだよ。見落としちゃいけないポイントだよ?」

 ジョージは余裕の笑顔。

 

 「なんなんっすか。もう少し心配してくださいよぉ。」

 ダイキはいたずら消化不良で不満顔。。。


 「だいたいですね。先発隊だけで、打ち上げって。。俺達を待ってくれても。。」

 ダイキが拗ねている。


 「君たちが今日中に着くとは思わなくてさ。」

 「ひどいっす。」


 「でも速かったね。」

 「それが原因なんですよね。泥の。」


 そう言って、ダイキが話を始めた。


 

 後発部隊も少し遅れてテント跡を出発した。が、人が多いため、機動力に欠けた。厄介なモンスターに出会えば、大所帯であるがために被害が大きくなる可能性がある。


 ダイキはマリィに

 「敵と戦闘になるわけにはいかないから、索敵モード全開でよろしく頼む。」

 と指示を出す。


 ダイキはそう言ったが、文字通りの意味ではなく、比喩表現としてね。。。だが、マリィは違った。幼いが故に。。。索敵モード全開で、半径5キロは敵の存在を把握する。。。


 そこへさらに、悪魔のささやきがダイキを襲う。。。

 「森を突っ切ったら速いんじゃないか?それどころか、ジョージ様たちより、先に帰還できるぜ?」

ディオが言った。


 その一言が、これから彼らを襲う出来事に繋がるなんて。。。ダイキはまだ知らない。。。

 

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