第17話 ~いざ王都へ~
ジョージとピクニックを終え、テントへ戻る。。。。ってテントがない!
「あれ?テントは?」
「片付けが終わったんだ。今日は王都へ向けて出発するからね。もうやめたとは言わせないよ。」
「でも。でも。荷物は?馬車は?」
驚きの光景に、若干パニックだ。
そこにいたのは、統一されたミリタリーリュックを背負った人たちと、馬たちだけだった。畳んだテントも、家具も、それを運ぶ馬車すら見えない。。。人馬のみなのだ。
「急いでいるからね。できるだけ荷物は小さくしないと。」
当たり前のことのようにジョージが言った。
イミガワカラナイ??荷物を小さくって?持って行けない荷物はどうするんだろう??捨ててしまってはもったいない。あんなに規模の大きいテントの数々だったのだから。。。
訳が分からなくて、きょとんとしていると、リリィが
「皆のリュックに全部仕舞ったのよ。私の魔法で。」
腰に下げた細剣に手を添えて、ふふっといたずらっぽく笑って教えてくれた。
あれだけの荷物を?この大勢に??リリィの魔力は底なしなのか?
驚きでぽかんと口を開け、言葉を失っていると、それを見透かしたように、
「荷物だけじゃなくてね。。。この馬たちにも身体強化の魔法をかけてあるのよ?ジョージ様が一刻も早く帰りたいってワガママをおっしゃるから。」
さらに続く。
「でも心配しないで。私の魔力はまだまだ、たっーぷり残っているから。マリィちゃんとは出来が違うのよ?」
そして余裕の笑顔。
それが聞こえたのか、少し離れたところから、マリィさんが睨んでくる。。。
というか、あの子の戦闘時の魔力も大概だったよ。考えられないレベルの魔法使ってたからね。それを小馬鹿にできるとは。
リリィさん。恐るべし。。。
「では2班に分かれよう。僕たちは先発するよ。ダイキは後から来てくれ。」
「はっ。了解しました。」
そう言って2班になる。
馬1頭に対し、一人。機動力を考えた、少人数の先発隊。
馬1頭に対し、一人もしくは二人の後発隊。
馬の数が足りないので、仕方なく2班に分けられた。
モンスターに出会っても問題がないように、戦力は偏らないようにされた。
「では暫しの別れだな。王都で会おう。」
ジョージがそう言って、先発隊が出発した。
僕はジョージの馬に乗っている。いや、正確にはジョージの胸のポケットに。
少し小さくなってしまった僕にはポケットは丁度良いサイズだった。
眠っているサクラは、ジョージが抱えており、手綱は片手で捌いている。
それでいて揺れもほとんど無く、快適に走らせている。ジョージは乗馬技術も一流だった。。。
だが驚くべきはそこではない。馬が速いのだ。速すぎる。。。
身体強化魔法って、どんなのをかけたんだ??異常だ。。。
「これなら、今日中に到着できそうだね?リリィありがとう。助かったよ。」
ジョージがご機嫌にリリィに礼を言う。
「えっ?今日中って言った?どこに今日着くの?」
僕は慌てて確認する。
話の流れだと、王都に今日中。と聞こえたが。。。まさか。ね。。。普段であれば、馬を走らせて、どんなに速くても3日はかかるはずだから。。。
「ん?王都に。だよ?寄り道の予定は入れてないけど。。どこか行きたい所があったかい?」
「寄りたい所はないけどさ。あんな遠くだよ?ホントに到着するの?」
疑心暗鬼になる。
「スライムさん?その為の強化魔法なのよ?食事休憩はちゃんと予定に入れてあるし、安心してね。」
やさしくリリィに諭される。
べつに、今日中に着くのが嫌なわけではない。ただ、そうだとするのであれば、信じられないほど尋常ではないスピードだということ。
平たく言うのであれば、マジで?ありえねー。って感じなのだ。
まぁ、確かに、見ている景色はとんでもなく速く通り過ぎてはいるな。。。マジか。。。
だが、それよりも信じなれない光景は。。。この状況でホセが寝ている。ということだな。リリィの懐で。ホセの腕の中にはジョセフィーヌちゃんが抱えられている。
ジョセフィーヌちゃんは怖いのか、走り始めてからずっと、ぎゅうっと目を閉じている。
そんな彼女を気にもせず、眠れるホセって。ある意味、大物なのかもしれないな。。。
「ふぁぁ。よう寝たぁ。」
お昼休憩になって、ようやくホセが起きた。
昼食は戦闘糧食だった。
「ごめんね。軽量化のためにこんなものになってしまって。。。」
ジョージが謝る。
しかし、飲み物には疲労回復効果のある≪フェアリエールティー≫が配られた。
花こそ入っていないが、その美味しさで、味気ない戦闘糧食もなんとか食べられた。
突然後方から、悲鳴が上がった。ジョージが飛ぶように駆けていく。。。
僕も後を追うが、いかんせんそこはスライム。みんなよりも遅れて到着すると戦闘が始まっていた。
ジョージの切っ先がウォーキャットの目元を掠める。
ウォーキャットは猫科のモンスターらしく、柔軟な肢体でそれをかわす。
ジョージは上段からウォーキャットの眉間目掛けて剣を振り下ろす。
翻ってかわしたウォーキャットを下から切り上げ、そのままの流れで空中に上がったウォーキャットの胴めがけて、左薙ぎが決まる。
やった。と思った。
が、そこは身体能力の高いウォーキャット。。。急所をはずした。
飛び退こうとしていた所を、ジョージは尾を掴み、力任せに地面に叩きつける。そして剣はウォーキャットの首を貫いていた。
「あ、ありがとうございます。」
額から血を流し、座り込んでいた女性が、ジョージに礼を言う。
「一人で行動してはダメだといっただろう?」
ジョージは彼女の髪を上げ、額の傷を確認する。そしてリリィを呼び、回復魔法をかけるように指示をする。
「私よりもあの子を。。。」
自分への回復魔法を止め、弱々しく指をさす。
その先には、馬が倒れていた。腹部が大きく引き裂かれている。。。もう回復魔法では追いつかない。。
僕が駆け寄ろうとするとジョージが首を振る。
「でも。。。」
「もう持たない。苦しまないように介錯をしてあげよう?」
そう言って剣に手をかける。
「ダメだよ!僕が。。。」
「あれを使ってはいけない。たとえ欠片でも。」
強い口調だった。
(分かってるよ。ジョージ。)
でも、なぜか僕には不思議な自信があった。頬袋にある水で治ると。。。
止めるジョージの手をすり抜け、僕は、馬の元へ駆け寄る。そして静かにその傷に唇を寄せた。。。
僕と傷が一体になったように淡い光を放つ。。。そして。。。
額の傷に回復魔法をかけていた女性が、馬の元へ走り寄る。。血まみれの腹部を撫で、
「傷が。。。傷が。。。無くなってる。。。」
言葉が続かない。
その不思議な光景を見た者達から、感嘆の声が漏れる。。。
だが、ジョージは
「前回のは奇跡では無かったんだね。。。でも、もう。君の力は使わないでくれ。。。あんな思いはもうしたくないんだ。。。」
僕の前に跪き、その大きな手で目元を覆い隠す。
「大丈夫だよ?ジョージ。もう無理はしないから。。」
「あぁ。。。頼むよ?」
ジョージは消え入るような声で言った。。。
突然のハプニングは終わり、僕たちはまた、王都へ向けて出発した。
「この分だと、日暮れ前には到着できそうだ。」
ジョージの声が遠い。。。いや僕が眠たいだけか。。。睡魔が襲う。。。
頬袋の水を使ったとき、僕と傷口から光が出た。。。あの時と同じだ。。。光を放つと特別な力が出るのか?
強い疲労感と眠気。
(熱が出なくて良かった。)
と安堵して眠りに落ちた。
ポケットが小さく揺れる。
「もうすぐ着くよ?ほら見えてきた。」
《緑の国》と呼ばれるこの国の王都は城郭都市である。
ジャングルと獣の国であり、その危険から、王都は堅固な城壁で囲まれていた。
正面には二重大門があり、一枚目の扉は、全ての訪問者を受け入れる。二枚目の扉では、審査があり、それに通った者だけが城下へ入ることが許されるのだ。
二重門になっている理由は、
一枚目の門は、獣やモンスターから逃げ延びた人々の為の緊急避難者を守る役割を持つからだ。
二枚目の門では、通常の城門のように来訪者を選り分ける。
一枚目と二枚目の門で敵の侵入を防ぐ役割も持つことができる。だが、城門が出来てから、戦の防衛で使用されたことはなかった。その理由は明快で、敵が、獣やモンスターの蔓延る深いジャングルをくぐり抜け、王都まで進軍できない為である。
それとは逆に、獣やモンスターからの緊急避難としては数え切れないほど使用されてきた。
一枚目の門には、その際に出来た傷が無数にある。
幾度となく人々が逃げ延びた門の中は、さながら小さな町だ。緊急事態であっても、二枚目の門は許可がなければ、通ることが許されない。
また、一日や二日で危険がなくなるとは限らないため、数百人が避難生活を送れるようになっていた。
だが、それを商売とする者達が現れる。
王都としても、度重なるモンスターの襲来により、避難支援が増え、予算が追いつかない。
その為、商売が始まっても国として困ることはなかった。
しかし、門の狭間での商売目的だけの来訪者が集まって、避難者が入れなくなるという事態に陥らないために、ルールは厳しく決められていた。
僕は噂に名高い大門を見るため、ポケットから顔を出す。
見えてきたのは、総門。
石垣で補強され、左右上部に櫓が見える。櫓門だ。
王都を守るための城壁と大門は想像を遙かに超える大きさだった。
「すごい。。。。」
その一言につきた。
(門はどうなってるのかな?城下町はどんなだろう?)
僕は初めて行く王都に胸を躍らせた。
しかし、大門が近くなると急に進路を左に変える。
「えっ?なんで?王都に行かないの?」
目の前まで来て、急におあずけをくらった気分だ。
「僕たちは馬も一緒だし、人数も多いしね。裏門へまわるよ。」
(えぇっっーーーー。。ここまで来て。裏門かぁ。。)
がっかりして項垂れた。
間もなくして裏門へ到着し、馬を預けて中へ入る。
門だけで独立した建造物になっていた総門と違い、裏門は城壁の一部をくり抜いた小さな門だった。
(裏門はしょせん裏かぁ。)
さっきの残念な気持ちが尾を引いている。
僕たちはそこで馬を預け、中へ入る。
追い打ちをかける衝撃が走る。王都というからには、裏口であっても、「くぐり抜ければそこは城下町。。」を想像していた。
まさか、また森とは。。。いや、木々が少ないから林かな? そんな違いどうでもいい!!ぜんっっぜん王都に着いた実感が沸かないよ!!!
林を抜け
「さ。今度こそ到着だ。」
とジョージが指さす。
そこにあったのは、目を疑う光景だった。。。。




