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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=人間との出会い編=
15/322

第15話  ~二人の秘密~

 身体がひんやりとして気持ちが良い。

 「んんっーーー。」

 ゆっくりと目を開ける。


 「スライム君?目が覚めたかい?」

 ジョージの慌てた声が聞こえる。。。

 「うぅん。おはよう。ジョージ。」

 寝惚け眼でジョージを見る。


 そこには目に涙を浮かべたジョージがいた。

 「良かった。ありがとう。」

 何故かお礼を言われる。


 「どうしたの?ジョージ?」

 僕には意味が分からない。


 「君は三日三晩眠り続けていたんだよ。」

 ジョージの優しい手が、僕を撫でる。


そうだ。狼たちとの戦いがあって、僕はみんなの治療をして倒れたんだった。

 「ジョージやみんなは、もう平気なの?」


 「君は本当に優しい子だ。君のおかげで、皆元気だよ。」


 僕はホッと胸をなで下ろす。

 あんなにがんばって、何も成果が無くては悲しい。


 話し声を聞いてホセも部屋へ入ってきた。

 「良かったなー。みんな心配したんやで。」

 ワシャワシャと僕の頭を撫でてきた。その力強さが嬉しい。


 「あれから大変やったんやで。」




 討伐隊の劣勢に俺の背中のスライムが打ち震えだした。

 

 「落ち着けって。チャンスはまだあるはずや。」


 落ち着くように声をかけたが。。。震えが止まらない。。。むしろ悪化していく。。。

 (まずいな。何しでかすか分からん。)


 だが、状況が悪い。ジョージの怪我もかなり深いように見える。

 (ここからじゃ、よう見えん。)

 助けに入るにも、高度が高すぎた…。俺はギリギリまで高度を下げた。


 討伐隊が撤退へと移行し、遁走を始めた。

 (このままなんとか振り切ってや。)

 祈るように見守る。


 だが、そんなにうまくいくものではない。。。

 木立の間から、何かが飛んだ。。銀狼シルバーウルフだ。。

 (もうダメや。。。。)


 その時、

「あぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

 背中のスライムが俺の背中を蹴り、銀狼シルバーウルフ目掛けて突貫する。。。

 その身体は白いオーラのようなものを纏っている。


 (無茶苦茶やーーー。)

 俺もスライムを追って急降下する。


 (あと少しで追いつく。。。)

 と思った直後


 グギャァァァァァァーーーーーー!!!

 オーラを纏ったスライムが銀狼シルバーウルフの首にピックを突き立て、ボスが断末魔の叫び声を上げる。


 「殺ったんか?」


 銀狼シルバーウルフの身体が白い炎のようなものに包まれる。

 まるで、スライムのオーラが怒りの炎として燃え移ったようだった。。。


 ボスの死に灰狼アッシュウルフ達が逃げ出す。

 とりあえず、危機は脱したようだ。


 「はぁぁぁぁぁ。」

 その場にへたり込んだスライムに

 「やったな!」

 と声をかけ、背中をさすった。その背中は極度の緊張からの解放からか、小さく震えていた。


 ジョージの傷が深く、死の危険が差し迫っていた。

 諦めかけている討伐隊に

 「大丈夫なんやって。まぁ見とき。」

 と不安を払拭するように力強く言ったものの。。。


 (世界樹の葉の欠片で、死の危険を凌げるんか?)

 自分の不安は拭い去れなかった。。。


 だが、スライムが取り出したのは完全体の《世界樹の葉》だった。

 (えらいもん、隠し持ってるやん。)


 そこからは幻想的な光景だった。


 《世界樹の葉》にスライムが口づけすると、スライムと《世界樹の葉》が輝き始める。

 ジョージに近づけると葉は光と共に吸い込まれるように消えジョージが光に包まれた。


 光は数秒で消え、ジョージの傷は全快していた。

 ジョージの光が消える頃には、スライムの輝きもうっすらとオーラを纏うまでに落ち着いていた。


 気がついたジョージが俺達がいることに説明を求めてきた。

 スライムはメンバー達の傷が気になるらしく、治療に向かった。


 俺はてっきり《世界樹の雫》もどきの水を使うのかと思っていたが、不思議な事に傷口にキスをする。オーラの光が傷を覆うと、傷が治っている。


 (どうやってるんや?)


 その光景にジョージは

 「ねぇ。ホセ君、僕はスライム君がエンジェルに見えてきたよ。」

 「そやな。不思議なヤツや。いつも人の事に一生懸命や。」


 (ま、ええか。)

 《世界樹の葉》のぶっ飛んだ奇跡を見たあとに、スライムが怪我を治す光景は、不思議ではあったが、霞んで見えた。


 「そろそろ一段落だね。」

 とジョージがスライムを迎えに行く。


 だが、スライムの様子がおかしい。

 ふらふらとその場に転げる。

 

 慌てて掬いあげたジョージが「熱い!!」と声を上げた。


 見ればスライムに触れた左手が火傷をしている。それでも手を離すことなく、腕に抱えた。


 火傷を指摘すると

 「火傷なんてどうでもいい。そんなことより、この子が小さくなってる方が問題だ!」

 と狼狽している。


 確かにオーラを纏ったスライムは目に見えて小さくなっていた。


 「ホント良かった。」とみんなの安全を小さく喜び、スライムは意識を失った。それと共にオーラも消えていく。


 (なんちゅうこと言うてるんや。フラグ立てんな!)

 (死ぬなよ。。。)


 異変に気づかなかった自分に腹が立った。オーラを纏った時点で異常事態だったのに、目の前の出来事が派手すぎて、些事だと気にも止めなかった。途中で止めていれば。。。ここまでにはならなかったかもしれない。。。


 ジョージを見ると、俺と同じようにやり場のない気持ちがあるのだろう。右手の拳を握りしめていた。

 握り込んだ右手には血が滲んでいた。


 そこから俺達はテントへ向けて馬に乗り疾駆する。

 俺達では対処できない。せめて賢者の元へと。


 テントについて賢者のリリィに見せてみるが、やはりはっきりとは分からない。まずもってブルートスライムという種族を知らなかったようだ。俺も初めて聞いたからな。


 だが、魔法などを使う者が高ぶった感情と共に力が暴走することがあるらしい。

 能力以上に力を使った際などに出る症状に似ていなくもないという。

 当然人間ならこの状態は死を意味するので、ここまでにはならないが。


 ジョージの火傷も回復魔法に反応しなかった。それが何かしらの能力による傷の証拠だという。


 外傷があるわけではないし、暴走モード後の後遺症の際は、ただ休息させるしかないらしい。

 とりあえず焼けるほどの熱を持った身体を冷やすことにした。


 氷水で冷やしても数分でお湯になる。ジョージが付きっきりで、寝ずに看病をする。三日三晩の看病の末、ようやく熱が下がり始めた。


 熱が下がりきって暫くすると、スライムが目を覚ました。俺は心の底から安堵した。




 ホセからの話を聞いたが、まるで他人の事のようだった。


 オーラを纏っていたことなど気づかなかったし、銀狼シルバーウルフに向かっていった時は無我夢中だった。

 《世界樹の葉》を使ったときは光に包まれるジョージを、僕自信も驚いて見ていたのだ。

 討伐隊メンバーの傷はオーラの力じゃなくて、《世界樹の雫》もどきの力だしなぁ。


 もう一度使えと言われても、絶対に無理な話なのだ。


 「へぇ。。何か凄かったぽいねぇ。」

 感情がこもらず、棒読みで返事をした。


 「なんや、その薄っい反応はーー。凄かったんやで。そりゃもうホンマ凄かったんや!!」

 そう言って、銀狼シルバーウルフに僕が向かっていく辺りから、また熱弁を開始していた。


 「ホセ君も本当に君を心配していたんだよ。君を早い段階で救えなかったことをとても悔やんでいたんだ。彼の気持ちも分かってあげて。」

 ジョージの手が優しく僕を撫でる。


 「ホセが優しいのは知ってるよ。」

 僕はジョージの掌にすり寄った。


 そういえば、ずっと右手しか見ていない。左手を火傷したって言ってなかったけ?

 僕の場所からは身体に隠れて見えない。。。恐る恐る身を乗り出して覗き込む。

 掌を覆うように包帯が見える。。。それは長袖のシャツの中まで続いている。

 僕を抱きかかえた所も火傷してしまったのだろうか?


 「ねぇ。ジョージ?その包帯って。火傷?」

 「ん?あぁこれ?大丈夫だよ?」


 僕に気を使ったのか、言葉を濁す。

 「ひどいの?僕のせいだよね?ごめんね。。。《世界樹の葉》も《雫》もまだあるよ。使ってよ。」


 「あぁ。ありがとう。でも。。それはいいかな。。このまま傷跡を残しておきたいんだ。」

 ジョージが不思議なことを言う。


 「なんで?傷跡が残るほどの怪我なら、なおさらだよ。」

 「んー。困ったな。言葉で説明するのは難しいな。君が大丈夫なら火傷を見るかい?」


 さらに不思議な事を言う。火傷を見ると、傷跡を残したい気持ちが分かるのだろうか?


 「うん。」

 見てもいいのか分からないが、一応確認してみよう。 

 

 「これは、二人だけの秘密だよ。リリィにも見せてないからね。」

 口にそっと人差し指をつけウインクする。そして徐に包帯を取った。


 掌を抉るほどの火傷だ。まだ、赤く生々しい傷がある。だがそこからだった。

 掌から肘の内側へ向けてケロイド状の傷跡がある。


 その形が。。。ドラゴンなのだ。昇竜のごとき傷跡。

 

 言葉を失い食い入るように傷跡を見ていると、ジョージが説明を始める。


 「はじめは、君に触れた部分。掌のここと、手首から肘に向かう丁度この真ん中辺り。ここの2カ所だけだったんだ。不思議なことにこの上の傷はすぐに治り始めてね。治りながら広がって、今朝には、この掌の傷と繋がって、はっきりとした龍になったんだ。」


 「不思議だよね?でもここまでハッキリとドラゴンになっているし、掌以外は傷としても治っているから、治療は必要ないしね。何か意味があるのかもしれないから、暫く様子を見ようと思うんだ。」

 ジョージは龍をさすりながら言った。


 「わ、わかった。」

 分かってないけど返事をしてしまう。


 また一つ謎が生まれてしまった。。。


 何なんだろうコレ?でも何かあったら、僕のせいだよね?僕からの火傷がきっかけなんだから。今後が気がかりだ。


 

 「なんやなんや?傷がどうかしたんか?」

 熱弁を終えてこちらの世界に戻ったホセが覗き込んできた。


 ジョージは素早くシャツを下ろした。掌の傷だけが見える。


 「うわぁ。なかなか治らへんな。世界樹のアイテム使ってみたらええやん。」

 「ホセ君。これはスライム君を苦しめてしまった自分への罰なんだから、このままでいいんだよ。」

 ジョージが適当にごまかす。


 「なんや、愛を感じるな。。。」

 ニヤニヤしてホセがこっちを見てくる。


 男同士に愛って生まれたらまずいんじゃないの?


 そんな遣り取りで日常に戻ってきた幸せを実感したのだった。


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