第102話 ~救出作戦始動?~
司令室の外。。。
「シグナル!!!どうしたんだ?扉を開けてくれ!!!シグナル!!」
意識を取り戻したゼルダが、司令室の扉を叩く。
ドラゴンライダーに助けられ戦線を離脱した、ゼルダ班は、その後暫くして意識を取り戻した。
だが、身を潜めていた穴は使えなくなっており、司令室へと赴いた。
その扉も開く様子がない。
緑の国の兵も、突然入ることができなくなったという。
「結界か。。。。」
ゼルダは呟く。
しかし、司令室を結界で閉じこめるなど、余程の事がない限りやらないはずだ。
「何があったんだ。。。。」
ゼルダは一抹の不安を隠せないでいた。
ゼルダの通信玉も使えない。部下との遣り取りはできるのにだ。
司令室との遣り取りだけがぷっつりと途絶えてしまった。。。
「そう言えば水月の姿が見えないな。」
周囲を見渡すが姿がない。確か、朦朧とする意識の中で、助けに来てくれていた。
それは間違いないだろう。。。
「水月?ゼルダだ。。。水月?」
ゼルダは通信玉に呼びかける。
((おう。どうした?ゼルダ))
「水月!良かった。お前、今どこにいるんだ?」
((あぁ。ジルと一緒に”世界樹”に来てるな。))
「はぁ???何でそうなった。」
ゼルダには意味が分からない。自分たちが去った後の戦局すら分からないのだ。
((あぁそうか。。。ゼルダは知らないんだな。魔王アルが破れた。というよりは。。。相打ちだな。ガルーダはたぶん死んだが、魔王の行方が分からないんだ。))
「なんだと?何があったんだ。」
((一から説明か。。。面倒だな。。。こっちは忙しいし、すぐに戻る予定だから、その時に、話をしよう。それと、司令室と偽世界樹には、魔王が強力な結界を張った。その対処の為に俺達は動いてる。勝手な行動はするなよ?・・・そうだ。ロキの力が目覚め始めた。ありがとな!!また面白いコンビが組めそうだ。じゃあな。))
水月龍は一方的に通信を切った。
「おい。水月?水月ー!!」
当然、ゼルダの叫びなど届くわけがなかった。
水月とはそういうヤツだから。。。
「はあ。。。何があったのか、さっぱり分からんな。。。」
頭を抱えたが、ゼルダに不安はなかった。
忠誠を誓った”魔王の力”に変化はない。魔王アルは無事だろう。。。
「どちらにせよ、水月達を待つしかないか。。。」
ゼルダは司令室の扉の前にドカッと腰を下ろし、目を瞑った。
(陛下の力を浴びてから、力が湧き出るようだ。時間ができたのであれば、少し力の質をコントロールできるようにしようか。。。)
ゼルダ班の皆にも同じような現象が起きていた。
狂撃戦士化はアルの光で解除されたはずなのだが、その時に溢れ出た力がそのまま、自分たちに残っている。
時間をかけたら、消滅するかもしれない。
ならば、その前に、力を取り込もう。
この空いた時間が丁度良いだろう。。。
「おい。水月が戻るまで、少し時間ができた。この力をなんとしてでも、自分に定着をさせるんだ。いいな!!」
『はい!!!』
そして、ゼルダ班は、司令室前で力を定着させるための、瞑想を始めるのだった。
司令室では、それぞれの役割が決まりつつあった。
「では、”五行の精”の皆さんが、結界の上にさらに結界を張って、魔法の痕跡を空間に留めるようにする。リリィとウォルゼスさんはガルーダの魔法の痕跡を辿る。僕は合流したジルと共に、アルの救出に向かうよ。マリィは魔力の補充がいるかもしれないから、僕たちについてきて。万が一、危なくなったらすぐに逃げるんだ。いいね。」
ジョージはマリィの頭に手を乗せる。
「父上、ヴォルガさん、叔父さん方、幹部の皆さんは、海岸線の制圧部隊からの連絡もありますし、ここで指揮をお願いします。」
ジョージは丁寧に頭を下げる。
「おう、心配するな。それくらいは任せておけ。」
叔父のダヴィットが胸を叩き力強く請け負う。
「ジョージよ。。。魔王アルではないが。。。。命を落とすではないぞ?」
国王の言葉は、王としてではなく、父としての言葉となっていた。
「はい。命を賭して親友を助けに行きますが、母上からいただいたこの”龍の民”の力を以て、父上のお言葉を違えることなく戻って参ります。」
力強くジョージは答えた。
((おい。ゼルダ。こんなところでどうした?居眠りか?))
水月がゼルダの肩を叩く。
「おぉ。水月。戻ったか。」
旧友の声に、ゼルダが立ち上がる。
「居眠りじゃないがな。。。”魔王の力”だろうな。狂撃戦士の力を定着させていたんだ。」
((そうか。それなら良かった。ゼルダ班揃って、寝てるんだと思ったぜ。))
がははは。と豪快に水月は笑った。
「それよりも、どうなってるんだ?」
((その説明はあとだ。なんでも時間がないらしいからな。))
「司令室とも連絡が取れないんだ。少しで良いから説明しろよ。」
((そうなのか?俺は大丈夫だがな。。))
「たぶん、結界の力が関係してると思うわ。その通信玉に覆ってるオーラ、解除する?」
カルアがゼルダの耳を指さしながら言う。
「この妖精は誰なんだ?」
ゼルダが訝しがる。
((こう見えて”世界樹”の妖精らしいぞ?))
その言葉に、ゼルダが固まる。
「ま、とりあえず、解除しちゃって良いよね?」
「そうだね。使えるに越したことはないから。」
カルアとジルは、ゼルダを無視して話を進めていく。
「えいっ!」
軽いかけ声でカルアは通信玉に人差し指を付ける。
おおよそ結界の解除とはほど遠いその身ごなしに、ゼルダ班のドラゴンライダー達も不安げに見つめていた。
「オッケー!!」
カルアは軽く解除を伝える。
「え?え??もう。ですか?」
なにも感じないままに、解除が終わっているらしいことに、ゼルダの理解がついて行けない。
「大丈夫だって。ジョージかシグナル辺りに話しかけてみたら?」
カルアの言葉に促されるように、ゼルダは耳に手を添える。
「シグナル!聞こえるか?シグナル?」
恐る恐る通信をする。
「ん?ゼルダか?無事だったか。」
ジョージの声が聞こえた。
「あぁ。。。良かった。通信ができなくてな。世界樹の妖精に直してもらったんだ。」
ゼルダの顔に笑みが戻った。
「ん?なら、そこに水月もいるのか?」
「はい。一緒です。」
「水月!”世界樹の雫”は?」
((俺達が行って、手ぶらで帰ってくるわけないだろ?))
ニヤリと笑う。
司令室では、その言葉に歓声が上がった。
「結界解除に至る量は作れたのか?」
「そんな量じゃないですよぉ。世界樹丸ごと入る水球があります。」
呆れたようにため息をつきながら、ロキが答えた。
「そんなにか。。。ならば、ここの解除を早速始めてくれ。」
シグナルが伝えるが、
「ちょっと待って。その前にジル?偽世界樹へ行ってくれないか?」
ジョージが言葉を挟む。
「え?どうして?」
ジルは不思議そうに首を傾げる。
「あぁ。万が一、ここと向こうの結界に何らかの繋がりがあった場合、ここの解除と共に、何か起きると行けない。君が向こうに行き、様子を見ていてくれないか?」
「そうか。。。そうだね。なら、早速向かうよ。着いたらすぐ連絡するから、準備進めてて。」
「じゃ。あたしも着いて行こっーと。」
ジルの肩にカルアが座る。
ジルは青魔竜の姿になり、偽世界樹へ飛ぶ。
その時だった。
「ジョージ様!!!結界が。。。」
リリィが叫びを上げ、結界の一部を指さす。
オーラを纏うように光っていた結界が、光を失っていく。
そして。。。
一部が薄くなっていくのだ。。。。
「水月!!!命は下してないぞ!!!ジル様到着を待て!!!」
シグナルが慌てて叫ぶ。
((俺達は何もしていないが。。。どうかしたのか?))
そう言われればそうなのだ。
水月達が待機している扉とは反対側から、崩壊が始まっている。
「ジル?聞こえるか?到着はまだか?」
ジョージもジルに通信する。
「あとちょっとだよ?どうかした?」
「結界の崩壊が始まった!!!急いでくれ!!」
ジョージの慌てぶりに、ジルも緊急事態を悟る。
「分かった。全力で飛ばすよ!!!」
ジョージに伝えると、ジルはスピードを上げる。
「ダメです!!!結界に穴が開きます!!」
リリィが原因不明の崩壊に、自分の結界魔法で補強しようとしていたが、意味を為さない。
額の汗は流れ、目には涙が浮かび始める。
「ダメッ!!まだダメよっ!!」
リリィの叫びに、祖父のウォルゼスも手を翳す。
「魔王の生死に関わる問題でなければ良いがな。。。」
小さく呟いたウォルゼスの言葉に、関係者全員が硬直する。
ジルが偽世界樹を目視できる距離まで来た。
「結界が光を失ってる。。。」
ジルも絶句する。
「ダメだ。ジル。崩壊が始まる!!!」
ジョージの通信が入った。
目の前にある偽世界樹の強力な結界。。。
ジョージの通信とこちらの状況が繋がっている。。。
「ジョージ。。。ダメだ。。。ここもすでに崩壊が始まってる。。。穴が開くのも時間の問題だ。」
予想外の状況にジルの声は掠れていた。
先ほどまで、意気揚々と出発したのが嘘の様に、今は絶望が心を覆う。
「同時に崩壊って。。。アルに何かあったってこと?」
ジルの首に掴まり、カルアが大きな声を出す。
偽世界樹の前に到着し、ジルは人間の姿に変わる。
「どうなんだろ。。。でも。。。。」
ジルは言葉を止める。
”でも、この崩壊の仕方は良くない”とはカルアには言えない。。。
しかし、ジルのその様子に、カルアも感じるものがあった。
ジルの襟をギュッと握り、光を失った結界を見上げる。
少し上の結界に穴が開き始めた。。。
「いや。。。いや~~~!!!死なないで~~~~!!!」
カルアは目の前の光景に耐えられなくなり、ジルの肩で泣き崩れた。
「カルア。。。」
ジルは声を掛けきれず、カルアの背中を撫でた。
司令室と偽世界樹。そして司令室前。。。
全ての通信が繋がり、全ての状況を把握し。。。
皆がその光景に絶望を感じた。
「いやぁ。。。だめよ。。。死んじゃだめぇ。。。。」
ジルの肩でカルアが泣き震えている。
「誰か死にそうなの?治そうか?」
場違いな軽い声が後ろから聞こえる。
カルアとジルは目を合わせる。
「だからさ~。誰が死にそうなの?誰もいないじゃん。」
その声の方向に二人同時に振り向く。
『アル!!!!』
そこには、ホセの背中に乗ったアルと、ペンギンがいた。




