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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
103/322

第102話  ~救出作戦始動?~


 司令室の外。。。


「シグナル!!!どうしたんだ?扉を開けてくれ!!!シグナル!!」

 意識を取り戻したゼルダが、司令室の扉を叩く。

 

 ドラゴンライダーに助けられ戦線を離脱した、ゼルダ班は、その後暫くして意識を取り戻した。


 だが、身を潜めていた穴は使えなくなっており、司令室へと赴いた。

 その扉も開く様子がない。


 緑の国の兵も、突然入ることができなくなったという。


「結界か。。。。」

 ゼルダは呟く。


 しかし、司令室を結界で閉じこめるなど、余程の事がない限りやらないはずだ。


「何があったんだ。。。。」

 ゼルダは一抹の不安を隠せないでいた。


 ゼルダの通信玉も使えない。部下との遣り取りはできるのにだ。

 司令室との遣り取りだけがぷっつりと途絶えてしまった。。。


「そう言えば水月の姿が見えないな。」

 周囲を見渡すが姿がない。確か、朦朧とする意識の中で、助けに来てくれていた。

 それは間違いないだろう。。。


「水月?ゼルダだ。。。水月?」

 ゼルダは通信玉に呼びかける。

((おう。どうした?ゼルダ))


「水月!良かった。お前、今どこにいるんだ?」

((あぁ。ジルと一緒に”世界樹”に来てるな。))


「はぁ???何でそうなった。」

 ゼルダには意味が分からない。自分たちが去った後の戦局すら分からないのだ。


((あぁそうか。。。ゼルダは知らないんだな。魔王アルが破れた。というよりは。。。相打ちだな。ガルーダはたぶん死んだが、魔王の行方が分からないんだ。))


「なんだと?何があったんだ。」

((一から説明か。。。面倒だな。。。こっちは忙しいし、すぐに戻る予定だから、その時に、話をしよう。それと、司令室と偽世界樹には、魔王が強力な結界を張った。その対処の為に俺達は動いてる。勝手な行動はするなよ?・・・そうだ。ロキの力が目覚め始めた。ありがとな!!また面白いコンビが組めそうだ。じゃあな。))


 水月龍は一方的に通信を切った。


「おい。水月?水月ー!!」

 当然、ゼルダの叫びなど届くわけがなかった。

 水月とはそういうヤツだから。。。


「はあ。。。何があったのか、さっぱり分からんな。。。」

 頭を抱えたが、ゼルダに不安はなかった。

 忠誠を誓った”魔王の力”に変化はない。魔王アルは無事だろう。。。

「どちらにせよ、水月達を待つしかないか。。。」


 ゼルダは司令室の扉の前にドカッと腰を下ろし、目を瞑った。

(陛下の力を浴びてから、力が湧き出るようだ。時間ができたのであれば、少し力の質をコントロールできるようにしようか。。。)


 ゼルダ班の皆にも同じような現象が起きていた。

 狂撃戦士化はアルの光で解除されたはずなのだが、その時に溢れ出た力がそのまま、自分たちに残っている。

 時間をかけたら、消滅するかもしれない。

 ならば、その前に、力を取り込もう。

 この空いた時間が丁度良いだろう。。。


「おい。水月が戻るまで、少し時間ができた。この力をなんとしてでも、自分に定着をさせるんだ。いいな!!」

『はい!!!』


 そして、ゼルダ班は、司令室前で力を定着させるための、瞑想を始めるのだった。




 司令室では、それぞれの役割が決まりつつあった。

「では、”五行の精”の皆さんが、結界の上にさらに結界を張って、魔法の痕跡を空間に留めるようにする。リリィとウォルゼスさんはガルーダの魔法の痕跡を辿る。僕は合流したジルと共に、アルの救出に向かうよ。マリィは魔力の補充がいるかもしれないから、僕たちについてきて。万が一、危なくなったらすぐに逃げるんだ。いいね。」

 ジョージはマリィの頭に手を乗せる。


「父上、ヴォルガさん、叔父さん方、幹部の皆さんは、海岸線の制圧部隊からの連絡もありますし、ここで指揮をお願いします。」

 ジョージは丁寧に頭を下げる。

「おう、心配するな。それくらいは任せておけ。」

 叔父のダヴィットが胸を叩き力強く請け負う。


「ジョージよ。。。魔王アルではないが。。。。命を落とすではないぞ?」

 国王の言葉は、王としてではなく、父としての言葉となっていた。

「はい。命を賭して親友を助けに行きますが、母上からいただいたこの”ドラゴンの民”の力を以て、父上のお言葉を違えることなく戻って参ります。」

 力強くジョージは答えた。




((おい。ゼルダ。こんなところでどうした?居眠りか?))

 水月がゼルダの肩を叩く。

「おぉ。水月。戻ったか。」

 旧友の声に、ゼルダが立ち上がる。


「居眠りじゃないがな。。。”魔王の力”だろうな。狂撃戦士の力を定着させていたんだ。」

((そうか。それなら良かった。ゼルダ班揃って、寝てるんだと思ったぜ。))

 がははは。と豪快に水月は笑った。


「それよりも、どうなってるんだ?」

((その説明はあとだ。なんでも時間がないらしいからな。))


「司令室とも連絡が取れないんだ。少しで良いから説明しろよ。」

((そうなのか?俺は大丈夫だがな。。))


「たぶん、結界の力が関係してると思うわ。その通信玉に覆ってるオーラ、解除する?」

 カルアがゼルダの耳を指さしながら言う。

「この妖精は誰なんだ?」

 ゼルダが訝しがる。


((こう見えて”世界樹”の妖精らしいぞ?))

 その言葉に、ゼルダが固まる。


「ま、とりあえず、解除しちゃって良いよね?」

「そうだね。使えるに越したことはないから。」

 カルアとジルは、ゼルダを無視して話を進めていく。


「えいっ!」

 軽いかけ声でカルアは通信玉に人差し指を付ける。

 おおよそ結界の解除とはほど遠いその身ごなしに、ゼルダ班のドラゴンライダー達も不安げに見つめていた。


「オッケー!!」

 カルアは軽く解除を伝える。

「え?え??もう。ですか?」

 なにも感じないままに、解除が終わっているらしいことに、ゼルダの理解がついて行けない。


「大丈夫だって。ジョージかシグナル辺りに話しかけてみたら?」

 カルアの言葉に促されるように、ゼルダは耳に手を添える。


「シグナル!聞こえるか?シグナル?」

 恐る恐る通信をする。


「ん?ゼルダか?無事だったか。」

 ジョージの声が聞こえた。

「あぁ。。。良かった。通信ができなくてな。世界樹の妖精に直してもらったんだ。」

 ゼルダの顔に笑みが戻った。


「ん?なら、そこに水月もいるのか?」

「はい。一緒です。」

「水月!”世界樹の雫”は?」


((俺達が行って、手ぶらで帰ってくるわけないだろ?))

 ニヤリと笑う。

 司令室では、その言葉に歓声が上がった。


「結界解除に至る量は作れたのか?」

「そんな量じゃないですよぉ。世界樹丸ごと入る水球があります。」

 呆れたようにため息をつきながら、ロキが答えた。


「そんなにか。。。ならば、ここの解除を早速始めてくれ。」

 シグナルが伝えるが、

「ちょっと待って。その前にジル?偽世界樹へ行ってくれないか?」

 ジョージが言葉を挟む。


「え?どうして?」

 ジルは不思議そうに首を傾げる。


「あぁ。万が一、ここと向こうの結界に何らかの繋がりがあった場合、ここの解除と共に、何か起きると行けない。君が向こうに行き、様子を見ていてくれないか?」

「そうか。。。そうだね。なら、早速向かうよ。着いたらすぐ連絡するから、準備進めてて。」

「じゃ。あたしも着いて行こっーと。」

 ジルの肩にカルアが座る。


 ジルは青魔竜の姿になり、偽世界樹へ飛ぶ。


 その時だった。


「ジョージ様!!!結界が。。。」

 リリィが叫びを上げ、結界の一部を指さす。


 オーラを纏うように光っていた結界が、光を失っていく。

 そして。。。

 一部が薄くなっていくのだ。。。。


「水月!!!命は下してないぞ!!!ジル様到着を待て!!!」

 シグナルが慌てて叫ぶ。

((俺達は何もしていないが。。。どうかしたのか?))


 そう言われればそうなのだ。

 水月達が待機している扉とは反対側から、崩壊が始まっている。


「ジル?聞こえるか?到着はまだか?」

 ジョージもジルに通信する。

「あとちょっとだよ?どうかした?」

「結界の崩壊が始まった!!!急いでくれ!!」

 ジョージの慌てぶりに、ジルも緊急事態を悟る。


「分かった。全力で飛ばすよ!!!」

 ジョージに伝えると、ジルはスピードを上げる。



「ダメです!!!結界に穴が開きます!!」

 リリィが原因不明の崩壊に、自分の結界魔法で補強しようとしていたが、意味を為さない。

 額の汗は流れ、目には涙が浮かび始める。


「ダメッ!!まだダメよっ!!」

 リリィの叫びに、祖父のウォルゼスも手を翳す。

「魔王の生死に関わる問題でなければ良いがな。。。」

 小さく呟いたウォルゼスの言葉に、関係者全員が硬直する。


 

 ジルが偽世界樹を目視できる距離まで来た。

「結界が光を失ってる。。。」

 ジルも絶句する。

「ダメだ。ジル。崩壊が始まる!!!」

 ジョージの通信が入った。


 目の前にある偽世界樹の強力な結界。。。

 ジョージの通信とこちらの状況が繋がっている。。。


「ジョージ。。。ダメだ。。。ここもすでに崩壊が始まってる。。。穴が開くのも時間の問題だ。」

 予想外の状況にジルの声は掠れていた。


 先ほどまで、意気揚々と出発したのが嘘の様に、今は絶望が心を覆う。

「同時に崩壊って。。。アルに何かあったってこと?」

 ジルの首に掴まり、カルアが大きな声を出す。


 偽世界樹の前に到着し、ジルは人間の姿に変わる。

「どうなんだろ。。。でも。。。。」

 ジルは言葉を止める。

 ”でも、この崩壊の仕方は良くない”とはカルアには言えない。。。


 しかし、ジルのその様子に、カルアも感じるものがあった。

 ジルの襟をギュッと握り、光を失った結界を見上げる。


 少し上の結界に穴が開き始めた。。。

「いや。。。いや~~~!!!死なないで~~~~!!!」

 カルアは目の前の光景に耐えられなくなり、ジルの肩で泣き崩れた。

「カルア。。。」

 ジルは声を掛けきれず、カルアの背中を撫でた。


 司令室と偽世界樹。そして司令室前。。。

 全ての通信が繋がり、全ての状況を把握し。。。

 皆がその光景に絶望を感じた。



「いやぁ。。。だめよ。。。死んじゃだめぇ。。。。」

 ジルの肩でカルアが泣き震えている。


 

「誰か死にそうなの?治そうか?」

 場違いな軽い声が後ろから聞こえる。


 カルアとジルは目を合わせる。


「だからさ~。誰が死にそうなの?誰もいないじゃん。」

 その声の方向に二人同時に振り向く。


『アル!!!!』



 そこには、ホセの背中に乗ったアルと、ペンギンがいた。


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