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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
102/322

第101話  ~各々に~


 司令室内では慌ただしく会議が始まる。

 アルの作り出した結界の解除に向けて。



「じゃが、人工的に作り出した”世界樹の雫”だけで解除できるものじゃろうか?」とダルガ。

「本物の”世界樹”がこんなに近くにあったとは。。。」と国王。

「”世界樹の精”であるカルアが来てくれて良かったわ。」とリリィ。

「結界解除ができたとして、アル陛下の居所が分かりません。」とシグナル。

ゲートは閉まった。残渣でもない限り入口の再構築ができるかどうか。」と大賢者ヴォルガ。

「アルが無事であれば、それでいい。」とジョージ。


 そんな感じで、皆が思いを口にし、まとまらない。



『皆様。お話のところ、よろしいでしょうか?』”五行の精”が口を開く。


「もちろんです。お気づきの点がありますか?」

 ジョージは丁寧に接する。


『ここを先に解除してもらえないのでしょうか?』

「え?どういう事ですか?」


『はい。我ら一同、考えたのですが。。。ここには我らも”ドラゴンの民”も賢者も魔法使いも”元魔王”も。有能な者が集結しております。向こうには青魔竜様と”世界樹の精”。全ての力を結集することが、アル様救出に大切なのではないかと。。。』


「それは一理あるんだが、ガルーダが消えた現在、魔法の残渣が残っているかもしれない。ならば、その足跡が消えてしまう前に辿りたいのだが。」


「ふぉっふぉっふぉ。ヴォルガよ。まだまだじゃの。魔王アルが張った結界は、多重結界。それもこの地上で見ることもできないかも知れないほどの強力なものじゃ。たぶん、亜空間のゲートが開いたことを危惧して、他に被害が及ばぬようにしたのであろう。」


「それが?」

 ヴォルガは父からの言葉に、少し不満気であった。


「だからのぉ。偽の世界樹に張られた結界を破るのは至難の業。それどころか、魔法の痕跡程度、消えずにその中に留まるじゃろう。魔法力など、結界の中であれば逃げ消えることはできぬでの。」


 ウォルゼスはそこで一旦言葉を切った。

 そしてその後を”五行の精”が引き継ぐ。


『ですので、無理をして時間をかけて消すよりも、ここを先に解除していただきたいのです。ここは、我らの足止めの為の結界。あちらより、弱いですから。そして、万全の体制を整えて、あちらに向かいたいのです。上手くいけば、亜空間の座標点も割り出せましょう。』



「そっか。。。そうだね。じゃ、準備ができたら、そっちに向かうよ。」

 水晶から、ジルの声が聞こえた。

「頼むよ。」

 ジョージはジルに答え、そして皆にもう一度向き直る。



「さて、ではジル達が戻る前に、向こうへ行ってからの手順を考えなくてはね。」


 そう言って、司令室はそれぞれの役割を話し合うことになった。





 その頃。亜空間では。。。。



「ちょっ。ホセ。食べすぎだって!この後、脱出するのに何日かかるか分かんないんだぞ?そんなに一気に食べたら、無くなっちゃうだろ?」

「ええやないか~~~。最悪は”世界樹の雫”あるやん!!1滴で一日分やろ?さっき見た量からするに、しばらくは大丈夫やって~~。」

 そう言って、ホセと僕はフルーツ籠を引っ張り合う。


「今日の分は終わりだって~~~~。」

「もう一粒だけや?な?」

 そしてホセがマスカットに嘴を付けようとすると


 ツルッ!!


 取り損なって、マスカットが一粒、跳ね上がる。

『あっっ!!!』


 僕たちは目線でマスカットを追う。まるでスローモーションのように見えた。

 ここは亜空間。転がる床はない。

 あの軌道だと、確実にどこかに落ちていってしまう。。。。


『あぁぁぁぁぁ~~~~。』

 そこの見えない足元へと落ちていく。。。。


 パクッ!!


『・・・・・・・?』

 僕とホセは見つめ合って首をかしげる。

 何故って。。。。

 突然、”パクッ”という音と共に、マスカットが消えたから。。。。


「なんか突然消えなかった?」

「なんか音がせえへんかった?」

 僕もホセも動きを止めて見つめ合うばかり。。。


「お化けとかじゃないよね?」

「怖いこと言うなや~~~。」

 ブルっと寒気が来る。


「はぁーーー。美味しかった!!」


『・・・・・・!!!!』

 突然の声に、二人で身を寄せ合う。

「なんや。声がしたな?」

「うん。。。ハッキリと。。。」

 僕たちはもう、泣きそうだ。



「ねえ。もっとないの?」


 声はする。。。。

 だが姿が見えないのだ。


 僕たちの恐怖は頂点になる。

「ホセ。。。僕こいうのダメだから。」

「待て。俺かて苦手や。魔王だろ。確かめて来い。」

 二人でブルブルと震えながら、確認をする役目を押し付け合う。


「いや。僕、世の中で最弱と謳われる子供にも討伐されちゃうスライム種だよ?」

「なんや。ごっつい魔王様やんけ。配下にゴーストとかマミーとかおるやろ?変わらへんって。。」

「それとこれとは、絶対話が別だと思うよ?」

「一緒やて。アルに勝てるもんなんて、おらへんって。」



「ねぇ。それって僕の事?お化けじゃないんですけど。。。」

 下から聞こえていた声が、すぐ後ろに聞こえた。


 そーッと僕たちは振り返る。

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!』

 暗闇に僕たちの絶叫が響き渡った。



 アルの作り出した小さな明かりに照らし出されたのは、ぎょろりとした目と、黄色い大きな口。。。

 いや。これは。。。。

「あれ?くちばし?」

 ホセで見慣れたくちばしのような感じがする。


「はぁぁぁぁ。せっかく久しぶりのお客さんだと思って来てみたらさー。何この扱い?」


 僕はオーラを明かりに注ぐ。

 すると強さを増した明かりの下に浮かび上がったのは。。。。


『ペンギン????』

 今度は驚きに目を見開いて、見つめ合う。


「いや。僕、ペンギンではないです!!」

 小さな手を上げ、僕たちを制止する。

「どっからどう見てもペンギンやないか!!」

 ホセがペンギンの頭をはたく。


「ちょっと~。やめてくださいよぉ。ペンギンじゃないんですってば!!」

 ホセにはたかれた頭をさするペンギンがなんとも可愛らしい。


 だが、問題はホセだな。。。

 相手がペンギンだと分かった瞬間に、いきなり強気に出るとは。。。

 ホセらしい。


「けどさ。ペンギンさん。。。僕の目にはペンギンに見えるんですけど。本当は?」

 相手が自分をペンギンでないと言ってる以上、危険かもしれない。

 中身が分からないので、ダメもとで聞いてみる。


「良くぞ聞いてくれました!!何を隠そうこの私。聞いて驚くなよ~~~~。」

 かなりもったいぶった言い方をする。

「早よ言えや!!」

 またもホセが頭をはたく。


「・・・・っつ!!君には人の話を聞く姿勢ってものは無いのか?」

 頭をさする。

「ごめんごめん。悪いヤツじゃないんだ。ついノリで出ちゃうだけだから。許してやってよ。」

 なぜか僕が謝る。


「まぁ。スライムに免じて今回は許してやるけども。。。僕の本来の姿を知って驚くなよ!!」

 ジロリとペンギンはホセを見る。

 ホセは羽根を高く上げ、はたく真似をすると、ペンギンも慣れたのか頭をさっと隠す。


「ふっ。そう何度も同じ手に引っかかると思うなよ?」

 ペンギンは勝ち誇った笑みを浮かべる。


「あの~。漫才中にすみませんが、話を進めてもらえますかね?」


「漫才じゃない!!」

「漫才ちゃう!!」


 二人の声がハモる。

 僕は笑いを堪えて肩を震わせながら、「話を。。。」とペンギンを促す。


「そうだった。。。僕は何を隠そう”精霊”なのだ!!!」

 バーンと胸を反らし大仰に言い放った。


「なんや精霊か。」

「亜空間だもんね。ペンギンがいるわけないか。」

 僕たちは感想を述べる。


「え~~~????僕”精霊”だよ?もっと驚かないの?君たちが出会えるような存在じゃないよ?」

 ペンギンが僕たちの反応に不満を漏らす。


「えー。そう言われたかてな~。」

「うん。結構僕たちのまわりにいるよね?」

 二人で頷きあう。


「僕はそんじょそこらの精霊とはワケが違うぞ!!空間を司る精霊なんだ!!太古の昔から僕一人しかいない偉~~~~~い”精霊”なんだぞ?」

 やけに”偉い”ってとこを強調してくる。


「この世に一匹かぁ。多分”五行の精”も一匹ずつしかいないよね?”世界樹の精”もさ。そんな珍しくないな。。。。どん位、偉いんだろうね。」

「そやなぁ。太古の昔とか言うてるからには、ジルと同じくらいちゃうか?」

「ふーん。」

 こそこそと二人で話をする。


「何をコソコソしてるんだよ?偉いんだぞ?もっと驚くなり、敬うなり、ひれ伏すなりしろよ!!」

「う~ん。。すいません。いまいち、偉さの基準が。。。」

 僕はソロ~とペンギンを見る。


「そうか。。。基準か。。。そんなこと言われるとは思ってなかったな。。。基準。難しいな。」

 一人でブツブツとペンギンが考え込む。


 しかし、何せ見た目がペンギン。

 なにをしても、その姿が可愛らしい。


「うわー!!!もうダメだ!!!かわいすぎるぅ!!!」

 僕はペンギンに飛び掛かり抱きついた。

 ホセのように、モフモフを堪能しようとしたのだが。。。


「うっわっ。こいつ全然柔らかくないんですけど!つーか、羽、固っ!!顔に羽根が刺さる!!」

 僕は衝撃で、後退りする。


「バカか?ペンギンって水鳥だぞ?表面は水を弾く為に、固くなってるんだよ。。。」

 ペンギンがムキになる。

「やっぱ。ペンギンやないか。」

 逆にホセがバカを見る目でペンギンを見る。


「だ~か~ら~。ペンギンじゃないんだって~~~~!!!」

 亜空間にペンギンの。。いや。自称”精霊”の声が響いた。


 



 ジル達は、世界樹へと急ぐ。。。


「亜空間の状態が分からない。。。急がないと。。。。」

 ジルの顔が青ざめてる。

「あれだけ強力な結界をあの大きさで作れるのよ?アルなら、自分の身体を覆うくらいの結界は作ってるわよ。大丈夫。」

 カルアはジルを慰める。


「結界を破ったとして、亜空間へ行けるもんなのか?」

 水月龍は素朴な質問をする。


「そういえば、亜空間ってどれくらいの広さなんですかね。。。。あんまり広かったら、見つけるのも難しいかもしれないですよね。」

 ロキが心配そうに顎に手を添える。

「そもそも、亜空間は無限に存在するんだ。座標点がなかったら、アルのいる亜空間を見つけ出すことすら難しいさ。何としてでも、成功させないと。。。。」

 ジルの声が震えるように低い。。。カルアはそっと、ジルの肩に手を置いた。



 

 4人は世界樹の根元へと来るとその大きな樹を下から見上げる。


「そういえば、入れ物って持ってきてないんじゃない?どうやって持っていくつもり?」

 カルアがジルを見る。

「それは大丈夫。さっきも言ったが、水の操作は得意なんだ。水球のまま運ぶくらいはできるぜ。」

 水月龍が軽く請け負う。


「もし、それがダメでも空間魔法を使うか、僕の中に入れても運べるよ?」

 ジルが付け加える。

「ジル?それなら、中に入れてじゃないと無理だと思う。魔法は多分使えないから。」

 カルアが言いにくそうに伝える。

「そっか。分かったよ。教えてくれてありがとう。カルア。」

「うん。」



「さてと、じゃあ早速始めようか。。。まずは本当に”世界樹の雫”が作り出せるかどうか。だな。」

 水月龍は小さな水を作り出し、真上の葉っぱに落とす。


 滴る水を水球にして、ロキに差し出す。

「飲んでみろ。」

「え?僕ですか?」

「君しかいないじゃん!心配しなくても、ただの水か”世界樹の雫”。お腹を壊すことはないよ?」

 ジルが勧める。


「じゃあ。」

 ロキはみんなの顔を見て、覚悟を決めて飲む。

 ごくっごくっ。


 戦闘によって、傷ついていたロキの身体から、傷が消えていく。


『成功だ!!!』

 水月・ジル・カルアは顔を見合わせて喜ぶ。

 実験台にされたロキは、その不思議さに目を見開くばかり。

「こんなことって。あるんだ。。。。」


 驚きに固まっているロキをよそに、3人は”世界樹の雫”の製造に取り掛かる。

「水球で保てそうだね。」とジル。

「そうだな。。。どれ位の量が必要だろうか?」と水月龍。

「足りなかったら、またくればいいわよ。」とカルア。


 だが、伝説に名を残すような3人。。。常識がずれていた。



「ちょっ。。。なんなんですか!!!この量~~~!!!」

 叫ぶロキの目の前には。。。。


 世界樹よりも大きな水球ができあがっていたのだった。

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