第100話 ~アルの行方~
いつの間にか100話となりました。
皆様のおかげで、ここまで頑張ることができました。
本当にありがとうございます。
思えば2ヶ月以上前に最終回をほぼ書き終えているにもかかわらず、それに向けて、70話で終わろう。終わらない。。。次は90話で終わろう。やっぱり終わらない。。。と目標を立てては挫折し、全く終われません(汗)どこまで続くのやら(苦笑)
1話から読み続けていただいている方も。途中からの方も。常連様も。通りすがりの方も。暇つぶしでも。応援して下さる方も。これからも読んでいただけたら幸いです。
水月龍の話を聞き終えるとダルガが口を開く。
「それはワシらも見ておった。」
ダルガが力なく項垂れる。
((ダルガ、そう焦るなって。。。))
「そうだよ。僕も扉が閉まりきる前に、水月に合流したんだ。」
「ジル様ですか?」
シグナルが驚きの声を上げる。
「うん。急に部屋を飛び出してごめん。」
((なぁ。ダルガよ。ここに”世界樹の精”という妖精がいるんだが。。。面白いことを言うんだ。))
「カルアか?無事だったか。。」
ダルガはその事にホット胸を撫で下ろした。
「ジルが迎えに来てくれたから。アルフォンこそもっと役に立ちなさいよ!」
泣きすぎて鼻声の妖精が怒っている。
「カルアよ。ワシはもうアルフォンではない。ダルガじゃ。」
困った子供を諭すように、優しくダルガが言う。
「それで、カルア?何か気付いたの?」
「リリィ?たまには遊びに来てよぉ。。。。っとその話はまた後で。。。」
カルアは深呼吸をする。
「みんなは気付かない?アルが死んだなら、結界が無くなるとか。忠誠を誓った魔王軍に変化があるとか。。。何にも無いでしょ?だから、アルは亜空間に飲み込まれはしたけど、生きてると思うの。。。」
「カルア!!それは本当か?間違いないのか?」
ジョージが水晶に飛びかかるようにして、尋ねる。
「その声はジョージ?確証は無いんだけど。。。”世界樹の加護”も消えてないし、水月さんはアルを助ける手段を考える為に、ギリのところで忠誠を誓ったらしいの。ちゃんと発動したって。でもそれが消えてないんだって。それに、サクラちゃんはどう?万が一の事があれば、変化があるんじゃない?何にも連絡が無いなら、何も起きて無いって事。つまりは亜空間の中だけども、アルは無事ってことになるでしょ?苦しいこじつけかもしれないけど。。。救出できる可能性が残ってるってこと!!前向きにいこうよ。」
カルアは無理に笑っているようだった。
「だが、カルア?結界は破れぬ。」とダルガ。
「そう。僕も試したんだけど、ダメだったんだ。」とジル。
「そうじゃろ?”竜”同士の力を持ってしてもダメなのじゃ。我らのおる司令室は、軟禁状態じゃて。」
ダルガが首を振る。
「それなんですが。。。」
控え気味にロキが言う。
「ロキか?なんじゃ?なんでも良いぞ。遠慮無く話すがよい。」
「はい。。。。僕、ずっと観察してまして。。。ジルさんとカルアさんが来たときも。。。それで、カルアさんの力って、陛下の力に似てるなって思ってたんです。それで。。カルアさんは扉が閉まった時に泣き崩れてしまったんです。」
「それは言わなくてもいいから。」
カルアが横からチャチャを入れる。
「すいません。。。。それで、その涙が落ちると、キラキラと結界が反応したんです。不思議だったんで、僕も水筒の水をそっと垂らしてみたんですが、何も起きない。どう見てもカルアさんの涙に反応してるんです。それで、どうしても気になって、不謹慎だとは思いましたが、皆さんが、陛下の安否を気遣っている横で、僕、結界を撫でたんですよね~。そしたら少しだけ涙が溜まってるんです。凹んでる証拠でした。もしもカルアさんが泣き続けたら、結界に穴があく可能性があるんじゃないかと。。。」
「そんな小さな身体では、穴が開くほど泣くなど、無理な話じゃろうて。」
「そう。。ですよね。。。もしかしたらと思ったんですが。。。」
ロキは頭を掻く。
「それは。。。無理な話でもないかもしれない。」
ジョージは、アルが無事かもしれないという話で、ようやく正気を取り戻した。
「ジョージ。どういう事?」
ジルが尋ねる。
「カルアは”世界樹”だろ?妖精の姿であっても、今はまだ”世界樹”なんだ。だとすれば、”世界樹の雫”あれも大きな意味ではカルアの力の一部だと思うんだ。”世界樹の雫”であれば、量産可能だ!!」
「”雫”を集めるのに、苦労するのよ?毎日僅かしか採れないから。」
カルアが口を尖らせる。
「カルア。その事なんだけど、アルはいろいろ実験してたんだ。その中で”世界樹に一度でも触れた水”は”世界樹の雫”と同じような効果がある。と実証していたんだ。雨さえ降れば、量産が可能なんだ!!」
ジョージは力強く演説する。
「でもね。それでも。。世界樹のテリトリーでは雨は滅多に降らないし、降雨魔法も出せないの。。。」
カルアが言いにくそうに呟く。
『我々が赴く事ができれば、容易い事なのですが。。。』
”五行の精”も残念そうだ。
((それなら、俺の出番だろう?俺は水龍だ。魔法でなくとも、地中や空気中の水の操作もできるぜ!!))
水月龍が得意げに言う。
「そうか。お主なら可能じゃな。しかも結界の外におるからな。試すのにうってつけじゃ。」
ダルガもようやくいつものダルガに戻っていた。
((そうだろう?結界解除は任せてくれ!!だが、時間をくれ。偽世界樹に張られた結界。壁の厚みが1メートルはありそうなんだ。水もかなりの量が必要だろうからな。一筋縄ではいかないかもしれない。))
「分かった。頼んだぞ。。。まずは結界を取り払い自由になってからじゃな。」
ダルガが答え、司令室の一同は頷く。
「アルの捜索はそれからだ。」
暗雲立ち込める司令室に、一筋の希望の光が見えて来た。
僕はすっかり真っ暗闇に取り残された。。。
断末魔と共にガルーダも吸い込まれてきたが、腹に体中が吸い込まれるのだ。
そりゃあもう、ホラーだった。
それも扉の消滅と共に消え去った。
光も音も無いそして、地面も何もない空間。。。
あまりのぶっ飛んだ世界に閉じ込められて、怒りなど消え、冷静になっていた。
いつものスライムに戻る。。。
ん?スライムに自分の意思で戻れた。。。
これなら、もしかして人型にも自分の意思でなれるんじゃない?
とか簡単に思ったが、やっぱり駄目だった。
「チッ。暴走モードに入らないと無理なのか。」
ふわふわと空中を漂いながら口を尖らせた。
「そうだ!移動するかもしれないし、羽は出せないかな?」
あまりの静けさに、もう独り言を喋らないとやってられない。
「ん。うぅんんん。」
背中に力を入れる。
ぴょこ。
小さな羽根が出た。
「イエーイ!!やればできるんだぜ!!!」
調子に乗って鼻歌交じりになる。
とりあえず、”亜空間”ではあるが、何にもないだけに、特に危険も無いようだ。
世界樹のテリトリーに初めて入った時のように、一つずつやっていこう。
「”世界樹の雫”も戦闘糧食もあるしな。しばらくは大丈夫だろう。」
羽根を出したものの、どこかに行く目的もないので、だらーんと漂うのみ。
「はぁーーー。暇だな。。。てか、暗闇って地味に辛いな。」
「雷とかな炎とか。。。暴走モードの時の弓矢。あれくらい光るとな~。できないけど。。。」
そしてのんびりモードのスライムで出来ることを考えてみる。。。
「う~~~~~んんんん。。。。。やった!!」
オーラを調整すると、身体がぼんやりと光始めた。
周りを確認しようと、ぐるりと一周ぅ......
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!』
後ろを見た瞬間。なんかいたのだ。
ぼんやりとした光しかない。そこに光る眼が浮かび上がったのだ!!
「なななな、なんだよぉ~~~~!!!」
誰もいないと思っていただけにパニックに陥る。
ギョロッとした目に恐怖を感じ、オーラを全開にする。
「なんや?びっくりしたわ~。。。まぶしいやろ!!!」
ん?聞き覚えがあるような。。けど絶対にいるはずがない声が。。。
そろーっと振り返る。
「なんや?心配して来てやったのに、バケモン見る目で見るんやない!!」
そこには親しみのある顔が。。。
「ホセ~~~~~!!!」
あまりの嬉しさに飛びついて、羽に埋もれる。
「あぁ。間違いない。このあったかいモフモフ感。。。本物だぁぁぁ。」
ようやく訪れた安堵感に、僕の擦りつきは止まらない。
「ちょっ。アル。くすぐったいって。やめろや。アル?」
ホセが身を捩る。
「いいじゃんかぁ。ケチケチすんなよ?減るもんじゃないだろ~?」
久しぶりのじゃれ合いに楽しくなって、僕はワザと角を擦り付ける。
「ぎゃははははっは。もうアカンて。ちょ。アル。もうダメや~!!」
ホセは堪らず叫び声を上げた。
「そうか。。。それなら今日はこのくらいにしといてやるか。。。」
真面目な顔でホセに向く。
「ええ加減にしとけよ?」
羽根でどつかれる。
「えへへへへ。」
そのどつかれたツッコミすら嬉しかった。
「ところでアル?ここどこや?」
「え?えぇぇぇぇっぇぇ!!!」
思わず叫んでしまった。
「ちょ。ホセ。助けに来てくれたんじゃないの?」
「何言うてるんや?穴に吸い込まれそうになってたから、その前に捕まえたろう思うただけや。まぁ失敗してここにおるんやけどな。」
ホセが可愛らしくウインクする。
「いやいやいや。。。ウインクしてもダメだから!つーかなんで飛び込んじゃうの?ここ亜空間だよ?」
「なんやて?出られるんやろうな?」
ホセは本当に何も考えずにやってきたようだ。
「はぁ。てっきり、脱出アイテムとか持ってきてくれたのかと思った~。”流石ホセ”って思った気持ち返してくれる?」
僕が口を尖らせて抗議する。
「アホちゃうか?勝手に勘違いしただけやろ?というかホンマにアルでも出られんのか?」
「うん。今のところアイデアも無いしね。誰かのアイデアをもらおうにも、思念も隔絶されてるから、無理っぽいよ?」
「どないするんや。。。。アルはスライムやから、ええとして。。。。」
「なんで、スライムだといいのさ。」
「前にも言うたやろ?鳥は、食事の回数が多いの!お前は食べんでもどうにかなりそうやけど、か弱いオウムはすぐ死んでまうわ!」
「呆れた。。。飯の話かよ~~~。それならしばらくは大丈夫。戦闘糧食と、”世界樹の雫”と。。。」
「なんや戦闘糧食か。。。味気ないな。。。」
「文句言うなよ。。。他のやらないぞ?」
「え?え?アルさん、まだ他にもお持ちなん?」
急にホセがすり寄ってくる。
「あとさ、レイマンゾのお茶とクッキーとパウンドケーキ。。それとフルーツが少々。。。おやつにナッツもあるけど?」
「なんや。流石、アル様やな!!」
「ホセ~~。アルからアルさんに今度はアル様って。。。見え見え過ぎて気持ち悪いよ。」
「準備万端な魔王様に敬意を払ったんやないか。持ってた食べもんに対してやけど。」
「やっぱりね。」
はぁ~。っと溜息をつく。
「けど、こないだのお茶会の残りだから、文句言うなよ?」
「言うワケあらへんって。。。快適な亜空間生活になりそうやな?」
ホセは上機嫌に僕の肩を抱く。
「明かりがあれば、もっと快適だろうけどね。」
嬉しそうにする親友の顔を眺めながら、僕は独り言をつぶやいた。
「明かりかぁ。。。周辺には、なんもないみたいやけど。まぁ、目印にもなるし、あるに越したことはないなぁ。。。」
ホセは腰に手を添え、首を身体ごと傾げて考える。。。
珍しく鳥っぽい仕草だ。
「そや!!!牛鬼との戦いで重傷を負ったジョージを助けるために、月を出したやん。。あれ、結構、明るかったし、できんか?」
めちゃくちゃ良い案を思いついた感じで言ってきたが、かなり無理がある。
「ホセぇ。あれ、僕が暴走した時だろ?その時の一連の記憶すらないんだよ。。。どう作ったかなんて。。。再現は無理だよぉ。」
「そうか。ええアイデアを思い付いたと思ったんやけどな。。。オーラを固めるんは無理か。。。」
「オーラを固める?・・・・・・・それ、いけるんじゃない?」
二人で早速、実験を開始する。
「ねえホセ。なんか出会った頃みたいで楽しいね。」
「そやな。。。あれからいろいろあったな。。。最近はアルがどんどんと手を離れていくみたいで寂しかったんや。」
「え?ホセが感傷に浸ることなんてあるの?」
「失礼な奴やな。。。こう見えて俺は、繊細なんや。」
と僕にヘッドロックをしてくる。
まぁ首が無いから、決まるはずもないんだが。。。
「僕はいつだって僕だよ?いつでも遊ぼうよ!ホセとは馬鹿な事もできる一番の友達なんだからさ。」
そう言ってヘッドロックの隙間からホセを見上げる。
「そうか?そんなこと言うと、ほんとにいつでも行くで~。」
ホセのロックが締まる。
「うぐぅ。ホセ。。。顔が。。。顔がつぶれる。」
「しょうがないやん!!嬉しい事、言うてくれるからや!」
そんなじゃれ合いばかりで遊びながら、試行錯誤の末、僕はオーラの塊を作り出した。
それは、ホセの頭くらいの小さなものだったが、小さな光でも、そこにあるだけで安心ができた。
「ぎゃははははっは。アルぅ。確かに助かるけどやな。頭から風船が出てるみたいになってるでぇ。」
ホセがお腹を抱えて笑う。
「しょうがないだろ?上手く切り離せなかったんだから。。。それに、いつどこかに飛んでっちゃうかも分かんないんだから、傍にあった方がいいだろ?」
恥ずかしさで顔から火が出る思いだ。
だが、いるのはホセだけ。安心してバカな格好もできるってものだ。
僕たちは、離れ離れにならないように、僕がホセの羽に埋もれて生活することにした。
脱出方法も。この亜空間の安全性も。何もかも分からないが、ホセと一緒なら、しばらくは楽しんで生活できそうだ。




