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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
101/322

第100話  ~アルの行方~

いつの間にか100話となりました。

皆様のおかげで、ここまで頑張ることができました。

本当にありがとうございます。


思えば2ヶ月以上前に最終回をほぼ書き終えているにもかかわらず、それに向けて、70話で終わろう。終わらない。。。次は90話で終わろう。やっぱり終わらない。。。と目標を立てては挫折し、全く終われません(汗)どこまで続くのやら(苦笑)


1話から読み続けていただいている方も。途中からの方も。常連様も。通りすがりの方も。暇つぶしでも。応援して下さる方も。これからも読んでいただけたら幸いです。


 水月龍の話を聞き終えるとダルガが口を開く。

「それはワシらも見ておった。」

 ダルガが力なく項垂れる。


((ダルガ、そう焦るなって。。。))

「そうだよ。僕も(ゲート)が閉まりきる前に、水月に合流したんだ。」

「ジル様ですか?」

 シグナルが驚きの声を上げる。

「うん。急に部屋を飛び出してごめん。」


((なぁ。ダルガよ。ここに”世界樹の精”という妖精がいるんだが。。。面白いことを言うんだ。))

「カルアか?無事だったか。。」

 ダルガはその事にホット胸を撫で下ろした。


「ジルが迎えに来てくれたから。アルフォンこそもっと役に立ちなさいよ!」

 泣きすぎて鼻声の妖精が怒っている。

「カルアよ。ワシはもうアルフォンではない。ダルガじゃ。」

 困った子供を諭すように、優しくダルガが言う。


「それで、カルア?何か気付いたの?」

「リリィ?たまには遊びに来てよぉ。。。。っとその話はまた後で。。。」

 カルアは深呼吸をする。


「みんなは気付かない?アルが死んだなら、結界が無くなるとか。忠誠を誓った魔王軍に変化があるとか。。。何にも無いでしょ?だから、アルは亜空間に飲み込まれはしたけど、生きてると思うの。。。」


「カルア!!それは本当か?間違いないのか?」

 ジョージが水晶に飛びかかるようにして、尋ねる。


「その声はジョージ?確証は無いんだけど。。。”世界樹の加護”も消えてないし、水月さんはアルを助ける手段を考える為に、ギリのところで忠誠を誓ったらしいの。ちゃんと発動したって。でもそれが消えてないんだって。それに、サクラちゃんはどう?万が一の事があれば、変化があるんじゃない?何にも連絡が無いなら、何も起きて無いって事。つまりは亜空間の中だけども、アルは無事ってことになるでしょ?苦しいこじつけかもしれないけど。。。救出できる可能性が残ってるってこと!!前向きにいこうよ。」

 カルアは無理に笑っているようだった。


「だが、カルア?結界は破れぬ。」とダルガ。

「そう。僕も試したんだけど、ダメだったんだ。」とジル。

「そうじゃろ?”竜”同士の力を持ってしてもダメなのじゃ。我らのおる司令室は、軟禁状態じゃて。」

 ダルガが首を振る。


「それなんですが。。。」

 控え気味にロキが言う。

「ロキか?なんじゃ?なんでも良いぞ。遠慮無く話すがよい。」

 

「はい。。。。僕、ずっと観察してまして。。。ジルさんとカルアさんが来たときも。。。それで、カルアさんの力って、陛下の力に似てるなって思ってたんです。それで。。カルアさんはゲートが閉まった時に泣き崩れてしまったんです。」

「それは言わなくてもいいから。」

 カルアが横からチャチャを入れる。


「すいません。。。。それで、その涙が落ちると、キラキラと結界が反応したんです。不思議だったんで、僕も水筒の水をそっと垂らしてみたんですが、何も起きない。どう見てもカルアさんの涙に反応してるんです。それで、どうしても気になって、不謹慎だとは思いましたが、皆さんが、陛下の安否を気遣っている横で、僕、結界を撫でたんですよね~。そしたら少しだけ涙が溜まってるんです。凹んでる証拠でした。もしもカルアさんが泣き続けたら、結界に穴があく可能性があるんじゃないかと。。。」


「そんな小さな身体では、穴が開くほど泣くなど、無理な話じゃろうて。」

「そう。。ですよね。。。もしかしたらと思ったんですが。。。」

 ロキは頭を掻く。


「それは。。。無理な話でもないかもしれない。」

 ジョージは、アルが無事かもしれないという話で、ようやく正気を取り戻した。


「ジョージ。どういう事?」

 ジルが尋ねる。


「カルアは”世界樹”だろ?妖精の姿であっても、今はまだ”世界樹”なんだ。だとすれば、”世界樹の雫”あれも大きな意味ではカルアの力の一部だと思うんだ。”世界樹の雫”であれば、量産可能だ!!」


「”雫”を集めるのに、苦労するのよ?毎日僅かしか採れないから。」

 カルアが口を尖らせる。


「カルア。その事なんだけど、アルはいろいろ実験してたんだ。その中で”世界樹に一度でも触れた水”は”世界樹の雫”と同じような効果がある。と実証していたんだ。雨さえ降れば、量産が可能なんだ!!」

 ジョージは力強く演説する。


「でもね。それでも。。世界樹のテリトリーでは雨は滅多に降らないし、降雨魔法も出せないの。。。」

 カルアが言いにくそうに呟く。


『我々が赴く事ができれば、容易い事なのですが。。。』

 ”五行の精”も残念そうだ。


((それなら、俺の出番だろう?俺は水龍ウォータードラゴンだ。魔法でなくとも、地中や空気中の水の操作もできるぜ!!))

 水月龍が得意げに言う。


「そうか。お主なら可能じゃな。しかも結界の外におるからな。試すのにうってつけじゃ。」

 ダルガもようやくいつものダルガに戻っていた。



((そうだろう?結界解除は任せてくれ!!だが、時間をくれ。偽世界樹に張られた結界。壁の厚みが1メートルはありそうなんだ。水もかなりの量が必要だろうからな。一筋縄ではいかないかもしれない。))


「分かった。頼んだぞ。。。まずは結界を取り払い自由になってからじゃな。」

 ダルガが答え、司令室の一同は頷く。

「アルの捜索はそれからだ。」


 暗雲立ち込める司令室に、一筋の希望の光が見えて来た。





 僕はすっかり真っ暗闇に取り残された。。。

 断末魔と共にガルーダも吸い込まれてきたが、腹に体中が吸い込まれるのだ。

 そりゃあもう、ホラーだった。


 それもゲートの消滅と共に消え去った。

 光も音も無いそして、地面も何もない空間。。。


 あまりのぶっ飛んだ世界に閉じ込められて、怒りなど消え、冷静になっていた。

 いつものスライムに戻る。。。


 ん?スライムに自分の意思で戻れた。。。

 これなら、もしかして人型にも自分の意思でなれるんじゃない?


 とか簡単に思ったが、やっぱり駄目だった。


「チッ。暴走モードに入らないと無理なのか。」

 ふわふわと空中を漂いながら口を尖らせた。


「そうだ!移動するかもしれないし、羽は出せないかな?」

 あまりの静けさに、もう独り言を喋らないとやってられない。


「ん。うぅんんん。」

 背中に力を入れる。


 ぴょこ。

 小さな羽根が出た。


「イエーイ!!やればできるんだぜ!!!」

 調子に乗って鼻歌交じりになる。


 とりあえず、”亜空間”ではあるが、何にもないだけに、特に危険も無いようだ。

 世界樹のテリトリーに初めて入った時のように、一つずつやっていこう。

 

「”世界樹の雫”も戦闘糧食レーションもあるしな。しばらくは大丈夫だろう。」

 

 羽根を出したものの、どこかに行く目的もないので、だらーんと漂うのみ。


「はぁーーー。暇だな。。。てか、暗闇って地味に辛いな。」


「雷とかな炎とか。。。暴走モードの時の弓矢。あれくらい光るとな~。できないけど。。。」

 そしてのんびりモードのスライムで出来ることを考えてみる。。。


「う~~~~~んんんん。。。。。やった!!」

 オーラを調整すると、身体がぼんやりと光始めた。


 周りを確認しようと、ぐるりと一周ぅ......


『ぎゃあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!』

 後ろを見た瞬間。なんかいたのだ。

 ぼんやりとした光しかない。そこに光る眼が浮かび上がったのだ!!


「なななな、なんだよぉ~~~~!!!」

 誰もいないと思っていただけにパニックに陥る。

 ギョロッとした目に恐怖を感じ、オーラを全開にする。


「なんや?びっくりしたわ~。。。まぶしいやろ!!!」


 ん?聞き覚えがあるような。。けど絶対にいるはずがない声が。。。

 そろーっと振り返る。


「なんや?心配して来てやったのに、バケモン見る目で見るんやない!!」

 そこには親しみのある顔が。。。


「ホセ~~~~~!!!」

 あまりの嬉しさに飛びついて、羽に埋もれる。


「あぁ。間違いない。このあったかいモフモフ感。。。本物だぁぁぁ。」

 ようやく訪れた安堵感に、僕の擦りつきは止まらない。

「ちょっ。アル。くすぐったいって。やめろや。アル?」

 ホセが身を捩る。


「いいじゃんかぁ。ケチケチすんなよ?減るもんじゃないだろ~?」

 久しぶりのじゃれ合いに楽しくなって、僕はワザと角を擦り付ける。

「ぎゃははははっは。もうアカンて。ちょ。アル。もうダメや~!!」

 ホセは堪らず叫び声を上げた。


「そうか。。。それなら今日はこのくらいにしといてやるか。。。」

 真面目な顔でホセに向く。

「ええ加減にしとけよ?」

 羽根でどつかれる。


「えへへへへ。」

 そのどつかれたツッコミすら嬉しかった。


「ところでアル?ここどこや?」

「え?えぇぇぇぇっぇぇ!!!」

 思わず叫んでしまった。


「ちょ。ホセ。助けに来てくれたんじゃないの?」

「何言うてるんや?穴に吸い込まれそうになってたから、その前に捕まえたろう思うただけや。まぁ失敗してここにおるんやけどな。」

 ホセが可愛らしくウインクする。


「いやいやいや。。。ウインクしてもダメだから!つーかなんで飛び込んじゃうの?ここ亜空間だよ?」

「なんやて?出られるんやろうな?」

 ホセは本当に何も考えずにやってきたようだ。


「はぁ。てっきり、脱出アイテムとか持ってきてくれたのかと思った~。”流石ホセ”って思った気持ち返してくれる?」

 僕が口を尖らせて抗議する。


「アホちゃうか?勝手に勘違いしただけやろ?というかホンマにアルでも出られんのか?」

「うん。今のところアイデアも無いしね。誰かのアイデアをもらおうにも、思念も隔絶されてるから、無理っぽいよ?」


「どないするんや。。。。アルはスライムやから、ええとして。。。。」

「なんで、スライムだといいのさ。」

「前にも言うたやろ?鳥は、食事の回数が多いの!お前は食べんでもどうにかなりそうやけど、か弱いオウムはすぐ死んでまうわ!」


「呆れた。。。飯の話かよ~~~。それならしばらくは大丈夫。戦闘糧食レーションと、”世界樹の雫”と。。。」

「なんや戦闘糧食レーションか。。。味気ないな。。。」

「文句言うなよ。。。他のやらないぞ?」


「え?え?アルさん、まだ他にもお持ちなん?」

 急にホセがすり寄ってくる。


「あとさ、レイマンゾのお茶とクッキーとパウンドケーキ。。それとフルーツが少々。。。おやつにナッツもあるけど?」

「なんや。流石、アル様やな!!」


「ホセ~~。アルからアルさんに今度はアル様って。。。見え見え過ぎて気持ち悪いよ。」

「準備万端な魔王様に敬意を払ったんやないか。持ってた食べもんに対してやけど。」


「やっぱりね。」

 はぁ~。っと溜息をつく。

「けど、こないだのお茶会の残りだから、文句言うなよ?」

「言うワケあらへんって。。。快適な亜空間生活になりそうやな?」

 ホセは上機嫌に僕の肩を抱く。


「明かりがあれば、もっと快適だろうけどね。」

 嬉しそうにする親友の顔を眺めながら、僕は独り言をつぶやいた。


「明かりかぁ。。。周辺には、なんもないみたいやけど。まぁ、目印にもなるし、あるに越したことはないなぁ。。。」

 ホセは腰に手を添え、首を身体ごと傾げて考える。。。

 珍しく鳥っぽい仕草だ。


「そや!!!牛鬼との戦いで重傷を負ったジョージを助けるために、月を出したやん。。あれ、結構、明るかったし、できんか?」

 めちゃくちゃ良い案を思いついた感じで言ってきたが、かなり無理がある。


「ホセぇ。あれ、僕が暴走した時だろ?その時の一連の記憶すらないんだよ。。。どう作ったかなんて。。。再現は無理だよぉ。」

「そうか。ええアイデアを思い付いたと思ったんやけどな。。。オーラを固めるんは無理か。。。」


「オーラを固める?・・・・・・・それ、いけるんじゃない?」


 二人で早速、実験を開始する。


「ねえホセ。なんか出会った頃みたいで楽しいね。」

「そやな。。。あれからいろいろあったな。。。最近はアルがどんどんと手を離れていくみたいで寂しかったんや。」

「え?ホセが感傷に浸ることなんてあるの?」

「失礼な奴やな。。。こう見えて俺は、繊細なんや。」

 と僕にヘッドロックをしてくる。

 まぁ首が無いから、決まるはずもないんだが。。。


「僕はいつだって僕だよ?いつでも遊ぼうよ!ホセとは馬鹿な事もできる一番の友達なんだからさ。」

 そう言ってヘッドロックの隙間からホセを見上げる。

「そうか?そんなこと言うと、ほんとにいつでも行くで~。」

 ホセのロックが締まる。

「うぐぅ。ホセ。。。顔が。。。顔がつぶれる。」

「しょうがないやん!!嬉しい事、言うてくれるからや!」



 そんなじゃれ合いばかりで遊びながら、試行錯誤の末、僕はオーラの塊を作り出した。

 それは、ホセの頭くらいの小さなものだったが、小さな光でも、そこにあるだけで安心ができた。


「ぎゃははははっは。アルぅ。確かに助かるけどやな。頭から風船が出てるみたいになってるでぇ。」

 ホセがお腹を抱えて笑う。 

「しょうがないだろ?上手く切り離せなかったんだから。。。それに、いつどこかに飛んでっちゃうかも分かんないんだから、傍にあった方がいいだろ?」

 恥ずかしさで顔から火が出る思いだ。


 だが、いるのはホセだけ。安心してバカな格好もできるってものだ。

 僕たちは、離れ離れにならないように、僕がホセの羽に埋もれて生活することにした。



 脱出方法も。この亜空間の安全性も。何もかも分からないが、ホセと一緒なら、しばらくは楽しんで生活できそうだ。

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