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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
100/322

第99話  ~魔王アル破れる~


 僕はガルーダの腹に空いた亜空間へと飲み込まれた。

 必死に羽ばたき、魔法を放ち、オーラを放出するが、ブラックホールのように飲み込まれていく。


「くっっ!!これまでか。。。」


 あの時、慢心せず、ガルーダを仕留めておけば。

 あの時、戦争さえ受けなければ。

 あの時。

 あの時。。。

 走馬燈のように、後悔が流れていく。


 入り口は徐々に小さくなり、そして消えた。

 僕のいる世界は闇に包まれた。。。




 画面の向こうで、アルが亜空間へと飲み込まれた。


『アル様~~~~!!!』

 司令室に”五行の精”の叫び声が響き渡る。

「まだ、亜空間へのゲートは閉まりきってはおらぬが。。。助けることは無理であろう。」

 ダルガが項垂れる。

「そんな。ダルガさんでもですか?」

 ジョージがダルガに詰め寄る。


「ワシが現役の魔王であっても無理であろう。あの魔法は黒魔術をきっかけとしておるが、その実態は古代魔法。。。使ったガルーダも知らぬのであろうよ。打ち破る事ができるのは古代魔法を使える者だけじゃ。」

 その言葉にジョージは理性を保てず、泣き崩れる。


「ジル様を連れてきましょう。」

 シグナルが冷静に判断する。

「そうじゃな。現状ではそれが一番可能性があるじゃろう。だがな。そもそも暴走したアルのとんでもない結界が未だ発動中じゃ。ここから外には出られぬ。」

 ダルガは静かに話す。


「それじゃ。どうしたら。。。。」

 膝をついて頭を抱えるシグナルに”五行の精”が伝える。

『最早手だてが見つかりません。この結界は思念すら通さないのです。ジル様に思念を送っていますが、通じないのです。』

 祈るように両手を結ぶ。


 万事休す。その絶望的な雰囲気が司令室を覆った。




---時間は遡る。。。


 ジルは世界樹のテリトリーへと転移した。

「カルアー!!!!」

 ジルが叫びながら”世界樹”へ走り寄る。


「ジル?どうしたの?」

 カルアは”世界樹”の中から声を掛ける。


「カルア、すぐに妖精になって。僕の側にいて?」

「だから、ジル?どうしちゃったの?」

「お願いだから。。妖精になってよ。」

 泣き顔になるジルを見て、カルアが慌てる。

「ちょっ。ちょっと待って。すぐに行くから。」

 


 カルアは妖精になり、ジルの側に行く。

「どうしたの?」

 カルアはジルの肩に乗り、ジルの頬を撫でる。


「驚かないで聞いて欲しいんだ。」

「うん。」

「戦争になってるって言ったよね?」

「うん。」

「狙いは”世界樹”らしいんだ。」

「え?」

 カルアは驚きに身を強張らせる。


「それで、僕が側にいることにしたんだ。君に会いに来るって約束したから。」

「ありがと。。。でも。。。そしたらジルも危ないよ?私は実態があるわけじゃないから。万が一の時は消えれば済むの。ジルはそういうわけにいかないもの。もしもの時は逃げてね?」


「そんな事しないよ。僕はカルアが好きだから!絶対に助ける!!世界樹自体は無くなってもなんとかなるかもしれないってマロウが言ってた。だけど、カルアはダメだ。僕が守る!!」

 ジルの言葉に、カルアはジルの首にしがみつき顔を沈める。

「ありがと。」

 小さく呟いた声は、ジルの耳元で聞こえた。


 ジルは顔を真っ赤に染めて「うん。」とだけ言うのが精一杯になっていた。



 暫しの時間が流れる。。。


「ねぇ。それでどうするの?」

 カルアは心配そうに聞く。

「うん。。。それがね。僕、”世界樹”が狙われてる話を聞いたら、頭に血が上って。。。カルアを助けなくちゃって、それしか考えられなくなって、途中で抜け出して来ちゃったんだ。。。何か対処法を話してたかもしれないんだけど。。。」

「そう。。。」


「それで、さっきから、アルに思念を飛ばしてるんだけど、繋がらないんだ。。。でも、大丈夫。カルアが心の結界を解いてくれたから、力は比べものにならない位になってる。全盛期まではまだまだだけど。。。ガルーダなら何匹いても、絶対勝てる。だから安心して?」

「うん。アルに繋がらないのは、きっとここが”世界樹”の結界の中だからかも。。。」


「あっ!!戦闘が始まったみたいだ!!」

 ジルが遠くの戦闘力を感じ取った。

「ホント?」


「だけど。。。おかしいな。。。ガルーダと闇の力が多い。。。ガーゴイルなのか?」

「え?どういうこと?」


「うん。ガルーダの周りで、急に闇の力が大きくなったんだ。それも複数いる。。。ガーゴイルにしちゃ、強すぎる気がする。」

「急に、か。。。何か強化魔法でも使ったのかも。。。」



 カルアが祈り始める。

「どうしたの?」

「うん。私も集中したら、少しくらい感じ取れるかもしれないから。。。」

 カルアは意識を集中させていく。


「あっ!!うんうん。少しだけ。敵味方くらいだけしか分かんないけど。。。少しだけ感じ取れた。」

「凄いね。」

「一応世界樹の精だから。」


 暫く二人で様子を窺う。


「・・・・・!!!!」

 大きな衝撃波を感知し、二人は顔を見合わせる。

「大丈夫かな?敵の技だよね?」

 カルアが心配そうにジルを見る。


 少しすると、闇の力が増えていく。。。

「え?ちょっと。どうなってるの?敵が増えていってる?」

 カルアが目を見開く。

「何が起きてるんだろう?」

 ジルも首を傾げる。


「あっ!!マズイ!!この感じはアルだ!!アルが暴走する!!」

 戦闘場所より離れた位置に大きな力を感じた。

 それは瞬時に移動を開始し、戦闘場所に着く。


 そしてその戦闘が開始されたようだ。

 大きな力がぶつかり合う。


「どうしよう。。。アルが暴走したら。。。力を使いすぎたら、また生命力を使っちゃうかも。。。」

 カルアがジルの襟を掴む。

「うん。。。だけど。。。君を残してここを離れられない。。。」

 ジルが躊躇している間にも、戦闘は続く。



 そうこうしているうちに、とんでもない量の”聖”の力が使われた。

「竜の力だ!!」

「これたぶん、結界を張ったと思う。。。」

「え?結界?なんで?」

 ジルのその問いをかき消すように新たな問題が発生していた。



「アルが。。。アルの存在が遠のいていく。。。」

「次元の穴が空いたみたい。。。」

 その二人の声は同時だった。。。


『っっ!!!』

 お互いの言葉に、二人は驚愕し、顔を見合わせる。


「マズい。カルア行こう!!!僕の精神世界に入って!!!必ず守るから!!!」

「うん!!」

 今度は躊躇などしない。

 ジルは素早くカルアを精神世界に引き入れる。

 ホントは賭だったのだ。自分の精神世界に”聖”の塊の、カルアが入れるのかどうか。。。

 自分の心に少しでも曇りがあれば、カルアが危ないのだ。

 アルは特別だったから。。。



 だが、ジルの不安を余所に、カルアはすんなりと精神世界に入れた。

「ジル。お願い。アルを助けてあげて?」

 心に直接響く、カルアの声。

 精神世界では嘘がつけないはずだ。

 だから、その言葉はカルアの本当の声。


 一点の曇りもなく、美しい優しさの声。

「うん。」

 ジルは青魔竜の姿へと戻り、偽世界樹へと羽ばたく。

 

 程なくして偽世界樹へと到着するが、そこには金色に輝く、見たこともないような強力な結界があった。


「こんな強い結界。。。見たこと無い。。。」

 カルアが驚嘆する。


 結界への侵入を試みるが、破れる気配などない。

 ジルの力を持ってしても。。。


「アル?アルーーーー?」

 ジルは結界を叩きながら、中を覗き込む。

 うっすらとガルーダが見えた。

((魔王アルは、ガルーダの作り出した亜空間へ飲み込まれた。))

 後ろから声がした。


「誰だっっ!!」

 ジルが振り返るとそこには、1組のドラゴンライダーがいた。

((お初にお目にかかります。水龍ウォータードラゴンの水月ともうします。))

「僕はドラゴンライダーのロキです。」


 その二人の様子にジルは警戒を解く。


「どうなったの?」

((はい。今お話したとおりでございます。まだ閉まりきってはいないですが、魔王アルは亜空間へと飲み込まれ、我々は結界の中へ入れない状態。万事休すです。))


「いやぁーーーー!!」

「カルア?」

 ジルの精神世界から、カルアが飛び出してきた。


「アル?アルぅ~~~。戻ってきてよ~~~。。。。」

 とても小さな妖精の姿で、結界に座り込み、両手で叩く。

 その目からは涙が流れ落ちていた。


「カルア。。。僕の力でもビクともしなかった。。黄天竜の力だ。。。古代竜である父さんでもない限り、これはもう。。。壊せないと思う。。。」

 ジルはカルアの背中にそっと手を置いた。


「いやぁ!!ジルは友達でしょ?アルを助けて?お願い。。。」

 カルアはジルに縋り付いたが、それが叶わない願いだと分かっていた。

 

 カルアの泣き崩れる姿に、ジルは自分の涙をぐっと堪えていた。


 そして、亜空間のゲートは口を閉めたのだった。。。




 司令室では。。。


「だがしかし、偵察隊もドラゴンライダーも離脱しているのに、画像は見えている。これはどこからの通信だろうか。。。」

 シグナルが呟く。


((俺だ。シグナル。))

 聞き慣れた声。

『水月か!!』

 シグナルとダルガが同時に叫ぶ。


「水月とは。。。」

 リリィが口を開いた。

((おや?俺の声が通じるのか?さすがは魔王アルの魔法だな。”竜”の力は凄いな!))


「いや。それよりも緊急事態だ。お前は今どこにいる?」

((ははっ。シグナルよ。珍しく焦ってるな。俺は今、偽世界樹の結界の外だ。失敗して結界の外に出ちまったが、結果的には正解だったようだ。))

 水月龍はこの状況を気にする様子もなく笑っている。


「お前、状況が分かってないのか?緊迫感を持て!!」

 シグナルが叱責する。

((冷静になれ。シグナル。結界が維持されているということは、魔王アルが死んでいない証拠。それにな。。。))

 そう言って話を始めた。




---まぁ、俺もよ。ダルガとは気が合ったし、楽しくやらせてもらってたよ。

 実際の所、忠誠は誓ってなかったがな。。。


 

 スライムがダルガの力を継承して魔王の座に君臨したときは、魔界も終わったなと思ってな。

 魔王軍も辞めようかと思ってたんだ。


 だがよ。数々の力を見たところ、”竜”の力を使うだろ?

 俺は”ドラゴン”だから、本能で感じる訳よ。

 忠誠を誓うかどうかは、保留にしたがな。


 そこで今回の仕事だ。

 ”竜”として、もう一度、人型になったら真価が分かると思って楽しみにしていたんだが。。。

 想像以上の”竜”だったな。



 そうそう。話を戻さないとな。


 俺はいつものようにゼルダ班だったが、初戦で相方が大怪我してな。

 あっさり離脱よ。興ざめだ。


 俺だけでも十分だし、ライダーを補充して前線復帰でも良かったんだが、ゼルダに新人教育を頼まれた。

 まさか、サファイア族の青年とはな。

 分かってて仕組んだんだろうが、黙ってることもないだろうに。



 そいつと最終決戦に臨んだ訳よ。

 上手く行けば、また面白くなるだろう?

 昔みたいに、ダルガとゼルダと俺達でな。


 だが、俺がその話をした途端、サファイア族のロキが驚きすぎて失神しちまってよ。

 若干前線を離脱して、介抱だよ。

 丁度、ガルーダが1匹ガーゴイルを犠牲にしてくれたんで、離れても大丈夫だったしな。


 ロキが目を覚ますと、驚きの変化さ。俺と少しだがリンクできるようになってた。

 熟年のドラゴンライダーと同じように、思念リンクだからな。

 言葉を交わすまでもなく攻防に移れる。


 まぁ。ロキは、俺の想像以上の潜在能力をまだまだ持っていそうだな。


 それで、ガーゴイルとの闘いに集中した。

 ロキはライダーとしての能力を一攻防ごとに高めていった。

 

 俺達の班が担当したガーゴイルは程なくして沈めた。

 苦戦をしている班へと合流し、また闘いに加わった。


 2匹目のガーゴイルとの闘いの最中に、ロキが”一体化”を習得したんだ。

 俺と完全に統合できる。

 まさかこれほどとはな。

 伝説とまで言われた、昔のコンビの時でさえ、数年かかったんだ。


 それをロキは数十分で成し遂げた。

 驚きだね。


 そして、ゼルダがガルーダの手に落ちた。

 まんまと黒魔術に引っかかりやがって。


 まぁ。たぶんだが、あのまま放っておいても、ゼルダは挟撃戦士にはならなかっただろう。

 それだけの精神力を持ってる。

 だが、他のライダー達はやばかった。体色が変化し始めてたからな。


 そこへ魔王アルがやって来た。

 金色のオーラを浴びると、挟撃戦士の奴らは気を失って、地面へと落ちたんだ。

 そして魔王アルが俺達に指令を出した。


 ”攻撃を開始したら、ゼルダ班を連れて逃げろ”ってな。


 戦闘が開始された直後に俺達も動いた。

 ゼルダ班の回収が終わって俺も離脱しようとしたんだが、ロキがな。

「ガーゴイルの体色も、元に戻ってる。回収しよう。」

 って言い出したんだ。


 魔王軍に連れ帰るわけにもいかないしな。。。。

 とりあえず、生きてるガーゴイルを抱えて、偽世界樹から離れたんだ。


 そんな事で時間をくってると、突然後ろに結界ができた。

 見たことも無いほどの強力なヤツだ。

 しかも俺が感じるに”竜”の力じゃないかとな。

 それもロキは同じように感じたらしい。

 

 離脱する際の映像も、ギリギリまで欲しいかと思って、偵察兵から通信玉を預かっていて正解だった。


 俺達は離脱を止めて、魔王アルの闘いを最後まで見届けることにした。



 そして、結界の中では、ガルーダの腹に空いた亜空間のゲートに次々と物が吸い込まれていった。

 魔王アルも、力という力を使って抵抗していたが。。。最後には吸い込まれた。


 結界の中は、不毛の大地と、ガルーダが立っているだけだった。



 だが、ガルーダの身体に空いた亜空間のゲートは消える様子がない。

 それはガルーダにとっても誤算だったようだ。ヤツは慌てていたからな。


 吸い込む物がなくなると、ゲートはガルーダの身体さえも吸い込み始めた。

 ガルーダの断末魔の叫び声と共に、全てを飲み込んだゲートはその姿を消した。----



 水月龍は静かに話を終えた。


「それはワシらも見ておった。」

 自分たちが見ていた画面と同じ状況であったことに、ダルガは光明を見い出せず、項垂れるのであった。



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