アロマ
「さとちゃんは進路どうするん?」上條が聞いた。
「アロマの専門学校」
「アロマの?」
上條はなんなんそれっという顔をした。今日は小谷だけが休みだ。準備室から軽快なリズムをきざみむドラム音が聞こえる。
「上條君は?」
「俺?就職やで」
「面接日はいつ?」
「来週」
「えーもうすぐだね」
二学期になり上條の面接日が決まった。アルバイトで面接を受けた経験があるので、そんなに不安になることはなかった。初めての就職なので、この会社を選んだ志望理由をそれなりに考えて望むつもりだ。いつのまにかドラム音が止み原が休憩しに教室に戻ってきた。
「上手だねー」里崎は原に言った。
原は「いえいえ」と謙遜しながら答えた。
「大ちゃんは試験いつなん?」
「11月かな」
「まだ先やなー。統計学学びたいって言ってたな」
上條の言ったことに大木は「いやっ違うねん」と否定したかったが、
原が「統計学ですかー、大木さんらしいですね」とすぐに口出した。
「将来、何調べるん?アウトローの人たちのナンバープレートとか?」
「そんなん調べて何になるんですか。それより上條さんは進学しないんですね」
「勉強は嫌や、雑学はすきやねんけどね。試験はマークシートやろ。塗るのなれてるしもう一回考えよっかな」
「もう無理でしょ」
「クラスのこも進路が決まってきたね」
今からは面接や受験がやってくる。しかし、大木と上條は特に焦ることなく、いつも通りだった。はたからみていた原には不思議でしょうがなかった。
「何でアロマの専門学校にするん?」
上條が思い出したように言った。里崎は家でアロマキャンドルやアロマポットにはまっていた。キャンドルに日が灯り部屋中に香りが充満する。足を伸ばし何も考えない。疲れた時、気分がすぐれない時などによくしていた。リラックス効果気分転換、癒し、不思議な魅力をアロマで知った。野球部の試合前に集中力を高める為にアロマをしてみたかったが言い出す勇気がなくできなかった。人のためになる可能性が多いにあるものだと確信し、専門学校に行くことを決意した。
「決めた理由はいろいろあるけど、人のために役立つかなって思ったの。」
「明日さあ、さとちゃんのアロマセット持ってきてここでしいへん。」
「いいなー」大木も賛同した。
「そしたら明日持ってくるね」話はすぐにまとまった。




