第1話
少し書き直しをしています。ブックマーク、評価をしてくださった皆さん、ありがとうございました。先に書いていた物を書き足しました。
私バカです。冷たい空気にさらされた冷えた身体に目が覚めた瞬間、前世の記憶を思い出したんです。周りを見てみると牢の中です。鉄格子のはまった、地下の泥壁の湿った牢獄です。
うわーないわ。と自分の迂闊さを呪ったのは言うまでもない事です。私、牢に入るまでは侯爵令嬢やってました。次期王になる王子の婚約者です。記憶の混ざった今なら言えます。思えば、この王子の婚約者にならなければ幸せなれたのかもと。断罪された事を思い出していました。
「ミルフィーユ・ラザフォード!君との婚約は破棄する」
殿下が私にそう宣言しました。大勢人のいる前で、憎しみを込めて声で。
「どうしてですか⁉︎私が何故婚約を破棄されなくてはいけませんの!」
私は一瞬信じられませんでした。侯爵令嬢で、王子の為に色々頑張ってきたのにと。
「醜い心根の女など、この国の次期王妃になるのに相応しくない!」
「そうです。あなたが、カナリアに酷い仕打ちをしたのでしょう。忘れたとは言わせません」
「私は!……殿下に振り向いて欲しかった!」
小さな悪戯くらいしたくもなるわ!そこに居る女ばかりを大事にされて、婚約者である私には冷たかった。
「その為に、私に酷い事をされたのですね。ミルフィーユ様、残念ですわ。お友達になれると思ってましたのに」
嘘だわ!先程まで殿下の背後で笑っていたでしょう!
「そうだよね〜。こんな女が次期王妃になっては国が壊れそうになるよね」
「信じられないよ。侯爵家の令嬢でありながら、卑怯な真似をするとは」
「牢のに引っ立てろ!私の友人に危害を加える女など要らない!」
「殿下!嫌!やめて!」
騎士に両手を拘束されて牢に連れて行かれたショックで気を失ってました。
目が覚めた今は全てが悪い方に終わってました。多分お父様やお兄様も、やってもいない罪を着せられたようです。処刑だと、牢番が言ってました。
「お父様、お兄様、ごめんなさい……私が悪かったんです」
私は、王子を奪い返したくて色々したようです。だってそうでしょう、自分の婚約者を取られそうに成れば、誰だって恨みたく成ると思うわ。それに、婚約破棄したければ、父親である陛下に早く言えば良かったのに。王命なら逆らわず、私も諦められたのに。
それも、私の立場さえ利用して王子の婚約を取り消すために、お父様達に罪を着せた人達がいるようです。王子も協力したのでしょうか?タイミングが良すぎました。我が家は、あんなに王家を大事にしていたのに酷い仕打ちです。
「私の愛する者を傷つけた罰だ!平民になって惨めに生きるがいい。汚職をした君の父親と兄は処刑する」
やはり王子が父達を陥れたのですね。無実の罪で。身分の低い彼女を王妃にする為に、我が家を利用するのですね。最後にお父様達に会いたい!惨めでもお願いしてみよう。
「殿下お願いです。私も処刑されて構いません。父達に最後に合わせてください!」
必死にお願いしました。お父様達の事を思うと涙が止まりません。全部私の所為ですから、申し訳ないですわ。もっと早く記憶を思い出していたらこんな事にはならなかったのに。
「……隣の房にいる、最後に慈悲ぐらいやろう」
牢の鍵を開けてもらい、鎖に繋がれたまま父と兄の牢に入れられました。
「ありがとうございます殿下」
私は、深々とお辞儀をしてお礼を言います。父と兄が痛ましそうな顔で、そんな私を見ていました。
「明日処刑だ。精々別れを惜しむがいい」
憎々しげな顔をしたまま、その言葉を残して殿下達が去って行きます。私は床に手を付いて父と兄に謝ります。
「お父様、お兄様、申し訳ありません。私の所為で罪を着せられてしまいました」
頭を床に付けたまま顔を上げる事が出来ません。怖かった、嫌われたと思いました。
「…ミルフィーユ、お前の所為ではないぞ。貴族の悪事を掴んだ私達を、廃除しようと策を巡らされただけだ」
お父様が私の手を取って立たせて下さいました。出来の悪い私を最後まで見捨てず優しい人達です。もう、恩返しができないのが残念です。
「そうだ!心配しないでいいよ、ミルフィーユ。手配はしてある。貴族には戻れないが三人で暮らしていける」
え?本当に?処刑されるのでは。
「本当に?お兄様」
「ブラウンの言う通りだ。心配は要らない」
お父様の優しい言葉が聞こえます。どうやら助かるみたいです。家を没落させた私が言う事ではありませんが、良かったですわ。無事にここからでれたら、今世のお父様とお兄様に恩返しをしようと思いました。
「会えて良かったな。家族は離れ離れにならない方が幸せだ」
先程まで気が付きませんでした。この方は誰?
「吃驚させてしまったね。この方はこの国にの第一王子だ。ここに閉じ込められていた」
金色の髪に翠の瞳のイケメンだわ。婚約破棄した王子よりも陛下に良く似てるわ。
「第一王子⁉︎ 亡くなったのでは?」
第一王子は病で亡くなったと聞いているわ。不穏な噂は有った様だけれど。
「義理の母親に殺されかけた。死ぬ前に祖父に、この牢の脱出方法を教えてもらっていたから助かったのさ」
何でもない事の様に言っていますが、辛かったのではないですか?
「先代陛下より王子の事を頼まれていたから、王子が牢から逃げて来たと言われて、その時は驚いたよ」
第一王子は病で亡くなった王妃様の子供です。今いる王子は2番目の王妃様の子供です。次期王の第一王子を亡き者にしたのですね。
しかも、逃げ出した第一王子が、我が家に匿われて居たとは私は全く知りませんでした。こうなると、亡くなった王妃様も、本当に病だったのか分からないです。
にげる手立てはできたのに、もっと複雑になったと思ったのは間違いですか?