パートナー
気づくと俺は見知らぬ場所にいた。が、そんなことはどうでもいい。よくはないのだが今はしょうがない。ひとまず置いておこう。
......だって目の前になんかいるもん。何だこいつ、薄い水色に半透明の体、そしてプルプルしてる。......スライムなのか?だけどこいつ、俺の思い描いてるスライムと違うんですけど。
とりあえず思い描いてほしい。スライムって言葉を聞いて思いつく姿を。多分ほとんどの人があの名作ゲームのシリーズに出てくるスライムを思い浮かべたと思う。もちろん俺もそうだ。
だけど今俺の目の前にいるスライム?は、というと
......人のような形をしてます。なんか棒人間みたいな感じ......。
どうするべきか考えてたらスライム?と目が合った。いやスライム?に目とかねーけどなんか目が合った気がした。
よし取り敢えず逃げようか、そう思って後ろを振り返って見ると女の子がいた。まだ意識はなく当然スライム?にも気づいてるわけがない。俺がこのまま逃げたら恐らくこの子が標的にされるだろう。
これってこの子を担いで逃げるべきなのか、でも逃げきれる保証はないし、それともこの子を守るためにこのスライム?と戦うべきなのか、でも戦って勝てるとも思えねーし。
俺どーしたらいんだ。スライム?こっち近づいてきてるし、やばいって。そう考えているうちにスライム?がどんどん俺に近づいて来て......
転んで体が飛び散った。
......助かったのかな、これって。でもスライム?の肉片というかゼリー片というかがまだ動いてんだよね。しかも一か所に集まろうとしてるように見えるし。
よし、今のうちに逃げよう。今だったら勝てるかもしれないけど、リスクを冒してまですることじゃないしな。取り敢えずこの子担いで逃げてこれからのことについて話し合わないとな。
◇
「俺の名前は吾妻亘だ。俺のせいでこんな事になってしまい本当に申し訳ない。」
そういって俺は深々と頭を下げた。恨んでいないと言っていたが、だからと言って謝らなくていいという道理などあり得ない。確かに俺が頭を下げたところで何かが変わるわけではないが、それでも謝罪しなければ俺の気が収まらなかった。
「んーと、取り敢えず顔を上げてください。本当に恨んでるとか全然ありませんから。それに、自分が死んだって感じが全然ないですしね。だってこうして今しゃべれてますし、私の体はぴんぴんしてますから。確かに私は死んだからここにいるんです。でも私ちょっとワクワクしてるんですよ。だって異世界ですよ?異世界っていったらやっぱり冒険ですよ冒険。今から楽しみでしょうがないんですよ。」
顔を上げてこの子の顔を見てみると、遊園地に行く前日の子供の様にキラキラした目をしていた。この子は本当に恨んでる様子もないし、自分が死んだということも受け入れている。そのうえで、これからを純粋に楽しもうとしてるんだと理解することができた。
「そーだ、私の名前がまだでしたね。私の名前は吉田紫っていいます。気軽に紫って呼んでください。私も亘さんって呼びますからね。なんせ今日から私たちはパートナーなんですから、これから二人で頑張っていきましょうね。」
そういって紫は俺の前に手を掲げてきた。紫自身は納得できていても、俺にはまだ思うところもいろいろあるし、納得もできていない。ただ、俺を本気で助けようとしてくれたこの子を俺は裏切れないし、絶対に裏切るようなことをしない。俺がこの世界で何をすべきか何一つわからないけど、それだけは絶対に守るべきことだと心に誓って、俺も手を掲げハイタッチした。
最初のスライム?の件いらなかったんじゃないかと書き上げてから思った。