スターリングラード ~出撃~
数時間前、ネールバウアー伍長の自主的な哨戒行動の許可を出したのは、ニーデルマイヤー少尉であった。
彼は今、司令室の前でパウルス司令との面会を求めていた。
ニーデルマイヤー少尉が司令室に入った時、パウルス司令はシュミット参謀長と共に、スターリングラードの勢力図を見ながら何やら話し込んでいた。
スターリングラードは寒い。この司令室は殺風景も相まって、余計に寒く感じる。
パウルス司令は、敬礼したニーデルマイヤーに気付くと、参謀長との議論を打ち切り、ニーデルマイヤーに向き直り答礼をする。
「何か報告かね。」
パウルス司令の問いかけに、ニーデルマイヤーは背筋を伸ばし答える。
「我が隊に昨日着任した伍長が行方不明になっております。」
ニーデルマイヤーの報告に怪訝な顔をするパウルス司令。ニーデルマイヤーは状況をかいつまんで説明し、捜索の許可を求めた。
「しかし、それだけでは人員を割く理由にはならん。話がそれだけならば、下がりたまえ。」
パウルス司令がそう告げた時、司令室に伝令が駆け込んで来た。
敬礼を済ませると、息を切らしながら報告する。
「敵襲です!!ここから約3キロの地点、付近を哨戒していた隊が消息を絶ちました!!」
シュミット参謀長が伝令に詳細を問う。
「その付近で散発的な銃声や爆発音がしていたようです。その地点を確認するという報告を最後に、無線の応答が無くなりました。」
慌てていた伝令も、冷静な司令や参謀長の姿を見て落ち着いた報告をする。
パウルス司令は、まだその場に残っていたニーデルマイヤー少尉に命令した。
「少尉、今すぐ出撃したまえ。車両を一台使用することを許可する。件の伍長も拾ってくるといい。」
ニーデルマイヤーは敬礼し、退出した。
廊下で待機していた曹長は、ニーデルマイヤーの少し後ろを付いて来る。
「命令が下った。皆を集め、出撃の用意をしろ、曹長。」
ニーデルマイヤーは必要な装備を挙げ、隊員に最低限必要な情報を簡潔に伝える。
「了解しました、隊長。しかし、問題は果たして伍長はその場に居るのか、ということになりますね。」
「大丈夫だ。今日はあの地点への出撃は無かった。偵察部隊も含めてな。」
曹長の問題提起は至極当然の疑問からであるが、ニーデルマイヤーには確信があった。
「あそこで戦闘が起きているということは、行動予定に無い味方が居たということだ。すなわち、ネールバウアー伍長しかおらん。」
曹長は納得し、敬礼した。去り際、
「生きているならば、なるべく急いで用意を整えますので。」
と、残した。
ニーデルマイヤーは自分のテントに向かいながら考える。
(さすがにそこまでは自信が持てないが…骨は拾ってやるしかなかろう…)
ニーデルマイヤーが準備を終え、トラックの停めてある場所に行くと、小隊の全員が既に整列していた。
「諸君、曹長から説明は聞いているな?」
全員が一様に目で返事を返す。
「よろしい、ではこれより味方の支援、並びに迷子の子猫を探しに行く。」
内心全員がため息をついたであろうことは言うまでもない。が、隊長のセンスの悪さは今に始まったことではない。
全員の顔を見まわし、ニーデルマイヤーは頷き、命令した。
「出撃!!!!」
拙い文章を毎回書いている俺も大概アレですね~…。
読んでくれる皆さまには感謝の念が絶えないです。
さて、俺は自分のイメージの風景を文章に起こすことがとんでもなく苦手です。
と、言う訳で近々ちょっとこの作品にプラス要素を加えます。
多分すぐお分かり頂けると思いますので、改装が済んだ後も『円卓の騎士勲章』をどうかよろしくお願いします。