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円卓の騎士勲章  作者: zetsu
第一章 スターリングラード
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スターリングラード ~哨戒~

「すると君は囮役の方を志願する訳か。」

ニーデルマイヤー少尉は淡々と続ける。

「囮役の危険性は索敵役のそれより遥かに増すが、それは理解しているのか?」

ネールバウアーは直立不動で答える。

「小官は狙撃の技能を有してはおりませんし、経験があるのは補給拠点の占拠と歩哨程度であります。今回のような索敵などの隠密作戦は未経験でありますので、少尉殿に同行させて頂きたく愚考する次第であります。」

ニーデルマイヤーは少し考え、質問を変えた。

「君はヴァシリ・ザイツェフを知っているかね?」

ヴァシリ・ザイツェフ、ソ連軍屈指のスナイパーである。ソ連軍の過剰なまでの宣伝で、ある程度誇大化されている可能性も少なくないが、それだけに実力の程は定かではない。

しかし、着任したばかりのネールバウアーに予備知識など無かった。

「いえ、存じておりませんが…」

ニーデルマイヤーは少し思案して、同行の許可を出した。


作戦開始まで数日の期間があり、ネールバウアーはドイツ軍拠点周辺の基本的な地理を把握するための散策をしていた。予定される出撃時と同じ装備、同じ携行品を身につけている。少しでもこの環境に慣れる為の努力である。

スターリングラードは北アフリカと違って寒く、コートが支給されていたが、小柄な彼には支給されたコートのサイズも少しばかり大きかった。

携えたkar98kは北アフリカで彼の使っていたGew98に比べて幾分も短く、取り回しも良い。廃墟の多いスターリングラードではこの取り回しがかなり有利に働くだろう。手榴弾も2つ携行している。

作戦のことや新しい上官のことを思案しながら歩いていると、いつの間にか拠点から離れすぎてしまっていた。

ネールバウアーは少し焦りながら拠点の方へ引き返した。

と、早歩きの彼はニーデルマイヤー少尉に貰った煙草を落としてしまう。ここスターリングラードでは煙草や酒などの嗜好品は貴重だ。慌てて拾う。

その時、ネールバウアーの後ろの壁が爆ぜた。


ソ連兵の偵察部隊は10人、2人ずつの編成でそれぞれある程度の距離に離れて索敵を行っていた。武器はモシンナガン小銃が5丁。10人の部隊で小銃を分けた結果がこの編成である。

ソ連軍は兵員としての物量こそ有利ではあったが、武器や食糧などの物資が不足しがちであった。

偵察兵の一人が何かを発見した。左手を小さく上げて部隊長が気付く。部隊長がその兵士の所へ素早く移動すると、30メートル程先の地点にドイツ兵が一人歩いている。こちらには気づいていない。

部隊の全員に指示を出し、他にドイツ兵が居ないか探らせる。結果はノー、どうやら単独行動をとっているようだ。

部隊長はドイツ兵の射殺を命令する。死体から何らかの書類を回収できれば、ドイツ軍の動向が把握できるかもしれない。

「出来るだけ頭を狙え、奴の装備を血で汚すな。一撃で決めろよ。敵に気付かれてはならん。」

部下に命令し、配置につく。

狙いを付けた部下が発砲する瞬間、そのドイツ兵は唐突に屈んだ。失敗である。気付いたドイツ兵はそのまま建物の陰に転がりこむ。

「いかん!!絶対に逃がすな!!!!」

部下に怒鳴り、部隊長は走りだす。

ヴァシリ・ザイツェフ=実在のソ連軍名スナイパー。映画「スターリングラード」は彼の映画です。

Gew98=旧ドイツ軍のライフル。kar98kはこのライフルの短縮モデル。

手榴弾=手で投げる爆弾。旧ドイツ軍の手榴弾は円筒形の爆薬入りの筒に柄がついたモデルです。

偵察=敵が居ないか探ったり、いろいろ調べたりすることです。索敵は敵を探すことですね。

モシンナガン小銃=旧ソ連の短発銃です。色々なバリエーションが作られたり、フランスやアメリカに一部製造を依頼してたりします。そのせいか、もの凄い数が作られました。こないだイラク戦争の戦場で使われているのが確認されたようですよ。

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