叙勲式典
【注意】この作品は第二次世界大戦中のドイツを題材にしたフィクション作品です。どのようなイデオロギー・プロパガンダにも該当しませんが、「ナチスなんて見たくもない!!」「戦争なんて野蛮な行為は嫌い」…等感じる可能性のある方は戻るボタンを推奨します。
また、時系列などがバラバラである場合も御座いますが、フィクション故ご容赦ください。(…単に勉強不足なだけです)
プロローグ
彼は総統の前に立っていた。周りには、ナチス党員や幹部・将官クラスの軍人が整列している。
その式典は、彼の為だけに用意された物であった。今回彼に与えられる勲章は、ドイツ軍史上初の快挙である彼の戦果に対して贈られる、最高位のものであった。
「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル、貴官の輝かしい戦歴を称え、私アドルフ・ヒトラーの名においてここに勲章を与えるものとする…」
総統がよく通る声で宣言しようとする。が、彼…ルーデルは総統の前に手を翳した。
「敬愛する総統閣下よ、貴方がもう二度と私に地上勤務を命じないと誓って頂けるのならば、小官はその勲章を受け取りましょう。」
ルーデルは丁寧な口調で、そして強い意志を持った瞳を総統に向け、言い放った。
ざわめく式典会場。そしてその言葉を聞き、剣呑な表情を浮かべるSS隊員。
だが、ヒトラーは鼻白んだ様子もなく語りかける。
「ルーデル、私は貴官を失うのが怖いのだ。貴官の戦果はおそらく世界史上最高の物で間違いない。これからは貴官には、他のパイロットにその貴重な技量を伝えていく重要な任務がある。貴官が戦死したら、我がドイツの空には二度と光が射すこともなくなってしまうだろう…!!」
ルーデルは困った顔をし、空を仰いだ。
「そうは仰られますが、閣下。小官は別段変った事をしている…という自覚も持っておりません。小官は、今は亡き上官であるステーン大尉から教えられたごく基本的な技術しか持っておらず、後進に教えられる事などごく僅かであります。それよりは、我が祖国ドイツの為に小官自身が闘いたいのです。そして、小官の他にも祖国ドイツの為に立つ若者がきっと現れることでしょう。」
その男、ルーデルは『空の魔王』と呼ばれる男であった。
ちなみに、用語解説(?)としまして…
小官=私(一人称)
ルーデル=実在のエースパイロット。アンサイクロペディアに嘘をつかせなかった唯一の男。
ヒトラー=言わずと知れた独裁者。
SS隊=ヒトラーの親衛隊。そのトップはヒムラー。