自棄っぱちのブルース
静かな夜、四角い枠の中で生きるすべての人へ。
集めることでしか世界と繋がれなかった男の、青くくすんだ哀歌です。破り捨てることも飛び出すこともできないまま、それでも静かに今日を重ねていく——そんな夜の片隅の空気を感じていただければ幸いです。
『自棄っぱちのブルース』
ピンセットの先に挟んだ小さな国は
今日も微動だにせず、黙りこくっている
消印の押された一枚の紙片を
黒いアルバムの四角い枠へ嵌め込む作業
ピンで留められた昆虫のように
僕の人生も行儀よく整列している
赤や青の幾何学模様
誰かの手紙を運ぶためだけに生まれた命
世界をめぐる憧れを胸に抱いたまま
結局はこの四角い部屋で干からびていく
真夜中のラジオが擦れた音で鳴っている
煙草をふかす煙がアルバムの透明シートを曇らせる
ふと、アルバムの角を強く掴んでみた
破り捨ててしまえばどんなに楽だろう
この小さな紙片のように、
僕の人生もただ燃やしてしまえばいい
けれど僕はまた静かにピンセットを置く
アルバムを閉じれば、ただの静寂
誰にも届かない愛を胸に潜め
明日も変わらず、同じ枠の中に収まるために
煙草の灰を落とし、ため息をひとつ
これが僕の、
誰にも聴こえない自棄っぱちのブルース
小さな切手集めの作業を通じて、日常の閉塞感や諦念、そしてその裏にあるかすかな希望を表現しました。
どれほど自由に憧れても、人は時に決められた枠の中に収まらざるを得ない瞬間があります。大声を上げて暴れ出すわけでもなく、静かに諦めを受け入れながら日常を重ねていく――そんな誰もが胸の奥に抱える「静かな叫び」を、ブルースの旋律になぞらえて言葉に紡ぎました。
夜更けの静寂の中で、この拙い歌があなたの寂しさにそっと寄り添うことができれば幸いです。




