鳥の魔物
「良いか? 嬢ちゃんたち……ここにいる魔物は必ず討伐してくれ。俺のおでんには欠かせない出汁になるんだからな」
「えー! だってゲンさん『おでん屋台』失敗したんででしょう!?」
「まぁまぁ、リンさん。おじさまの作った屋台はプロフェッサーさんも大喜びでしたから、全くの無駄では……」
「アリスちゃん……あまりフォローになってないわよ」
「お姉ちゃん……ボクはもう疲れたでござる……」
「ワォー! やはり日本の心は素晴らしいです! ノエル殿も武士の子だったのですね〜!」
『この緊張感の無さが好きwww』
『まだおでん屋台諦めてなかったんだwwww』
『ドワーフの出汁への執着心凄まじくて草』
『また犬猫カラスにヤられる未来しか見えないwwww』
◆◆◆◆
「よ〜し、これでここが2層目になる奈落の蓋が完成した。鳥の魔物も……」
「「「♪〜! ♫〜!」」」
ふと振り返ると、なぜか現れる魔物を相手に戦っているのはノエル一人で、他のメンバーはバックで歌やダンスの練習をしている。
「どうした? なんで一人で戦わせてるんだ?」
「アハハ……ゲンさん。やっぱり私達と新メンバーでは実力に開きがあってね。私やアリスちゃんはゲンさんの能力で……その……開発されてしまってるから……ポッ///」
『尊死』
『リンちゃん照れてるぞ!』
『おっさんに開発とか……それはそれでアリだなwwww』
『ズルいぞ! おっさん!』
『ドワーフwwww』
「まあ、そういう事よ。私以降に入ったノエルやサリーなんかも、ゲンさんが使えるという『寝る子は育つ&果報は寝て待て』の超強化バフをまだ受けてないからね。それに私は元暗殺者の訓練を受けてたし、サリーはあのマーク先生の娘だから……」
「なるほどな。それで普通の女の子で、しかもずっと病院のベッドで寝ていたノエル嬢ちゃんが置いてきぼり……」
――――ヒューン! ドカッ……ピカッ、ドォーーーーン!!!
「……って、置いてきぼりどころか一人で全滅させてるじゃねぇか!」
俺がツッコミを入れた瞬間にも、ノエルは宙に浮かべた4つの魔導玉を指先ひとつで縦横無尽に操り、適した属性魔法の連射で巨大な怪鳥の群れを次々と爆破・撃墜していた。
「ふぅ……ボクは動きたくないって言ったのに……もう、汗掻きたくない。あっちから飛んでくるから……えいっ」
ドカァァァン!!
『言ってることとやってることが狂暴すぎるwww』
『動きたくないから全自動ビーム砲台で殲滅www』
『ノエルちゃん(無バフ状態でこれ)とか伸び代どうなってんだよwww』
『ゲンさん! 早く出汁用の鳥の肉を回収するんだ!www』
「お、おう! ナイスだノエル嬢ちゃん! よし、この鳥のガラから最高のおでん出汁を『錬る』で抽出するぞ!!」
『もはやC級の魔物が食材にしか見えないwwww』
『この動画を見て勘違いする冒険者がいそう』
『簡単そうにヤッつけてるけどベテランの冒険者がパーティー組んでようやく討伐出来るクラスだからな』
『マジかぁ〜! 俺でも倒せそうだと思っていた!!!』
『それだけあのメンバーは普通じゃないwwww』
「よしよし、大分溜まって来たな……アレ? クロエ嬢ちゃん……あそこに通路があったっけ? さっきノエル嬢ちゃんの魔法が当たって壁が崩れ――――」
――ギャオオオォォォーーー!!!
「わっ、ビックリしたよ」
「凄い叫びでしたね……これをホラー作品に……」
不吉な事を言うお嬢様・アリス嬢ちゃん。
通路からはドシンドシンと何か大物が動く音がして……現れたのは……大きなニワトリ?
『『『出たぁーー!!!』』』
『ゲンさん、ヤバいよ……アイツは……』
『プロフェッサー「ゲン殿、アレは中南米のダンジョンで幾人もの冒険者を石に変えた魔物」』
『『『コカトリス!!!』』』
「なんだよ!? 有名な鳥なのか!? さぞ良い出汁が……」
コカトリスの口から灰色のブレスが吐かれ、それを回避するのが間に合わず左脚へ受けてしまう……。
「ん? おお、石化したな。どういう原理なんだ? ちょっと砕いてみて……」
「「「止めて!!!」」」
『『『止めろ!!!』』』
おお、嬢ちゃん達とリスナーがハモった。そんな事が出来るんだな。
「ハァ、コカトリスに石化された部分を砕くと元に戻らないんだよ……ゲンさんは世間知らずだね……」
ぬわっ、リン嬢ちゃんも結構な世間知らずだと思うぞ。でもコカトリスか……巨大な鳥だし魔物としても強そう、これは良い出汁の予感。
それにこれだけデカいと、さぞ肉の方も……鳥肉……。
「おお、そうだ! おでんだけじゃ弱かったのかも……焼き鳥だぁ。おでんと並ぶ屋台の定番じゃないか」
「「「えっ!?」」」
『まだ諦めて無かったwwww』
『しかも石化したまま……呑気になwwww』
『もはや酒と合うツマミを探す事になってるしな草』
『心配して損した』
『超ドワーフwwww』
ん? なんか反応悪いなぁ〜。
「おじさま……少し見せて下さいね……うん! 私が治せそうです……光魔法『キュア』」
ポッと手のひらに光をまとわせたアリス嬢ちゃんが俺の石化した左脚に手を置いて魔法を使う。石になった部分はすぐに治り動かせるようになった。
「アリス嬢ちゃん、すまないな。でも凄いな……光魔法かぁ〜、嬢ちゃん自身のネーミングセンスとは真逆だな、ガハハ」




