転落したアイドル女子高生【配信アリ】
「み、皆さん――き、聞こえ――ますか? コチラ――奈落と呼ばれる――穴に落ち……私、最後に――配信を……ッ! あ、あれは……? ――ド、ドワーフ……!? ね、寝てる? ――」
―――【通信が切断されました】―――
【速報】配信アイドルの『ローズ・ヴァルキリア』センターのリンちゃん、奈落に落ちて配信切れるwwwww
1 名無しの探索者
終わった……
リンちゃんが奈落の底に落ちた……
ラストの配信動画見た奴いる?
2 名無しの探索者
見た。マジで落ちてたな……
最後の「コチラ――奈落と呼ばれる――穴に落ち――」でゾッとしたわ
3 名無しの探索者
なんで奈落なんかに!? 『ローズ・ヴァルキリア』の他のメンバーはどうした?
4 名無しの探索者
3
一瞬で良く分からないけど奈落近くのドロップを拾おうとして……
5 名無しの探索者
奈落って生存率0%の最深部だろ?
どんなに強い冒険者でも即死の……というか帰還したヤツはいないよね?
6 名無しの探索者
いや待て
それより最後の最後、何か映ってなかったか?
7 名無しの探索者
「あ、あれは? ――ドワーフ?」
って言ってたやつwwww
『ドワーフ』って創作物だろ?
8 名無しの探索者
そうそれwwww
ノイズの隙間に一瞬だけ何かが見えた気がするんだがwww
9 名無しの探索者
8
幻覚だろwwww
奈落にドワーフ居るわけねぇwwww
10 名無しの探索者
悲しすぎてリスナー全員集団幻覚見てて草
11 名無しの探索者
いやマジだって!
俺コマ送りでスクショ撮ったけど、どう見てもヒゲが伸びたおっさん(?)が寝てるぞ!!
12 名無しの探索者
うp
うp早く
13 名無しの探索者
画像はよ
14 名無しの探索者
【画像】
これ。画質ガビガビだけど
15 名無しの探索者
14
ファッ!?!?wwwwwwww
16 名無しの探索者
マジでおっさん居て草wwwwwwwww
17 名無しの探索者
待ってwwwww周囲に落ちてるの魔物の死骸じゃね!?wwwwwこんな種類見た事もないぞ!
18 名無しの探索者
嘘だろwwww奈落の生態系どうなってんだよwwwwww
◆◆◆◆
「キャァァァァーーーー!!」
もの凄い悲鳴が遠くから響き渡りながらドンドンと近づいてくる。俺がここに追放され落とされた奈落の穴の終着点が、俺が今寝ている……ここだったりする。
「ふわぁぁ〜……んあ、よく寝た。だけど私生活で地肌にそのまま寝るのは……腰が痛て〜な」
大きなあくびをしながら、重い瞼を開ける。
軽くパンパンと背中から尻までを叩き、ホコリを落とす。その場で背筋を伸ばしてストレッチをした。
ドッカァーン!!
相当な衝撃と音だったけど……本人は無事のようだね。ここは俺が寝床にしてるから『フカフカ』にしといたんだよね。それで無事な理由だけど……女の子だね。随分と可愛らしい少女。そして……彼女が持っているのは配信機材だね。
「み、皆さん。私は無事です。き、聞こえていますか? コチラは奈落と呼ばれる大穴に落ちてしまったようです。私、最後にこの配信をもって遺言と……! あ、あれは人ですか?えっ、ド、ドワーフさん!? ね、寝てる? あの……」
―――【通信が切断されました】―――
配信機材は赤い点滅がしていて……あっ、切れたね。
「あ、あの……ドワーフさん……? ここ、どこですか……? 私、死んじゃったんですか……?」
涙と泥で顔をぐしゃぐしゃにした少女が、俺を見上げて震えている。
……ドワーフって、ひどい言われようだな。確かに長い間、ヒゲも髪も伸び放題だが俺は今年でピチピチの46歳を迎えた正真正銘の人間だ。現在は無職だけど……
「ここか? ここは『奈落』の最下層だよ。恐らくだけど……あと俺は人間だ」
「えっ、な、奈落……!? じゃあ私、やっぱり落とされて」
「いや、生きてるよ。君が落ちてきた場所、俺が普段からフカフカの土に耕しておいたからな。硬い岩場のままだと寝心地が悪いんだよ。起きた時に腰が痛くなっちゃうじゃん」
「ね、寝心地……腰が痛い!?」
少女は理解が追いつかないといった様子で目を丸くしている。無理もない。
落ちたら生存率ゼロと言われる絶対不可侵の禁域『奈落』。そこに助かり人がいるとは思わないのだろうね。
「わ、私はこれからどうすれば……」
「えっ、地上に戻れば? 戻り方は知らないけど……」
「ハァ、あの……ドワーフさん? ここでずっと何をしていたんですか? おヒゲも伸びっぱなしだから相当な時間、この『奈落』にいるのではないですか?」
「うん、ここはカレンダーとか見れないから分からないけど……多分、1年くらいかな?」
「やっぱり……1年間も何していたのですか?」
「もちろん……『寝てた』よ」
可愛らしい少女は頭を押さえて首を振った。おお、外国人みたいでサマになるね。美人さんはこういう仕草でも絵になるから得だよね〜。羨ましくなんか……無いからね。
「あの〜? それでドワーフさん……」
「それだ!」
少女は突然の声でビックリしたのか……肩を震わせた。
「ドワーフじゃなくて……俺の名前は『岩本源』だ」
「ほら……やっぱりドワーフさんじゃん」
俺は伸びてボサボサの頭をガシガシと掻いた。




