タイトル未定2026/03/30 23:59
「なんであんな格好してるんだろうな」A氏が言った。
信号待ち。
「ほら、さっきの居酒屋でさ。テレビでプロ野球やってたろ?」
「ああ」B氏が目を細める。
「野球やってる奴らってさ。なんであんな格好してんだろうな。冷静に考えるとおかしな格好してないか。帽子かぶって、半袖の下に長袖着て、靴下の上にまた靴下みたいなの履いて。普通じゃないだろ?」とA氏。
「確かに重ねすぎだな」B氏。
「大の大人がやる格好じゃない」A氏。
信号が青になる。
二人は歩き出す。
「あとさ、向かってくるランニングしてるやつ、腕振り、でかすぎない?」A氏。
「そんなに振ってるか?」とB氏。
「振ってる。そんなに振る必要ある?」
「ないな」
前からランナーが来てすれ違う。
二人とも少し避ける。
「ほらな」A氏が自慢げに言った。
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しばらく歩く。
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「あとこれ」スマホ見ながら歩いてる人を指差すA氏。
「遅いな、歩くの」B氏はすかさず同意した。
「しかも真ん中歩くんだよな、こういうスマホ野郎は」
「一番やっちゃいけないやつだろ」
二人はスマホ野郎を抜かす。
少しストレスが減る。
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「イヤホンしてるやつってさ」A氏。
「なに?」まだ文句があるのか、と呆れるB氏。
「声でかくない?」
「ああ、電話してるやつな」
「周り聞こえてないからって、自分の声もわからなくなってる」
「あるな」
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駅が近づく。
人が増える。
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「こういう人が集まる場所に来るとさ」A氏が言う。「人間ってマナー守らない奴多いよ、つくづく」
「まあな」
「マナーは守って欲しいよ、同じ社会で生きる一員としてさ」
「全くだな」
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そのとき。
「すいません」
後ろから声。
振り向く。
さっきのランナーだった。
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「さっきから、ちょっといいですか」
「え?」
「お二人で、ずっと道ふさいで歩いてますよね」
沈黙。
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「あと、あなたたち結構声大きいですよ」
ランナーは軽く会釈して去っていった。
A氏とB氏はしばらく無言で歩く。
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「……やっぱり腕の振りでかかったな」A氏が少しだけ間を置いて言う。
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人は、他人の“変”には敏感で、自分の“変”にはだいたい気づかなものかもしれない、とA氏とB氏は同時に思った。




