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第4話 裏事情……おぃおぃ

 某日某所、真っ白な空間に女性の金切り声が響き渡った。



「部チョーっ! アンタなんてことしてくれてんですかーーーっ!」


 間違えて殺してしまった人間を転生させようとしてたら、後ろから思いっきり蹴られてとんでもない操作ミスをしてしまったのよ。

 所謂人外転生、もうこれ最悪、下手したらクビだもの。入局二日目でクビなんて最短記録じゃない?


 私達転生神は、本来死ぬ筈ではなかったのに予想不可能な事故で死んでしまった生物を救済するため、別の世界で生かすナビゲート役をしているの。


 その際、転生先に悪影響を及ばさないように、また、すぐに死んでしまわないように能力や性格を調整する権限を与えられているのよ。

 今回は運良くヤクザーノ部長が居ないタイミングで誤ったヘリ落下事故を起こしたから、部長が帰って来る前に穏便に済ませようと思っていたの。


 だけど、あの対象者のつまらない質問に答えてたら、会合先の担当者の嫁が急に産気付いたから会が打ちきりになったらしいの。

 それで部長が早く戻って来るって連絡が入ってさ。

 あと三十秒で転生処理を終わらせようとしてたら、予想より早い二十秒で帰ってきて後ろからゲシッと蹴られた訳だわ。


「なんてことしてくれてんですか? それは俺のセリフじゃっ!

 お前が間違えてさっきの人間をやっちまったせいでな、俺は責任取らされて二階級降格だぞ!

 お前はおやじが庇ってくれたお陰で執行猶予で済むかも知れんが」

「持つべきものは権力者の父親ですよ!」

「身も蓋もないこと言う前に、ちゃんと反省文を仕上げとけっ!」


 そう言うとヒュンッと効果音を立てて消えていくヤクザーノ部長。

 私の机には百枚の白紙の原稿用紙。これ全部に鉛筆で反省文を書くのが今回の後始末な訳よ、最悪でしょ?

 なんでワープロじゃなくて手書きなの?

 えっ? 問題はそこじゃないって?


 確かにシャーペンを使わせてくれない意地悪なんて酷いわ……あたっ、冗談だから石は投げないで! 


『ごめんなさい、ごめんなさい、次からは対象者を違えませんから赦して下さい。

 でも、最後にヤクザーノ部長が私を蹴ったせいで、操作ミスをしたんです!

 あのヤクザキックがなければ、多分スライムにはならなかったんです!

 ゴブリンの一つ上がスライムだったんです』


 何度も何度も書いてヤクザーノ部長の悪口を書いて疲れた手をブラブラさせて回復し、さっきの対象者の様子を見る為にモニターをオンにしてみる。


「はぁ? 何故にスライムであんなに喜んでるの? 頭がおかしいってレベルにも程があるでしょ。

 あげくの果てに、コアを勝手に魔改造してオーバークロックさせてるし!

 演算ユニットの無駄遣いにも程があるでしょ」


 新しく開いたウィンドウには、ライムグリーンのスライムのスペックが表示されている。

 そこには、幾つかの“↑”と、“New”の文字が並び、成長の跡が示されているのだ。

 誤ってデフォルト設定のスライムとして送り込んだのに、どうしてこうなった? 反省文を書いていた間に何が起きたか、《《彼女》》は一切知らないのだ。


「一応ね、パパに頼んで救済措置でアンタが『人間になりたい』って思った時点で、キャラクリエイト画面に変移するようにトリガーを仕込んでるのに、どうしてよ?

 さっさと人間になりなさいって!

 有効期間は転生してから正味三日しかないんだから。

 三日過ぎたら、パパの権限でも人間には戻せないのよ! そうなったら、一生スライムなんだから!

 スライムのくせして、ゴブリン相手にムダ毛無双してる暇なんて、無いはずだからっ!」


 解せぬわ……どうしてこうなった?

 私が死ぬ思いで反省文を書いてる間に一体何が起きたのよ!?



 機能配属されたばかりの新神ダメーノのせいで、俺はいきなり二階級降格処分だ。

 確かに最後にヤツを蹴ったことで、誤タップを誘発した可能性はある。

 だが、教育的指導をした結果だ。俺は悪くない。


 しかし、俺に蹴られたダメーノに抱きつかれたあの被害者の発した言葉『ポヨヨンって』、今でも忘れられん。

 あまりにも情けなく、うっかりお決まりの送信ワード『良い転生ライフを』などと言ってしまったせいで、面倒な任務を任されてしまったが……ん?


「はあっ!? 何故ソイツを無視する?

 さっさと食わんかっ! 結界は三分しかもたんのだぞ! 他のスライムに気が付かれる前に食えっ!」


 解せぬわっ!

 俺の『フェンリル食ってお手軽進化大作戦』計画を、しょうもないプライドで無駄にすなっ!

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