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第36話 お出掛けしたら……ペラン

 無事にカマドウマローストが完成した。

 俺は欠片を無理矢理食べさせられたけど、冗談抜きで旨いと思ったよ。


「ミッシルさん、次は四匹同時に焼くんですよね?」

とバントムがケージを見ながら聞いた。


「うん、明日の朝から焼くつもり。ウンチ出すの二日は断食させないとね。切って腸を除けることも出来るけど、面倒だし。

 さっき焼いたのは、腸を除けて、ヒールポーションで茹でてから、ローストしてる。うん、これで大丈夫」


 完璧ですね……用途が鶏の強精剤ってのが無駄遣いみたいで納得いかないけど。多分、カマドウマパウダーに、あの特性擦りおろしリンゴみたいに色々な成分を足してサプリ化すると思うけど。


「言葉だけ聞いたら魚を捌いてから料理みたい……」


 確かに料理だ。対象がたまたまアレなだけだ。


「絵を見なけりゃ……」


 バントム、お前は空気読め。こう言う時は、素直に褒めれば万事オッケーなんだから余計なことは言うな。


「じゃあ、次に四匹ローストした後に連絡してください。消耗具合をチェックしたいので」


 バントムがこれで帰れる、とホッとした様子に見える。


「うん、分かった。予定通り進んだら明日のお昼になると思うから」

「分かりました。では失礼し――」

「あっ、ちょっと待って」


 クルリと背を向けようとしたバントムをミッシルさんがひき止めた。

 まさか……? こんな冴えない若造がミッシルさんの好みなの?

 お父さんが赦しませんっ!


「ゾウのウンチコーヒー、飲んでみる?」


 なっ! 高級品じゃないか!


「しっ、失礼しますっ!」

「美味しいのに……」


 何故かバントムが慌てて出ていった。ミッシルさんと俺は彼を見送りながら溜め息を吐いた。



 俺がスラホイールを回している最中に、ミッシルさんは蜥蜴先輩達のお世話を終わらせてようだ。


「ラグムのお陰で時間の節約が出来たよ。お利口さんね」


 左手に乗せてナデナデ。それなら子猫を相手にするみたいにもっとスキンシップを取ってくれても構わないよ。

 赤ちゃん言葉を使われたら恥ずかしいけど、世の中にはごく稀ににそう言うプレイを好む人も居るとか居ないとか……俺はノーマル。スライムだけど。


 ここでドアがコンコンとノックされた。


「どうぞ」

「ミッシル、たすけてー」


 入って来たのはビアンキだった。


「どうしたの?」

「無農薬系の殺虫剤として、野菜に沸いたアブラムシにワインビネガーを掛けたの」


 アブラムシって、俺が勘違いしたやつだな。Gじゃないなら、俺が出ても良かったかも……で、俺にアブラムシ退治が出来るのか?

 テントウムシの幼虫の十八番だと思うけど。


「アブラムシ退治は出来たけど、野菜にもダメージが出ちゃったの!」


 酢酸か何か知らんが野菜には強すぎたんだろ。


「寮の菜園は実験場を兼ねてるから損害請求は来ないけど……そうじゃなくて、アリとか小さなハエが今度は増えちゃったの!」


 当たり前だろ。餌を撒いたようなもんだし。それに、下手したら酸っぱい匂いでが苦情が来るぞ。肥料に鶏糞とか使えばそれでも来るけどさ。


「ハエが来なくなる花があるって、前に言ってたね?」


 へぇ、そんな便利な花があるんだ。さすが異世界。ミッシルさん、そう言うものに強いのかな?

 あぁ、だからカメレオンを大きく出来たのかも。


「何種類か苗を取り寄せることは出来ると思うよ」

「さすが! 頼りになるわ」


 俺のミッシルさんだから、当然だよ!

 でも、考えなしにワインビネガーなんて使うなって話。実験兼ねてんだろうけど。


「それと、匂いもどうにかならない?」


 それは、無理だろ。洗い流すしかないって。でも、土が酸性になるから、石灰撒かなきゃね。白線引くやつでも良いけど。


「それなら炭の粉を撒くのが良いかも。ビアンキも靴の臭い取りにも使ってるでしょ。蜥蜴の研究に変える前には臭い対策で良く使ったわ」

「じゃあ、実験農場に行ってみよ。ミッシルも来てよ」

「私? これからラグムの訓練と特訓と試験が――」

「そんなの後。ラグムは逃げないから!」


 訓練と特訓は同じことだよね?

 まさか普通のトレーニングと、しごきコース的な?


「分かったわよ、ラグム、行く?」


 勿論さ!

 差し出された手に飛び乗ると、籠にグワシャッと入れられた。


 それからビアンキがミッシルさんを連れてバタバタと、動き回って同行者が二人増えた。籠の中からなので顔は見えないが、声から男性が二人と思う。

 ガラガラと音を立てて馬車が来た。今回は乗せてもらえるようだ。籠に入れられて引き摺られるのかと身構えたよ。

 一度門で止まり、身分証の確認が入った。


「その籠は?」

「この子が入っています」


 カパっと蓋が開いたので、門番か何か知らないけど、『ヤァ!』と伝えてみる。


「はぁ?」


 はぁ、じゃねえ! ちゃんと挨拶しろや、コミュニケーションの基本だろ。


「あら、ラグムが門番さんを見て喜んでるみたいね。じゃあ……」


 ミッシルさんがおもむろに俺を籠から取り出した。この流れは……


「こんにちはー!のチュ――」


 それは流石に断固拒否っ! 門番の顔に接触したくない!

 その一心で……ドロリ……え?


「あら?」

「えっ?」

「へぇー」


 誰だ? 納得……したのは?


 チクショー……溶けたら核が上手く回せない……低出力状態?

 特殊な魔力の出る……手錠?でも掛けられたみたい。フニャッて……なる


 思考速度が……これよ


 今回はセンパイの……弾力が原因じゃない……から、意識は……しっかりしてる

 ただ出来る……ことが制限された……だけ

 セーフ……モードで起動……って感じか

 しかし……溶けて平べったく……なって目が二つ……


 まさか俺の……正体はスライムじゃ……なくて――プラナリ……断じて……ちがーーーうっ!

 声に出して……言いたいのに……言えない!


 それなら……いっそのこと……大量に分裂して……プラ文字で……くそっ、ダメだっ!

 俺、文字……書けねぇ!

 数字は……覚えたのに……なんて……こった!


 てか、この……プラナリアモードは……分れ……

 あっ……言っちまった……ガーン……


 ……シクシク……まぁ、吐いた……言葉は引っ込まねぇ

 諦めて……この薄っぺらい……『ペラナリア』……モードって、分裂が……出来るのか?


 黴玉の封じ……込めで、スラ風船を……作ったみたいに……やってみる?

 スラ風船は……スラ皮、スラ液の……分配だけで良かった……けど

 分裂と……なったら、スライム核も……必要だし


 取り敢えず……試してみるか……

 明鏡止水……一意専心……波乱万丈……唯我独尊……我が人生に……パイルぅぅドライバぁっ!


 ポコン……へっ?

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