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第21話 新発見! 揉んだら駄目!

 カーペットの清掃の後、俺を籠に戻すとミッシルさんはそのまま研究室へ戻った。既に鍋の申請は通ったってことかな。


「メルビス様への報告、もう少し様子を見てからにさよっと」


 意味ありげに俺を見る。


「ラグム、お手っ!」


 机の上に置かれた俺の前にスッと右手を差し出された。乗れって意味? 意味が分からないまま、のそのそと移動する。


「ブブー!」


 はぁ? 違うのか。まさか、ムーンサルトで飛び乗れと?


「お手と言えば触手を出さなきゃ」


 ……出るか、そんなもん。

 あ、栗みたいな形になれたっけ 。でもやらない。さっき大チョンボしたばっかりだし。


「仕方ないなぁ、出さないとお仕置きだぞ~」


 左手が俺の上半身をしっかり揉みしだく。ヘッドスパかな? 強めだけど気持ち良いかも。

 そんなに強く揉まれたら……スラ皮が破れて事故を起こさないように、少しだけ上部を丈夫に――

 ……これ、不可抗力っ! オヤジじゃない!


「ん? 反発力が変わった? 抵抗するとはやるじゃないの。それならこうだっ!」


 俺を乗せていた右手も同時に強く揉み始め、これは溜まらん、玉ねぎ形だけにオーガズムならぬオーガニックを迎えそう……ら、らめ~!


 へにゃん


 えっ?


 ――脳内の『妄想コンソール』にパニック警告が。

 『警告:想定外の上下揉捏パケットを受信。保形ルーチン強制終了』。


 玉ねぎ形を維持できなくなり、溶けたように不定形へと変わってしまった……客観的に見たらアメーバじゃ?


「あっ! ……大丈夫?」


 ミッシルさんの右手にスライムが、昔懐かしのスライムの玩具となって横たわる――まさに大惨事!

 しかし、不覚にも快感を感じて限界に達した身体には力が入らない。

 そもそもスライムの身体に力が入ること自体が不思議現象だと思う。だって筋肉が無いんだし……それ、今考えることか?


「どうしよう! 大変っ!

 明日のお昼、たくさんお残ししちゃうっ!」


 そっちかーいっ!


「タッパー、持ってこようかな」


 俺の心配、もっとプリーズっ!

 棚から取り出したタッパーに、ヘラを使って強引に入れられた。

 明日のお弁当のお残し持ち帰り用に、家からタッパーを持参する話だと思ってた。

 でもバケツに入れられたら、本当に玩具のスライムと同じになってた訳だ、俺の色もライムグリーンだし。


「あっ、しまった!」


 ミッシルさんが頭を両手で押さえて叫ぶ。

 そうだよ! お弁当の話じゃなくて、今は俺がこの姿になったことを悲観する場面だから。


「体積を計るチャンスなのに、うちのメスシリンダーは1リットルまでしか計れないの! 折角ラグムが気を使って溶けてくれたのに」


 全力で否定させてください……ぶるぶる。


 あれ? ……溶けたせいか、急に眠たくなってきた。魔力的なものが抜けたのか?

 それともこのまま死ぬのかな?



 それからどれだけの時間が経過したのか分からないが、丸い何かの中で目を覚ました。

 光を透さない素材で、天辺に丸い穴が開いている。それと水平方向、赤道の位置に僅かな切れ目。

 何か半球の物を重ねて丸くし、中に俺を注ぎ込んだと、思って間違い無さそう。

 試しに上半身を左右に振ってみると、グラッと、揺れて転がりだした。


「起きたっ!」


 俺の入った容器が宙に浮く感覚があり、カポっと蓋が取れるように上半分が無くなった。ミッシルさんが開けてくれたみたいだ。


「急に溶けるから心配したんだよ」


 言葉の意味を噛みしめ、記憶にズレがないか確認出来た。

 上下から強く揉まれると、この身体は絶頂を迎えて溶けてしまうことが判明した訳だ。そんなことをする人は、この人しか居ないと思う。

 それより問題は、俺がどれだけの間気絶していたかだ。自然界で気絶などすれば生命のピンチに繋がりかねない。


「約二時間三十四分で復帰。メモメモ」


 思ったより短時間だった。一日以上経っていたら、マックスフライ弁当を食い損ねたから後悔しきれないとこだった。


 ミッシルさんがメモ帳を閉じ、透明なフィルムのような物を俺に見せる。四隅が丸い長方形だ。タッパーーの形かな?


「事後承諾だけど、これだけ皮を貰ったから」


 それ……俺のスラ皮?

 目算で12センチ×20センチぐらいかな。今は全周囲をしっかり皮で覆ってて、液が漏れる心配は無いけど。

 ごめん、さすがに理解が追い付かない。


「ヒールポーション風呂に入って貰って、シュパッてやってもらったの。私じゃこのサイズは無理だから。

 さすがゲンサイ先生のカミソリ捌きは凄かったわ」


 つまり、ウォータージェット切断は無くなったってことだね? そこは喜ぶよ。

 でも、俺、死んでたかも知れないよね……だからヒールポーション風呂……研究者の考えが恐ろし過ぎるわ。


「大丈夫よ、貴重な試料だから無駄にはしないから」


 俺の本体も大事にしてよね。


「他のスライムでも同じ結果になるか、試さないといけないわね。ラグムだけの性質なら、またお願いしないといけないかも」


 他のスライムが犠牲になるのは問題ない。揉まれて溶けるのが、俺固有の性質でないことを祈ろう。でないと、また溶かされる。


「あっ、リンゴ食べる? 体力落ちてるかも知れないから、摩りおろしてあげる」


 流し台でシャリシャリと音を立て、リンゴがあっと言う間にすりおろしリンゴに化けていく。


「ここに特製ヒールポーション、蜂蜜、プロテイン、ビタミン、オリゴ糖、白ワイン、隠し味にショウガチューブを少しを入れてかき混ぜる。

 マンドラゴラが品切れ中だったの忘れてた」


 違う何かになってる気がする。

 そのレシピ、カメレオンを巨大化させたマル秘薬じゃないよね?


 『すりおろしリンゴ』だったものが入れられたピンク色のボウルが俺の前に置かれた。まさか?


「全身で、味わってね!」


 鷲掴みにされてボウルにドボンでポチャン。接触吸収しろってことか。ついでにボウルも綺麗にしてねってお願いされた気がする。被害妄想か?

 でも、摩りおろしてあるから食べやすいし、ヒールポーションが効いているのか、なかなかこれはイケル味だ。

 あっと言う間に完食して、身体とボウルを綺麗にしておく。


「凄い食欲ね。でもリンゴもう無いから、晩御飯まで我慢してね。

 スライムには摩りおろした食材を与えること、メモしとかなきゃ」


 まさか、さっきの優しさは商業目線?

 スライムのペット化なんて考えてないよね?


「明日から、ラグムには頑張ってもらわないといけないからね。

 走るのが50、100、400メートル、1キロメートル。

 荷物引きは限界値測定で、ジャンプ系は幅跳び、垂直跳び、反復横跳び。

 懸垂、腕立て伏せ、腹筋、背筋力の測定は無理よね?

 あとは登坂性能検査、その他思いつきミックステストだから」


 そのメニュー、学校の体力測定よりハードじゃない?

 頭を使わない動作なら全然疲れないから、やれと言われたらやるけど。


「もうすぐ定時。今日から一緒に帰るからね」


 美少女研究者と同じ部屋で寝泊まりするのかな?

 何度も目にした『作者妄想キモッ!』な案件にならなきゃ良いような、なって欲しいような……そこが問題だ。

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