第1話・五年越しの笑顔の元で~芽吹くは決意か騒動か~
第2章 思いは熱く、空回る
第1話・五年越しの笑顔の元で~芽吹くは決意か騒動か~
結局、ファンがジャンヌに許したのは、弟であるジョンの見舞いだけ。
それだけは流石に禁止できなかったのは、ジャンヌ本人はもちろん。
長い間眠り続けていたジョンの方も、姉であるジャンヌに会いたがったから。
皇族の姉弟がお互いに会いたいと言って、特段会わせられない理由もないため……この場合、体調や公務等のスケジュールを指す……そこは臣下に過ぎないファン卿ディアスが口出しできる領分ではなかった。
「……でね。ディアスったら酷いのよ。わたしは、やりたいことがあるのに……」
ジョン。カルロス・グラジオス・ジョーン皇子はジャンヌとは年子。
だから年齢は十五歳。
けれど、その身体は、五年前に魔族に呪いをかけられて以来、一切成長していないため、今のところの見た目は十歳当時のまま。
今後、体調が戻ってきたら、順調に成長して行ってくれるのか……それとも、成長が阻害されてしまっているのかすら、今はまだわからない。
(……よく考えたら、分からないことだらけじゃない……!)
ジョンの呪いが解けて、自分を呼んでくれたことでもう大丈夫だ。とか思って大泣きし、そのまま一週間も寝込んでいた自分が情けない。
「……そう……でも、ディアスの言う通りだと思う……私も、まだこんな状態だし……心配するのはよく分かるよ」
にこにこと、愚痴るジャンヌの話を聞いていたジョンが、小さく笑い声を上げる。
声変わり前の、少し高めの少年の声。
ふわりと微笑むその顔には何の憂いも不安も浮かんではいない。
けれど、その本心まではジャンヌには分からない。
(……でも、何も見えなくて、世界が闇に閉ざされていて、平気なはずはないわ……!)
こっそりと拳を握り締めて、ジョンには心配させないようにと、わざと明るく、何でもないように振舞う。
「だからって、いつも色々と手助けしてくれていた相手のお見舞いくらい、させてくれてもいいと思わない?」
むうっと、拗ねたような声音を出すジャンヌに、ふわりと微笑んで、声の方に顔を向けたジョンの視線がジャンヌと合わない。
どこもおかしくはなさそうな……きれいな紺青色の瞳。
ジョンの体内に戻された『心の宝石』よりは少し濃い青色の、宝石のような輝きは変わらずあるのに……そのことが、すごく、痛い。
「……姉上がすることが、お見舞いだけなら……反対していないんじゃないかな?」
「……ぅ……っ」
にこやかにチクリと刺してくる弟に、一瞬ジャンヌが言葉に詰まる。
「もうっ! カルロスったら……!」
クスクスと、楽しげに笑ってくれるジョンに、ジャンヌも文句をつけつつ笑い出す。
本当に幼い時は、ジャンヌがいつも、ジョンを引っ張って行っていたのに……いつのころからか、こうしてジョンの方がジャンヌを宥めることが多くなった。
五年ぶりのやり取りが、幼いころに戻ったようで……けれど、変わってしまった自分と、変わらないジョンとの差を、思い知らされて……
(……わたしは、絶対に、カルロスを救けてみせる……そのためなら……)
笑顔の下で、不穏なことを考えている皇女殿下のその笑顔に……
(((……絶対、何かやらかす……)))
専属護衛騎士として室内で待機しているファン、クロード、リオンの心の声が重なった。
第2章第1話をお読みいただきありがとうございます。
ようやく再会できた姉弟。
姉弟の穏やかな時間は微笑ましいものですが、失われた5年の月日はあまりにも重く……。
弟を想うあまり、ジャンヌの決意が少し(かなり?)危うい方向へ向かっている気がします。
騎士たちの心の声がシンクロするほど、彼女の「やらかし」への信頼(?)は絶大のようですが、果たしてジャンヌはどんな騒動を巻き起こすのか?
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
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ノリト&ミコト




