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第5話・望むは希望、明かせぬ真意~欠けるは意識か常識か~

第1章 それは泡沫の歓びに過ぎず



     第5話・望むは希望、明かせぬ真意~欠けるは意識か常識か~



 アインのことも気にはなるけれども、今は主神殿医務殿の医師たちに任せるしかない。


 だからジャンヌはそこで一度大きく息を吸って、吐いて、気持ちを切り替えた。



「……つまり、ディアスがアインに対して厳罰要求を出したって話を先にしたってことね?」



 今、リオンと話していた話題の元の元。


 どうしてリオンがインスの見舞いに行ったのかにジャンヌは話を戻す。



「え? ああ……そう。しかもなんか、聞いてなかったらしくて……」



 いきなり話題が変わって、少し混乱したリオンも、そういえば、それが本題だったなと思い出してすぐに頷く。



 ほんの三日前に意識を取り戻したばかりのインスに頼るのも……と思いつつも、遅々として進まない調査に苛立ったジャンヌが主神殿の医務殿に突撃しようとして……



 流石に大怪我をして、まだ辛うじて生き残ったばかりであるインスの元に押しかけさせるわけにはいかないと、周囲が大反対した結果、代わりにリオンがお見舞いと称して相談に行くことになった。



 どのタイミングでジャンヌからの相談事を伝えようかと考えつつ、自分たち(こちら)では、あの後どうなったかの話を先にした。


 そうしたら、まさかインスに情報が一切行っていないとは思いもしなくて、追及されて相談事を伝えるどころではなくなってしまった。



 そのタイミングで主神殿医務殿総括の神官長に追い出されて、今、ここでこうしてジャンヌと話しているところ。



「……皇子殿下のご容体……なんて話、うかつに口にできないしな……」

「え? なんで?」



 溜め息混じりで言ったリオンに、ジャンヌが心底不思議そうに聞いてくるから……



(……ヤバい。本気でジャンヌには機密って意識がないぞ……?)



 思わず冷や汗が流れるのを感じたのはリオンだけではなく。


 部屋に控える周囲の近衛騎士や女官兵、侍女に至るまでが愕然としてジャンヌを凝視した。



「え? ……何……? ……何か変なこと言った?」



 そして、さすがに周囲の視線に気づいたのか、不思議そうに、けれど若干困惑して、焦ってもいるような声音で、ジャンヌも周囲を見渡す。



「……どなたか。申し訳ありませんが、ファン卿にお越しいただけるようにお伝え願います……」



 しばし硬直したリオンが、くるりとジャンヌに背を向け、周囲に控える従者たちに頭を下げると……



「わかりました。直ちに……」



 事態の深刻さを、さすがに理解している女官兵の一人が頷き、侍女が一人、部屋の外へと伝えに行く。



「えっ!? 何でディアス!?」

「……オレに説明させないでくれ……」



 ギョッとしたジャンヌがリオンの肩を掴み、自分に向き直らせてがくがく揺らせば、されるがままのリオンが疲れ切った声を絞り出す。



 ここが、ジャンヌの部屋ではなく。


 あるいは、二人きりであったのなら。


 リオンは思いっきりジャンヌを叱りつけたい。



(お前のその、危機管理能力のなさが信じられないっ!!!!)



 これでよく、皇孫皇女として公務に参加できているものだと感心する。



 きっと、ジャンヌの公務の時にはファンを始めとして超優秀な堅物が周囲を固めて、ジャンヌに余計なことを言わせないようにしているに違いない。


 そうでなければとっくに外交問題だとか、不平等な条約だとか、とんでもない事態を頻発させていたに違いない。



(……あ、オレ、気づいちゃいけないことに気づいちゃったかも……)



 不意に、リオンは血の気が引くのを感じる。



 五年前に、ジャンヌを狙った魔族の襲撃で、ジャンヌの両親である皇太子夫妻が亡くなっている。


 公式では事故で崩御。とされているが、そうではないことをリオンは《《ジャンヌから聞いて》》知っていた。



 よく考えたら、この時点でだいぶヤバい。


 当時のオレ! もう少し考えろ!! いくらジャンヌがいいやつでも、平民の孤児相手に簡単に国家機密をペラペラ喋る皇女はヤバいって、気づくべきだっただろう!!



 だからこそ、現在の皇太子は《《皇孫皇子のジョン》》なのだろう。



 いくら長子で……エスパルダでは皇位継承順位は現帝が任命する……女神の巫女だと言っても、ここまでうかつな皇女を皇太子に、ひいては未来の皇帝にできるわけがない。



 胃痛を覚えるリオンの呼び出しに応じて、やってきたファンは女官兵から一連のやり取りを聞かされた結果……



「……姫様には当分の間、部屋で大人しくしていていただきます……面会などもっての外です」

「ええっ!? 何で!!」



 額に青筋を浮かべて告げるファンと、納得いかずに声を上げるジャンヌとの言い争いは、その後、日が暮れるまで続いた。


第1章第5話をお読みいただきありがとうございます。


ジャンヌ……それは言っちゃダメなやつ(笑)


女神の巫女として、そして皇女として真っ直ぐすぎるがゆえの「うかつさ」。


リオンが胃痛と共に悟ってしまった「彼女が皇太子になれない理由」は、エスパルダ聖皇国の政治的なパワーバランスを物語る、意外とシビアな真実かもしれませんね。


そして、怒りのファンディアスによる軟禁宣言。


ジョンのために動きたいジャンヌにとって、最大の障害は魔族ではなく、身内の「鉄壁の守り」になってしまいました。


果たしてジャンヌはこのまま大人しく閉じ込められているのか?


それとも……?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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