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第4話・悼む犠牲と変わらぬ現実~狭間で彷徨う幼子に~

第1章 それは泡沫の歓びに過ぎず



      第4話・悼む犠牲と変わらぬ現実~狭間で彷徨う幼子に~



 自分が、どれだけ何も見えていなかったのかを、魔族アーグによって突き付けられた。



 ジャンヌにとって、一番は最愛の弟であるジョンのこと。


 けれど、だからと言って、他の誰が犠牲になってもいい。なんてことは考えたことがない。



(……けど、わたしの行動が、あの悲劇を生んだのも、確かだわ……)



 アーグは呪師の家柄の子供十三人に呪いをかけて殺し合いを強要していた。


 その理由が、ジャンヌが神剣の封印を解き、その使い手になったからだと言い放った。



(な・に・が! 『お相手にふさわしい剣を用意しただけ。』よ! わざわざ呪いをかけて、殺し合わせて作り出す魔剣だなんて……! しかも……!!)



 思い出したら腹が立ってきた。


 アーグが子供たちを誘拐したのは呪いの魔剣を作るため。


 しかも、その効果の増幅にはジャンヌの最愛の弟ジョンから奪った心の宝石を、そしてその制御には……



(わざわざアイン(あの子)を巻き込む必要なんてないじゃない!!)



 誘拐された子供たちの半分ほどの年齢のアインをわざわざ利用した。


 そしてその結果……



「……絶対、ディアスが言ってることはおかしいわよ。操られていただけで、アイン自身の意志じゃないことなんて、分かってるはずなのに……!」



 心を抜き取られた抜け殻の体をアーグに操られて、アインはジャンヌを刺した。


 頬を膨らませて、苛立たし気に吐き捨てる皇女の様子に、そうは言ってもなぁ……。とリオンも困ったように沈黙する。



 室内の空気が一気にひりついたのは気のせいではないだろう。


 どちらの言い分も、分かるのだ。



 操られていただけで本人の意思ではない。というのはジャンヌだけではなく、リオンも、クロードも……問題のファン、ファン卿ディアス自身も認めている。


 けれどそれでも、皇孫皇女であり女神の巫女でもあるジャンヌを『刺した』のも事実であり……



 最上層部はファンが出したアインに対する厳罰要求を却下はしたが、その決定に内心納得しきれていない者も実は多かった。



「それに、アインがいたからわたしも、ディアスも、リオンやクロードだって、すぐに元気になったじゃない!」

「……いや。それもそうなんだけど……」



 オレに言われてもなぁ~、と思いながらも、憮然として言うジャンヌにリオンも相槌を打つ。



 そう。ジャンヌの言う通り、アーグに操られたアインがジャンヌを刺して、絶体絶命と思えたその時、アインが流した涙が白く光ってその怪我を癒した。


 どころか、呪いの魔剣で斬られて動けなくなっていたファンも、神剣の意思に暴走されて疲労困憊で蹲っていたリオンも、長引く戦闘で怪我や疲労が蓄積されていたクロードも……


 全員が傷を癒され、疲れも取れ、その後の巻き返しに成功した。



「……それに……!」



 もう一度、その言葉を口にしたジャンヌの顔が歪む。


 泣き出しそうで、泣けない。


 悔しそうで、でも、それを口にできない。


 後悔はしている。


 けれど、多分。もう一度やり直せたとしても……


 そんなことは不可能だと分かってはいるけれど……


 結果は同じだっただろう。



「……アインは、アーグ(あいつ)のせいで、まだ……」



 ジャンヌの声が震える。


 リオンも口を閉ざしてグッとこぶしを握り締めた。



 その癒しの力を目の当たりにしたアーグによって、アインは自分の胸を刺すように仕向けられ、いまだに生死の境を彷徨っている。



「……わたしは……」



 分かっている。これは単なるわがままだ。


 それでも、譲れないものだってある。


 みんなが自分を大事にしてくれているのは分かるけれど。


 それでも、おかしいことは『おかしい』。


 きっと、それを皇帝陛下(おじいさま)も、神殿の上層部も、そして皇宮、皇城双方の最高幹部たちも()()()()()()


 だからファンの要求は退けられたし、内心誰がどう思っていようとも……少なくとも今のところは……アインに対して明確な罰は下されていない。


 自分が巻き込んでしまった、年端もいかない子供に背負わせるようなものではないと。


 それだけは間違いないとジャンヌも思っている。


 だから……


(……ディアスがどうしてこんなにアインを嫌うのかは分からないけれど……あの子をただの()()()()()で罰させたりなんかしない……)


 その思いだけは強烈に、ジャンヌの心に刻まれていた。


第1章第4話をお読みいただきありがとうございます。


ジャンヌの胸の内にあるのは、後悔と、それ以上に強い「納得できないことへの怒り」でした。


そしてジャンヌの激情の矛先を真っ正面から受けるリオンの「中間管理職」な様子が……(笑)


アインを巡る大人たちの思惑と、ジャンヌの純粋な決意。


ファンがなぜそこまでアインを拒絶するのか、その謎も深まります。


「言いがかりで罰させたりなんかしない」 そう心に決めたジャンヌが、次に取る行動とは?


不器用ながらも必死に彼女を支えるリオン共々、見守っていただければ幸いです!


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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