エピローグ・眩い光の決意の陰で ~平穏と旅立ち~
終 章 エピローグ
眩い光の決意の陰で ~平穏と旅立ち~
『奇跡の姉弟』
聖皇国暦31451年冬。
ツイーディ・ニウム・バリエガム帝(通称:バリー帝)の御代。
五年間の長き闘病生活から奇跡的に回復した、カルロス・グラジオス・ジョーン皇子がその年、皇都で盛大に行われた聖木祭の祝祭に参賀。
秋に回復の噂が流れて後、実に三か月ほど経過しての公式行事への初参加となった。
長らく病床にあったためか、その時の皇子はまだ幼さの残る少年といった様相で、姉であるジニア・プローフ・ジャネット皇女とはずいぶんな身長差が見受けられたという。
しかし、姉弟の仲は大変に睦まじく、回復したばかりの皇子を気遣う姉皇女は常に隣に寄り添い、その手を取ってゆっくりと介助を行っている様子であった。
明けて、聖皇国暦31452年。
新年参賀においては皇帝、ツイーディ・ニウム・バリエガム帝をはじめ、ジニア・プローフ・ジャネット皇女、カルロス・グラジオス・ジョーン皇子の三名が皇城のバルコニーに姿を現し、皇都の民たちの前でその健在ぶりを示す。
その後、貴族家の者らが招待される皇宮祝会においても揃って参加され、流石に病み上がりの皇子は早めの退室となったが、皇帝、皇女お二人は例年通りに貴族らとご交流される。
またその席で、皇帝は新たに皇女専属護衛騎士団の一員となった赤髪の孤児・リオンを「皇女が女神の空の髪を持つ騎士と称した。」と語り、赤髪で生まれた子供らの遺棄が皇都を中心に撃滅。
以降、徐々にその影響範囲が広がり、やがては大陸各地で減少、時代を変えた出来事として後世にその語録と共にエピソードが伝えられた。
>エスパルダ聖皇国・俗史録より抜粋
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皇都・アンシェの主神殿。
一時期行方不明とされた皇宮呪師・インス=ラントが発見され、その際の一連の騒動により収監された三人――インス、アイン、キプラは、それぞれ別の部屋にて拘束されながらも治療を受け、全員が無事に命を取り留める。
特に重要視されたのは、魔族・アーグに憑りつかれていたとされる皇宮呪師長・キプラ=ペンティスの生死。
彼の証言次第によっては、インスはもちろん、アインもまた罪に問われ、処刑もやむなしという状況。
実際には、キプラはアーグに憑りつかれていた間もすべてを理解しており、二人に一切の非がないことを保証した。
聴取は主神殿にて行われ、事態が事態なだけに正誤・真偽を証明するために判別神官による宣誓まで成されてのこと。
肉体的には何の問題もなかったキプラであったが、その精神的な負荷は大変に深く、聴取を受けたのち、復帰の勧告を辞退。
そのまま主神殿にて、新たに呪師ではない、ただの神官として緩やかに余生を過ごす。
長期にわたり拘束され、魔力を奪い取られ続けていた皇宮呪師・インス=ラントは衰弱が激しく、発見者であるアインが咄嗟に行った応急処置の魔法がなければ危うかったと診断された。
その魔法はこれまでの脱水症状者への応急処置とは異なる画期的なもので、アインによってその魔法式などが提出されたのち、医務殿にて研究と実証が重ねられ、のちに治療魔法の一つに加えられることとなる。
そのアインに対しては、最終的に指導者・監督者不在下での魔法の使用に対する反省文の提出が公式罰とされ、心身の回復後に出されたそれは、五歳ほどの子供が書いたものとは思えないできであったという。
アインは、神剣の力を引き出したことによる身体への過剰な負荷と、魔族・アーグによって左目の魔力を抜かれたことによる失明。
更にはインスと共に呪いをかけられ、相互に魔法を使う際に負荷を負うこととなった。
二人の回復には時間がかかり、年明け半ばまで医務殿での入院生活を余儀なくされる。
そして……
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「……行くわよ……」
まだ春遠い、冬のある朝。
白い息を吐きながら、決意の光を瞳に宿したジャンヌが乗り込んだのは、飾り気のない、地味な造りの馬車。
その馬車の中には、まだどこか青い顔をしたインスと、その膝の上にちょこんと座った青白い顔色のアイン。
そしてインスの隣にはリオンが乗り込んで、御者台には皇宮護衛官のステール=ベルン。
辺境伯家に属する寄子家の出身であるステールは騎馬の扱いを得意とし、当然馬車の扱いも一級品。
一応は皇宮の外に派遣される皇宮呪師・インスの監視を兼ねた護衛役としての参加ではあったが、全員一致で御者も任せることとなった。
馬車の左右を挟むように騎乗したファンとクロードがついて総勢七名。
この七人が、バルバ島のアーグの城へと向かう討伐隊に決まったのはつい二週間ほど前。
直前まで調整が難航したのは、インスとアインの回復が読み切れなかったから。
正直、辞退したかったインスとステールではあったのだが、インスはアーグに呪いをかけられた張本人。
更に、現状の聖皇国で一番の実力を持つ皇宮呪師として参加を要請された。
(死にかけた相手と死にかけた幼児を引きずって行かないといけないって……?)
と、インスが若干遠い目をしてしまったのは致し方ないだろう。
その決定以前から過酷な調整を強要されたインスからすれば溜まったものではない。
同じような状況になっていたのはアインも同様。
二人とも、お互いの参加が決定されていなければ何とかして辞退していただろう。
辞退できる道があれば、だが……
ちなみに、一番の被害者はステールと言える。
インスが参加しなければ、更に、インスに付くことがなければ知らずに済んだ国家機密を知らされ、がっつり巻き込まれ、今回の参加が決定したあとは、それまでは知らされていなかった機密にまでどっぷり浸からされた。
同じく機密にまみれてしまった皇宮呪師学校校長のディオネラや皇宮医務殿長官のウスニーが不参加なのは……
これ以上同行者を増やしても意味がないから。
相手は純魔族。
皇宮呪師とはいえ事務方であるディオネラや、医師の側面が強すぎるウスニーを参加させてどうなるということもない。
いや、むしろ、指導もできる高位の呪師の、これ以上の減少は避けなければならない。
そういった、大人の事情もあっての選出。
もちろん、全滅が望まれているわけではない。
できる事なら、途中でも不可能と判断してジャンヌが下がることを望まれている。
けれど……
「……絶対に、取り戻すからね……」
先に馬車に乗り込んでいたアインを目にして、ふわりと微笑んだジャンヌのその言葉に……
(((……無理……)))
絶対に、途中で止まることはないのだろうと、馬車で同道するリオン、インス、アインの三人は悟って、密かに溜め息を飲み込んだ。
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~
第2部「レッド・フレイムの残照」(完)
これにて、『姉姫様は魔族を斬りたい!』第2部「レッド・フレイムの残照」、完結です!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
冒頭は少し趣向を変えて、後の世の「俗史録」より抜粋した形でお届けしました。
リオンが認められ、世の中の偏見が変わっていく……そんな未来が示唆されたこと、感慨深いです。
そして、現実の時間軸では満身創痍のインスとアイン、巻き込まれ事故のステールを含む7人での旅立ち。
ただの英雄譚では終わらない、彼ら一人ひとりの息遣いを感じていただけていれば幸いです。
このあと、物語は第3部となる「旅路編」に続きます。
第3部開始まで、少しお時間を頂きますが、その間は溜まりに溜まった本編の裏側、番外編シリーズをお楽しみいただければと思います!
では、またお会いできることを願って……
ありがとうございました!!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
【番外編・第2弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力の残滓~
(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)
【番外編・第3弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意の欠片~
(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)
【今後の連載スケジュールについて】
明日から番外編シリーズを順次公開していきます。昼12時と夜22時。1日2回の更新を予定しておりますので、よければお立ち寄りください!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
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【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




