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第3話・最悪と最悪 ~その采配は正しくて~

第9章 女神の巫女は決意する



        第3話・最悪と最悪 ~その采配は正しくて~



 皇宮医務殿から急遽駆けつけたウスニー=メンテを初めとする医呪神官たちは、惨状としか言いようのない状況に一瞬絶句する。



 すぐにウスニーが指示を出し、各々が割り振られた患者の容体を診た。



「……これは……」



 まず最初に、一番状態が悪そうなアインを診たウスニーは眉を顰め、すぐに応急処置を部下の医呪神官らに命じる。



 続いて、同じくらい状況が悪そうなインスを見て絶句した。



「っ。……ちっ。護衛官! 手をかせ! この首輪を破壊しろ!! 早く!!」



 箱の中に拘束されていたインスは、一旦その拘束を破壊して外に出されてはいた。


 とりあえず外に出して横にすることが目的だったので、首輪と箱とを繋ぐ鎖は壊してあったが、首輪自体はそのまま。


 その首輪を早急に破壊するようにとウスニーが命じたことで、何らかの問題があるものだと知れる。



 すぐに護衛官の一人が剣を抜き、インスの体を傷つけないように慎重に、けれど手早く留め具を破壊する。


 留め具が外れると、首輪は一瞬にしてザラリと崩れて残滓も残さずに消えてしまった。



「……え? 消えた? 何だったの……?」


「吸魔具です。つまり、インスはずっと、魔力を奪われ続けていた……どういう訳か物質化した魔法だったようですがね」



 青い顔で様子を見守るジャンヌが、そっと問いかけると、ウスニーはジャンヌを見もせず答える。


 手は止めずに、慎重に、けれど素早く容体の確認を進め、次々に部下に指示を出す。



 正直、ジャンヌたちに関わっていられるほど余裕がない。



「「……ぇ……?」」



 返答に絶句したジャンヌたちを放置し、一通りの指示を出したウスニーは最後にキプラの容体を確認する。



「……肉体的には特に問題なし。何でかずぶ濡れだが……体温の低下も殆どなし……意識がないのは疲労か? それとも……」



 先に容体を診させていた部下からの報告を聞きながら、自身でも確認していくウスニーが眉間にしわを寄せる。


 インスとアインにはあからさまな惨状の様相があるのに、キプラはずぶぬれで意識がないだけにしか見えない。


 魔力も特に違和感を感じ取れないし、呼吸も脈も正常。



「……魔族に憑りつかれていた……」


「……なっ!!!???」



 そんなウスニーの耳元に唇を寄せ、囁くように状況を知らせたクロードの言葉に絶句する。


 いきなり声を上げたウスニーに、部下の医呪神官らが驚いて目を向けるが、すぐに取り繕ったウスニーは手を止めるなと命じた。



「……後で聞かされるか……?」


「……多分……」



 それから、目だけをクロードに向けて囁くように問いかけると、微かな頷きを返される。


 一瞬顔を顰めたウスニーは……



「三人とも主神殿に転院させる! 伝令送れ!! 隔離棟!!」


「「「……っ……!?」」」



 次に出されたその指示に、医呪神官らと護衛官らが驚きに絶句した。



「……隔離棟……?」


「……一般病棟に入れられない奴らを入れる専用病棟だ……ま、当然だな……」



 首を傾げたジャンヌに、神殿孤児院育ちのリオンが説明する。



 インスは行方不明扱いで身柄の確保か発見即処刑かを検討されていた状態。


 アインは呪師長を魔法で攻撃した疑いが持たれている。


 そしてその呪師長キプラは魔族に憑りつかれていた。



 事情聴取を行い、事実関係が判明するまでは重症者といえど拘束は必須。


 それが可能な病棟への強制送致。


 ウスニーの指示はそういった意味だった。



 もちろん、医呪神官らや護衛官らはそれを知っている。


 この三人が、そういった扱いを受ける状況にあるのだと、今の一言で知らされた。



「……ジャネット皇女……」


「……っ!?」



 そこに、皇帝筆頭秘書官であるケルン卿オーヴァがたどり着き、部屋の外からジャンヌを呼ぶ。



 温度を感じさせない、けれども普段通りの声音に、びくっと、一度震えたジャンヌが振り返る。



「……ファン卿、トレーニア護衛官、リオン……」



 続けてケルンは、ファン、クロード、リオンを呼ぶ。


 更に数人、気付け薬を飲まされ、意識を取り戻したディオネラと、現場に居合わせた護衛官三人。


 そしてウスニーにも声をかける。



「別室で、お話を伺えますか?」


「「「「「……………」」」」」



 促されて、全員が無言で頷く。



 ウスニーは次席の医呪神官に現場の指揮を任せ、主神殿へは詳細は後ほど知らせると伝言するよう命じた。



「分かりました」



 手を止めることなく頷いた次席医呪神官の返事を聞いたウスニーが最後。



 ケルンに呼ばれた全員が、皇城へと移動することになった。


第9章第3話をお読みいただきありがとうございます。


駆けつけたウスニーによって語られた、インスが負わされていた吸魔具の非道。


しかし、救出の安堵に浸る間もなく、三人は「隔離棟」へと送致されることになります。


治療と並行して進むであろう、残酷なまでの事実確認。


状況を正しく整理し、最悪の采配として「隔離棟への転院」を命じたウスニーの判断は、医呪神官として、そして皇宮に生きる者として正解なのでしょう。


けれど、その正解がこれほどまでに重く苦しいものだとは……。


そして、騒ぎを聞きつけて静かに現れるケルン。


大人たちの冷静な判断が、この混乱をどう裁くのか。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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