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第5話・噛み合わないのが嚙み合って~絶望的なすれ違い~

第7章 皇女殿下の覚醒



     第5話・噛み合わないのが嚙み合って~絶望的なすれ違い~



 一見、黒にしか見えない髪は腰の辺りまであり、後ろで緩くひと纏めにされ、右肩から前へと流されている。


 太陽の光に照らされて、その髪色が本当は深くて濃い紫であることを微かに覗かせ、同じ色の瞳は子供特有の大きさ。


 その、大きな瞳を更に大きく見開いて、演習棟の入口に乗り付けた馬車から降りてきたジャンヌとリオンを凝視する。



 最初に見た時にはサイズが合っていなくて、裾や袖を紐で止めて着ていた神官呪師見習い初年生・男児用の制服はサイズの合うものを新しく誂えて貰ったのか、多少のゆとりは見られるが見苦しいほどぶかぶかと言うこともない。



 その、グレーの制服と髪や目の暗さとは真逆の白い肌が以前よりもなお白く、青ざめて見えるのは病み上がりだからだろうか?



「よかった! アインも元気になったのね!!」


「…………ひ………っ!?」



 満面の笑みを浮かべて駆け寄るジャンヌに、しかしアインは真っ青になって震え上がっていた。



 息を詰まらせ、崩れ落ちそうになるのを、今日のアインの担当である神殿護衛官……ジャンヌの護衛騎士団の一員でもあるクロードが素早く支え、震えるその背を軽く撫でる。



「えっ!? 何!? まだ具合悪いの!?」



 驚いて足を止めたジャンヌに追いついたリオンが、少し険のある眼差しでアインを睨む。



「…………ぁ…………」



 震えて、言葉に詰まるアインの唇が微かに動くが、声は出ない。


 困ったようにクロードは三人を見比べ、少し離れたところに騎馬の姿を見つけた。



「? アイン?」



 呼び掛けて、一歩、足を踏み出したジャンヌにアインはびくりと大きく震えて後退る。



 様子がおかしいことに、流石に気づいたジャンヌは困惑気味にアインを見つめ、まだどこか悪いのかと問いかけるが、アインはぎこちなく首を横に動かす。



 微かに唇が動いているが、言葉らしい言葉は出てこない。



「え? 何? どうしたの?」



 首を傾げて覗き込むジャンヌの、その天色の瞳に見つめられて、涙目になっているアインが一度強くクロードの手を握りしめる。



「……ぁ……ぼ、く……」



 それから、引き攣った囁きを喉の奥から絞り出した。



(……こいつ、もしかして……)



 様子に、リオンがちらりとクロードに目配せすると、気づいたクロードも眉を顰めて目だけで頷き返す。



 その目配せで事態を察したリオンが、口を開きかけた瞬間……



「姫様! おさがり下さいっ!!」


「「「…………っ!?」」」



 怒声と共にファンが振るった神剣がアインの喉元に突き付けられた。



「ちょっ!? ディアス!?」


「おいっ!?」



 ジャンヌとリオンが声を荒げてファンを止めるが、冷ややかにアインを見下ろすファンは動かない。



 騎馬で駆けつけ、ジャンヌとアインの間に割って入ったファンは肩で息をしていて、アインの喉元に突き付けた剣先が微かに上下している。



「……………」



 目を見開いて切っ先を見つめるアインは無言。


 咄嗟に動きかかったクロードは、一瞬遅れた結果、下手に動くわけにはいかない状況。



「……姫様に近づくな……」



 低く、怒りを宿した声がファンの喉から絞り出されて、その様子にジャンヌも驚きすぎて言葉を飲み込む。



 リオンもクロードも、ここまで怒りを露わにしたファンを目にするのは初めてで、ポカンとしてファンを見つめた。



 今しも、切っ先がアインの喉に触れそうなほど近づいて……一瞬、泣き出しそうな顔をしたアインがゆっくりと、瞼を閉じる。



 ファンの怒りを、そのまま受け入れているかのようなアインの様子に、思わず声を上げかかったジャンヌは、けれど何を言えばいいのか分からない。



 どうして、ファンはアインに剣を突き付けているのだろう?


 どうして、アインはまるでそれを、望んでいるかのように受け入れようとしているのだろう?



 何も分からなくて、制止の言葉を口にすればいいのか。


 それでファンが止まってくれるのか。


 そもそも、ファンは本当に、アインを害するつもりがあるのか。


 それとも何か、誤解が生じているのか。



 誰も動けなくて、誰も口を開けない静寂。



「……何をしているのですか……?」



 その、一瞬の膠着を裂くように、穏やかで柔らかい……けれども氷点下の冷ややかさを感じさせる声が静かに誰何した。


第7章第5話をお読みいただきありがとうございます。


無邪気なジャンヌ、怯えるアイン、そして殺気立つファン。


ようやくの再会かと思いきや、和やかさとは無縁の展開になってしまいました。


喉元に突きつけられた剣と、それを甘んじて受け入れようとする少年。


最後に響いた冷ややかな声が、この一触即発の空気をどう変えるのか?


【番外編・第3弾、本日より公開開始しました!】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

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本編第1部から続く、番外編第1弾、更には本編第2部の裏側ともいえる番外編第2弾から続く物語となっております!

よければ本編とともにお楽しみください!!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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