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第3話・皇女殿下の沈黙と ~不穏の気配はそこはかと~

第7章 皇女殿下の覚醒



       第3話・皇女殿下の沈黙と ~不穏の気配はそこはかと~



 ジャンヌの沈黙がこれほど不気味なものだとは思わなかった。



 というのがリオンの感想。



 皇宮医務殿に入院中のインスに会いに行く! と強行したジャンヌが、医務殿から帰ってきて以来、十日近くも大人しくしている。



 午前中どころか一日中弟皇子であるジョンと過ごしたり、かと思えば以前はファンに無理やり調査協力として放り込まれた皇宮図書殿で過去の資料を調べたり……



 既に二か月以上も経過した、先の魔族がらみの事件に関して、関係各所に問い合わせを入れたかと思えば、インスに処分が保留になっているだけだと言われた、あの時居合わせた者たちの進退を聞いたり。



 落ち着きすぎていて怖い。



 戸惑いは他の者たちにもあるようだが、リオンのように気持ち悪く感じている者はいないようで、「皇女らしい落ち着きを漸く身につけてくれたようだ。」といった噂をする者までいる。



 かと思えば、ファンは逆に警戒を高めていて、外から見た範囲ではジョンも何か懸念材料がある様子。


 ファンはともかく、皇子に関してはリオンはよく知らない相手なので、もしかすると間違っているかもしれないが……クロードにも感想を聞いてみたが、同じ意見だった。



 ……嵐の前の静けさ、という言葉が脳裏に浮かぶ。



「……で、どうなんだ……?」


「どう、とは?」



 ファンの執務室に押しかけて、ジャンヌの様子をどう思うか問いかけたリオンに、不機嫌さを隠しもしない眉間のしわを深く刻んでファンは書類を捌く。



 手を止めもせず、まともに話をする気はないとばかりの態度に、溜め息を吐く。



「あんたや皇子がなんか警戒してるっぽいのも、ジャンヌが大人しいからだろ? 何かやらかす準備をしてると思ってる……」



 一応、リオンが見た範囲ではそれらしい動きはなかったが、幼馴染と弟が警戒するということは、そういうことなのだろう。



「……姫様が大人しくしていてくださるのは望むところだ……」



 ちらりとも視線を向けずにファンはそう言うが、リオンの質問には答えていない。



「……誰かに何か言われたくらいで、止まると思ってるのか? ジャンヌが……?」


「……………」



 ぎろりと睨んでリオンは言うが、やはりファンは顔を上げない。


 溜め息をまた一つ。



「……主神殿で、何か騒ぎがあったのは知ってるか?」


「……主神殿で?」



 話を変えたリオンに、初めてファンは手を止めた。


 リオンに目を向け、無言で先を促す。



「先に言っておくが、オレは詳しいことまでは知らないぞ? ただ、人事異動とかがあったらしくて、孤児院の方でも神官たちが騒いでいた……もちろん、子供たちには気づかれていないつもりで」



 若干の皮肉が混じったのは、大人たちが思っているほど子供たちは無知でも愚かでもないと知っているから。



 大人たちが隠そうとしても、特に孤児院にいる子供たちは、周囲の気配に敏感だ。


 詳細までは分からなくても、何かしらの異変があったことは理解している。


 それで、騒ぎ立てたり、不安がって泣き出したり……あるいは、自分より弱い者に当たり散らしたりと、色々騒ぎを起こしてしまうのも毎度のこと。


 その結果、「この大変な時に……」と大人たちがますます苛立ちのような気配を纏うことになるので、大元の騒ぎが落ちつくまでは悪循環が続く。



「……人事異動……」



 ふむ……と、顎を軽く摘まんで思考を巡らすファンの元に、神殿で異変があったという報告はまだ来ていない。


 共有する必要がない情報なのか、まだ詳細が決まっていないのか……



「……それと、アインはまた医務殿に入院になったらしい……保護された。と言った話が聞こえてきたな」


「……………」



 その名前を口にした瞬間、ファンが微かに顔を顰めた。


 不機嫌そうな雰囲気が一瞬漂うが、すぐに隠したのは流石だ。



「……アイン(アレ)は元々神殿側で保護されていたものだろう。今更『保護』などと……」


「だからおかしいんだろう?」



 興味がなさそうに言うファンの言葉を遮る。



 そう、ファンの言う通り、アインは数か月前にクロードによって保護され、神殿側で『守られていた』はずだ。


 なのに、保護。



「……あいつ、多分、神殿側で()()()狙われたんだろう……場合によっては、神殿側では『安全管理』が望めない。と判断される可能性もあるぞ?」



 そうなった場合、アインの身柄はどうなるのか?



 暗に問いかけたリオンの言葉にファンは渋面する。



「……皇宮呪師学校の寮に、送致されると?」


「呪師学校の寮とは限らないと思うぞ?」



 考えられる可能性を口にしたファンに、リオンは淡々と言う。



「……この前、ジャンヌがインスに会いに皇宮医務殿に行った時、あいつが見舞いに来ていたって、話したよな?」


「……………」



 言われて、ファンの眉間のしわが深くなる。


 数も一気に数本増えた。



「……インス=ラントの部屋に、送られる可能性か……」


「まあ、まだインスも入院中だけどな……」



 学校側の寮以外に、正式に皇宮呪師となった者たちが住まう個室呪師寮も存在している。


 単身者が住めるようになっていて、子供一人くらいなら連れ込めないわけでもない造り。


 可能性はあった。



「……それで? それがどうした?」


「インスが退院して、あいつがもし、インスの部屋に引き取られたら……ジャンヌは大人しくしていられるか?」


「……………」



 だから何だと言わんばかりのファンに問いかければ沈黙が返ってくる。



 そう、ジャンヌが、今は大人しくしているのは、おそらくインスの退院待ち。


 ジャンヌが行きたがっている旧都の調査に二度も赴いているインスから、直接話を聞いて、やはり行きたいと言い出すのは目に見えている。



 インスも、()()()皇孫皇女から情報提供を求められれば拒み切れない。


 許される範囲で話さざるを得なくなる。



 そうして、情報を集めたジャンヌが、正攻法で皇帝に出す提案書が却下されるか、受理されるかは……正直読み切れない。



 何しろ、これまでのただ勢いと、希望的観測に基づいたものではなくなる可能性があるのだから。



 重い溜め息を吐いたファンは……



「……いっそ、あの男が消えてくれれば姫様も諦めるのか……?」



 口の中で小さく、何とも物騒なことを呟いた。


第7章第3話をお読みいただきありがとうございます。


嵐の前の静けさ、と言いますか……。


暴走気味(?)だったジャンヌが大人しいと、逆に周囲(特にリオンとファン)が疑心暗鬼になってしまうようです。


一方で、神殿周辺で囁かれる「人事異動」や「保護」という名の不穏なワード。


リオンの忠告通り、もしアインがインスの元へ行くことになれば、ジャンヌの「静けさ」は終わりを告げるかもしれません。


ラストのファンの物騒な独り言が現実にならないことを祈るばかりですね(;'∀')


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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