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第1話・語り手を変えて繰り返し ~目にした事実に目を見張る~

第7章 皇女殿下の覚醒



     第1話・語り手を変えて繰り返し ~目にした事実に目を見張る~



 結局、中に入ることを許されたのはジャンヌと、ジャンヌが指名したリオンの二人だけ。



 静まり返った皇宮医務殿の入院棟の奥は、巡回の神殿護衛官が時折通りかかるだけで人気もない。


 けれど、奥の一室の前に神殿護衛官と看護要員の神官呪師が一人ずつ立っていて、そこに人がいることが分かった。



「……誰か、神官呪師が来てるのか?」



 その護衛官を目にして、こそっと呟いたリオンをウスニーが睨むように見る。



()()()()()()()()見舞客が来ている……どこかの誰かのように突然押しかけてきたりなどせず、きちんと事前に調整した上で訪れている客がな」



(……うへぇ~……)



 淡々とした嫌味に思わず肩を竦めたリオンと違い、ジャンヌは「へえ。そうなんだ。」と軽く返すだけ。



((……嫌味も通じない……))



 隠し切れない溜め息が二人の口から洩れて、ジャンヌがキョトンと首を傾げた。



「どうしたの? 二人とも溜め息なんか吐いて?」


「「……別に……」」



 その表情と問いかけに、説明するだけ無駄と判断したウスニーと、言っても分からないんだろうな……と諦め混じりのリオンの声が重なる。



 たどり着いた部屋の前で控えていた二人が目礼した。



 もう一度、静かにするよう動きで示したウスニーに、ジャンヌもリオンも無言で頷く。



 それを確かめて、ウスニーはそっと、扉を開いた。


 ごくわずか、覗ける程度の隙間を開けてギョッとする。



「(どうしたの?)」



 一瞬動きを止めたウスニーに、囁くような口パクで問いかけたジャンヌにハッとして、少しだけ身体をずらす。



 その動きに、位置を変えたジャンヌも、ちょっと背伸びしてリオンも中を覗き込み……



((……え……?))



 ウスニーと同じようにギョッとした。



 白一色の室内のベッドに、黒っぽい小さな何かを抱きしめて眠るインスの姿。


 その、黒っぽい小さな何かが、幼い子供であることに気づく。



 黒っぽく見えたのはその子供の髪の色。


 深くて濃い紫色はカーテンの隙間から差し込む日差しで少しだけ本当の色を覗かせているが、パッと見には黒にしか見えない。


 神官呪師見習いのグレーの制服は、以前見た時とは違ってサイズが合っているようで、裾や袖を止めるのに使っていた余分な紐は見当たらない。



 すっぽりと、インスの腕に抱かれて、その首元に顔を埋めるようにして一緒に寝ていたのは、ジャンヌもリオンの知っている相手。



 知ってはいるが……



「(……え……? アイン? え? ジョンより、小さい……? あんなに小さかったっけ……??)」



 二か月ほども入院していて、十日ほど前に皇宮で行われた授業で復帰したと噂に聞いていた、神官呪師見習いのアインが、なぜかインスと一緒に眠っていた。



 「(……当然でしょう? アインは、実際の体格だけでいうなら、三歳ほどでしかない……あるいは小柄なだけで、四歳にはなっているか……理解力が()()()()から、五歳としているだけで、実年齢も不明です……)」



 どこか、焦りを含んだ、そのくせボケたとしか言いようのないジャンヌの呟きに、声を押さえてウスニーが告げる。


 噛んで、含めるように、ゆっくりと……怒りを堪えて。



「(……その、幼い子供を、あなたは巻き添えにして、罪を()()()()……)」


「「((……っ……!?))」」



 続けられた言葉にはリオンもギョッとする。


 思わずウスニーを見て、その表情に何の感情も浮かんでいないことに背筋が冷える。



「(……皇子殿下を想われる、皇女殿下のお心は察するに余りありますが……あなたはもっと、ご自分の言動が引き起こす()()をしっかりと考えるべきです……)」


「……………」



 少し前に、インスにも似たようなことを言われたのを、ジャンヌは思い出す。



「(……あの子を被害者に、そして、加害者にしたのは……間違いなく()()()ですよ……ジャネット皇女……」


「……っ!?」



 感情のない、押さえた声にきっぱりと言い切られて、顔面蒼白になったジャンヌが息を飲んだ。



「(……もう、よろしいですか? 見ての通り、インスはまだ意識が戻っていません……どうぞ、お引き取りを……)」


「「……………」」



 一礼したウスニーに、何も応えることができなくて……



 力なく頷いたジャンヌは、同じように顔色を無くしたリオンも、もう一度、眠る二人を見て、ゆっくりと後退った。


第7章第1話をお読みいただきありがとうございます。


お見舞いに訪れたジャンヌとリオンが目にしたのは、意外な人物の姿と、突きつけられるあまりに重い「現実」でした。


良かれと思って、あるいは無意識に積み重ねてきた行動。


それが周囲にどのような影響を与えていたのかが浮き彫りになりました。


ウスニーの静かな怒りは、ジャンヌの心にどう響くのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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