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第5話・ついに迎えた我慢の限界~怒れる医師の笑顔の圧~

第6章 決壊の予兆



     第5話・ついに迎えた我慢の限界~怒れる医師の笑顔の圧~



 インスが皇宮医務殿に入院して数日が過ぎたのに全然退院してこない。


 退院しないどころか、意識が戻ったと言う報告さえ来ない。



「……と、言うことで、皇宮医務殿に行くわよ」


「いや……だから……」



 静かに言うジャンヌの目が座っていて、これはダメだな……と思いながらも一応、本当に一応リオンは制止の声をかける。



「皇宮医務殿に行くわよ」


「……………」



 ジャンヌに静かに繰り返されて、リオンはそれ以上の言葉を飲み込む。


 こっそりと溜め息を吐きつつ、そっと目配せして女官兵にファンへの伝言を頼んだ。



「……………」



 無言で頷いた女官兵が一人、部屋を出て、周囲の近衛騎士らも諦めの気配を漂わせる。



 正直、先の事件から二か月以上。


 殆ど何も進展しない中で、ジャンヌの忍耐力は驚異的に持った方。


 ジョンが意識を取り戻し、宥めながらも安全圏に留めるように誘導したり。


 ファンやリオン、クロードも皆、できうる限り皇城、精々皇宮内に留めておけるようにと裏で画策しまくった結果だ。


 みんな、よく頑張ったと言えるだろう。



(……知らんけど……)



 若干遠い目になってしまったのは、ファンはもとより、皇宮医務殿の神官たちにも怒られるだろうな……と言うのが分かっているから。



 正直、ファンに怒られるのは別に怖くもなんともないのだが、神官たちを怒らせると面倒臭い。


 彼らは神に仕える者たちなので、怒鳴り散らしたり、暴力を振るったり、理不尽な責めはあまりないのだが……もちろん、必要とあらば容赦もしない……冷静に、切々と、正論を、これでもかとばかりに説いてくるので、ある意味拷問。



(ジャンヌも、一回マジで神官に叱られてみた方がいいんじゃないか? あいつら、本気で反省して、行動を改めるまで何度でも延々と説教してくるから、嫌でも変わるぞ?)



 ふと意識がそれてしまったのは現実逃避だ。分かっている。



 ジャンヌを止めるのは無理と判断して、一緒に皇宮医務殿に行くことにしたが……ファンかクロードが来るまで待たせるべきだっただろうか?



 今更思えど後の祭りで、皇女殿下の一声で馬車が用意され、近衛騎士らも数名、護衛に引き連れて皇宮医務殿を訪れる。



 突然の皇孫皇女の訪問に慌てて止める神官らを半ば無視して……一応、インスの見舞いだとは言っているが、許可もなければ告知もなし……当然止められるが、ジャンヌは入院棟へと足を進める。



「ちょっと様子を見るだけよ! 騒がせたくないなら、黙ってなさい!!」


「……お静かに願えますか……?」



 お待ちください。今、確認を……! と、当然のごとく告げる神官たちに強く言ったジャンヌに、背筋が凍るほど冷えた声がかけられた。



 ヒェッ……っと、肩を竦めたのはリオンの方。


 ジャンヌはその声にふいっと顔を向け、相手が皇宮医務殿の長官であるウスニーだと確認すると破顔した。



「インスに会いに来たわ!」


「…………伺っておりませんが?」



 にっこにこのジャンヌに、氷点下の視線で応じたウスニーが、ちらりと……ジャンヌの背後に控えるリオンらを睨む。



(お前ら、何やってる!?)


(無理っ!! これ以上は無理だった!!)



 目だけで言い合うが、来てしまったものは仕方がない。


 ここで追い返すか、あるいは諦めて少し様子を覗かせるか。



「だって! 全然どうしてるのか教えてくれないから!!」


「……インスはまだ意識が戻っておりません。そう、お伝えしている筈ですが?」



 ジャンヌの主張に、これまで通りの返答を返すが、理解の色はない。



「何でよ!! もう、十日近く経ってるじゃない!! 本当に重症なら、主神殿に転院してるはずでしょう!?」



 どころか、意外にも痛いところを突いてくる。



 そう、皇宮医務殿は基本的には一次治療用。


 短期間の入院ならば可能ではあるが、長期にわたる療養や、本当に重篤な患者であるなら、主神殿の医務殿に転院させる。


 そちらの方が設備も充実しているし、施設も整っているから。



 逆説的に、皇宮医務殿に入院中の患者は、そこまでの重症者ではないと裏付けられてしまう。 



「……分かりました……」



 睨むように見つめてくるジャンヌに、ウスニーは溜め息を返す。


 口で言っても分からないなら、自分の目で確かめさせるしかないだろう。



「しかし、室内に入るのはご遠慮ください。……外から様子を見るだけです……あと、人数は最少限で」



 よろしいですね? と、強い口調で念押しされて、やった! 笑顔で喜ぶジャンヌに溜め息。



「……お静かに願います……ここは医務殿ですよ?」



 凄みのある笑顔のウスニーに、ジャンヌではなく他の者たちが胃の痛い思いをしていた。



第6章第5話をお読みいただきありがとうございます。


ついに我慢の限界を迎えたジャンヌ。


「業務妨害」の通告もなんのその、医務殿へ直接乗り込みました。


リオンたちの胃痛は限界突破していますが、ジャンヌは「重症なら転院しているはず」という医療体制の矛盾を鋭く指摘。


これにはさすがの医務殿の長官・ウスニーも、言い逃れが苦しくなったようです。


条件付きながらも、ようやくインスの様子を確認できることになりました。


果たして病室の中はどうなっているのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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