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第2話・客観視点の正論と~上手《うわて》の巡らす策は幾重も~

第5章 停滞すれども世界は動く



      第2話・客観視点の正論と~上手うわての巡らす策は幾重も~



 皇帝ともインスとも会えない日が続いて、ジャンヌの我慢が限界に達していた。



「お爺様~~~っ!!」



 ばあんっ!!



 と大きな音を立てて開かれた執務室の扉の中で、皇帝筆頭秘書官・ケルン卿オーヴァ公爵が笑顔で青筋を浮かべて立ち塞がっていた。



ジャンヌ(ジャネット)皇女殿下。先日も申し上げましたが、陛下は大変にお忙しいのです。突然押しかけてこられては困ります」


「そんなこと言って! ぜんっっっっぜん!! 調整してくれてないじゃない!!」



 ケルンの明るい碧色の瞳を睨むように見上げて胸を張るジャンヌに、「当然です。」とあっさり返す。



「ジャネット皇女殿下の戯言に割くような猶予がおありになるほど、陛下のお時間は空いておりません」


「戯言じゃないわよ!! ジョン(カルロス)を救けるために必要なことだわ!!」


「そのことと、ジャネット皇女殿下の訴えは全く合致いたしませんので」


「どこがよ!! わたしが調べに行くのが一番でしょう!?」


「何の根拠もございませんね」


「あるでしょう!! ちゃんと!!」



 言いながら、ジャンヌはずいっと神剣を見せつける。



「全くございませんね」


「何でよ!!」



 けれど、ケルンの返答は変わりなし。


 むしろ若干冷笑というか、鼻で笑うような態度で、ジャンヌは足を踏み鳴らすようにして不満をぶつける。



「……神剣(ソレ)を使って、何ができたと仰るのです?」



 睨みつけるジャンヌの耳元に唇を寄せ、ケルンは静かに問いかける。



「……っ」



 ギっと、睨むジャンヌが口を開くよりも早く、少し早口になってケルンは囁く。



「……たまたま、偶然、運よく、追い払っただけでしょう? ()()()を撤退に追い込み、皇子殿下のお心を取り戻すことのできた直接的なきっかけは、神剣(ソレ)ではなかったと、認識しておりますが?」


「……っ。そ……れは……!」



 言われて、ジャンヌの勢いが若干弱まった。



「……お判りいただけたようですね? どうぞ、お引き取り下さい……」



 丁寧に退室を促すケルンを睨むが、何も言えない。



「姫様。お戻りを……ケルン卿。申し訳ございません」



 知らせを受けて駆けつけたファンがジャンヌを促し、ケルンに対して頭を下げる。



「当分はご遠慮ください。我々も、暇ではないので」


「……は……っ」



 一つ頷いたケルンに、もう一度拝礼し、まだ喚きそうなジャンヌを引きずってファンが部屋を出る。



 扉が閉ざされ、静寂が戻ってきたところで、室内にいた他の文官たちの肩からも力が抜けた。



 安堵の息が漏れる。



「……ジャネット皇女にも、困ったものですね……」



 振り返ったケルンが、最奥の席に視線を向ける。



「……あの子を止めるのは無理だろうさ……」



 衝立の向こうにある至高の席で書類を捌く皇帝は、微かに苦笑を漏らすのみ。



 金の髪と群青色の瞳を持った、五十代半ばほどの壮年は、歩み寄ってきた五歳年上の幼馴染に一瞬だけ目をやる。



「……すなんな。面倒を任せる」


「いえ。それが私の役目ですから」



 短く告げた聖皇国皇帝、ツイーディ・ニウム・バリエガム陛下……バリー帝に一礼し、ケルンは軽く肩を竦めてみせる。



「……ただ、皇女殿下にはもう少し、落ち着きを持っていただきたいとは思いますけれどね」


「無理だろう……教皇猊下(シアちゃん)も、止まったらジャンヌ(ジニア)ではないと言っていたしな……」



 シアちゃん……



 教皇・ステラ=シアス猊下に対する、皇帝のその呼び方に、文官らが微かに顔を引きつらせるが、流石にケルンは慣れたもの。



「教皇猊下がそうおっしゃるのなら、まだ当分はあの調子ですか……」



 ケルンは溜め息混じりに言うものの、あまり困った様子を見せないのは、対策は既に何重にも打ってあるから。



 もちろん、その中には専属護衛騎士団長のファンさえ知らないものも含まれている。



「……ケルン(オーヴァ)も、相変わらずだな……」



 クックと笑うバリー帝に、ケルンはもう一度一礼して……



「……皇女殿下がどれだけ上回って下さるか、少々楽しみにしております……」



 それはそれは人の悪い笑みを浮かべて見せる。



 様子に、文官たちが「うわ~……」と顔を引きつらせたのを……バリー帝もケルンも見なかったことにしておいた。


第5章第2話をお読みいただきありがとうございます。


ジャンヌ、執務室へ突撃!……したものの、鉄壁のケルン卿に正論で完封されてしまいました。


皇帝陛下と教皇猊下、そしてケルン卿。


呼び方一つとっても、彼らの長い付き合いと、一筋縄ではいかない力関係が透けて見える回でしたね。


「止まったらジャンヌではない」という評価には納得ですが、彼女が知らないところで事態はより複雑に動き出しているようです。


文官たちが「うわ~……」と引き気味になるほどのケルン卿が仕掛けた「ファンさえ知らない策略」とは?


そしてジャンヌは、その包囲網をどう突破していくのか。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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