第5話・決意も新たに宣言し~微かな陰りを見逃して~
第4章 それでも彼女は希う
第5話・決意も新たに宣言し~微かな陰りを見逃して~
「……それじゃあ、その……インス? という皇宮呪師には協力を断られたんだね」
翌日の午前。
いつものようにジョンの部屋でお見舞いという名の報告会が開かれ、話を聞いたジョンの第一声はこの言葉だった。
「断られたんじゃないわよ。手順を踏んで欲しいって言われただけ!」
一晩考えて、ジャンヌが達した結論はこれ。
(……違う。だろうな……)
今日のジャンヌの同行者……専属護衛騎士団からの同行はクロードが担当していて、二人の話を聞きながら、変わらない表情の下で首を傾げていた。
ちなみにリオンは今日は非番。
昨日のジャンヌとインスの面会で精神的な重荷が大き過ぎてダウンしている。
(……リオンは、大丈夫だろうか……)
ふと、リオンのことを思い出し、クロードは顔を曇らせるが、はた目からは一切分からない。
リオンは、神殿孤児院で育った孤児。
もちろん身分は平民で、ジャンヌの専属護衛騎士団のメンバーとなれるほどの能力はない。
いや。ないわけではないが、求められる基準が普通の騎士団と違いすぎて、本来ならば下働きがいいところ。
それなのに、専属護衛騎士になっているのは、ジャンヌが神剣の封印を解いた時に、リオンも神剣の中の一振りと契約を結んだから。
つまり、ジャンヌとの友誼だけで協力し、何の覚悟も、正しい知識も持たないままに護衛騎士団の一員となってしまったため、己の立場がいかに危ういものであるのかを知らなかった。
昨日のインスの言葉でそれを、思いもかけず知ってしまって、自分の中で折り合いがつかず、寝込んでいる。
「……手順……?」
姉姫の言葉に首を傾げる弟皇子は、そんな話だったかな? と呟くが、ジャンヌは元気に頷く。
「そうよ! だって、お爺様の許可を取ったら連れて行ってくれるって、言ってくれたもの!」
「ええと……。そう、だったかな……?」
自分の考えに、どれほどの自信があるのか、目を輝かせて力説するジャンヌの熱量に、流石のジョンも少し引き気味になって首を傾げる。
(……違う……)
アレは明確な拒絶だったと悟っているクロードは内心で否定するが、何も言わない。
そもそも、そんな危険な場所に皇孫皇女を行かせるほど皇帝陛下は非情な方ではないだろう。
「……でも、どうやってお爺様に許可を頂くつもりなの?」
困惑しつつも、現実的な問題点を上げるジョンに対して、ジャンヌはよくぞ聞いてくれたとばかりに大きく頷く。
「もちろん! わたしが行くのがどれほど有効かを徹底的にお伝えするわ!!」
それで許可が取れると思っているのはジャンヌだけだろう。
案の定、ジョンも少し困ったように苦笑する。
「……そう……。お爺様が、お許し下さるといいね……」
「許してもらうわよ! 絶対に!!」
意気軒高なジャンヌとは裏腹に。
(………………)
二人のやり取りを、黙って見守るクロードは、ほんの一瞬、ジョンが寂しそうな表情を浮かべたことを見逃さなかった。
第4章第5話をお読みいただきありがとうございます。
インスのあの慇懃無礼な拒絶を、「手順を教えてもらっただけ」と脳内変換できるジャンヌ……。
インスの言葉を糧に突き進もうとする彼女のポジティブさはもはや最強……いや、最凶の武器かもしれません。
しかし、それを「明確な拒絶」だと知っているクロードや、自らの立場の危うさを思い知ったリオン。
現実を突きつけられて寝込んでしまったリオンの繊細さが不憫でなりません。
意気揚々と「救出作戦」を語るジャンヌに対し、どこか引き気味ながらも付き合ってくれるジョン。
そんな彼の顔に一瞬だけ浮かんだ「寂しそうな表情」を、クロードは見逃しませんでした。
一つの「言葉」が、受け取る側によってこれほどまでに形を変えてしまう……。
自分の正しさを信じて疑わないジャンヌの決意が、周囲の、そしてジョンの心にどんな影を落としていくのか?
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
【番外編・第2弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力の残滓~
(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)
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ノリト&ミコト




