第4話・騎士団長の忠告と~彼女の知らない真実と~
第4章 それでも彼女は希う
第4話・騎士団長の忠告と~彼女の知らない真実と~
退室を命じられたインスは素直に部屋を出て……
「待て」
すぐに、後を追って同じように部屋を出たファンに呼び止められた。
振り返って首を傾げたインスの肩を掴み、耳元に唇を寄せる。
「……これ以上、アインに肩入れするな……」
「……っ!?」
囁くように、そして一方的にそれだけ言って、すぐに踵を返す。
「っ。ファン卿!」
一瞬絶句したインスが声を上げるが、応じることなく部屋に戻って行ってしまう。
(……本当に……!)
分からない。
ファンがなぜ、これほどアインを嫌悪するのか。
どれほど魔法の才に恵まれていて、莫大な魔力を持ち、見えざるものを見る目を持った『見者』であるとはいっても、アインは自分が何者であるのか、何一つ知らない記憶喪失の迷い児だ。
確かに、色々な条件を持ちすぎてはいるけれども、本人はいたって素直な努力家で、そもそもまだ、せいぜい五歳ほどでしかない幼子だというのに……!
グッと拳を握って、微かに肩を震わすインスの背を、今日の担当である皇宮護衛官が軽く押す。
一度、大きく息をしたインスは、その促しに従って素直に歩き出した。
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ジャンヌの部屋にて。
ファンに言われて出ていくインスを、ジャンヌは困惑しつつ見送る。
なぜかファンが後を追って行ったのにも首を傾げるが、待つほどもなく戻ってきた。
「……インス。何か、怒ってた……?」
お前の認識はその程度なのか……
ファンを見上げて問いかけたジャンヌを、死んだ目で見つめながらリオンは心の中で突っ込む。
アレを『怒っていた』で済ませるのは違うだろう。
と思うが、今、リオンが言う話でもない。
それよりも、改めて突き付けられた自分の立場のヤバさに、内心の震えが止まらない。
心配そうに背に手を当ててくれているクロードに縋って泣きたい気分だったが、流石にジャンヌの部屋でソレは恥ずかしい。
「怒ってはいないでしょう。しかし、言葉が過ぎましたので、下がらせました」
いつもと変わらない冷徹な物言いのファンに、怒ってないなら大丈夫ね。と返すジャンヌは……気づいていない。
アレは『怒る』よりも悪い状態だったのだと。
いや。『悪い』のはジャンヌにとってだけで、ファンや他の面々からすればむしろ『ありがたい』状況。
これで確実に、ジャンヌが勝手に皇城を抜け出すことはなくなった。
(……しかし。まさかインス=ラントが姫様の脱走を手伝っていたのが陛下からのご下命を受けてのことだったとは……)
そう。ジャンヌは自分たちだけの秘密だと思っているが、実はインスがジャンヌの脱走を手伝っていたのは、ちゃんと許可を取った上でのこと。
その理由は、ジャンヌが纏う『女神の加護の魔力』。
本人が無自覚に、けれども強引に『通る』ことで守護結界に穴が開き、修復や維持、そもそもの安全管理に問題が出てしまうから。
その上で、インスが手伝うことでジャンヌの居場所は常に『追える』ようになっていたというのだから驚いた。
正直、最初から教えておいて欲しかったとも思うが、真実を『知る者』が増えれば増えるほど秘密は露呈しやすい。
実際、ジャンヌがリオンに話したことでボロが出て、ファン自身も知ることになったのだから、皇帝陛下が伏せておられたのも当然だろうと納得できた。
第4章第4話をお読みいただきありがとうございます。
退室するインスに対し、ファンが囁いた警告。
二人の実力者の間に流れる緊張感は、ジャンヌの知らないところで確実に高まっています。
皇女を守る立場として、そして「秘密」を管理する側として動くファン。
彼の冷徹な判断は、ジャンヌを救うためのものなのか、それとも……?
そして、インスのあの絶望的な決別を「怒ってた?」で済ませてしまうジャンヌ。
リオンの「死んだ目」がすべてを物語っていますね。
ジャンヌの預かり知らぬ場所で、世界がどれほど周到に管理されていたかが明かされた今回。
誰もが「真実」を少しずつ隠し持つ中で、ジャンヌのある意味残酷なまでの純粋さがどう作用していくのか?
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
【番外編・第2弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力の残滓~
(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)
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ノリト&ミコト




