第1話・解けた呪いと解けない呪い~失われた光の理由~
第1章 それは泡沫の歓びに過ぎず
第1話・解けた呪いと解けない呪い~失われた光の理由~
ちゃんと――呪いを解いた筈なのに!!
「なのに……なんで……!?」
すべてが解決したと、そう思っていた。
なのに、突き付けられた現実は残酷だった。
「……皇子の瞳は、その光を失ったままでございます……」
ジョンの専属侍医である初老の医師に説明されても、ジャンヌはなぜ!? としか思えない。
何が原因で、どうして?
だって、呪いは解けて……
「……全部は、解けてないって、こと……?」
考えられるのはその可能性。
じゃあ、もしかして……
「あいつ……アーグは、まだ、生きてる……?」
倒しきれていなかった?
だから、呪いが解けていない?
そうとしか思えない現実に、ジャンヌは愕然として呟く。
「……可能性だけで、申し上げるのなら……」
侍医がジャンヌに説明するのを黙って聞いていたファンが、重い口を開いた。
「……魔族によって、別に奪われているものが、あるのかもしれません……」
「……え……?」
確証はない。
けれども、ずっと引っかかっていること。
ファンの言葉に、俯きかけていたジャンヌは顔を上げた。
胸の奥がざわりと嫌な音を立てる。
五年前――ここ、エスパルダ聖皇国の皇居を襲撃した者がいる。
相手は何と純血種を名乗る魔族。
当時十一歳の幼い皇女は、年子の弟と両親と共に皇太子宮で襲われ……どういう訳か魔族は弟皇子であるジョンに呪いをかけて姿を消した。
状況を目撃した生存者はただ一人。
二人の幼馴染で、護衛騎士候補として皇城に上がっていたファン卿ディアス……当時十四歳の、見習い騎士兼側近候補だった少年。
そのファンも、一撃で戦闘不能にされてしまい、途絶えかけた意識を何とか繋ぎ止めていただけで、すべてを明確に覚えているわけではない。
けれど……
「……五年前……魔族は皇子から、三つ。宝石を取り出したように見えました……」
その報告は、もちろん事件直後にもしてある。
けれど、意識が朦朧として、視界も定かではない中でのこと。
一つを二つ、三つと、見間違えた可能性もある。
なにしろ、状況を客観的に見ていた大人が誰もいないのだから。
そして、それとは別に、もう一つ気になること。
「……『瞳の宝石持ち』と言ったような発言を、聞いた気がします……」
ファンの言葉に、ジャンヌは大きく息を飲む。
心の宝石が、心や精神そのものを結晶化した宝石だとしたら……
「その、瞳の宝石っていうのは、カルロスの瞳、そのもの?」
呆然と呟くジャンヌに対し、しかし……と侍医が反論する。
「皇子の眼窩に、その瞳はちゃんとございます。けして、そのものを奪われておられるわけではありません」
そう。ジョンの目に眼球自体はきちんと存在している。
逃げ惑ううちに、転んだり、引っかけたりしてできたのであろう掠り傷はあったが、目をえぐられた形跡などはなかった。
「……じゃあ、一体……?」
首を傾げるジャンヌに、答えられる者はいない。
けれど……
ジョンの視力の回復に、瞳の宝石なるものが関係する可能性。
それだけは確かで……
皇宮側でも、神殿側でも、その正体を探るべく、既に調査は進められていた。
第1章第1話をお読みいただきありがとうございます。
第1部で強敵アーグを退け、平和が戻ったはずのエスパルダ聖皇国。
しかし、ジャンヌの愛する弟ジョンの瞳からは光が失われていました。
「宝石」とは一体何なのか?
そして、五年前のあの日、ファンが見た光景の真実とは……。
ジャンヌの次なる目標は、失われた弟の「光」を取り戻すこと。
しかし、その眼前には、高く険しい壁が……
新たな謎が渦巻く第2部も、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです!
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
――――――
ノリト&ミコト




