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第1話・在りたい自分と~立場のしがらみ~

第4章 それでも彼女は希う



         第1話・在りたい自分と~立場のしがらみ~



 インスから、ここまで明確に言われるのは()()()()だな、とジャンヌは少し、懐かしく思う。



 ジャンヌがインスと初めて会ったのは二年ほど前。


 その時も、穏やかな表情と声音のままで、チクチク叱られた。



「…………でも…………」



 そんなことを思い出しながら、それでもジャンヌは頷けない。


 ()()()()同じように告げる。



「……皇女である以前に、わたしは(カルロス)のお姉さまなのよ……」



 ジャンヌの瞳に浮かぶ、寂しげな光は、インスが初めて会った時と同じ。


 あの時も、ジャンヌは寂しそうに、けれども、それを押し隠して、勝気な態度で、そう言っていたなと。インスも思い出す。



 これを、どうして自分が言わないといけないのか……正直、口に出すとそれだけで処罰されそうではあるのだが、それでも、誰かが言わなければいけないのだろう。



 インスはそっと、息を吐いて、ちらりとファンに視線を向ける。


 刹那の目配せを、ファンも見逃すことなく受け止めた。


 それだけを確かめて、インスはもう一度、ジャンヌに告げる。



「そうだとしても、出てはいけません。あなたがするべきことではないのですから」


「っ! ……でもっ!! わたしが……!!」


「ダメです」



 泣き出しそうに声音が乱れたジャンヌを、皆まで言わせず切り捨てる。



()()()に何かがあれば、周りの者が罰を受けます……。分かっておいでですか? 今も、私や、ファン卿、クロードさんも、リオンさんも……それ以外の……()()()あの場に居合わせた全員が――ただ、処分が保留されているだけだ、ということを……」


「「……ぇ……?」」



 それまでと変わらない、真摯ではあっても強くもない声音で言われた内容に、ジャンヌだけではなくリオンも息を飲んで目を丸くした。



 リオンまで驚いたことに、インスは僅かに言葉を飲み込む。


 けれど、ここまで口にしてしまえば、もう今更だ。



 周囲の近衛や、自身の真後ろに立つ皇宮護衛官の圧を感じながらもインスは話を続ける。



「……それ自体は別に良いのです。私たちはそれを承知で仕えているのですから……けれど、皇族(あなた)が立場を理解した言動をしておられれば、出ない犠牲でもあります」



 誰も、インスの言葉を否定しないことに気づいたリオンの顔から血の気が引いていく。


 ポカンと、目を丸くしたままインスを見つめるジャンヌは……どこまで理解しているのか……


 ほんの少し、脳裏に疑問が浮かぶが、それは一旦置いておく。



「……皇子殿下を想う、皇女殿下のお気持ちは察するに余りありますが……」



 ()()()、皇子、皇女と呼ぶ。


 その()()を理解させるために。



「現場のことは現場の者に任せるべきです。直接、皇族が動く時というのは……そうせざるを得ないほど、聖皇国(このくに)が追い詰められ、後がない時だけ……」



 それは即ち、国家滅亡の危機であるということ。


 そうならないように、国に仕える数多の者が日夜命がけで業務に当たっているのだ。



 ジャンヌが言っていること、やっていることは、そのすべてを無意味にしかねない。



 それを許せば国は亡びる。


 その時に責任を取らされるのは……



「……ジャンヌ様(あなた)の想いのままの振る舞いが、逆に皇子殿下や、皇帝陛下を追い詰め、脅かすことになりかねません」


「流石に不敬が過ぎるぞ?」



 インスの言葉に、それまで黙って聞いていたファンが眉を顰める。


 静かではあるが、厳しい口調で叱責した。



「事実です」



 そのファンの叱責に対し、真っ向から受け止めて返したインスの声に、迷いがない。



 それに気づいたリオンはもう真っ青。


 今にも倒れそうなほどに震え上がっていて、クロードがこっそり背を撫でている。



 対して、一番理解してもらわなければいけないジャンヌの表情は変わらない。


 目を丸くして、ぽかんと口を開いて、ただ黙って座っている。



(……これで何も理解していないのなら致命的ですね……)



 内心溜め息を吐きつつ、インスは再び口を開いた。


第4章第1話をお読みいただきありがとうございます。


冒頭から、インスによる容赦のない「現実」の突きつけが始まりました。


インスとファンの刹那の目配せ、そして不敬を承知で続けられる「立場」についての講義。


弟を想うジャンヌの心は尊い。


命がけで諫言するインスと、あまりの衝撃に血の気が引いていくリオン。


全員が息を呑むほどの不敬極まる正論を前に、ジャンヌは何を思うのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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