第3話・恐れ知らずの無邪気さと~恐れを知るから帰りたい~
第3章 彼女はいつも一生懸命
第3話・恐れ知らずの無邪気さと~恐れを知るから帰りたい~
一か月ほど前の事件を忘れているわけではないだろうに……
あまりにも変わらない笑顔のジャンヌ。
そして流石に警戒心を隠しきれていない周囲の人員。
何よりも……
(……正直。今はジャンヌ様に関わっていられるほどの余裕はないんですけれどね……)
内心で溜め息を吐きつつ、表面的にはそれまでと変わらない様子のインスが困惑したように首を傾げて挨拶すれば。
「おかえりなさい! インス!」
無邪気な笑顔で手招きするジャンヌの様子に、ピリッと空気が冷えた。
「「……………」」
キョトンとしたジャンヌと、微かに顔をひきつらせたインスが黙り込む。
「え? 何?」
戸惑ったように周囲を見渡すジャンヌの声と。
「……帰っていいですか……?」
穏やかさを何とか保ったまま本気で告げるインスの声とが重なる。
「ええっ!? 何で!?」
即座に目を見開いて驚愕するジャンヌに、「何で? じゃない。」とリオンが内心で突っ込みを入れた。
「……インス。諦めろ……」
それから、同情たっぷりの目で見てリオンが言えば、そっと溜め息を漏らしたインスが諦めて室内に足を踏み入れる。
「諦めるって、何を?」
ますます首を傾げるジャンヌの向かいの席に着いたインスと、ジャンヌの斜め後ろに立っているリオンが同時に「別に。」と返す。
「……それで、今日は一体どのようなご用件ですか?」
もうさっさと話しを終わらせようと意識を切り替えたインスが促せば、そうだったと言わんばかりにジャンヌは手に持っていた書類をテーブルに叩きつけるように置いた。
「西の塔よ!」
「……やっぱり帰っていいですか?」
大真面目に言うジャンヌから、その真後ろに立つファンに視線を移したインスの目から光が消えている。
ジャンヌは以前から協力的であったインスなら、何でも手伝ってくれると思い込んでいるようだが、そんな訳はない。
普段の『散策』レベルのお忍びであればどうとでもできても、皇都を離れて旧都まで行きたいと言わんばかりの発言には頷けないに決まっている。
「ええっ!? 何で!?」
再び声を上げたジャンヌが目を丸くしてインスを凝視した。
「……諦めろ……」
眉間を揉んで、リオンと同じことを言うファンの様子に、これは相当苦労していたようだな……ということが察せられたが、正直「だからと言って巻き込まないで欲しい。」という気持ちが強い。
なぜならインスは『皇宮呪師』で、ジャンヌの専属と言う訳ではないから。
所属も『特殊隊』であって『支援隊』の中から編成される近衛でもない。
「ちょっと連れて行ってくれればいいだけよ?」
首を傾げて言うジャンヌに、「無茶を言わないで欲しい。」と思っているインスの気持ちは伝わらない。
「そもそも、突然どうして西の塔何ですか?」
話が全く見えてこないのは、インスが長らく入院していたせいか。
それともジャンヌが説明下手なのか……
(いや。一切してない……)
ふとよぎった思考を、即座にリオンは否定する。
むしろ、これで理解できたらすごいと思う。
一瞬きょとんとしたジャンヌも……
「……ぁ……!」
直後に「そうだった!」と言わんばかりにポンと手を叩く。
「カルロスの目を治すのにはきっと宝石が必要なのよ!!」
力説したジャンヌに……
((((……説明になってない……))))
その場にいる全員の、心の声が一致した。
第3章第3話をお読みいただきありがとうございます。
退院したてのインスを待っていたのは、ジャンヌからの熱烈な歓迎……に見せかけた、あまりにも重すぎる「西の塔への招待状(?)」でした。
挨拶もそこそこに「帰っていいですか?」と本音が漏れてしまうインスに、皆様も「だよね」と頷いた瞬間だったのではないでしょうか。
騎士団の面々とも妙な連帯感が生まれてしまうほど、ジャンヌの無邪気さは今日も絶好調。
果たしてインスは、この無理難題から逃げ切ることができるのか!?
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
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ノリト&ミコト




