第1話・真っ直ぐすぎる情熱と~躍るは心かペン先か~
第3章 彼女はいつも一生懸命
第1話・真っ直ぐすぎる情熱と~躍るは心かペン先か~
「と、言う訳で、情報整理よ!」
いや。どういうわけだよ……
と内心突っ込みたいのを飲み込んだリオンの前には、テーブルに紙とペンを用意して気合を入れているジャンヌ。
そのジャンヌの右側にはファンが、左側にはクロードが。それぞれテーブルについている。
「……いきなり、何を始めるおつもりですか……?」
ファンが頭痛を堪えるように眉間を揉んで問い詰めると、よくぞ聞いてくれたとばかりにジャンヌは力いっぱい頷く。
「カルロスがいいこと教えてくれたのよ! 過去のかび臭い資料読んでても時間の無駄だって!」
全然違う……
思わず脱力したリオンを見とがめて、ファンがその鋭い視線を向ける。
「つまり、資料は数が多すぎて時間がかかるから、直近の情報を集めた方が早い。って話だよ」
大きく溜め息を吐いたリオンは、午前中にジャンヌと弟皇子がしていた会話をかいつまんで説明した。
「……なるほど……?」
一瞬、ファンの眉が跳ねたように見えたのは気のせいか。
つまり、そういうことだろう。
というのはリオンだけではなく、ファンも、クロードも理解したのを視線で確認し合った。
分かっていないのはジャンヌだけだ。
「そう! と言う訳で、まずは事件の概要からね!」
元気にそういったジャンヌが、スッと羽ペンを手に取り、インクをつけてサラサラと羊皮紙に書きつけていく。
(……コレ、完成させようと思ったら、結構時間かかるって、やっぱり気づいてないよな……?)
楽しそうに書き殴るジャンヌを見ながら、リオンはそっと溜め息を飲み込む。
概要。くらいならばすぐに書けるだろう。
何しろ『概要』なのだから。
けれど……
関わっている人間。
時系列。
それぞれがどう関係していて、結果どうなったのか。
そのすべてを調べ上げようと思ったら、それなりに時間がかかる。
そして……
(((……当然。そのすべてが網羅された資料は、既に存在している……)))
ファンも、リオンも、クロードも……そしておそらくジョンも、それを知っている。
気づいてはいないか、忘れているだけで、ちゃんとジャンヌも聞いている。
当たり前だ。皇族であるジャンヌが狙われた事件を、公表するか否かは別として詳細に調べないはずがない。
そして、それらは専門の文官らがきちんと清書し、皇帝陛下を始めとした最上層部が確認している。
それを、また一からジャンヌに自分で作らせることで……
(((……間違いなく、当分の間は夢中になって、他の動きは一切しなくなる……)))
その間に、例えばインスが退院できれば、その時は呼び出すことも可能になるだろう。
安全に。そして進んでいるように錯覚させながら。
その実、単なる時間稼ぎを、ジャンヌのやりたいようにやらせられる。
(さすがは皇子……姫様をよく分かっていらっしゃる……)
(……あの皇子、やっぱ、只者じゃないな……)
(……仲がいい証拠だな……)
三者三様。
夢中になって書き進めるジャンヌが、時折ひとり言なのか、問いかけなのか……
手を止めて考え込むたびに相槌を打つようにヒントを散りばめて。
ジャンヌが真相に気づかないように誘導して。
そして、彼らの思惑通りに……
一か月近く入院していた皇宮呪師のインス=ラントの退院が知らされた。
「今すぐ呼んで!!」
聞いた瞬間にそう叫んだジャンヌの言葉に……
やっぱりそうなったな、と護衛騎士たちがそっと溜め息を漏らしたことにもジャンヌは気づかないままだった。
第3章第1話をお読みいただきありがとうございます。
ジョンの助言を胸に、やる気満々で「情報整理」を始めたジャンヌ。
羽ペンを走らせる彼女の姿はまさに「一生懸命」そのものですが、背後の騎士たちの視線がなんとも言えません(笑)
自分たちがすでに持っている資料を、わざわざ一から作らせるという「高度な時間稼ぎ」……。
彼女の情熱が実を結ぶのか、それとも空回りのまま終わるのか。
退院が決まったインスとの再会も気になるところですが、まずはジャンヌの執筆活動(?)を応援してあげてください!
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
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ノリト&ミコト




